3 夢の天使が踊る王国
夢から目覚めたマルファー、王国に戻り夢に天使が現れると噂が流れた…………
「初めましてマルファー。私はシェルハユ、貴方のおかげで石から抜け出せたわ。一応助けてくれたお礼をしようと思ってね。じゃあもう行くからありがとうね」
そこで私は自宅のベッドで目を覚ました。
妙な夢だ。
夢に出て来たのは、教会で会ったあのシスターだった。
私は夢に見るほどあのシスターの事を気に入ってたのか?
少し考えていると、ドンドンドンっと強く扉が叩かれた。
「おい、マルファー起きてるか? メギド様がお呼びだぞ、準備したら王城に来いよ。じゃあ俺は別の所行くからな、じゃあまたな」
呼びに来たのはべノムか。
しかし起きた事を確認もしないとか、伝令になってないじゃないか。
私が寝てたらどうするんだよ。
仕方ない、聞いたからには急がなければ。
俺は急いで準備して王城へ向かい、そして王城のメギド様の仕事部屋。
中にはメギド様と、その見張りでタイタンが居る。
万が一にもメギド様が逃げ出さないようにと、心配しているのだろう。
何度か要らない実績ももっていますし。
「マルファー、お前何かしたんじゃないだろうな?」
「分かりません、私は天使の像に触れただけなので」
メギド様に呼び出されるが、像に触れた以外の事は大してしていない筈だ。
王城の皆も噂の天使を見たのだろうか。
一応前の事件の事は報告をしてある。
教会に居た女のシスターを探したのだが、その教会の神父が言うには、その日は教会が閉じられていたと言っていた。
昔からの言い伝えで、その日だけは完全に教会から人が居なくなるようだ。
そしてそのシスターは、あの教会には勤めていないらしい。
あの本の文字を見つけてから、色々とおかしなことが続いている。
どうもまだ何か有りそうな気がしてならない。
「ふむ……よし、じゃあその像の元に行ってみるか。手がかりが何か見つかるかもしれないし。じゃあ行こうぜ」
「メギド様、肩を組んでも連れて行きませんよ。仕事が残っているでしょう」
「そうだな、お仕事が残っていますよメギド様ッ、今直ぐ机に座ってください!」
タイタンに肩を掴まれ、メギド様が止められている。
「よしタイタン、お前も来い。天使なんて気になるじゃないか」
「メギド様、仕事が残っているから、そこに座れ!」
このやり取りを見ていると、何方が王様か分からなくなりそうだ。
「私一人でも十分ですが、少し気になる事があって……実は天使の像ですが、もしかしたら天使が石に変えられているのではないかと」
「わ、分かった、じゃあその天使の像、俺も見てみたいからこの国に運んでくれ。部下も貸してやる。このタイタンも連れて行っていいぞ?」
「はぁ?!」
「……いや、冗談だ」
「では行って参ります。メギド様もお仕事頑張ってください……」
私は部屋を退出し、何人かの部下と共に、あの場所へと向かって行った。
あれほどの像を、人の手で作る事が出来るのかという疑問があった。
前にイモータル様に聞いた話と、石の天使がどうも同じ物に感じる。
あの天使は私に助けろと言っているのだろうか?
そんな感じでは無かった気がするが。
助ける方法は有るにはあるのだ。
キメラ研究所では、石化の薬の解析も進んでいると聞く。
像を持ってくる事が出来れば、その解呪も可能だろう。
本当にその像が石化していたらの話だが。
あの朽ちた教会に到着した私は、近衛兵の部下達と、慎重に像を王国まで運んだ。
移動中に細い髪が砕けて、どんどん悲惨な事になっているが、仕方が無いだろう。
髪の様な細さでは、移動の衝撃に耐えられないのだ。
一応天使なのだし、このぐらいきっと許してくれるだろう。
像は王国の石化の薬を研究している、キメラ研究所に運ばれた。
「これですか。もし本当に石化されていたのなら、一週間程で解呪出来るでしょう。なので一週間後に来てくださいね。しかしこんな天使は初めて見ます。五分刈りの天使、所々禿げていますね。一体どんな天使なのでしょうか?」
「そうですね……良くわかりませんね、あははは……ああそれと天使には触れてはいけませんよ、夢の世界に引きずり込まれますから」
私は研究員から話を聞くと、逃げる様に研究所から自宅に帰った。
その夜、また私の夢に天使が現れてしまう。
それは前に来た天使と同じだが、今日は少しばかり違った雰囲気を醸し出している。
「貴方私の体をどうするつもりよ! 髪ばっかり壊して、おかげで私の頭が禿げたじゃないの! どうしてくれるのよ!」
その天使は緑色の髪をしていたが、像と同じく五分刈りで所々禿げている。
少し笑いそうになったが、私がやったのだから流石に笑うのは駄目だろう。
「すみません、像を運ぶのに手間取りまして。しかし貴方も夢の中だとはいえ、王国を騒がせるのは困るのです。貴方の体を解呪するので自分の体に帰ってください」
「私自分の体に帰れるの? 本当に? 嘘じゃないでしょうね? 嘘だったら酷い目にあわせてやるんだから!」
酷い目には遭いたくない。
だがシェルハユさんには、解呪まで一周間待ってもらわなければ。
「まあ大丈夫でしょう。一週間かかると言われましたので、その間は何処かで大人しくしていてくださいね」
「私は誰かの心に入っていないと存在出来ないの。昼の内は眠っているから良いけど、夜は動いていないと一人の夢に囚われてしまうのよ」
動かないと駄目なのか。
だったらこちらで指定した人達を回ってもらいましょうか。
夢に出て来ても健康には影響無いはずですから、まあ問題無いでしょう。
「これから指定した人の夢の中を移動してもらえませんか? 余り町の人に迷惑を掛けたくないので」
「仕方ありませんね、ではその人達は誰ですか?」
知り合いの男共でいいかなぁ?
「え~と、私とグラビトンと、べノムとバールとランツ、後ハンセンとかかな? 場所は……」
私はその男達が住んで居る場所を天使に教えた。
たぶん無駄に動き回るよりはいいだろう。
「はぁ、分かりました。じゃあその人達の夢を回りましょう」
「じゃあお願いしますね」
「ええ、ではさようなら」
さて、やっと寝れる。
いや寝てるのだけど。
このまま目を閉じてみればいいのだろうか?
眠れない……いや寝てるのだけど。
しかしこのまま意識がハッキリしたままでは、全く寝た気がしない。
よく分からない時間を過ごし、ハッと目を覚ました時には朝が来ていた。
何時も通りの仕事をこなし、何時も通りに眠ったその夜。
またも夢の中に有の天使が現れた。
「ちょっと貴方どういう事! 言われた人達を周ったら、漏れなく私に襲い掛かって来たじゃない!
バールって人なんて私を組み伏せて無理やりキスしようとしたのよ! 絶対に許せないわ!」
バール、夢の中で何してるんだろうか?
まあ夢だから良いんだけど。
この天使にとっては、夢が現実の様な物なんだろう。
「シェルハユさん、明日ちゃんと説明しておくので、今日は我慢してください」
「じゃあ今日は町の人達の所を周って来るわ。その人達の所に行くのは明日からでいいでしょ」
「仕方ないですね、今日だけですよ。それから私は眠りたいので、そろそろ普通に寝させてくれませんか?」
「分かったわ、じゃあおやすみなさい……」
気付くと朝が来ていた。
やはり全く寝た気がしないのだけど、体の方はスッキリしていて問題はない。
とりあえず昼間のうちに周ってもらう男達には知らせておいた。
任せてくれだのと言っていたし、きっと大丈夫だろう。
俺は今日の仕事を終わらせて家路についた。
その夜、また夢にあの天使が現れた。
そろそろ解放してほしいのだけど。
「ちょっと貴方! 言ってくれたんじゃなかったのッ! 本物の天使だったんだとか言ってバールって人がお尻を触って来たのよ! もう呪いでもかけようかしら! 他の人も色々と私にいたずらを……」
どうせ夢なのだからとやりたい放題しているのだろう。
男達は駄目かもしれない。
女の人ならいいのだろうか?
「じゃあ今度は女の人を教えますので、そこを周ってください。う~ん、ロッテさんとレアスと、エルさんにフレーレさん、それからグレモリアさん、最後にアルタイルさんでお願いします。場所は……」
私は女性陣の居る場所を教えた。
「本当に大丈夫でしょうね? じゃあまた来るわね」
「出来れば来ないでください」
そして私は眠りについた。
……そして次の日の夜。
「ちょっと起きなさいよ! なんなのあれは? 使いっ走りにされたり、説教されたり、鞭で叩かれそうになったり、練習台にされたり、愛人にされそうになったり、昨日より酷いじゃないの!」
また天使に夢の中で叩き起こされた。
「アルタイルさんは大丈夫だったんじゃないですか?」
「あの人もダメよ。天使の事から歴史の事、魔法の事まで根掘り葉掘り聞いてくるのよ。気が休まらないわ」
夢の中を間借りしてるんだ、そのぐらい教えてあげれば良いのに。
「じゃあまた別の人達に聞いてみますので、今日は今までの人達の所で我慢してください」
「本当に大丈夫なんでしょうね! 次も駄目だったなら許さないからね!」
シェルハユさんは夢の中に消えて行った。
さて如何しよう。
もし次も駄目なら子供達ならどうだろう?
一度メギド様に頼んでみましょうか。
マルファー(王国、近衛兵長) シェルハユ(石になっていた天使)
次回→王道を行く者達予定






