表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/779

5 夢の続きをもう一度

天使が攻めて来る、その話を聞き準備を開始する。

 とりあえず私は、その天使というものの事情を聞いてみる事にした。


「シェルハユさん、どういう事ですか。天使が攻めて来るってなんで?」


「私、人間と結婚しようとしたら、妹と一緒に天界から追放されちゃったのよね。それで石にされちゃって、ずっと閉じ込められていたの。私の封印が解けた事はもう知られているだろうし、様子を見に誰かがやって来るわ。そしたらきっと戦いになっちゃうかもね?」


 王国が攻められるのは不味い。

 今更シェルハユさんを石に戻した所で手遅れだ。

 これは私一人では対応出来ない、まずメギド様に相談しよう。


「メギド様、少し不味い事になりました! 天使が攻めて来るとシェルハユさんが言っています!」


「聞いてた。まあ俺も許可したからなぁ。仕方が無い、お前達王国の町を出ろ。町で戦われては迷惑だからな」


 これは仕方が無い。

 町に迷惑をかける事は出来ない。

 私は国を出る事に決めたのだ。


「分かりました、町から離れた所に住居を作ります。近衛兵としては働けませんが、キメラ討伐や探索を行う班に移動します」


「よし、それで良い。ついでに新居も用意してやろう。結婚祝いだ」


「シェルハユさんとはまだ結婚してはいませんよ」


「じゃあ今結婚しましょうよ、ほら私に誓いなさい」


 将来とは思いましたが今ですか。

 う~ん、まあそれで良いですけど。


「では……私、マルファーはシェルハユさんを生涯愛する事を誓います」


「私、シェルハユはマルファーを永遠に愛する事を誓います」


「良し、俺が許す。お前等は今から夫婦だ」


 メギド様、王の権限は絶対ですが、なんだか結婚した気になりませんよ。


 私とシェルハユさんは、この日の内に準備を済ませ、王国の町から離れた。

 家は二日もしない内に建てられた、まだ天使の襲撃は無い。

 シェルハユさんが言うには、今から五百年前にはもう石にされていたと。


 そんな昔の事を覚えている天使がいるのだろうか、

 もし来るとしても、メギド様も私だけでは太刀打ち出来ない事は分かっているはず。


 だからこそなのか、私達の家を建てると言っていたが、それは相当巨大な物になった。

 ここを探索班の拠点としても使うつもりなのだろう。


「マルファー、ねぇ、もう準備出来ているわよ」


 隣の寝室からシェルハユの声が聞こえて来る。


「? 何の事ですか?」


「ほらぁ、早くこっちに来てよぉ」


 行ってみるとそこには下着姿のシェルハユさんが……。

 確かに結婚したのだから、そういう事をする事もあるだろうが、いつ襲われるか分からない状態でそんな事をしていても良いのだろうか?


 だが何故こんなに都合が良いくポンポンと結婚まで行ってしまったのだろうか?

 まさか本当はまだ夢の中?


 もし本当にそうなら、現実に戻る方法は思いつかない。

 天使の像は元の天使に戻ってしまったし、触れた所で戻った感覚は無い。

 あの時のままなら、子供達に任せるしか手は無いが。


 しかしこれが本物だったなら、このまま暮らす事になる。

 この疑念を持ったまま、このまま暮らしていけるだろうか?

 一度体験しただけなのに、こんな事になるとは思ってもみなかったな。


「シェルハユさん、すみませんが、私は天使襲撃に備えないとなりません。今はそちらに集中しましょう」


 疑念を確かめる為に、私は扉を閉めてリビングへ向かった。

 剣で指先を斬ってはみるが、普通に血が零れ落ちている。

 この痛みはやはり夢ではない……と思う。


 でも今は、この痛みにすがるしかないだろう。

 私はシェルハユの顔を見ずに、そのままのソファーで休んだ。

 時間が流れて朝が来ると、私は目覚めて、ソファーの下のシェルハユさんを発見した。

 わざわざこちらで寝なくても良いのに。


 彼女を愛おしいとは思う。

 シェルハユの頬に触ってみるが、確かにこの手には感覚がある。

 しかし像に触れて夢を見た時も、その感覚はあったのだ。

 このまま悩んでいては永久に悩みは解決しないだろう。


「お早うマルファー、よく眠れた? 朝ごはん何か作りましょうか?」


 此処が夢の中なら、シェルハユに相談しても意味は無いだろう。

 それでも それを分かった上で聞いてみた。


「シェルハユさん、相談があります。私はここが夢なのではないかと疑ってしまったのです。私の見ている貴方は、本当は居もしない幻なんじゃないかと思ってしまったのです」


 シェルハユの瞳を見つめる。

 潤むその瞳は、とても偽物には見えはしない。


「……何時もそうなの、私と付き合った人は夢と現実の区別がつかなくなっていくの。一人は自分の胸を貫いて夢とは違う死の世界に行ってしまったわ。もう一人は私を置いて、夢の出口を探す為に旅立ったの。最後の一人は気が狂って、私達姉妹を石に変えてしまったわ。マルファー、貴方も私を拒否するの?」


 私はどうすればいいのだろう。

 ここで抱きしめるのは簡単だが、しかし本当に私は納得できるのだろうか?

 このまま死ぬまで疑わずに暮らせるのだろうか。


「私は……」


 言葉の先が出てこない。


「私は……」


 二度繰り返しても何も出ない。


「私は貴方を信じたい」


 一つだけ私の胸の中にあった言葉が発された。

 これは気持ちだけの言葉で、何も確定などしていない、ただそう思いたかっただけの言葉でしかない。

 シェルハユさんが私に抱き着き、私達は口づけを交わした。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 そして私は本当に目を覚ました。

 立ちながら目を覚ました私の前には、髪の毛が少し欠けただけの天使の像がそこにある。

 その天使の像は、涙を流しこちらを見つめている様に見えた。 


 今までの事は全て夢だったのか?

 だが話した事も抱き寄せた感覚も忘れてはいない。


 きっとシェルハユさんの言った事は全て本当で、この封印が解けたなら天使が来るのだろう。

 天界に連れ戻しに来るのかも知れない。

 だから ただ人恋しくなって、楽しい時間を過ごしたかっただけなのかもしれません。

 しかし私はそんな事を許しません。

 もう結婚までしたのですから、貴方は私のものなのですよ。


「大丈夫ですよシェルハユさん、私が今から助けて出してあげます」


「マルファー、早く行こうよ、夜になっちゃうよっ」


 子供達が教会の出口で手を振っている。

 あの時から時間も経ってはいないらしい。


 私はアンリ様にお願いして、像を王国まで運んでもらいました。

 もちろん、その髪には気を使って。

 国に帰ると、メギド様の元へと走り、私は全てを打ち明けて頼み込んだ。


「お願いします!」


「しかしなぁ、天使なんて相手に出来るのか?」


「お願いします!」


「王国に危険が及ぶかもしれないんだろ?」


「お願いします!」


「はぁ、分かった、その代わり王国には被害が出ないようにしろよ」


「はい、もちろんです!」


 シェルハユさんは研究所に運び、解呪まで七日時間があるらしい。

 その前に夢で見た新居を建てなければ。


 私は知り合いだけでは無く、部下や話した事も無い人達にまで頼み込み、なんとかその新居を完成させる。

 その新居は夢よりも時間が掛かり、丁度彼女が目覚める七日もかかってしまった。

 さあもうすぐ時間だ。


 その前に買う物がある。

 店に行きそれを買うと、私は研究所に走った。

 夢と同じで、研究所の中は人で溢れかえっている。


「おっ天使が出て来たぞ」


 誰かの声が聞こえた。

 急がなければ!

 人を掻き分けて天使の前に到着すると、私は迷わずにその天使と口付けをした。


「お早うマルファー」


 その声も姿も夢で見たものと同じである。


「ええ、お早うございますシェルハユさん」


 私は小さな箱を出し、中から指輪を取り出すと、その場で跪き叫んだ。


「シェルハユ、私と結婚してください」


「……はい、喜んで、一緒に幸せになりましょうね」


「うおおおおおおおおおおお!」


「天使にプロポーズしたぞおい!」


「そんな奴より俺と結婚してください!」


 何だか色々な声が聞こえるが、別に気にする事は無い。

 もう言いたい事は言って、やりたい事はやったのだ。


 返事も貰ったなら、この場に用はない。

 シェルハユの手を引き、私はこの場を後にした。


「あのまま放って置いても良かったのよ、貴方に酷い事をしたのだから」


「結婚した相手を放って置く事は出来ません。助けられる方法があるなら私は助けますよ。もう私は貴方を手放しません」


 彼女は顔を真っ赤にしながら私について来る。

 もしこれが夢だとしても、もう私は構いません。

 このまま彼女と二人で幸せに暮らして行くのです。

 天使なんかには邪魔はさせませんよ!


マルファー(王国、近衛兵長)  シェルハユ(石になっていた天使)

メギド(王国、国王)


元ネタ→人間と結婚して天から堕とされた天使


次回→続き

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ