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9 異世界からやって来た男

べノムのミスからタナカ アツシは異世界に召喚されてしまった…………

 俺の名前はタナカ アツシ。

 日本の学校に通う十五歳の、ごく普通の一般少年だ。

 アニメや漫画が大好きで、異世界召喚なんてされないかなーなんて思っていたら、まさか本当に召喚されるとは思わなかった。

 今思えば召喚される二日前に、書店で一冊の本を見つけた時から始まっていたんだろう。


 日曜の昼、書店でライトノベルを見に行ったんだ。

 ちなみに俺は電子書籍派ではない。

 電子書籍だと読んでいる時にスマホが使えないし、ゲームも出来ないからだ。

 目的の本が売り切れだった事は残念だったが、暇だったのでちょっと書店の中を歩き回ってみたんだ。


 俺はそこで一冊の本を見つけた。

 その本は水に落ちた後の様に、グニャグニャにしおれているな。

 何故そんな本が書店にあるのかと、ちょっと気になり手に取った。

 医療の本……か?


 本をめくるが、専門用語がびっしりと書かれて、さっぱり内容が分からなかった。

 興味を失った俺は、その本を本棚に戻し、自宅へと帰ったのだが……。


 二日後にそれが起きた。

 風呂に入ろうと服を脱ごうとした時、俺の体はこの異世界に転移しのだった。

 辺りは薄暗く、一瞬停電かと思ったのだが、だがどう見ても此処が家の脱衣所には見えなかった。


「まさかこれって、本当に異世界召喚とかされちゃったのか?!」


 本当にそうなら、俺には何か特殊能力とか付いてるはずだ。

 取り合えず試してみよう。


「炎よ顕現せよ! ……?」


 手を突き出しちょっと待っているも、特に何も起こらない。

 火じゃないのだろうか?


「水よ出でろ! 大地よ揺れろ! 風よ吹け! 光よ! 闇よ!」


 何を試しても力の発動はされなかった。

 もしかしたら俺の能力はそんな物じゃないのかと考えた。

 そう、勇者といえば雷とか扱えたりするのかも知れない。

 よしやってみよう。


「雷よ出でよ!」


 目の前に電雷がほとばしる、その光で部屋の中が明るくなって、今自分が何処かの部屋の隅に居たのが分かった。


「うおおおおお、すげえええ!」


 やはり俺は勇者だった。

 雷というのは中々にカッコいい。

 もう一度試してみよう。


「雷よとどろけ!」


 ん、何も起こらない。

 言葉を変えたのがいけなかったのか?

 もう一度。


「雷よ出でよ!」


 電光が俺の背後に落ちた。

 ビクリと体が硬直して、後ろを向く。

 雷の光で、この部屋の中が大分広い空間だと分かった。


 しかし異世界転移してから直ぐでは、力のコントロールが上手く出来ない様だ。


「雷よ出でよ!」


 だが次に唱えた魔法は発動しなかった。

 ゲームの様にマジックポイントが無くなったのだろうか?

 そんな感覚は全くなくて、自分では良く分からない。


 まあ良いや。

 この場所が何処か知らないけど、俺は勇者なんだ。

 敵が出たとしても負けないはずだ。

 そして俺が部屋を探ろうと足を一歩踏み出した時。


 ドゴーン! っと、部屋の中で雷が落ちた。

 その光で、部屋の奥に誰かが居たのが分かった。


 それは、ねじくれた角と、悪魔の様な翼を持った男。

 王様が座る様な椅子に座し、こちらを見ている気がする。

 そんな角や翼を持つ奴が普通の人間であるわけがない。


 一度よく考えてみよう。

 玉座があるということは……なる程、ここって城なのか。

 玉座に座った魔物って……まさかいきなり魔王戦とか?!

 だが俺には電撃がある、勇者の力なら効くはずだ。


「かみな……」


 ドゴーン! っと目前に雷撃が落ちた。

 余波で一瞬体が痺れている感覚におちいる。


 おかしい、俺はまだ唱え切っていないのに。

 ……あれ、もしかして今までの雷って……俺が使ってたんじゃないんですか?!


 ドゴーン! っと、俺の後ろにまた雷撃が鳴っている。


 奥にいた魔王が動いた。

 指をこちらに向け、指先から電撃が迸る。

 それは俺の横を通り過ぎ、進路の終点にあった絵画をバラバラに吹き飛ばしてしまう。

 落ちた破片が燃えている。


 まさか、俺が能力を使ってた訳じゃないのかよ?!

 こ、これはヤバイんじゃないか?!


 に、逃げよう。

 幸い逃げ足には自信がある。

 学校の行き帰りで鍛えられているからな。


 しかし出口は一体何処に?!

 玉座があるとすると、あの魔王の対角に扉があると思う。

 急がなければ!


 扉を開け……開かないじゃないか。


「重すぎて開かないぞこれ!」


 動揺する俺に、魔王の指先が向けられている。


「ひぃ」


 俺がしゃがみ込むと、扉に雷撃がぶつかってバンと弾ける。

 その雷撃の衝撃により、重い扉が少し開いた。


 こんな所に居たら死んでしまう。

 その扉を抜け、走る俺の後からは、ドカドカと雷が落ちて来るのが分かった。

 攻撃が当たらないのは、遊ばれているのだろうか?

 しかしそれでも逃げられると、俺は全力で走って行く。


「おおおお、複雑すぎて分かんねぇ。出口は何処だよ!」


 外の分厚い黒雲で、暗い城の中を必死に走り回り、俺は何とか出口まで辿たどり着く事が出来たのだった。

 だが最後の試練の様に、王城の門が閉まっていて開いてくれない。


「ちょ、如何するんだこれ! 待て待て、何処かに開けるスイッチがあるはず! 何処だ、何処だ、何処だ、何処だ。……あッッッたあああ!」


 見付けたレバーを操作すると、王城の門が開き、俺はこの城から脱出する事が出来た。

 門をくぐった瞬間、巨大な雷光が城を包んだ。

 後一瞬遅れていたら……きっと黒焦げになっていただろう。


「何だこれ! こんなの間違ってる。いきなりラスボス戦とかゲームバランス狂ってるって!」


 しかし門を抜けた先には、また別のモンスターが現れた。

 真っ黒で人のような魔物は、空中に浮かびこちらを見ている。

 とても初心者が相手に出来る物ではない。


「うぎゃあああああ、またモンスターが、く、来るな!」


 そいつは黒いマントを羽織り、なんかからすっぽいモンスターだ。

 全身真っ黒で、どう見ても悪役にしか見えない。

 絶対捕まったら不味い。

 何をされるか分からない!


「おいお前、何処から来たんだよ。帝国か? それともブリガンテか?」


 分かんねぇよ、何処だそれ!

 しかし一応聞いておこう、もしかしたら此奴こいつが俺を呼んだのかもしれないから。


「お前言葉が喋れるのか? 俺は日本から来たんだ。もしかしてお前が俺をこの世界に呼んだのか?」


「お前、ちょっとこっちへ来い」


 前に居る魔物は、頭を押さえて何かを考えている。

 はぁとため息をつき、魔物は俺を掴みあげようと腕を伸ばしてきた。

 やばい、っと、俺はとっさに地面の砂を掴み、からすの様なモンスターに投げつける。


「誰がお前みたいな化け物に捕まるかよ! バーカ」


「待てコラアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 俺の足を舐めたらいけない。

 どんな虐めっ子でも俺の逃げ足には追い付いて来れないのだ。

 見たことのない町の中を、右へ左へと曲がりくねり、魔物から距離をとって行く。

 しかし、距離を離したと思った魔物は、どんなマジックを使ったのか、目の前に立っていたのだ。

 まさか瞬間移動なんて使ったんじゃ……?


「おいお前、悪いようにはしないから、ちょっとこっちに来いよ。大丈夫、一発殴るだけで勘弁かんべんしてやるから」


 奴は一発で済ます様な顔をしていない。

 凄く凶悪そうで、徹底的にやられてしまうだろう。


「うあああ、化け物。こっち来るんじゃねぇよ!」


 後を向いて逃げ出すが、また目の前にモンスターが現れた。

 やっぱり瞬間移動?!

 逃げようがない。


「何だよぉ、お前俺を殺すつもりなのかよ。クソッなめんなよ。簡単に殺されないんだからな!」


「そんな気は無いぞ、ただちょっとムカついたから一発ぶん殴るだけだ」


「誰かたすけてえええええ!」


 どうにもならず、俺は声を上げて助けを求めた。

 そんな声を聞いてくれたのか……。


「何やってるのよべノム? こんな子をいじめちゃ可哀想でしょ。さあ此方にいらっしゃい」


 綺麗な女の人が現れた。

 もしかしたらこの人が俺を呼び出したのだろうか。


「うわあああああああ怖かったよ」


 俺はその女の人に抱き付き、胸を揉みしだいた。

 お約束の展開という奴だ。

 こんな時には胸を触っても何やかんやで許されるものなのだ。

 しかしそんな極楽も長くは続かず、女の右の拳が俺の顔面を強く打ち付けた。


「エロガキは、死ねえええ!」


「なんで、ラノベだったらこんな事しても平気なはずなのに!」


 おかしい、異世界召喚とかされて、俺は間違いなく主人公ポジのはずなのに。


「ほら、もう許してやるから俺に付いて来いよ。此処には凶暴な女が沢山いるんだよ」


 もしかしたらこのモンスターは意外と良い奴なのかもしれない。


「ほ、本当に酷い事をしないんだろうな? 絶対だぞ」


「ああ絶対だ。お前が何もしなけりゃな。もし俺の知ってる女に同じ事をしてみろ、その女がお前の頭を消し飛ばすぞ」


 デレが来たらラブラブになる設定なのか?

 チィ、ツンデレはあんまり趣味じゃないんだが。


「なんだよ、此処はそういう所なんだな」


「そういえばお前の名前を聞いていなかったな。俺はべノム。べノムザッパーだ。お前の名前は何だ?」


「俺はタナカアツシ、きっと俺はこの世界を救う為に呼び出されたんだ」


「へ~」


 男の反応がいまいちだ。

 なんだよ信じて無いのかよ、何時かお前達がひれ伏す事になる男なんだぞ。

 この魔物は、べノムと言ったか?


 そいつに付いて行ったら、ある人物に会わされた。

 その人は白い翼を持ち、物凄く美しい正に天使だった。


「天使様!」


 思わず手を合わせて拝んでしまった。

 それをせずにはいられ無い程の美しさだ。

 手を合わせるのは違った気がする。

 でもまあ良いか。


 いや、よく考えれば、何で魔物と一緒に天使が居るのだろう?

 このモンスターは使い魔か何かなのだろうか?


「おいグーザフィア、お前達の変な儀式の所為で、此奴こいつが呼び出されたんじゃねぇのか? 妙な事を言ってるし、そんな感じがするんだが」


 なる程この天使様が俺を呼び出したのか。

 つまり俺が何しても良いのはこの人だったんだな。


「あ、足がもつれたあ、あああああああああ」


 少し棒読みだったが主人公補正と言う物で何とかなるだろう。

 グーザフィア様の胸に顔をうずめ……。


 ガシッ


「おい、何をしようとしているんだ? てめぇ死にてぇ様だな」


 俺の首を掴んだのは男の天使だった。


「死なない程度にボコボコにしてやるから、表に出やがれ!」


 ま、まさか男が居たのか、天使なのに!


「べノムさん助けて!」


「変な事はするなって言っておいただろ。ベール、殺すなよ。程々にしておけ」


 そう、この日俺は本物の天使に出会って殺されかけた。

 しかしこの後本物を超える天使に出会ったのだ。

 俺が目を覚ますとそこに、短くカールが掛かった赤い髪の女の子が、俺を優しく癒してくれた。

 今度こそ俺の女神なはずだ。

 今日の夜に夜這よばいいを掛けてみよう。


タナカ アツシ(一般人)      べノムザッパー(王国、探索班)

グレモリア(べノムの家の居候)   べーゼユール (居候天使1)

グーザフィア(居候天使2)


次→王道を行く者達予定

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