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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文17年(1548年)

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第百八十話・そうだ旅に出よう・その二

side:織田信秀


「殿。よろしかったので?」


「構わぬ。三郎も他国を見聞することが必要であろう」


 三郎と一馬が伊勢に行った。


 家臣の中には先日戦をしたばかりであり危険なのでは、と口にする者もおる。されど桑名を除く伊勢・志摩の者には事前に知らせは出したうえで、話も筋も通っておるのだ。大きな問題はあるまい。


 懸念があるとすれば船が沈むことだが、まあ大丈夫であろう。伊勢湾の内海から出るわけでもない。


「最早、尾張半国にも満たぬ弾正忠家の嫡男ではないのだ。広い世を見ておかねば織田に先はないぞ」


 本当はワシも行きたかったのだがな。統一したばかりの尾張を離れるわけにはいかぬ。


 伊勢は尾張に似ておる所がある。伊勢神宮と大湊・宇治・山田などは共に発展してきたからな。学ぶべきことは多かろう。


「そういえば久遠殿は紙芝居とやらにて、領民に津島神社と熱田神社に詣でることを勧めたりしておりましたな」


「あれも評判ですな。領民が非常に喜び楽しんでおりまする。しかも活躍すればその者の名が領内全てに広まる。早くも次の戦を待ちきれぬ者がおります」


 紙芝居か。確かにあれも評判は驚くほどいい。


 いずこかの坊主が絵説きで勧誘しておるのは噂で聞いたことがあるが、一馬はあれを娯楽にしおった。


 しかも、領内への知らせや戦の原因から結果まで知らせて歩くのだから、武家もあれに注目しておる。


 近頃では佐治水軍と森三左衛門があの戦では活躍したと、紙芝居で絵にして見せて歩いておるからな。当人たちが一番驚いておろう。


 それが良い刺激となり、次は自分がと騒ぐ者がおるほどだ。褒美も欲しいが、名を売る機会も欲しいということか。




「近頃では津島神社や熱田神社に行く者も増えたとか」


「熱田神社の千秋殿が、来年は花火を熱田神社でもやってほしいと久遠殿に頼んだようですな。さすがの久遠殿も困っておるでしょう」


「花火は津島と熱田で交代でやればよい」


 寺社の対策は一馬とワシは考えておることが似ておる。


 一馬は津島神社と熱田神社を立てることで、一向宗などの寺社に対抗するつもりであろう。


 伊勢神宮もそれと同じ。朝廷と繋がりの深き伊勢神宮を詣でることで織田の立場を朝廷や世にはっきりと示せるはずだ。


 花火は毎年やれるだけの備えはできるらしいが、さすがに二回はやりすぎだ。津島神社と熱田神社で毎年交代しながらやれば良い。




side:久遠一馬


 やっぱり船は速いね。確か江戸時代の記録だと那古野から伊勢神宮までは徒歩で三日だっけ?


 まあ史実の江戸時代は今みたいに関所が乱立してないから、旅が楽だったみたいだけど。


 この時代だと伊勢神宮に行くまで関所が数十ヶ所あるらしいので着くまでにどんだけお金がかかるやら。



「刀、邪魔だね。持たなきゃ駄目?」


「駄目ですよ」


 船は何の支障もなく大湊に着いた。港には多くの人が居て賑わってる。


 ただまあ、オレたちは降りる前に着替えなきゃならない。


 信長さんは放っておくとうつけ殿スタイルだし、オレは清洲城に登城する時以外は、その辺のちょっと金持ちな商人のような服装だしね。


 刀もほとんど持ち歩かない。なんか慣れないから邪魔なんだよね。


 ああ、着替えているといえばエルたちも普段は質素な服装だから、武家の奥方のような服装に着替えてたけど。




「ようこそおいでくださいました、大湊へ」


 大湊にてオレ達を出迎えたのは角屋七郎次郎かどやしちろうじろう元秀もとひでさん。


 この人はウチとも少し取引のある人なんだけど。


 最近知ったんだよね。この人の息子が商人で歴史に名が残る数少ない豪商だった秀持ひでもちさんだったこと。かの有名な家康の伊賀越えを助けた人物でもあり、史実では北畠・織田・北条まで取り引きのあった商人の父親になる。


 ただ、現状の元秀さんは豪商とは言えない大湊の新興商人でしかない。ウチと面識があり立場も手頃なので案内役になったんだろう。


「わざわざ出迎えありがとうございます」


「いえ、滞在のお世話から船の荷降ろしまで、全てはお任せを」


 面識もあるし荷物をちょろまかしたりする人でもないと思う。いろいろ船に積める荷物は積んできたからね。荷降ろしには少し時間が必要だ。


 その間は元秀さんの屋敷に泊まらせてもらうことになった。


 オレたちは下手な旅籠なんかに泊まれないんだよね、立場上。人数も人数だし襲われたりする可能性もゼロじゃない。




「さすがは大湊だな。凄い賑わいだ」


「いえいえ、織田様のおかげでございます。明や南蛮の品が堺よりも手に入るおかげの賑わいでして」


 大湊の町はやはり津島とは規模が全く違うね。船の数も港の蔵の数も全く違う。


 信長さんを筆頭に連れてきたみんなは、田舎から上京したおのぼりさんみたいに圧倒されてるよ。


 ちなみに当然ながら南蛮船とオレたちも目立っていて注目を集めている。他の船とは大きさが違うし形も違うからね。


 大湊といえど南蛮船は珍しいのだろう。南蛮船が見られるのは堺や津島・熱田に商いに行った時ぐらいかな。


 他には一緒に同行したエルたちも目立ってる。今回はエルとジュリアとケティに、セレスとシンディが同行した。


 本当はみんな来たかったみたいなんだけどね。さすがにこれ以上はさ。


 大湊に南蛮船が来たことがあるのかは知らないけど、エルたちのような南蛮人の風貌の女性はやはり珍しいのだろう。




「これほど大きい湊だとはな」


「蟹江も負けないくらい大きくしますよ。将来を考えると大きくて困ることはないですから」


 元秀さんの屋敷で休息して、この後の予定を話し合う。


 港や町の散策くらいは許されるはずだ。あとは宇治と山田にも伊勢神宮を詣でた後に行ってみたいなぁ。


 他にも大湊や宇治・山田の商人が訪ねてきそうだから、彼らの相手もしなくてはならない。


 名目はお伊勢参りだし、立場は信秀さんの代理になるんだよね。


 本当はお忍びで遊びに来た方が気楽で良かったんだけど。無理だった。


 現在の織田の状況と信長さんやオレたちの立場から考えると、お忍びは不要な問題を招きかねないからって。


 下手するとあちこちに迷惑を掛けたり疑念を与えかねないので、大人しくお伊勢参りにしたんだ。


 どっかの御隠居みたいに印籠出して解決するならいいんだけど。現実はそう甘くはないらしい。あれだってたまに印籠の後に斬りかかってくるし。


 信長さんとオレは迂闊すぎると、エルたちと政秀さん資清さんにお説教されたのは秘密だ。



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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[一言] まだ読んでる途中ですが、読み応えがあって面白いです。 更新無理せず頑張ってください
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