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11 緑色の魔獣

エルは戦闘により倒れた、そしてブードは願いを叶える……

 ブードは、家が代々あの花を追い続け、自分の代で花が咲くと知った時喜び叫んだ。

 花が咲くのを待ち続け、あの日、泉で魔族と思われる女達を見つけた時、絶好のチャンスだと思ったのだ。

 自分だけではどうやってもピラミッドにはたどり着けなかったし、花が咲くまでの護衛なども出来なかったのである。


 どうにかあの女達を利用出来ないかと考えていた時、あの女達が自分の家に尋ねて来た。

 これは運命が、あの花が私に運命力を与えてくれているのだと感じたのだ。

 ギリギリまで利用し、あの花に願いを聞いて貰う為、ブードは考えて、考えて、考え抜いた。

 そして彼の計画した展開が成功し、目の前の花がついに咲いてくれたのだ。


「咲いた! 咲いたぞ! さあ私の願いを叶えてくれ!」


 彼は考えた。

 子供の頃から考えていた。

 幼少期、彼は毎日町の子供達に虐められ、力を求めた。

 願いを叶えるならどんな願いにするのか、そしてそれは……。


「私に誰にも負けない、どんな軍でも敵わない究極の力を与えてくれ!」


 花は彼の願いを花は叶えた。

 ……叶えたのだろうか。


「おいなんだこれは。本当に大丈夫なんだろうな? うあ……ぎゃあああああああ!」


 咲いた花から大量の蔦がブードに絡みつき、その体が花に取り込まれてしまった。

 そしてその命を代償に、緑色の魔獣となった。

 もう何処にも人であった彼の面影は無い。


 圧倒的な緑の大樹。

 食虫植物の様なギザギザに合わさった口。

 何本もの蔦をウネウネと揺らし、そして、植物としてあり得ないが、根と蔦を使い自由に移動をしている。

 その魔獣は倒れていた三人を得物と定め、巨体を揺らし迫っていた。


 その激しい敵意を浴び、フレーレはハッと目を覚ました。

 しかし、ブートに盛られた薬により、まだ体がうまく動かないようだ。

 隣にはレアス、そして傷ついたエルの姿も見える。


「何か分からないけれど、兎に角彼奴が元凶よね……」


 フレーレは立ち上がり、ゆっくりと三度深呼吸をした。


「ふううううううううううううううぅぅぅぅぅ……」


 息を吐き終わり、フレーレの顔つきが変わった。

 魔獣を倒すべき敵と捉え、全力で魔獣の元へと走る。

 そして魔獣との戦いが始まる。


 何十本もの緑の蔦が、魔獣に向かうフレーレへと襲いかかって来ていた。

 フレーレはそれを躱し、切り裂き、蹴り、突き進む。

 だが破壊した蔦は即座に再生すると、またフレーレに向かって行く。

 とてつもない再生力を備えているようだ。


「たああああああああああああ!」


 それならばとフレーレは、躱した蔦を足場にし、襲い来る蔦を飛び移り、必殺の拳が本体の幹に炸裂させた。


 フレーレの拳は幹に深々と突き刺さる。

 だが相手は生物ではあるが植物だ、そんな簡単には死ななかった。

 巨大なあぎとを持つ口の様な葉が、拳を放ったフレーレを狙っている。


「ハアア!」


 フレーレは幹を蹴り付け、自分の腕を引き抜くと、そのあぎとを蹴り上げ破壊した。

 だがそれも無駄で、穴の開いた幹と破壊された咢、両方ともがもう再生を始めていた。

 破壊が効かないのならばと、フレーレは衝撃へと攻撃を切り替える。


「だったら!」


 攻撃を仕掛けようとするフレーレの頭上から、蔦の塊が襲いかかる。

 フレーレはそれに慌てず、幹に手を振れるか触れないかの堺で止め、その掌を魔獣全体を押すイメージで押し込んだ。

 そして迅速に腕を引き戻す。


「ハッ!」


 魔獣の体が揺れ、内部にまで衝撃が行き渡った。

 フレーレに向かっていた蔦が吹き飛び、幹は各所で破裂し、ドロッとした液体が流れだしていく。

 だがそれですらも、ゆっくりと再生が始まっていた。

 しかし体全体となると再生の速度が落ちているように見える。


 もう一撃入れようとフレーレは手を幹に当てたが、それをさせてはもらえなかった。

 魔獣の咢が迫っていた。


「なかなかやるわね!」


 フレーレはバク転をして、咢が閉じ切った所を蹴り飛ばす。

 相手の攻撃は終わらない。

 更に右から左からと、蔦が鋭い先端を向けてフレーレへと突き進む。


「邪魔な蔦だわ。最高の一撃を放つ時間が欲しいわね」


 先ほどの一撃ですらフレーレの全力ではなかった。

 だが全力の一撃を放つ為には、少々の溜が必要なのだ。

 魔獣の蔦を斬り進み、フレーレは幹へと到着した。


「ここね!」


 敵の攻撃が来る前に、フレーレは素早く衝撃を放つ。

 緑の魔獣にダメージを与える事は出来ているが、このままではジリ貧だった。

 フレーレの体力が多いとは言え、何れ限界がやってくる。

 一度距離を取り魔獣から離れると、フレーレは一度息を吐きつす。


 そこに救援がやって来た。

 レアスが目を覚まし、フレーレの加勢に入ったのだ。


「ブラッディアス・アッシュ!」


 レアスの魔法が発動した。

 黒き球体が魔獣の目の前に出現し、巨大な緑の魔獣を引き寄せて行く。

 しかし魔獣はしっかりと根を張り、その攻撃を耐え続けている。

 それでも何本かの蔦が球体に飲み込まれると、蔦がカラカラに干からびた。

 だが、魔獣はその蔦を幹から切り離し、新たなる蔦が再生したのだ。


「フレーレさん、エルさんは洞窟に避難させましたわ。さあこの化け物を退治いたしましょう!」


「そうね、エルちゃんをこれ以上待たせるのも悪いからね」


 来る攻撃をレアスが引き裂き、フレーレは走る。

 体全体へと意識を集中し、地面があり、そして攻撃するのに十分な場所を目指す。

 そして到着した絶好の位置で、フレーレは右足を踏み込み、左の足の裏を伸ばした。


 腰が回転し、右腕を引く。

 引いた力を利用し、左の掌底が押し込まれる。

 更に肩を押し出し、力を込めた一撃を強靭に引き戻した。


 完全な状態で打ち出されたその衝撃は、魔獣の体全てに伝達する。

 そして、魔獣の体の奥に埋まっていたブード体にまで届いていた。

 強烈な衝撃は、ブードの内部で爆発し、彼の命を奪ったのだ。


 それでも魔獣は止まらなかった。

 だが魔獣の体は至る処で破裂し、殆どの攻撃能力を失っている。

 再生能力は相当落ちてるのが見て分かった。

 もう今なら勝てるだろう。


「でやああああああああああ!」


 攻撃が止んだ今、フレーレは何にも邪魔されず、自身最高の蹴りを放つ。

 その蹴りは魔獣の根元を削り取り、レアスの魔法の時間を稼いだ。


 ……熱き血よ……燃える血潮よ……全て纏めて……吸い尽くせ……。


「ブラッディアス・アッシュ!」


 レアスの全魔力で作られたその黒球は、魔獣の体を引きづり込んだ。

 魔獣の根は大地をガッチリと掴んでいたが、フレーレの攻撃は根本を削り取っていた。

 切断された根の一本を残し、魔獣の全てが黒球へと沈み、魔獣の命が吸われていく。

 全ての命が吸い尽くされ、緑の魔獣は砂へと帰った。


「終わりましたわね。そういえばブードさんは何処へ?」


「さあ? 帰ったんじゃないのー?」


 二人は何と戦っていたかすら気づいていなかった。


「ッ!」


 しかし周りを探すフレーレは、残された魔獣の根から小さな芽が出ている事を発見してしまう。


「うえー、これまた生えるのかしら?」


 その芽は即座に成長しなかったが、何時か花を咲かせるのかもしれない。


わたくしもう魔力がありませんわよ。またバラバラにしてもまた生えてきそうですわね……」


「任務的に……これ、持ち帰らないと駄目なのかしら?」


 二人はこれがあの花の成れの果てだとは気づいていた。


「……見なかった事にしませんか? エルさんの治療もありますし……」


「……そうよね、エルちゃんの治療もあるしね……」


 二人はその場から走り、エルの下へと向かった。

 レアスがフレーレとエルを掴み、砂漠を中を南下して行く。

 三人が向かっていたのは泉を護衛していた元王国の人間の下である。

 彼なら回復魔法を使える可能性があるからだ。


「流石に二人は重いですわ」


「我慢してね、エルちゃんを降ろす訳には行かないからねー」


「フレーレさん、下に降りたら如何ですか? よく考えたら私がフレーレさんを運ぶ必要ないですわよね?」


「下は暑いから嫌ー。……あっ!」


 フレーレはレアスに手を離された。


「ちょッ!」


 相当な高さだったがフレーレは普通に着地し、レアスを見上げる。


「エルさんを町に置いてきたら迎えに来てあげますわ。それまで走ってくださいね」


 レアスはフレーレを置いて飛び去って行った。


「待てー、置いてくなー!」


 フレーレは走る、空に浮かぶレアスを目印にして。

 そしてレアスを見失う事なく、目的の町へと到着した。


ベリー・エル(王国、兵士)          フルール・フレーレ(王国、兵士)

グラスシャール・ボ・レアス(王国、兵士)   ブード(覗き野郎)


次回→続き


フレーレとレアスでのボス戦でした。

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