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5話 吸血少女と主従契約

投稿の度に言っている気がしますが……

遅くなって本当に申し訳ありません


仕事が悪いよ、仕事が……(虫の息

 5話 吸血少女と主従契約



 チリン♪チリン♪


 お二人に契約の了承を貰った後、数分の歓談を済ませてから私はベルを鳴らしました。

 すると、五秒と・・・掛からず・・・・に部屋にノック音が響いて、デジラさんとメイドさんが入室してきます。


 ……幾ら何でも早過ぎませんかね?

 私も早めにお話を済ませようとはしましたが、十分近くはお話ししていましたよ?まさか、ずっと部屋の前で待っていたとでも言うのでしょうか?盗み聞きも出来ないというのに……?

 ……商会長というのは暇な役職なのですかね?

 すみません、冗談です。


 そんな心の中で呟いた私の詰まらないボケが聞こえている筈も無く、デジラさんは優雅に一礼しました。



「お待たせいたしました。お話はもうよろしかったでしょうか?」


「はい、ありがとうございます。お蔭様で良いお話が出来ましたよ」


「それは良うございました。……様子を見るに、こちらの二人もトレーネ様の事を快く思っているようですね。いやはや、トレーネ様の人望の深さたるに感服致します」


「……買い被り過ぎですよ。数分間、お話をしただけですし……」


「ご謙遜を……長くこの商売をさせていただいておりますが、これほど柔らかな表情をした奴隷を見た事はございません。偏に、トレーネ様の成せる事かと存じます」


「そう言われましてもね……」



 そうして私が苦笑いを浮かべて返答に困っていると、デジラさんはシエラさんオトハさん、メイドさんの三人を後ろに控えさせました。

 そして、一礼をしてから私の対面に腰掛けます。



「失礼致しました。心良い光景がまみえたものでして、つい興奮してしまいました」


「い、いえ……大丈夫ですよ。それよりも、契約についてのお話をしましょう」


「ありがとうございます。それでは早速でございますが、二人の契約購入金のお話からさせていただきます」


「はい」



 入室一番にお世辞から始まりましたし、全く『早速』ではないような気がしますが……商人にとって、お世辞は呼吸に等しいという事でしょうかね?

 まぁ、そこに突っ込んでお話を掘り返すと面倒ですし、放置しておきましょうか。



「先ずは通常奴隷であるオトハからお話しさせていただきます」


「お願いします」


「彼女は戦闘行為こそ可能でございますが、即戦力としての価値は低く、その将来性を重視した者でございます。よって、戦闘奴隷としてだけで考えますと、相場価値は低めの見積もりとなります」


「ええ」


「ですが、彼女は容姿が抜けて良い為に付加価値が多く付いており、平均的な能力を持つ戦闘奴隷の相場以上の高額奴隷となっております。また、彼女が長年この奴隷商にて生活をしていた事も、金額が大きくなる一端にあります」


「なるほど……では、オトハさんの契約購入金額は幾らになるのでしょうか?」


「はい。こちら、オトハの契約購入金額は2700万アリスでございます」


「そうですか……」



 私はデジラさんの説明に頷いて答えます。


 契約購入する商会にもよりますが、この世界の戦闘行為の出来ない女性奴隷の契約購入金額の平均が200〜400万アリスであり、戦闘可能な方は最低でも800〜1500万アリスまで跳ね上がる事を考えますと、私の提示した条件としては妥当なラインと言えるでしょう。

 まぁ、家事手伝いのような奴隷の方たちと比べますと遥かに高額ですし、普通であれば簡単に契約は出来そうに無い金額なのですがね……。


 ……これも沢山のお小遣いを下さったゼウス様のお陰ですね。



「シエラさんは如何なのでしょうか?」


「はい。続きましてシエラですが、彼女は特例奴隷措置を施されておりますので、金額面に於いても、契約面に於いても、かなり特殊な奴隷でございます」


「……そういえば、そう仰っていましたね」



 シエラさんの紹介の時に仰っていた気がしますが、とある凶器むねに意識を奪われていてあまり聞いていませんでしたよ……。


 そんな私の考えが透けていたのか、デジラさんは頷いて説明をしてくれます。



「シエラは戦闘要員では即戦力として数えられるほどに優秀であり、容姿も素晴らしく端麗にございます。その為、彼女の契約購入金は3600万アリスと、オトハ以上に高額となっております。ですが、シエラは特例奴隷措置を施されておりますので、買い戻しによる身分解放ではなく、八年間の固定年数契約となっているのです。また、彼女の場合は奴隷措置から八年間であれば、契約対象者の自由選択権を得ております。彼女の要望は契約対象者は女性である事と、冒険者かそれに準じる方でございました。トレーネ様はシエラの契約者対象に当て嵌り、トレーネ様のご要望にシエラも該当致しましたので、このようにお目通しさせていただきました次第です」


「なるほど……」


「そして重ね重ねになりますが、シエラはその冒険者ランクの昇格速度の早さから、現時点でもかなり優秀な能力を持っております。その上、種族はハーフエルフですので、魔法関連の成長にも大きな期待が見込める事でしょう。一年当たりの契約金で計算しますと、非常にお勧めにございます」


「…………」



 デジラさんのお勧めはシエラさんですか……。

 まぁ、契約購入金額もシエラさんの方が大きいですからね。

 それに、シエラさんは特例措置を受けているそうですから、奴隷になった理由の借金?などは全て国が負担している筈です。

 そうしますと、デジラさんとしてはシエラさんの契約金がそのまま利益になるのですから、そうお勧めするのも当然でしょうね。


 ちなみに、デジラさんがシエラさんの契約購入金を懐に納める事が許されているのは、特殊な契約で面倒事が非常に多い措置だからです。

 措置を受けた方によって契約内容が違うので調整が必要ですし、そもそもその契約対象に見合う人物が見つかるかどうか自体が怪しい時もあるそうなのです。

 その為、見返りの様に利益が大きくなっている訳です。

 要は『金をやるから面倒を引き受けろ』という事ですね。



 …………まぁ、デジラさんのお勧めも何も、私にはあまり関係無いのですがね。

 私はお二人共と契約すると既に決めていますし、お二人にも契約をお約束して下さいました。お金にも余裕があるので、言い値で支払いを済ませてしまっても全く問題無い訳です。

 訳ですが……少しやってみたい事があるのですよねぇ……。


 私は勿体ぶった様に間を置いてから、デジラさんへにっこりとした笑みを向けてハッキリと口を開きました。



「————金貨6枚で如何でしょうか?」


「……?申し訳ありません、金貨6枚とはどういう事でございましょうか?」


「お二人の契約購入金の事です。どちらかお一人と言わずにお二人共と契約しますので、金貨6枚——6000万アリスにまかりませんかね?」


「なるほど、そういうお話にございましたか……」



 そうです。

 私のやってみたかった事……それは『値切り』です。

 何せ、日本では大阪のおばちゃん達という、最強生物にしか許されていない言葉の暴力でしたからね。

 憧れのようなものが少しありましたが、前世の私には出来る筈もありません。

 この世界では値切り行為は極普通に行われる事だそうなので、一度やってみたかった訳です。


 ちなみに、私がゼウス様から頂いたお金は『鉄貨から黒金貨までの全ての貨幣を九つずつ』ですので、99999999990アリス・・・という事になります。

 その為、お二人共と契約を結ぼうともお金の心配など必要無く、値切りなど必要無いのですが……まぁ、やってみたかったのですから仕方がありません。


 と言いますか、ゼウス様はこれだけあれば生活に困る事は無いだろうと仰っていましたが、この国家予算並みのお金をお小遣い・・・・と称する感性は意味が分かりませんよね……。

 この世界での一般的な月額収入が20万〜30万アリスと言えば、私の言いたい事が伝わり易いと思います。

 私は一体どんな浪費家だと思われているのでしょうか?



 私の突然な値切りに戸惑っているのか、デジラさんは何やら思案顔で悩まれている様です。

 まぁ、金額にして300万アリスもの割引をしろと言われているのですし、葛藤があって当然と言えるでしょう。


 そうして待つ事、4〜5秒……デジラさんは悩ませていた頭を大きく頷かせて、笑みを浮かべました。



「かしこまりました。それでは二人を同時契約にて、6000万アリスとさせていただきましょう」


「えっと……え……?私が言っておいて何ですが、本当に良かったのですか?300万アリスの減額ですよ?」


「はい、何も問題はございません。元より、同時に契約される際にはそれくらいのサービスをさせていただくつもりでございましたので……」


「そうなのですか……?随分と悩まれているように見えましたが……」


「ええ、正直に申し上げますと、私としましてはもっと大きな値切りをされるものだと思っておりましたので……失礼ながら逆に驚いてしまいました」


「そう……ですか……」



 まさか、300万アリスの値切りでも安いと思われていたとは考えられませんでしたね。

 もう少し大きな金額で値切った方が良かったのですかね……?


 ……まぁ、少し釈然としない気持ちは有りますが、それでも値切りは出来ましたし、概ね満足としておきましょう。

 それよりも、契約内容についてお話ししたいですしね。


 そんな私の考えが伝わったのか、デジラさんは笑みを浮かべたまま【アイテムボックス】か『リングボックス』からかは分かりませんが、A4サイズ程の用紙を異空間から四枚取り出して、テーブルの上に出しました。



「それでは契約内容の取り決めへと移らせていただきます」


「お願いします」


「こちらの用紙は【コントラクト】の魔法が付与されております契約用紙でございます。これら用紙に契約内容を記入して、トレーネ様と私の両者にて保管をしておく事で、第三者を交えた正式な奴隷雇用契約である証明となります」


「なるほど」


「では早速、契約内容を控えさせていただきますので、口頭で仰っていただいてもよろしいでしょうか?」


「分かりました。私がお二人に求める事は二つありまして——」



 ——と、私は先程お二人にお話ししたパーティーメンバーの件と、血液の定期的な提供の件の二つをデジラさんにも同じように説明していきます。

 その途中で、デジラさんが私の種族に驚いたり、契約内容が軽過ぎないか?と確認されたり、オトハさんへの月々の買い戻し金の支払い額の決定(私の申し出でシエラさんと同じ八年の固定契約になりました)だったりと色々ありましたが、十分程で全て話し終わりました。


 そして私のお話終わったのとほぼ同時に、デジラさんも契約用紙の記入が終わったようで、四枚のうち二枚を私の前へ、もう二枚をシエラさんとオトハさんのお二人へそれぞれ差し出します。


 ……と言いますか、お話に相槌を打ちながら、気になる部分は質問し、更に契約書を四枚も記入している筈なのに、お話が終わるのと同時に書き終わるとはどんな速度で書いているのですかね?

 正面から見ていましたが、手の動きが速過ぎて意味が分かりませんでしたよ……。



「こちらが今回の奴隷雇用契約に於ける契約内容でございます。トレーネ様、二人も、間違いが無いかご確認下さい」


「……はい、これで問題ありません」

「私も大丈夫でございます」

「わ、私も大丈夫ですっ」


「かしこまりました。それでは契約審判者デジラの名の下に、奴隷雇用契約内容の制定を宣言いたします」



 デジラさんがそう言うと、契約書に書かれた文字が薄らと光りました。

 種族スキルの【闇夜に映る眼トゥルーアイズ】でその光を確認するに、付与された魔法によって契約内容の保持が出来ているようです。



「はい、これにて奴隷雇用契約書の作成は完了いたしました。続きまして本契約へと移らせていただきますが……こちらはトレーネ様自らの手で契約されるか、私が代行するかお選びいただけます。如何いたしましょうか……?」


「あ、それは私がやります」


「かしこまりました」



 デジラさんが仰った本契約をザックリと説明するならば、契約書に記入された内容の契約を魔法によって、円形図形が組み合わさった形の『奴隷紋』と呼ばれる紋様にして奴隷の方に刻む事です。

 ただ、刻むとは言いましたが、刺青のように彫りを行う訳では無くて、魔法による契約を行う事で紋様が浮かび上がってくるだけですので、痛みなどはありません。

 この紋様が契約範囲内の命令を強制させる訳ですね。


 ちなみに、この本契約は基本的には・・・・・契約用紙にも使われていた【闇系魔法】のスキルレベル4で覚えられる【コントラクト】という魔法を使って結ばれます。


 この魔法は自分自身で使う事も出来ますし、デジラさんが仰ったように誰かに代行――魔法を行使してもらう事も出来る少し変わった魔法なので、デジラさんに行使して貰っても何も問題は無いのですが……そうです。

 私の【闇系魔法】のスキルレベルは10。この【コントラクト】の魔法は私でも使う事が出来る訳です。

 それならば、態々お願いする事でもありませんよね。


 ですが……実は、私はこの【コントラクト】の魔法を使うつもりは無かったりします。

 ではどうやって本契約を結ぶのか?というお話になるのですが……それはまぁ、実際にやってみましょうか。



「それではトレーネ様自ら本契約を為される場合は、契約審判者による監督が必要になりますので、ご了承をお願いいたします。当然、トレーネ様の事を他言する事はありませんのでご安心下さい」


「分かりました」


「はい。そう致しますと、奴隷紋の位置は如何いたしましょう?」


「そうですねぇ、普段は隠れて目立たない場所と言いますと……背中でしょうかね」



 私は首を捻って、ふと思いついた場所をそのまま口にしました。


 確かゼウス様のお話では、冒険者や貴族の偉い人の中には自分の力を誇示する為に、目立つ位置に刻む方もいるそうですね。

 まぁ、奴隷の方を雇用するとなると相応の資金が必要になりますし、ある意味では威張るステータスとして有用である事も確かですから、理由が分からない訳ではありませんが……気持ちの良いものではありませんよね。

 お二人も目立つ位置に奴隷紋があっては見せびらかされているようで嫌でしょうし、無難に背中が良さそうです。



「かしこまりました」



 デジラさんはそう言って頷くと、一度だけお二人へと視線を向けます。

 すると、お二人とも何も言われずにも分かっているのか、着ている貫頭衣を脱ぎ始めました。


 まぁ、背中に刻印するというのに服があっては確かに邪魔になりますから、理由は分かるのですが……余りにも躊躇いが無さ過ぎて少し驚きましたよ。

 と言いますか、今の揺れ具合はおかしいですよね?明らかにプルンっ!という効果音が出ていそうな揺れ具合でしたからね。

 プリンか何かで出来ているのでしょうか……。


 そんな私のボケが聞こえている筈もなく、お二人は着ていた服で胸元を隠しながら私のすぐ側まで近寄って、背中を見せるように立ちます。



「ではトレーネ様、お願いいたします」


「お願いいたします」

「お、お願いしますっ」


「はい、分かりました。契約には私のと、お二人のが必要なので……失礼しますね」


「えっ?血……ですか?はぁ……?分かりました…………」

「……???わ、分かりました?」



 私はソファから立ち上がって、【アイテムボックス】の中からナイフを取り出しました。

 そして、お二人に一言断ってから、その切先でお二人の指の腹をツンと軽く突つき、一滴から二滴分程の血をナイフに付着させます。


 その瞬間、強烈な魅惑を持った匂いが私の鼻腔をくすぐりました。


 ——っ!これがヴァンパイアの嗅覚という事なのでしょうか?

 この極少量の血液であっても抗い難い魅力的な匂いを感じます。余りにも美味しそうな匂いに、思わず生唾を飲み込んでしまいましたよ。

 これがお二人の血液だからのかは分かりませんが、私の嗅覚はかなり敏感に血液の匂いに反応するようです。


 私はナイフに付着した血液を舐めたい衝動を努めて抑え、自身の親指を八重歯に軽く押し当てて、私の指からも小さく出血させます。



「……では始めますね」



 お二人が頷いて気持ちの準備が出来た事を確認してから、私は種族スキル・・・・・である【血盟・・】を発動させました。



「……!」

「……!?」



 すると、私とお二人の血液がそれぞれ混じり合い、お二人の背中……と言いますか、右腰の辺りに小さく紋様を形取っていきます。

 そして一瞬だけ紅く光り、ハッキリとした紋様が真紅に彩られて浮かびました。


 時間にして数秒ほどのあっさりとした出来事でしたが、契約は無事に完了したようです。



「……終わりましたね」



 私はお二人の右腰に刻印された紋様を見て、満足気に頷きます。


 そうです。

 私が【闇系魔法】の【コントラクト】を使わずに本契約をする方法とは、種族スキルである【血盟】を利用するというものだったのです。


 【血盟】のスキルはまぁ名前の通りの効果でして、契約者同士の血液を用いて盟約……要するに契約などを結ぶというシンプルなものです。

 ですが、その効果は【コントラクト】の魔法よりも絶大でして、同じスキルレベル4で覚えられる【ブレイク】という解除魔法では解約する事は出来ません。


 盟約を契約途中で解除するには、一つの例外を除いて盟主と呼ばれる契約主が許可を出すか、その盟主が死ぬかのどちらかしかないのです。

 血液が必要で複雑な上に、ヴァンパイアの種族スキルという限定的な契約方法だとしても、とても強力なスキルですよね。


 ちなみに、その唯一の例外とは【闇系魔法】のスキルレベル10で覚えられる【原罪の儀礼槌ロスト・ガベル】の事でして、この魔法は『ありとあらゆる全ての約束事を無条件に破棄させる』という恐ろしく強力なものなのです。

 ……とは言え、今のこの世界に【闇系魔法】のスキルレベルが10に到達している方なんて居ないでしょうし、考えるだけ無駄な気もしますけどね。

 何せ、神話の中で語られているだけでしか、存在を確認されていない魔法ですし…………私は除いて、ですよ?



 ともあれ、種族スキルである【血盟】でも奴隷雇用契約を結ぶ事が出来るのは分かったことでしょう。ですが、問題は何故【コントラクト】の魔法ではなく【血盟】を使って契約したのか?という事ですよね。

 言ってしまえば、より強固な契約が出来るだけで、基本的には【コントラクト】を使用しても変わりは無いのですから、何か理由でもなければ態々【血盟】を使用する必要も無い訳です。

 そしてその理由ですが、それは私のもう一つの種族スキルである【愛子の抱擁ナイトメアキス】にあります。


 この種族スキルは、私が【血盟】スキルで盟約を結んだ相手のステータスを、スキルレベルに応じて上昇させる事が出来るというものです。

 私のスキルレベルは10ですので『身体能力と魔力適正を2段階上昇』させ『スキルレベルの合計が100になるまで私の持つスキルを共有』出来る訳ですね。


 私を含め、お二人も冒険者として活動するのであれば、戦力の強化という面でも、大怪我などの予防の為にも、出来るだけの強化はしておこうという事です。

 ……正直なお話、私の持つ種族スキルの中で一番効力の強いものだと思います。


 ただし一つだけ注意点がありまして、【愛子の抱擁ナイトメアキス】で共有出来るスキルのスキルレベルの最大値は9が限界でして、10には出来ません。

 これはゼウス様曰く、天界因果のくさびと呼ばれるものが関係しているそうです。

 ザックリと説明しますと『スキルレベル9と10には大きな壁があり、その壁は自身の力で乗り越えなければならない』という事らしいです。


 ……それならば私のスキルレベルが全て10である事もおかしな事の筈ですが、ゼウス様からは『全て因果の通り廻っておる』としか説明していただけなかったのですよね。

 いつか理由が分かると良いのですがね……気になりますし。

 ——と、お話脱線してしまいました。



 とにかく、そういった理由で私は【血盟】スキルを用いてお二人と本契約を交わした訳なのですが、私以外の皆さんはその理由を知らないので不思議そうに首を傾げていました。

 まぁ【コントラクト】の魔法を使わずに契約する事自体が珍しいと言いますか、そうそうある事では無いので、そうなるのも当然でしょうね。


 ですがそんな中、デジラさんは一息早く気を取り直したのか、一度小さく咳払いをしました。

 そして、私に断りを入れてからお二人に対して【看破】のスキルを使用します。



「これは……確かに、本契約は完了しております。契約書の方も問題なく作用しておりますので、何も問題はございませんが——」


「……?何でしょう?」



 デジラさんから視線を向けられ、私は首を傾げました。



「……失礼いたしました。このように血液を使用した契約系統の魔法は存じ上げませんでしたもので……トレーネ様がよろしければ、後学のためにどのような魔法をお使いになられたのか、お教えいただけますでしょうか?」



 なるほど、そういう事でしたか……。

 変なタイミングで視線を向けられたので何事かと思いましたよ。



「いえ、別に秘密にするつもりは無いので良いですよ」


「左様でございますか!?ありがとうございます」


「とは言え、大した事ではありませんよ?魔法ではなく、種族スキルを使っただけですし……」


「……!なるほど、吸血種ヴァンパイアの種族スキルでございましたか。……それで血液を必要とされていた訳ですね」


「そうですね。スキル名は【血盟】と言いまして、基本的には【コントラクト】の魔法と違いはありませんが、効力が少し強力になっています。具体的には【ブレイク】の魔法では強制解除が出来ません」


「それは……!非常に強力なスキルでございますね……」


「まぁその分、契約がややこしく面倒になってしまいますし、ヴァンパイアにしか出来ない限定的なものですけどね」


「……いえ。寧ろ、吸血種ヴァンパイアの種族スキルである事で汎用性が無くなり、希少価値が高くなっている……とも言えますので、一概に悪い点にはならないかと思われます。しかし……そうですか……種族スキルですか……」



 数秒ほど、デジラさんは考えを反芻させるように言葉を呟いていましたが、直ぐに気を取り直してお話を元に戻します。

 そして、二枚の契約書をテーブルの上に差し出し、もう二枚を手元に控えさせました。



「こほん……失礼いたしました。お陰様で一つ勉強させていただきました、ありがとうございます。当然、この場で知り得た情報を他言する事は誠実神ルードべキア様に誓ってありませんので、ご安心下さい」


「はい、大丈夫ですよ」


「それでは、契約審判者の名に於いて、本契約の完了を認めます。……そちら二枚の契約書がトレーネ様の控えになりますので、保管ください」


「分かりました」


「では、これにて本奴隷雇用契約の全行程が終了いたしましたので、契約購入金である5000アリス・・・のお支払いをお願いいたします」


「……え?5000万アリスですか……?」



 私は思わず首を傾げて、デジラさんに聞き直してしまいました。


 ……あれ?今、デジラさんは5000万アリスと言いましたよね?聞き間違い……という事はありませんかね?

 私の値切り以上の割引がされているのですが……。


 そんな私の困惑を見て、デジラさんは笑みを浮かべながらその訳を話してくれます。



「新たなスキルをお教えいただきましたので、ほんのお気持ちですが勉強させて下さい」


「……本当に良いのですか?正直おまけが過ぎる気がするのですが……」


「勿論でございます。今後とも、デジラ商会をご贔屓ください」


「そう……ですか…………では、お言葉に甘えさせてもらいますね」



 私は釈然としない気持ちのまま、受け取った契約書を【アイテムボックス】の中に保管しました。

 そして、そのまま金貨を5枚——5000万アリスを取り出して、テーブルの上に置きます。


 ……果たして、私の値切りに意味はあったのでしょうかね?

 言ってみたかっただけの『値切り』ではありましたが、値切った時以上の割引をこうも簡単にされてしまいますと正直複雑ですよ……。

 満足したつもりでしたが、少し悔しい気もしますので、次はおばあちゃん達の主戦場である八百屋さんで挑戦してみましょうかね?


 デジラさんはテーブルに置かれた金貨を丁寧に数えて、『リングボックス』などから取り出したのであろうお盆?のようなトレーを持ったメイドさんに預けました。



「——はい、こちら5000万アリス、確かにデジラ商会が頂戴いたしました。この瞬間を以ちまして、二人の主従権がトレーネ様に完全移行されます」


「……つまり、奴隷雇用契約に必要な手続きは全て終わったという事で良いのですよね?」


「左様でございます」



 デジラさんは揚々に頷きます。


 ちなみに、お二人共いつの間にか服は着ていました。

 それも最初に着ていた布切れのような貫頭衣ではなく、着古されてはいるもののしっかりとした作りのシャツと、踝まで伸びるロングスカートをです。

 恐らくですが、本契約が終わった後にメイドさんが用意してくれたのでしょう。


 ……とはいえ、お二人の新しい服が必要な事に変わりはありませんけどね。

 人前に出られない格好から、人前に出ても恥ずかしいで済む格好に変わっただけですし……。



 そのデジラさんの最後の肯定が合図だったのでしょう。

 お二人は示し合わせていたかのように、私の前に歩み寄って来てお辞儀をしました。



「これからよろしくお願いいたします、ご主人様」

「よ、よろしくっ!お願いしますっ!ご主人様!」


「え?あ、はい……こちらこそよろしくお願いしますね」



 ご主人様ですか……何と言いますか、もぞもぞする呼び名ですね。


前回になってダッシュ記号がなろうの特殊記号入力?で入力出来る事に気が付いた

今回になって私の端末でもダッシュ入力が出来る事に気が付いた

(数年越しの気付き)


……今までどこを見ていたんでしょうかね?

私の目は節穴らしいですw



変更点1※異世界の国の名前

今更ですが適当すぎんか?と思ったので……

ユーラシア王国→メレフナホン王国


変更点2※異世界の街の名前

同じく適当すぎんか?案件です……

エイジア→アヴァンテル

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― 新着の感想 ―
[一言] 待ってました!! お仕事お忙しい中、お疲れ様です…_( _´ω`)_ この時期になると年末に備えないと駄目な仕事が増えてきて辛いですよねぇ……。 ゆっくりでも良いので完走まで頑張って下さい!…
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