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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文17年(1548年)

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第百十四話・岩倉の乱

side:久遠一馬


「本当によろしいので?」


「構わん。情けで人を動かすは、そなたの得意な手口であろう。伊勢守は思ったよりも悪くはない。蝮のように家中を疑心暗鬼だらけにするのは、ごめんだ」


 この日オレとエルは、信秀さんに岩倉への密かな支援を命じられた。岩倉のメンツを守りつつ支援せよという、ちょっと普通なら難しい命令だ。


 放置すればするほど、臣従後の信秀さんの影響力は強まる。それにうまく行けば、直轄地も増えるかもしれない。まあ、後始末は大変になるだろうけど。


 それよりも岩倉を支援して、早期に臣従させたいらしい。確かにこの調子で領内を荒らしながら、冬まで戦をされても困るけどさ。


「分かりました。では商人に謀反人との取引はしないように頼み、流言でも流しましょうか。商人の件は気付かれるでしょうが、謀反人は殿への臣従を拒否した者です。こちらにも名分はありますから」


「それでよい。尾張には他にも態度が曖昧な者もおる。肝を冷やしてやるがいい」


 やることはそれほど難しくない。弾正忠家の領内の商人たちに、岩倉と敵対してる戦馬鹿との取引をしないように頼むだけだ。岩倉領内の商人はオレと繋がりはないが、多分ウチの要請は聞いてくれるはず。


 聞かなきゃ弾正忠領の商人を敵に回すからね。


 あとは物の値を戻してもらい、滝川忍軍に岩倉が有利になり、戦馬鹿の士気が落ちて、領民が従わないような噂でも流すか。


「殿の名をお借りして、よろしいでしょうか」


「好きにするがいい。お前たちが来てからというもの、仏にされて少し困っておるからな。恐れられるのではなく、拝まれるなどおかしな気分だ」


 一応信秀さんの許可をと思ったけど、面白そうな笑みを浮かべた。あっ確信犯の笑みだ。


 そういやオレたちが何かやる度に、信秀さんが仏様にされるんだよね。昔は、虎と呼ばれ人気のある殿様だったらしいけど、拝まれたことはないのか。


「そのうち、殿を仏にした寺でも作れそうですね。一向衆に対抗できないかな?」


「お前が言うと冗談に聞こえぬわ」


「冗談ですよ。半分は」


「その発想がお前の強みだな」


 信秀さんをウチがバックアップしたら、本当に生き仏になって宗教ができそうな気がする。生き仏織田軍対一向衆。本当にやればカオスだな。ちょっと呆れられたよ。


 とはいえ仏と言われるのは、悪いことじゃない。領民の信頼があれば、一向一揆なんかも史実よりはマシになるはず。


「前々から伺いたかったのですが、殿は自らの力で天下をとお考えなのですか?」


「……天下か。誰しも一度は夢を見るのかもしれぬな。されどワシにできたのは、尾張すら纏められるか如何にという程度だ。最近、思うのだ。もしお前たちが来なかったら、如何なっておったかとな」


「戦に勝てば、より領地は広がっていたのでは?」


「勝てばな。だが負けたら如何なる?」


 一度聞いてみたかった。歴史の秘密とまでは言えないけど、信秀さんが何を見てどこまで考えていたかを。


 歴史に名を残しただけはあるし、史実の信長さんの躍進の基礎を作ったのは父信秀さんだろう。


「戦に勝つだけで天下が取れるならば、とうの昔に誰かが天下を取っていよう。かつてのワシには、それ以上は如何すれば良いのか分からなかった」


 凄い。本当に凄い。これほど客観的に自分が見えてるとは思わなかった。限られた世界で生きてるはずなのに。


 史実の信長さんは、実力以外にも運の良さもあったと思う。


 三好・朝倉・六角。もし彼らの全盛期であったならば、信長さんだって、どうなっていたか分からない。もっと言えば桶狭間の時には、今川義元の軍師、黒衣の宰相と言われた太原雪斎たいげんせっさいが亡くなっていた。


 仮に信長さんが父信秀さんの代わりに産まれていても、天下は取れなかったかもしれない。


「お前たちを見て理解した。世の中は広いのだと。ワシに分からぬのならば、分かる者に任せるのも悪くはない。もし織田が天下を取れたとすれば、それは天命なのであろう」


 人は変わり成長するものだ。しかし歳を重ねると、変わるのは難しくなる。まして信秀さんは成功者だ。


 それなのに変わり成長している。


 史実で四十前に亡くなった信秀さんが、あと二十年生きたら。どこまで変わり成長するのだろう。


 理解している。オレやエルたちが考える将来的な思考を。確実に。少し怖いほどだ。岩倉の信安さんも怖いのかもしれないね。


 時代を先取りした信秀さんが。




side:織田信安


 弾正忠家から予想より多い兵糧が届いた。冬にはあれだけ流行り病の治療に銭を使っておったのに、すぐにこれだけの量を送ってこられるのか。


「物の値が一気に下がりました。しかも商人たちは謀反人との商いを止めております」


「早すぎるのではないか? それに強欲な商人が何故……」


「弾正忠様が動かれたようにございます。殿への援護でございましょう。それに臣従を拒否する者たちを野放しにしては、弾正忠様も示しが付かないということも、あるのでしょうが」


 頭を下げた結果か。ワシも書状で素直に詫びた。家中から弾正忠殿の領地で暴れた愚か者を出したことも、臣従する方針で家中を纏められなかったことも。


「殿。好機でござりまする。領内では弾正忠様が援軍の支度をしておると、噂でございます。清洲を一日で落とした噂の金色砲が、那古野の久遠邸から清洲に入ったとか」


「援軍の話もあったのか?」


「いえ。ありませぬ。恐らくは弾正忠様が流した流言でしょう。されど商人の動きが、噂に真実味を持たせておりまする。領民も国人衆も最早勝敗は決まったと考えるでしょう」


 弾正忠殿は頭を使えと猪之助に言うたとのこと。つまり戦はこうしてやるのだと、ワシに見せておるのか?


 恐ろしい。一兵も動かさずに言葉だけで、こちらの領内をこれほど動かせるとは。


「領内の反応も良うなりました。無用な戦を避けようと努力した殿に逆らった、私利私欲の欲深い謀反人。皆がそう噂をしておりますれば」


「田植えもあらかた終わった。兵を集め一気に叩くか」


「はっ。それがよろしいかと」


 まさか戦の御膳立てまでされるとは。ワシは初陣の子供ではないのだが。しかし不思議と怒りはない。


 裏を返せば、弾正忠殿はいつでも同じことを、ワシにできるということ。早く伊勢守家を纏めよと、尻を叩かれたようなものだな。


 物の値が高かったのは奴らも同じ。大した準備はできていまい。ここは一気に兵を挙げて叩き潰してくれるわ。




――――――――――――――――――

 岩倉の乱


 信長公記に、岩倉の乱について僅かだが書かれている。


 信秀に臣従することを決断した織田伊勢守信安に、家臣の一部が私利私欲で反旗を翻した伊勢守家の内乱として、僅かに記録があるのみである。


 詳しい経緯や戦の内容は分かっておらず、これは信秀の謀略だという説もあるが、真偽の程は定かではない。


 しかし乱の前後の信秀と信安の関係は良好であり、伊勢守家側から臣従を申し出ていることから、信秀の謀略とするには疑問があり、元々伊勢守家の内部にあった権力争いの可能性も最近では示唆されている。


 織田大和守家が滅び下四郡をほぼ平定した信秀であるが、犬山城の織田信康などを筆頭に、すでに上四郡でも伊勢守家より弾正忠家に近い者が少なくなかった。


 これは長年の信秀の工作の成果であると言われるが、この時すでに伊勢守家には上四郡を束ねる力はなく、そのまま守護代の地位を賭けて弾正忠家と、対立するか従うかの二者択一だったと思われる。


 すでに三河と美濃の一部を領有し、佐治水軍の力もあり南に大きな脅威のない弾正忠家と伊勢守家の衝突は、誰が見ても時間の問題だった。


 結果的に信安は臣従を選び、この時岩倉の乱で活躍したのが山内盛豊と言われている。


 後に信秀は、盛豊を真の臣下だと絶賛したという話が伝わっている。






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