13 キメラ殲滅戦2
繁殖したキメラを殲滅するためイモータルの班は出発する…………
「エルちゃん、フレーレちゃん、第三班は出発するわよ!」
イモータルが率いる三人の班は、王国から北西に向かって行く。
隊の人選はイモータル、ベリー・エル、フルール・フレーレの女性三人だ。
まず一人、ベリー・エルは、炎の翼と悪魔の様な腕、火炎の大剣を持つ美しい女性である。
そしてもう一人はフルール・フレーレという、左手右足に甲殻類の様な鎧を纏い、長き白髪の女性だった。
その三人が草原を歩き、何か話し合っていた。
「ねぇねぇ、エルちゃんって、誰か好きな人居るの?」
「は? ……えっ……あの……キッ……キメラ……さ……探さないと!」
エルは唐突なイモータル質問に狼狽え、頭の中で獣の体を持つ人を想像したが、皆には内緒にしている。
「エルちゃんはー、タイタンさんの事が好きなんですよー」
だが何故かその相手を知っていたフレーレがそう返すと、エルは更に狼狽えている。
「えっ……ちがっ……でも……あの……いっ……行きましょう」
エルは恥ずかしがり屋では無く、口下手という印象だろう。
「フレーレちゃんはどうなの?」
「えー、私ですかー。ん~、私より強い人が良いですねー」
「グラビトンさんとか?」
「やだー、違いますよー。あの人硬いだけですしー」
とかグラビトンが酷い事を言われながら、三人は道中を進んで行く。
特に何も無く帝国までたどり着き、その帝都は今そこそこの復興を開始していた。
もうこの国は王制では無くなったようで、犯罪を取り締まる警察と呼ばれるものも出来ているらしい。
自分の体を見られると厄介なのでと、旅用のローブを被り、イモータルは一人調べものがあると廃墟の城に向かって行く。
城の中は未だに誰もおらず、まだ相当に荒れ果てている。
床には人の頭蓋の様な物まで落ちていた。
「あまり長居はしたくないわねぇ」
城を探索し、書庫を探し出すと、目ぼしい書物を集めてパラパラとめくっていく。
イモータルは軍関係や戦争関係の資料を探していたのだが、それは中々見つからなかった。
「これかしら?」
関係ありそうな本を五冊ほど机の上に積み上げ、イモータルはそれを袋に包んだ。
「キメラ退治の最中だし、あまり長居はできないわ。この五冊は帰りにでも持って帰りましょうか」
一時間ほどで探し終えて、二人の元に戻り、キメラ探しに戻る事にした。
「用事は……もう……大丈夫……ですか?」
「ええ、大丈夫よ。じゃあ二人共、キメラ退治を続けましょうか」
二人と合流したイモータルは、再びキメラ探しを始めるのだった。
如何にも何も見つからず、更に西に移動を開始しし、三人は平原を抜けて森の中に入って行く。
「中々キメラを見つけられないわね」
「う~ん。いないですねー」
「あれは……どう?」
エルが熊を指をさしたが、その動物は此方には目もくれず、ハチの巣を食い漁っていた。
「あれは……違うんじゃないかしら?」
「違いますねぇ。じゃあ~、あれなんてどうですかぁ?」
フレーレが指を向けた所にそれは存在した。
鼠のようなキメラが此方に気づき、大きく口を開いて威嚇している。
大きさは三十センチ程で、結構大きいものだろう。
「ご……ごめんなさい……わ……私……鼠……駄目」
「う、私も駄目だわ。フレーレちゃん、お願いしてもいいかしら?」
例え姿がどう変わろうと、苦手な物はあるのだろう。
その巨大な鼠を見て二人は震えていた。
「もー、しょうがないなー。じゃあやっちゃいますね!」
フレーレが何時の間にか鼠の目の前に出現し、躊躇無く鼠をぶん殴った。
殴った鼠がパーンと弾け、それを合図にしてか、森の中から無数の赤い目が光り出す。
その光った目をした大量の鼠が、三人の元に向かって来ていた。
震えるだけだった二人を無視し、仲間を殺したフレーレに襲い掛かる。
目を狙って来た鼠にはアッパーで撃墜し、腕に噛みつこうとした奴には手刀で切裂き、脚を狙ったものには踵で潰し、背後を狙う者には裏拳を叩きつた。
フレーレは、ありとあらゆる武を持って、襲い掛かる全ての鼠を殺し尽くす。
百匹を倒した頃には、辺りの鼠の姿が見えなくなっていた。
しかしフレーレは警戒を解かず、辺りの様子を探っている。
「まだ一匹いる……」
辺りから動物や鳥の声が響き渡る。
森の何処かからか、フレーレを見ている気配が一つあった。
フレーレは森の各所に気を巡らせ、敵であるものの動きを感じていたのだ。
木の上からガサッと音がして、思わず其方を見上げるが、鳥が飛び立っただけの様だ。
だがフレーレが上を見上げたその瞬間を狙い、今までよりも大きな鼠が現れる。
一気に勝負を決めようと、フレーレの首筋を噛みつこうとしていた。
「フレーレちゃん!」
「大丈夫ですよー!」
フレーレは硬い自分の左腕を自分の首の後ろに回し、それに鼠を噛みつかせていた。
鼠は腕から口を放そうとするが、フレーレは素早く右手で鼠を掴み上げ、左腕を無理やり口から引き抜いた。
そんな堅い腕を引き抜いた為に、鼠の口の中はズタズタにされて、のた打ち回っている。
最後は左手を手刀にし、その鼠を両断した。
フレーレは全身が赤く染まり、べた付く体を嫌そうに見つている。
「うえー、ベタベタだわ」
「フレーレちゃんカッコいい!」
「か……かっこ……いい……」
二人は憧れの眼差しを向けるが、フレーレの近くには寄って行かない。
鼠の血を浴びたフレーレを拒否している様だ。
「でも、近づかないでねッ」
「ねッ……」
「えーー!」
フレーレは二人が嫌がったので、体を洗う水場を探す事になる。
イモータルとエルは空を飛び、水場が無いか辺りを探していた。
「あそこに川があるわね。じゃあ皆に知らせないと」
イモータルの知らせで川に移動する三人。
「私、体洗ってきまーす!」
真っ先にフレーレが川に飛び込み、汚れた体を洗っていた。
そこそこ水も綺麗で深さは胸ぐらいある。
中央部に行けばもっと深いかもしれない。
「あ、私も行って来るね」
「わ………私は……待っています……ね」
汗を搔いた体が嫌だったのか、イモータルも川に飛び込んでいる。
エルはただ一人残り、安全の為に周りを見張る事にした。
川の流れも緩やかで、二人ともゆったりと浮かんだり、バシャバシャと遊んでいる。
「エルちゃんもこっちで遊ぼうよ~」
「私は……見張って……ます……ので」
ベリー・エルは気を抜かない、自身の能力で剣を出現させ、それを地面に突き立てている。
鼠が襲って来た時に、自分が何もしなかったのを少し気にしていた。
「つぎ……も……私……やります……ので」
次敵が出ても私が倒してやりますので、と言いたかったのだが、うまく喋れなかった。
二人も通じたか分からない言葉を聞き、分かったわ~、と返事をしている。
「あッ……」
二人は楽しそうな川遊びを続けていたのだが、フレーレが足を滑らせ、川の中に沈んで行く。
「フレーレちゃん? 大丈ッ……」
二人目のイモータルも、水中に消えて行った。
「!……敵ッ……?」
五秒ほど待ったが、二人が浮かんでくる気配はない。
どうもただの事故でない事が分かり、エルは剣を持って水中に飛び込んだ。
炎を扱うエルには水中の敵は天敵なのだが、今はそうも言ってられない状況である。
川の中で、手に持つ炎の剣が揺らめいている。
形を維持する事が出来ず、細いレイピア程度にするのが精一杯らしい。
「敵……何処ッ?!」
水中を探すが、何処にも二人の姿も見当たらない。
流されたのか? そう思い空から急いで川を下って行く。
川に落ちて一分、そろそろ二人の命が危なくなる。
「……!……居た!」
一瞬どちらかの手が水中から見えた。
あそこだとエルは急ぎ、それを追って行く。
「……そこか!」
エルは炎の剣の先を川に向け、全力で水中に突っ込んだ。
水の中を探すと、透明で体が透けたクラゲの様なキメラが、二人を掴んで離さないでいる。
二人はぐったりしていて、もう時間が無いかもしれない。
だがエルは水中から空に上がり、空中で制止した。
「消える前に……敵をッ……焼き切る!」
全ての魔力を剣に集中すると、剣の炎が膨大に膨れ上がった。
「うおおおおおおおおおッ!」
そして敵がいた位置に、全速力で突っ込んだ。
膨大な熱をもつ巨大な炎と、大量の水がぶつかり合い、大きな爆発が起こる。
圧倒的な蒸気が膨れ上がり、水中でもその衝撃は伝わったらしい。
クラゲはその爆発の衝撃に耐えきれず、二人の体から手を放している。
それを見てエルは二人を掴み、水中から脱出した。
エルは水辺に上がると、二人の胸を何度か叩き、肺の中に入った水を吐き出させた。
そのまま水辺から少し遠くに二人を置いて、戦いに巻き込まれない様にしている。
そしてもう一度クラゲが居た場所に戻り、水中を見回した。
「……居ない……逃げた?」
少し水中を回ったが、先ほどのクラゲの姿は無く、仕方なく二人の元に戻る事にした。
だが……。
「……二人は?」
二人の姿が見えない、目を覚まして此処を離れたのだろうか?
よく見ると、地面には濡れた跡が続いている。
エルはそれを頼りに、二人を探しに行ったのだった。
水の跡を追い、森の中に入るが、水の跡が途中で途切れてしまっている。
「……何処?」
周りを見るが見当たらず、私を置いて行ってしまった?
そう思った時。
ボタッ
木の上から何か落ちた。
透明でヌルヌルしていそうな物で、エルがそれを見つめた。
「……ッ!」
上を確認する前に、その場は危険と横に跳ねると、ドゴォーンと逃げた場所から爆音が響く。
あの水中にいたキメラが、木の上から降って来たのだ。
何本ものその触手で二人を掴み、エルの様子を窺っている。
二人はまだ目覚めていない。
今度水中に逃げられたら、二人は助からないだろう。
だがベリー・エルは慌てない。
ただ真っ直ぐに一歩一歩と敵に歩み、剣を構える。
水中でどれ程強かろうと、この場は水の中ではない。
地上に上がったクラゲは、彼女の敵には成りえなかった。
イモータル(王国、女王) ベリー・エル(王国、兵士)
フルール・フレーレ(王国、兵士)
次回→王道を行く者達4予定
イモータルなんにもしてない






