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プロローグ3 新しい体とヴァイオリン侍

お久しぶりで申し訳ありませんm(_ _)m

改稿作業再開します


今回からの変更点

段落の整理の方法を変更してます


例)


 毎日ご飯食べたい女は激怒した。



「もう!お腹空いたよ!ご飯まだ?」


「ええ?ご飯?一昨日食べたばかりでしょう?ちょっとは我慢しなさい」


「むーりー!」



 この会話を聞いていた通りすがりのお兄さんは思った。

 いや、毎日食わせたれよ。と……。



大体こんな感じです

変更の理由は、今話の会話の台詞が長過ぎて見難かったからです

ネット小説ですし見易さ重視にしようかと……

今話投稿後に他も変更しておきます



更に変更点あり

本文はパロネタになっていましたが、サブタイが元ネタのままになっていましたので変更してます



長々と前書きすみませんm(_ _)m

では本編をどうぞ


 プロローグ3 新しい体とヴァオリン侍



 ゼウス様は口元を拭うと、先ほどまでの出来事は無かったかのようにお話の続きを始めました。



「ごほん……お主がどういう存在じゃったかは、よぉぉぉぉく分かった。その上で言うとじゃな、魂のレベルが高すぎて色々と困っておるんじゃ」


「……?そうなのですか?例えばどのような事でしょうか……?」


「うむ。具体的に言うと……魂のレベルに応じてポイントを入手でき、そのポイントでスキルを取得出来る制度なのじゃが、お主の魂のレベルじゃとそのポイントが余りまくとるんじゃ」


「なるほど……そんな事が起こっているんですね。原因は分かり兼ねますが、日本に居た時も私は時間を持て余してばかり居ましたからね。ひょっとしたらそういった事が関係しているのかもしれません」


「…………」



 私がそう言うと、ゼウス様は苦しそうに頭を抱え始めました。


 急にどうされたのでしょう……?偏頭痛でしょうか?ゼウス様も、もうお年でしょうし体調には気をつけないといけませんよね。

 まぁ、神様が体調を崩すかどうか以前に、歳を取るかどうかも知りませんが……。


 そうして頭を抱えていたゼウス様でしたが、数秒間で頭痛?は治ったらしく、大きく息を吐いてから続きを話し始めます。



「そう言うわけで、じゃ。お主が向こうで必要になりそうなスキルを取っても、まだまだポイントが余っとるんじゃよ。正直、わしではこれ以上どれを取ったらいいかなんぞ分からん。じゃからお主の希望というか質問はないかの?」


「質問や希望ですか……?」


「うむ。それに合わせて新しくスキルを作ったり、近いものを取ったりしようと思うんじゃよ。……その方が都合が良かろ?」


「なるほど……」



 私はゼウス様の説明に二、三度頷いて了解の意を示します。


 何ともありがたいお話ですね。

 私の要望にあったスキルをゼウス様が見繕って下さる訳ですし、これならこういった知識に乏しい私でも、安心して選ぶ事が出来るでしょう。

 ……あれ?それなら最初からこうしていた方が良かったのでは………………?


 …………これは気が付かなかった事にしましょう。そうでないと色々と悩んで選んで下さったゼウス様に顔向け出来ません。


 私がある種の真実から目を背けようと頭を振って新たに考えを巡らせていると、一つの疑問と言いますか、不安の種が芽生えてきました。

 私は思わず、考え付いたままにそれを口にします。



「あの……そういえば私はヴァンパイアに転生するのですよね?」


「そうじゃな……なんじゃ?嫌になったのか?」


「いえ、そういう訳では無いのですが、転生する身体?の事で質問がありまして……」


「ふむ、質問とな……?」


「はい。地球の伝承や創作物に登場するヴァンパイアは血液を食事として生きているそうでして……その……私が転生する身体はどうなのかと、不安に思ったのです。血液を口にする抵抗もそうですが、感染症なども怖いですし……。なので、そういった行為をしなくても済むのであればそうしたいのですが……」


「なるほどのぉ……」



 私の話を聞いたゼウス様は右手で顎を撫でながら、何か思案するように数秒の間目を瞑りました。

 そして何かに納得したように頷くと、私と視線を合わせて口を開きます。



「まずはお主の疑問に答えるが……期待には添えられんの。転生先の吸血腫ヴァンパイアはお主が言ったように、定期的に血液を摂取する必要がある。期間にして……大体一週間に一度は必要じゃな」


「そう……ですか……」


「しかし、じゃ。お主が不安に思う必要は無い、とも断言が出来る」


「……はい?」



 私はゼウス様の説明に首を傾げます。


 一体どういう事なのでしょうか……?

 血液を摂取したくないけれども、しなければならない。しかしそこに不安要素は無い、ですか……???

 正直、不安しかないのですが……と言いますか、意味が分かりません。


 そんな私の考えは透けていたのでしょう。

 ゼウス様はニヤリと得意げに笑みを浮かべて、お話を続けます。



「何故ならお主のその悩みや不安は全て、お主がチキュウの生物であったからこそ生まれておるものであり、これからアイリッシュの生物として生まれ変われば消えて無くなるからじゃよ」


「……?すみません、説明にはなっていないと思うのですが……?」


「おっと、すまんすまん。いきなり話を飛ばし過ぎてしまったか……うーむ、そうじゃのぉ……どこから話したものか……」



 ゼウス様は少しの間、顎に手を当てて考えを纏め始めました。

 そして数秒ほどで考えは纏まったのでしょう。ポンっと手を叩いて続きを口にします。



「うむ。天界規約もあって全ては話せぬが、最初から話すとするかの」


「あ、はい。お願いします」


「ではまず、生物を構成するものの話からじゃ。……これはチキュウに限らず全ての世界に於いて共通する事で、天界で定められた決まり事なのじゃが、生物を構成する要素は全部で三つある」



 ゼウス様は一つずつ指を立てて数えていきます。



「一つ目は『器』と呼ばれる外装。これは俗に言う肉体のような物で、常に変動し続ける実体の事じゃ。チキュウにあるお主の身体がこれに当たるの」

「次、二つ目は『アストラル体』と呼ばれる内装じゃ。これは器の情報や、この後に話す生核の情報を記憶する為の精神体の事じゃな。正に、今のお主がアストラル体そのものじゃの」

「最後、三つ目は『生核』と呼ばれる生体思念。これはその生物の根幹を指し示す情報集合体のようなものじゃ。分かり難いかもしれんが、生物の設計図のようなものを想像すると良いの」

「——そして、生物が生物足り得る存在じゃと定義するにはこの三つが結合しておる必要がある。何故なら、どれか一つでも欠けてしまうと生物としての存在を保つ事が出来ず、崩壊してしまうからじゃな」


「なるほど……」


「面と向かって言うのもなんじゃが、今のお主はアストラル体のみ・・が存在しておる状態……厳密には生物の枠組みからは外れてしもうておる訳じゃよ」


「まぁ、既に死んでしまっていますからねぇ……」



 生きる物と書いて生物な訳ですし、死んでしまっては生物とは言えないでしょう。

 それに……死者が生物と言えるのか?なんてお話は余りに哲学的と言いますか、道徳的観念が強すぎますからね。神様であるゼウス様とお話しするには価値観も何もかもが違い過ぎて、お話にすらならないと思いますし……。


 そうして何気なく呟くように頷いていた私ですが、ゼウス様のお話にふと引っ掛かりを感じて首を傾げました。



「……あれ?すみません、少しお聞きしたい事が……」


「なんじゃ?」


「今の私はそのアストラル体……?という精神体なのですよね?生物としての情報を記憶する為の……?生核ではなくて……?」


「そうじゃな」


「それにしては今の私は生前と比べても違和感が余りにも無いのですが、これはどういう事なのでしょう?アストラル体とは記憶した情報を再現出来たりするものという事なのですか……?それともアストラル体と生核が同居しているという事でしょうか……?いえ、そもそものお話、先程の三つの要素が欠けてしまうと崩壊するようですが、何故私は無事なのでしょうか?」


「うむ、尤もな疑問じゃのぉ……。じゃが、それらの疑問も全ては一つに繋がっておる」



 ゼウス様はうんうんと頷くと、一呼吸間を置いてお話を続けます。



「何度も言うが、今のお主はアストラル体が存在しておるだけの状態じゃ。しかし、お主が言うたように生核が同居しておるという事も無いし、アストラル体には記憶した情報を再現する力も無い。アストラル体はただただ情報を記憶するだけじゃからな」


「ではどうしてでしょう……?」


「それは偏に、この場所が関係しておる」


「場所……ですか?」


「うむ。ここが天界を模した場所で、今回の勇者召喚のような事が行われた時に当事者に事情を説明する場所じゃという事は言うたと思うが、実はここにはアストラル体に記憶された情報を正確に再現し、アストラル体の崩壊を防ぐ力があるんじゃ。……そしてそれを踏まえた上で話すと、人違いの召喚ではあったがお主にもその力が適応されておる訳なんじゃよ。チキュウに存在しておったお主のアストラル体をここへ呼び寄せて、記憶されておる情報を組み上げる事で擬似身体を創り出しておるという訳じゃな。……そうせねば話も何も出来ぬからのぉ」


「そういう事ですか……」



 私はゼウス様の説明を聞いて頷きますが、同時にコストの高い無駄?な事をするものだと内心で首を傾げました。


 しかし、随分と周りくどい方法を取るのですね?器ごと……と言いますか、その生物自体を呼び寄せてしまった方が無駄が少なくて楽だと思うのですが……。

 まぁ、そんな簡単な方法が取れるのであれば、私に言われる迄も無くしているでしょうがね……。

 していないという事は恐らく出来ないからなのでしょう。


 そんな私の考えが伝わったのか、ゼウス様は苦笑いを浮かべて肯定しました。



「本当なら器ごとここに呼び寄せたいんじゃがなぁ……それは天界規約に縛られておるので出来んのじゃよ。流石に世界に干渉し過ぎておるからの、最悪の場合は世界が崩壊しかねんのじゃ……。故に、面倒で周りくどい事であっても、アストラル体の情報から疑似身体を創り出しておる訳じゃよ」


「なるほど……ありがとうございました。お話を戻しましょうか」


「おぉっ!そうじゃったの、お主が吸血衝動を気にせずに済む説明の途中じゃった」



 ゼウス様は目を丸くして驚きながら、ポンと手を叩いて説明の続きを口にします。



「えーと、生物の定義について話し終わったところじゃったかの?」


「そうですね」


「ごほん!ではその続きじゃの。……生物を構成する三つの要素については話した通り。次にその要素がお主の不安にどう関わってくるか?という事じゃが——特に重要になってくるのは生核なんじゃ」


「生核……生物の設計図でしたね」



 私が先ほどの説明を思い返すようにそう呟くと、ゼウス様は頷いて肯定しました。



「うむ。と言うのも、生物の生態的主体行動……言ってしまえば、本能じゃな。それが、器に条件が適合する事が前提ではあるが、生核によって定められておるんじゃ。例えば、チキュウに住む人間であれば食事が必要であったり……といった具合にの?それはつまり、本能に基づいた忌避すべき事柄も生核によって定められておる訳じゃ」


「……つまり、私が感じている吸血行為に対する忌避感は、私があくまでも地球で・・・生まれ育った人間であるから生まれているものである。と……」


「おぉ、話が早いの。そうじゃ、世界の中には人間であっても、生き血をすする事が普通の世界がある。チキュウはその中に含まれておらぬから忌避感を強く抱く訳じゃが、お主が吸血腫ヴァンパイアへ転生するとそれは覆るんじゃ。何故なら俗に言う転生とは、器と生核の両方・・・・・・・をアイリッシュに生息する生物である吸血腫ヴァンパイアを基準に構築し直す事じゃからじゃな。要は本能が書き換わるようなものじゃ」


「なるほど……それではアストラル体は変わらない理由は何でしょうか?」


「それは先にも言うたが、アストラル体は情報を保存するための精神体……お主が今までに経験してきた全てがそのアストラル体に保存されておるからじゃよ。ある意味で、アストラル体とはお主の人格のようなものと言うて良い存在じゃな。それを挿げ替えるとなると……それは輪廻に還る事と同義になる。お主が言うておった意識も何もかもをリセットをして一からやり直す事になり、厳密には転生とは異なる事になるんじゃよ。故に、今回はアストラル体はそのままなのじゃ」


「そう……ですか……」



 私はゼウス様のお話に頷き返しました。

 しかし、それと同時に疑問も生まれ、首を傾げます。



「……?あの、質問ばかりで申し訳ないのですが、もう一つ宜しいでしょうか?」


「うむ、勿論良いぞ。何か分かり難い箇所があったかの?」


「いえ、そうではなくてですね。アストラル体が変わらないというのに、吸血行為に対する忌避感が消えてしまう事に疑問を覚えまして……」


「ふむ?続きを言うてくれるかの」


「はい。ゼウス様が仰ったアストラル体の役割は、器や生核などその生物の全ての情報を記憶、保管する事でした。それこそ、今の話題になっている忌避感を覚える行為についても同じだと思われます」


「その通りじゃの」


「であれば、生核が変わった事で新しく得る本能に関する情報と、今までに記憶していた本能の情報とで、反発し合う事があった場合はどうなるのでしょうか……?今回のお話の場合、吸血行為に対する忌避感は正に該当しますよね?」


「……ほぉ?なるほどのぉ」



 ゼウス様は何度か頷きながら相槌を打っていましたが、直ぐに首を振って私の意見を否定します。



「中々に面白い着眼点じゃのぉ……じゃが、お主の言う情報の反発は起こらぬから安心して良いぞ?仮に起こったとしても、何の意味も無いじゃろうしの」


「そうなのですか……?」


「うむ。と言うのも、まず前提としてアストラル体に記憶される情報は大まかに二つあるんじゃよ。一つはお主の意識というか、自我の根幹を成すような物の事で『精体情報』と言う。まぁ、ざっくりというならお主の性格などの事じゃな。そして、もう一つは器や生核などの情報を総合した『生体情報』と言うて、先ほどから話しておるアストラル体の情報とはこの生体情報の事じゃの。これからの話で大事なのはこっちじゃ」


「はい」


「でじゃ。この生体情報は原則として、情報を記憶・・した・・際の・・器と生核・・・・でなければ何の意味も持たぬ物なのじゃ。それは生体情報は生核が保有する生態的主体行動をバックアップという形で補完する役割を果たしておるからであり、器と生核の間の情報語釈を解消させておるからである。故に、器と生核が変わった事で新しい生体情報が記憶され、以前の情報と食い違う物があったとしても、古い生体情報は破棄される事は無いが、過去の残滓としてアストラル体に記憶されるだけの存在となるんじゃよ。……まぁ、器と生核が変わるなんぞ、普通は・・・そうそうあり得る事では無いがの?お主を含めて、転生事項に触れる機会のある人間など滅多に居らぬからな?これが普通などと変な勘違いはするでないぞ?」


「そんな事は考えていませんよ。ですが……なるほど……漸く、転生について理解出来た気がします。主にアレコレと考えるだけ無駄だという事が、ですが……。ありがとうございました。それと、長々と質問ばかりしてすみませんでした」


「良い良い。転生事項はわしらの間では普通は知っておって当然の事じゃし、逆に理解出来ておらぬアテナなんぞは典型的な脳筋のおバカで話にならぬ所為で、中々話す機会が無いのでな。……わしも知識自慢が出来て楽しかったわい」


「は、はぁ……?」



 私は突然出てきた女神の名前に驚いて、目をパチクリと開きました。


 ……え?アテナ?あのアテナ様ですか?

 確か、彼女もギリシャ神話に登場する神様と言いますか、女神の一柱でしたよね?

 私の記憶が間違っていなければ、戦神や都市の守護女神として有名なものの、知恵、知略の女神としても崇められていたと思うのですが……え?その方が脳筋?

 ……何でしょう。勝手な想像ですが、清楚で高潔なアテナ様のイメージが音を立てて崩れてしまった気がします。

 ……まぁ、目の前に居るゼウス様おじいちゃん(真っ黄色なスーツに赤い蝶ネクタイ姿)も大概なので、イメージ云々など今更と言ってしまえば今更なのですが……。



「……まぁ、それは置いておきまして……。では、お話も終わりましたし、転生を済ませてしまいましょうか」


「そうじゃの。では、転生する場所についてじゃが————ん?」


「どうされましたか?」


「いやいや、どうしたも何も、まだ話の途中じゃったじゃろうて。お主がアイリッシュでやってみたい事などの話の、の……?」


「……あぁ、そういえばそうでしたね。そういうお話でした」


「はぁ…………。お主の事じゃろうに……」



 ゼウス様はそう言ってゲンナリとした様子で溜息を吐きました。

 完全に呆れてしまっているようです。


 私も忘れたくて忘れていた訳では無いのですがね……つい、お話に夢中になってしまって頭から抜けてしまっただけです。

 はい、呆れられて当然ですね。


 私は大きく息を吐いて、気持ちを切り替えます。

 そして当初のお話に立ち返って、アイリッシュに転生して何をしてみたいのか?と考えを巡らせていくと、自然と右手が顎に添えられてしまいます。

 考え事をする時の私の癖です。



「えっと、向こうで生活していく時にやってみたい事でしたよね……。そうですねぇ……料理などはやってみたいかもしれません。入院前は母が作ってくれていましたし、入院してからは病院食しか口にしていませんから……。自分で作って自分で食べるという事に憧れが強いのだと思います」


「ふむふむ、なるほどのぉ」



 ゼウス様はそう頷きながら、ホログラムが投影されたようなA4サイズくらいの半透明の板?のようなものを操作し始め、ピロン♪という音を響かせます。

 どうやら、アレで私の転生先の身体などを調整するようですね。


 私はそんなゼウス様を見ながら尚も口を開きます。



「それと、向こうの世界には魔法が存在しているのですよね?日本にいた時は空想の産物でしたから、是非使ってみたいですね」


「いや、それは全部・・取得済みじゃ」


「あ、そうでしたか……。では他には…………あぁ、そうでした、聞こうと思っていた事が一つ。確か、アイリッシュでは人間と魔族がずっと戦争をしていると仰っていましたが、治安はどうなっているのでしょう?やはり、悪いのですかね?」


「そうじゃのぉ……比較対象がニホンじゃと、悪いと言わざるを得んの。命がわたあめのようじゃからな。ある程度、自衛が出来んと話にならんの」


「それは恐ろしく命の扱いが軽いですね……」



 しかし、自衛ですか……。

 私は雪ちゃんとは違って極々普通の女子高生でしかありませんでしたから、自衛と言われても防犯ブザーくらいしか頭に浮かばないのですよね……。

 かと言って、アイリッシュに防犯ブザーを持って行って役に立つとは思えませんし……。

 そうですね……ここは雪ちゃんに倣って、剣術でもやってみましょうかね?



「では剣術に挑戦してみようと思います。何か良いスキルはありますか?」


「それなら【剣術】のスキルじゃが、それも既に取得済みじゃ。他には無いかの?」


「え?それもですか?それなら……うーん……?」



 私はゼウス様の言葉に、更に頭を悩ませます。


 これは本当に何を取ったら良いか分かりませんね。

 そもそものお話、私自身が向こうへ転生してやってみたい事すら定まっていませんし……。

 出来る事なら旅のようにアイリッシュの世界を移動して周ってみたいですが、魔族と戦争中のようですし……。

 ……難しいですねぇ。



「……すみませんが、直ぐには思いつきません。アイリッシュに転生してやってみたい事すら決まっていない状態なので、どういったスキルが必要になるのかも想像が難しいのです」


「それもそうじゃのぉ……」



 そう呟くように言葉を溢すと、ゼウス様も一緒になって頭を悩ませ始めました。

 そうして数秒の間、一緒になって顳顬こめかみをグリグリと押して知恵を振り絞っている内に、私はふと一つの考えが頭に浮かびました。

 何故直ぐに思い付かなかったのか、不思議なくらい簡単な事です。



「あの、ゼウス様。それらのスキルは今、決めずに保留とする事は出来ませんか?」


「む……?保留とな?」


「はい。そのスキルを取得出来るポイント?を向こうに持って行き、必要な時に必要な分だけ消費してスキルを取得すれば、ここで頭を悩まずに済むと思ったのですが……」


「ふむふむ……確かにそれは可能じゃ。しかし、その場合はお主の希望に合わせて新しいスキルを作り出す事は出来ぬが良いのかの?」


「それは仕方がありませんよ。そもそも、私が必要だと思うスキルが浮かばないから、こういうお話になっている訳ですしね……」


「あいわかった」



 ゼウス様は力強くそう頷くと、再び手元の板?を操作し始めました。



「そうすればあとは名前じゃな」


「名前ですか?今のままでは駄目という事でしょうか……?」


「駄目とは言わんがな……お主の種族はチキュウで言うところの西洋風の名前が主流の為、相手にかなり違和感を覚えられるじゃろう。と言うより、アイリッシュ全体で観ても、和風の名前は極々一部の集落の者たちが付けておるだけなんじゃよ」


「そうなのですか……」



 名前、名前ですか……。

 雪ちゃん曰く、私のネーミングセンスは皆無らしいですからね……どうしましょうか?

 何か、良いものが思い付けば良いのですが……。


 私は再び思考の渦に呑み込まれて、暫く頭を悩ませました。

 そうして、そろそろ投げやりな気持ちになってきた頃に、ふと頭の中に良さそうな名前が浮かび、それをそのまま口にします。



「あ……そうですね、それでは『トレーネ』という名前でお願いします」


「トレーネか」


「はい。私の名前のるいから貰いました。……折角、両親から貰った名前ですから、捨ててしまうのは申し訳無いですしね」


「なるほどのぉ……。しかし、お主は涙という名前じゃったのか」



 私はゼウス様の言葉に首を傾げました。


 あれ?自己紹介はして…………ないですね。した記憶がありません。

 では改めまして……私の名前は月峰つきみね るいと申します。親友の雪ちゃんとは違って、何処にでも居る普通・・の女子高生ですね。


 先ほどお話ししました『トレーネ』という名前は、このるいという名前の由来であるなみだをドイツ語に変えたものです。

 実に安直な名付けだとは思いますが、まぁそれっぽい名前にはなったのではないでしょうか?


 ちなみに、先ほどから何度も名前が出ている『雪ちゃん』とは、本名を琴吹ことぶき 雪音ゆきねと言いまして私の唯一無二の親友です。

 また世間一般?では、彼女は正式名称を『起源きげん木花このは之佐なのさ久夜くやび毘売めがこ我琴とぶき吹流りゅう剣術』略称を琴吹流と言う歴史のある剣術流派の御当主様であると認知されていて、剣術家たちの中ではとんでもない重鎮の一人だそうなのです。


 ……だと言うのに、雪ちゃんは自分の事をよく『普通の女子高生だから』などとと口にしていますから、酷い詐称があったものです。

 雪ちゃん……?普通の女子高生は気配の動き?とやらの非科学的な何かだけで、病院内の人の動きを察知出来たりはしないのですよ?



 ……と、すみません。お話が逸れてしまいました。

 私は一度小さく咳払いをして、ゼウス様に向き直ります。



「失礼しました。今更ですが、月峰涙と申します。……あ、いえ、これからはトレーネと名乗るべきでしたね」


「かっかっか!そうじゃの、これからは気を付けねばならんのぉ」



 ゼウス様は豪快に笑い声をあげると、一度咳払いをします。



「……おほん!これで転生時の決定項目は決まったが、まだ転移先での注意事項などを話しておらんのでな。テンポ良くいくぞ」


「はい、お願いします」


「うむ。ではまず————」



 ——と、転生先の肉体が完成?したところで、アイリッシュで生活していく上で必要不可欠な重要な情報だけをピックアップしてゼウス様から説明されました。

 他の細かい常識やスキルの使い方、読み書きなどの言語情報は、ヴァンパイアの肉体(器と生核の複合体)と今の私(要はアストラル体)を結合させる時に、精体情報の一部として組み込んで下さるそうです。

 何でも『安全☆完璧☆転生☆システム』という名前のサポートによって、バッチリとフォローして下さるとか。


 …………何でしょう?勝手な偏見ですが、サポートの名前に不安しか感じませんね。

 何故、単語と単語の間に星が挟まっているのでしょうか……?それだけで変に不安感を煽られてしまいます……。


 ちなみに、日用品などの生活に必要な物なども転生後の身体に持たせて下さるそうです。

 おまけに手鏡も……。

 まぁ、転生してからでないと新しい身体の容姿などを確認出来ないそうなので、その確認用です。

 自分の容姿が分からないままでは、普通に生活する事も難しいですし……ヴァンパイアですからね。

 変な容姿でなければ良いのですが……。




ーーーーーーーーーー

少女とジジイの歓談後

ーーーーーーーーーー




 そうして、暫くの間お話をしてアイリッシュでの生活方針なども相談し終わったところで、ゼウス様は一息吐くと立ち上がって、固まった背筋を伸ばしました。

 余りにもお話が長くなってしまい、途中からはゼウス様が何も無い空間から・・・・・・・・出したテーブルと椅子・・・・・・・・・・で、半分ほどお茶会のようになっていましたからね。長く座っていれば身体も固まるのも分かります。


 ……あ、どうして何も無い空間からテーブルや椅子、お茶などが出てくるのかという事には今更ツッコミませんよ?

 ゼウス様ですから、それくらいはきっと何でも無い事なのでしょう。



「ぬぅぅぁぁああ!あぉぉ……疲れたわ……。茶まで出して、転生にあたってこれほど話し込んだのはお主が初めてじゃ」


「お疲れ様です。如何にも興味深いお話ばかりで、つい色々とお聞きしてしまってすみません。ですが、お陰様で安心してアイリッシュへと転生出来ます。……と言いますか、今までの方達とはお話しされなかったのですか?自分に関する事ですし、普通は色々と気になると思うのですが……?」


「それが、今までの者達は男女問わずに『お主は転生する事になったのじゃ』と言うただけで喜び勇んで行ってしもうて、碌に話が出来んでの……。極稀に話をする者が居っても、お主ほど理解が早い者は居らなんだし、ここまで話が弾んだ試しも無いんじゃよ……」


「そういうものですか……?」


「そういうもんじゃよ」


「……ふふふ」

「……かっかっか!」



 そう言って、私たちはお互いに笑いました。


 時間にしていったい何時間でしょうか?少なくとも3〜4時間はお話ししていたと思いますが、随分と楽しい時間を過ごさせて頂きました。

 ゼウス様たち神様から見た生物の在り様ですとか、生物の定義など、私が地球で暮らしていただけでは知り得ないお話を沢山聞けましたしね。

 律儀にも全ての質問にお答え頂いたゼウス様には頭が上がりませんよ。

 ……まぁ、元々が神様であるゼウス様に上げる頭があるかと言われますと、お答え出来ないのですが。


 お話も終わり、一抹の寂しさを感じながら私はゼウス様にお礼を口にしました。

 そしてそのまま転生をお願いしようとしたのですが、ふとある事が頭を過ったので、思わずそれを口にします。



「……そう言えば、ゼウス様は地球のお笑い芸人さんが好きなんですよね?最後に……と言うのも変ですが、転生を手伝って頂いたお礼に今の流行の芸をお教えしましょうか?」


「おぉ!そうかそうか!それはありがたい!元現地人の言う事じゃ。他の者に聞くより正確じゃろうし、是非お願いしたい」



 私の申し出に、ゼウス様はパァっと表情を明るくして何度も頷きました。

 やはり神様も流行には敏感に気にされるようですね。……いえ、遅れてた時点で敏感とは言えませんか。


 私は思った以上の食い付きに若干驚きましたが、今のゼウス様の格好からしてそれも当然かと思い直し、一度頷いてお話の続きを口にします。



「はい。先ずは格好からですが、今のゼウス様は真っ黄色なスーツに赤い蝶ネクタイという洋風な服装ですよね?ですが、今流行の最先端を走っているお笑いの方は浴衣姿にヴァイオリンを携えており、和洋折衷です」


「ふむふむ、どちらかだけでは駄目という訳か、斬新じゃな。……それで、肝心の笑いのネタはどのようにやっておるんじゃ?」


「そうですね……確か、独特のリズムをヴァイオリンで掻き鳴らしながら、他の有名人の方々を弄るような事を口にされていましたね。そして弄るだけ弄った後は、自分の恥ずかしかった事や弄られていた事なんかを暴露して『切腹』と叫んでいたような気がします」



 確か、最後に見たお笑い番組でとても人気だった気がします。

 お笑い番組自体、何年前に見たか忘れてしまいましたが、当時はあれだけ人気があったのですから今も大人気なのは間違い無いでしょう。



「おお!そうか!これは助かったわい!ありがとうのぉ!」


「いえいえ。私の方こそ沢山助けて頂きましたから、少しでもそのお返しが出来たのであれば良かったです」


「かっかっか!素晴らしい心意気じゃな!それだけ真っ直ぐに物事を捉えようと出来るなら、向こうでも真っ当に生活していけるじゃろう」


「そう言って頂けますと自信になりますね」


「うむうむ。巻き込まれてしもうたお主に言うのも変じゃろうが……達者でな」


「はい、ありがとうございました」



 私は薄れゆく意識の中、ゼウス様に深く頭を下げてお別れを告げました。





 ちなみに……涙のアドバイスの情報が古く、ゼウスに再び悲しい出来事が襲う事は言うまでもない。





 おまけ:ステータス紹介


 名前:トレーネ

 種族:吸血種ヴァンパイア(始祖)

 年齢:17


 身体能力:S

 魔力適正:SSS(限界突破)


 スキル一覧(種族スキル)


 吸血:10

 日中散歩デイウォーク:10

 真紅血装ブラッドウェポン:10

 血盟

 愛子の抱擁ナイトメアキス:10

 夜の魔女:10

 甘い夜遊びミッシングナイト

 闇夜に映る眼トゥルーアイズ:10

 超再生アゲイン:10


 スキル一覧(一般スキル)


 剣術:10

 短剣術:10

 槍術:10

 双剣術:10

 盾術:10

 棒術:10

 体術:10

 回避:10

 索敵:10

 身体強化:10

 魔力操作:10

 魔力量増大:10

 魔力量超増大:10

 魔力自然回復:10

 魔法最大威力増大:10

 魔法最大威力超増大:10

 詠唱破棄:10

 並列魔法:10

 魔法合成:10

 生活系魔法:10

 炎系魔法:10

 水系魔法:10

 風系魔法:10

 土系魔法:10

 光系魔法:10

 闇系魔法:10

 古代系魔法:10

 超越系魔法:10

 時空系魔法:10

 看破:10

 偽装:10

 隠密:10

 超感覚スーパーセンス:10

 アイテムボックス:10

 料理:10


 残りの利用可能スキルポイント:???(測定不能)



作中に書かれた生物論もどきは転生ものの話に屁理屈をくっつけただけなので、矛盾が多々有ると思われますがスルーして頂けると幸いです

……書くのはかなり苦労したんですがねw


それと改稿作業と名を打ってますが、改稿し過ぎて殆ど書き下ろしのようになってます

あと、一話が長いw


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― 新着の感想 ―
[一言] おお!更新きましたねー!
[一言] ひーさーしーぶーりー!!! 待ってたよぉぉぉ! もう投稿しないのか…最近色々あったから主に何かあったのでは?! と、心配してました_( _´ω`)_
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