19話 吸血少女と依頼報告
前回が2023年最後の投稿だと言ったな?
あれはうそだ
19話 吸血少女と依頼報告
あれから私たちは更に時間にして5〜6時間ほど、ゴブリンたちを含め他の魔物の討伐や、生命草の採取といった常設依頼を全うしていきました。
魔物の探知に関しては私の【索敵】スキルがあった上に、生命草の採取はシエラさんが生命草の群生地知っていたので、他のパーティーとかち合ってトラブル……なんて事も無く、スムーズに進める事が出来ました。
と言いますか、魔物討伐の合間に数組のパーティーとすれ違ったりしましたが、どこも軽く会釈を返すだけでトラブルとは無縁でしたね。
やはり、幾ら荒事がお仕事だとしても、その性格まで荒れている事は稀なのでしょうか?冒険者ギルドで最悪な絡みをしてきた男たちが変なだけなようです。
——と、少し脱線しかけましたが、そんなこんなと私たちは依頼を全うしつつ、戦闘の練習や陣形連携の調整なども並行して行っており、特に戦闘については色々と実験をする事が出来て非常に有意義な一日になりました。
例えば、私の場合は魔法を使わずに色々な武器を【アイテムボックス】から取り出して戦闘してみたり、逆に色々な魔法を試してみたり……
例えば、シエラさんとオトハさんの場合は私の種族スキル【愛子の抱擁】によって強化され過ぎたと言って良い、身体の動きやスキルの確認をしたり……
正直なお話、私の練習云々以上にお二人の調子の確認の方がずっと時間が掛かりましたね。
まぁ、お二人の場合は生まれてから今に至るまでに得たステータスを色々とすっ飛ばして魔改造された訳ですから、当然以外に言葉がありませんか。
最初からこのステータスである事が馴染むように転生してもらった私とは違う訳ですし。
そして、その強化され過ぎたお二人のステータスがこちらです——
名前:シエラ
種族:ハーフエルフ
年齢:15
身体能力:D→B(up)
魔力適正:D→B(up)
スキル一覧(一般スキル)
剣術:3→9(up)
回避:3→9(up)
体術:7(new)
身体強化:7(new)
魔力操作:7(new)
魔力量増大:7(new)
魔力自然回復:7(new)
詠唱破棄:7(new)
魔法合成:7(new)
水系魔法:2→7(up)
風系魔法:3→7(up)
土系魔法:7(new)
光系魔法:7(new)
偽装:9(new)
隠密:7(new)
名前:オトハ
種族:狐人族(九尾種)
年齢:17
身体能力:F→D(up)
魔力適正:D→B(up)
スキル一覧(種族スキル)
九尾解放:1
神獣化:スキルレベル無し
スキル一覧(固有スキル)
万華鏡:スキルレベル無し
幻影系魔法:1
スキル一覧(一般スキル)
短剣術:1→5(up)
体術:6(new)
回避:7(new)
索敵7(new)
身体強化:7(new)
魔力操作:7(new)
魔力量増大:7(new)
魔力自然回復:7(new)
詠唱破棄:7(new)
生活系魔法:7(new)
炎系魔法:3→7(new)
水系魔法:7(new)
風系魔法:7(new)
光系魔法:7(new)
偽装:9(new)
————いえ、やり過ぎな雰囲気はひしひしと伝わってきますよ?ですが、出来るというのにやらないのは何か違いますし、何より【愛子の抱擁】を適応させる為に【血盟】を使用して契約を結んだのですから、変に自重するのも本末転倒な事になると言いますか……伝わりますよね?
ま、まぁ、強くなり過ぎて困る事なんて無いでしょうし大丈夫な筈ですよ。多分……。
ちなみに、お二人がどのようなスキルを共有したいのかについては殆どお任せしていますが、唯一【偽装】スキルをレベル9で共有するようにお願いしています。
理由は単純明快、いきなり上昇したスキルレベルを隠す為ですね。
私が【偽装】スキルで隠蔽した平均が約3レベルの『とても優秀な新人冒険者』程度のステータスですら驚かれたくらいですから、平均7になったお二人のステータスがバレた時には魔女狩りの如く追求されされそうですし……ええ、非常に怖いです。
まぁそもそものお話、一日前とスキルレベルが全くの別の物になって新しいスキルまで増えていれば誰でも不審に感じますけどね。
そんなこんなと十二分に依頼を全うした私たちは、日が落ちて暗くなる前に早々と街へ戻る事にしました。
日が落ちて暗くなってからの行動は非常に危ないですからね。街の外……ましてや森の中に街灯なんてものはありませんから想像以上に真っ暗になってしまいます。
夜目が効かなければ何も見えませんし、こうして冒険者活動をする上では常識の一つとして叩き込んで教えられる事でもあります。
まぁ、ヴァンパイアという種族である私は当然として、狐人族のオトハさんも、ハーフとは言えエルフのシエラさんも、全員が夜目はバッチリなので関係無いと言えば関係無いんですけどね。
そんなに長時間森に篭って討伐を続ける理由もありませんから帰りましょう、というお話になった訳です。
普通に疲れますしね。
また当然ですが、そんな風に考えて街へ帰る冒険者パーティーは他にもいました。
私たちと同じく新人っぽいパーティーや、整備された街道へ戻ってからは行商の護衛らしき手馴れたパーティーなど、流石は『冒険者が集う街』と言われるだけあって、多様な冒険者たちが一同に帰宅していたのです。
正に、仕事帰りといった様子です。
その為か、街へ入る際の検問所は身分証を見せるだけにも関わらず混雑しており、私が昨日街へ来た時の閑散とした雰囲気とは比べるべくもありません。
そして、街の入り口である検問所ですらそうなのですから、冒険者ギルド内はと言いますと……私には『混沌』の言葉以外にどう表現すれば良いかわかりません。
贔屓にしている酒屋さんや、宿泊している宿屋さんではなく、お仕事が終わってこの場で直ぐに飲み会を……というパーティーも多いのでしょう。
昨日、冒険者登録に来た時以上に、飲食スペースという名の酒場は飲めや歌えや宴会騒ぎの無法地帯で非常に騒がしく、入った瞬間にお酒臭さがお帰りとばかりに出迎えてくれました。
報告所では『静かにしろ』という張り紙の効果なのか、辛うじて皆さん静かに待ってはいます。ですが、明らかにソワソワと落ち着きの無い方が多く見受けられ、騒ぎ出すのも時間の問題なのでは?とさえ感じますね。
まぁ、一応ありがたいと言いますか何と言いますか、ほぼほぼ全員がお酒を飲んで騒ぎたい欲求に駆られているお陰か、朝の時のように私たちに注目が集まるような事態には今のところはなっていません。
……皆さん昨日の事は早く忘れて欲しいものです。
「これはまた……何と言いますか凄まじいですね」
「ん?そう?夕方のギルドなんて大体こんなんじゃない?寧ろ、報告場でも騒ぐ馬鹿が居ない分、ここは大人しいと思うよ」
「里のギルドにしか行った事ないですけど、私もここのギルドは凄く落ち着いてると思います」
「この様子でも……ですか」
「他がもっと騒がしいからねー。寧ろ、ここはギルマスがめっっっっっっっっっっっちゃ怖いから、ベテランが協力して報告場では騒がないよう馬鹿には教育するくらいだし、結構特殊な雰囲気のギルドって感じかなー」
「誇張し過ぎでは?と笑えない雰囲気なのが恐ろしいですね……」
私は思わず苦笑いを溢して辺りを見渡します。
実際、私たちのように小声で会話する方はいますが、騒がしいという方は報告場の待機列には居ませんからね。
まぁ、言葉を発していないだけでソワソワと動きが騒がしい方は沢山いる訳ですが……。
ちなみに、ギルマス……ギルドマスターとは何かざっくり一言で説明しますと、各冒険者ギルドの最高責任者の事ですね。イメージ的には大手チェーン店の店長の権力を限界まで強くさせたスーパー店長が近いでしょうか。
また、それらスーパー店長を統括するスーパー社長という名の統括ギルドマスターも存在していまして、この世界で一番大きな総本山とも呼ばれる冒険者ギルドのギルドマスターがそれに該当しますね。
この辺りは普通の会社をイメージのままと言って良いでしょう。
「何てったってギルマスが元最強の冒険者だからねー。いや、引退した今でもギルマス最強論あるくらいだし元って言うと違うかな?まぁ、どっちにしてもヤバいよねーって話。……っていうか、トレーネちゃんは知らなかったんだ?」
「そうですね、初めて聞きました」
「えっと……カミラさんでしたっけ?最初にSランク冒険者になった人ですよね?」
「そうだねー。ただ、厳密にはカミラさんの為に人外隔離所が作られた感じかな」
「へ〜そうなんですねっ」
「カミラさん……ですか?どこかで聞いたような——いえ、見たような気が……?」
「あれじゃない?」
シエラさんが指を指す方へ視線を向けますと、昨日も見た『報告所で騒ぐな。順番は守れ。この二つを守れない奴はシバキ倒す。カミラ』という張り紙が目に留まりました。
…………通りで皆さんが大人しく順番を待っている訳ですね。
そうして小声でお話をしながら順番を待つ事十数分。
混雑を緩和する為に依頼完了報告用のカウンターを増設していたらしく、私たちの順番は思っていたよりもずっと早く回ってきました。
「お疲れ様です。依頼の完了ほうk——あれ、トレーネさんたちですね。こんばんは」
「はい?……あ、カルネさん、こんばんは」
「お疲れ様でーす」
「こんばんはっ!」
順番に呼ばれたカウンターへ向かったところ、私たちの担当をしてくれる方はカルネさんでした。
朝は掲示板から依頼を登録しただけですので昨日以来……と言いますか、他の職員さんに伺うと朝に出勤はされていなかったので謝り損ねていたのですよ。
良いタイミングですね。
「あの、昨日はお騒がせして、カルネさんにもご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。本当は朝にお話し出来れば良かったんですが……」
「え?あ、あぁ……いえいえ、トレーネさんが気にされる事ではありませんよ。寧ろ、目の前で起きているにも関わらず、助ける事が出来なかった私の方こそ申し訳ありませんでした。——まぁ、我々の助けなんて必要無かったみたいですけどねっ!いやー、あれはスカッとしましたねー。ざまぁ見ろってやつですよ!」
「…………私としましては是非とも忘れて欲しい出来事なんですがね」
「そうですか?中々に格好良い啖呵の切り方でしたよ?」
「それで注目されるのは精神的に遠慮願いたいんですよ……」
ニヤリと笑みを浮かべるカルネさんに、私は思わず溜め息を吐いて首を横に振りました。
と言いますか、カルネさんは昨日のファイティングポーズで応援?して下さった事といい、今の言葉といい、意外と血の気が多いと言いますか好戦的ですね?
あ、いえ、逆に私がこの世界基準では穏便過ぎるという事もありえますか。……一度そう考えますと、寧ろそちらの方が正解のような気がしてきましたね。
そうして少し雑談にお話の流れが逸れそうになったところで、カルネさんは思い出したように小さく咳払いをして軌道修正します。
「こほん、失礼しました。依頼完了の報告でしたね」
「あ、すみません。お忙しい時に……」
「いえ、元は私が声を掛けたからですので——という訳で、皆さんギルドカードをお預かりしてよろしいですか?」
「はい、どうぞ」
カルネさんは私たちからギルドカード受け取ると、何かの魔道具にカードを置いて情報の読み取りを始めました。
「えーっと?……あ、皆さん常設依頼を受注されてたんですね。まぁ初依頼なら妥当ですか。生命草採取の依頼も——はい、受注されてますね。採取品の生命草はこちらでお預かりしますのでこちらに提出をお願いします」
「分かりました」
私は差し出された大きめなザル?のような容器に言われるがまま、生命草を【アイテムボックス】内から取り出します。
すると、その容器そのものが測量をしてくれるらしく、カルネさんの手元にあるパネルのような物にその結果が表示されていました。
「測量結果は——3束分です。……あれ?意外と採取して来なかったんですね?」
「そうですね、どちらかと言えば討伐依頼の方を重点的にしましたので」
「あ〜、シエラさんは元冒険者でしたもんね。勘を取り戻す意味でも、パーティー戦力の確認という意味でも、討伐依頼を優先しますよねぇっと——それでは採取依頼はもう報告完了となりましたので次は討伐依頼ですね」
「…………あっ」
「…………あっ」
「……?どうしました?」
「あ、あ〜あははは……いや、なんて言うか……ね?」
「あ、と、と、と、トレーネ様、良いんですか?」
「……???良いとは何の事でしょうか?と言いますか、お二人とも変ですよ?」
「あ、あ〜〜これ気付いてない感じかぁ……まじか、まじかぁ……」
「あははは…………」
「え、えーっと?次も詰まっているので測定しますね?」
「……???はい、カルネさんお願いします」
シエラさんも、オトハさんも、何か諦めのような苦笑いを浮かべていますが……何があったと言うのでしょうか?
お話の流れからして、討伐依頼の事で何かあったようでしょうが……何か不備でもあったのでしょうか?思い出せませんね……。
そうして私が首を捻って考えている間に、カルネさんは別の魔道具でギルドカードの情報を読み取っていました。
すると——
「……は?何ですかこれ。次のは……はぁ?これも?なら——はぁぁ!?ほ、本気で言ってますぅ!?」
「えっと……カルネさん?」
カルネさんは目を丸くして驚きの声をあげました。
視線は魔道具に釘付けになっている為、やはり討伐結果に何かしらの不備?があったとみて間違いないようです。
そして、私が問い掛けた事で注意がこちらに向いたのか、力強く目を見開いたままのカルネさんと視線がぶつかります。
「トレーネさん!こ、これ、本当なんですか!?正気の沙汰とは思えませんよ!?」
「……???……???す、すみません、先程から一体何の事なのかさっぱり分からないのですが…………何か不備でもありましたか?」
「い、いえ、不備は無いんですが……えぇぇ、本気で言ってます?自覚無いんですか?」
「うんうん、カルネさん分かるよ〜」
「あははは……」
不備は無い?しかし自覚が無い?……本当にお話が見えないのですが??
それどころか、私を除いて三人だけで意思疎通されている気が……?疎外感が半端じゃありませんよ……。
そんな首を傾げるばかりの私に痺れを切らしたのか、はたまた呆れて言葉が続かないのか、カルネさんは大きなため息を吐きました。
「ふぅぅぅ…………」
「えっと……カルネさん?」
「えー、では、討伐履歴の確認は完了しましたので、ギルドカードはお返しいたします。はい、こちらです」
「え、あ、はい、ありがとうござ——」
「今回の受注依頼は常設依頼でしたので討伐数に応じて重複達成の扱いとなります」
「え、いや、あの——」
「討伐数はゴブリンが103体、レッサーヴァルトウルフが47体、コボルトが52体ですので、それぞれゴブリン討伐は20回、レッサーヴァルトウルフ討伐は15回、コボルト討伐は17回の達成となります。これはパーティー単位での達成扱いです」
「いや、ちょ——」
「また、今回の受注は常設依頼でしたので、討伐依頼の規定数に満たなかった端数は切り捨てとなります。ご了承下さい」
「あの、カルネさ——」
「そ、れ、と!トレーネさんっっっ!!!」
「は、はい!?」
カルネさんは私の静止を無視してお話を続けていたかと思うと、突然カッと目を見開いて私の目を覗き込むように身を乗り出してきます。
全く大声ではなかったというのにあまりの目力に気圧されて、思わず声が変に上擦ってしまいましたよ。
そして、その勢いのまま幼子を諭すかのようにお説教が始まります。
「いいですか?トレーネさんの実力が高い事は承知の上で言わせてもらいますが、無茶な討伐は絶対に、ぜぇぇぇったいにしないで下さいね?一体一体は弱いからといっても連戦は体力を疲弊する上に、集中力だって消耗するんです。本当に厳禁な行為なんですからね?」
「……?ええ、十分に承知していますよ?」
「承知していないから言ってるんですよ!?——っていうか、装備はどうしたんですか!?え、まさかそのままの格好で……?」
「あぁ、昨日はお話し出来なかったんですが、私の服には防具として使えるほど色々な魔法付与がされていて、実はその辺の鎧よりもかなり丈夫なんですよ」
「えっ、それは凄い……あ、いや、そうじゃなくて、幾ら常設依頼の弱い魔物だといっても限度があるという話です。200体ですよ?200体以上!無茶にも程がありますよ」
「えぇっと、私一人で討伐した訳では無いですし、パーティーでの討伐ならこれくらいの数になりそうなものですが……違うのでしょうか?」
「ち が う の で す!」
シエラさんとオトハさんのお二人も『うんうん』と頷いていますし、先程からお話の流れが分からずおかしな様子だったのはこれが理由のようです。
「確かに上級者と呼べる冒険者であれば欠伸混じりに達成できるでしょうね。それもパーティーなど組まずに一人で——ですが、トレーネさんたちは昨日冒険者登録したばかりの新人なんですよ?何と言いますかこう……あまり生き急ぎないでください」
「え、えぇっと、す、すみません」
「謝られる事では無いんですが……。悪い事では決して無い訳ですし……。ただ危ない事だという理解を——はぁぁぁ、いえまぁ、自覚を持って頂けるのであればこれ以上何かを言う事も無いですか……はい、分かりました。トレーネさんたちの実力ならこれくらいは達成出来るものとして覚えておきますし、他職員にも共有しておきます。何度も言いますが、冒険者として強くて悪い事はありませんからね」
「うんうん、完全にやり過ぎだったよねー」
「あははは……」
「いやいや、そこの二人も同じですからね?トレーネさんだけが原因ではありませんからね?パーティーで討伐されてるんですからね?その辺ちゃんと分かってます?」
「はーい」
「だ、大丈夫です」
「はぁぁぁぁ…………本当に大丈夫かなぁ?」
カルネさんは右手で眉間を揉み解しながら、大きな大きな溜め息を吐きました。小声で愚痴?を溢している事からも不安な様子が伝わってきます。
どこからどう見ても、疲れていますというジェスチャーですね。
と言いますか、この様子から見まして私たちは相当な問題児パーティーとしてカルネさんに認識されていませんかね?
ちょっとした私の勘違いからとんでもない誤解をされているような気が——いえ、昨日の出来事も含めて考えますと、普通に問題児の集まりにしか考えられませんね。
特に、今のシエラさんの反応なんてふざけているようにしか見えないですし……。
まぁ、真面目な時は真面目な方な筈なのであまり心配は…………あれ?なぜでしょう?急に私も前途多難に思えてきましたよ。
そうして、大きく息を吐いた事で気持ちの切り替えが出来たのでしょう。
カルネさんは若干気不味そうにしながらも、お仕事に戻りました。
「あ〜〜こほんっ、失礼致しました。私から差し当たっての諸注意は以上です。それでは依頼の報酬金を精算致しますね」
「え?あ、はい、わかりました」
「はーい」
「わ、分かりました」
「えー今回のそれぞれの依頼達成回数が、ゴブリン討伐が20回で6万アリス、レッサーヴァルトウルフ討伐が15回で4万5000アリス、コボルト討伐が17回で5万1000アリス、生命草採取が1回で1000アリスですので……合計は15万7000アリスとなります」
「おー!」
「わぁっ……!」
「三等分する形で既にギルドカードに預金済みですが、現金でお持ちした方が良いですか?」
「いえ、預金で大丈夫ですよ」
「かしこまりました。それと、皆さんのランクアップ申請をしておきますので、明日にもう一度ギルドカードを持ってお越し下さい」
「えっと、ランクアップですか?私たちは昨日登録したばかりですが宜しいのですかね?」
突然降って湧いたお話に思わず首を傾げて尋ねますと、カルネさんは頭が痛いとばかりに顳顬を押さえてお話の続きを口にします。
「…………初依頼で200体以上の魔物を討伐する実力者をEランクのど新人のまま留めておける筈が無いじゃないですか」
「そういうものなのですか?」
「あ〜〜はい……それは——いえ、私が慣れる事にするので色々と大丈夫です。失礼しました気にしないで下さい」
「???は、はぁ……?」
「一応、依頼経歴不十分という事で申請が棄却される可能性もゼロでは無いですが、まぁまず有り得ないでしょう。申請受理は明日の朝には完了させておきますので、明日も依頼を受注されるのであれば受注前に総合カウンターへ立ち寄って下さい」
「はぁ……分かりました?」
「それでは以上で依頼の完了報告は終了です。お疲れ様でした」
「あ、はい、お疲れ様です……」
「お疲れ様でしたー」
「お疲れ様ですっ」
その挨拶を最後に、私たちは冒険者ギルドを後にして、エマちゃんの居る宿屋へと帰る事にしました。
結局、カルネさんが何に百面相しているのか理由はよく分からないまま、丁寧にお辞儀をされてお話が終わってしまいましたね……。
お二人は何だか分かったような雰囲気で頷いていたので、後で少し聞いてみましょうか。
何も問題がなければ良いのですが……。
ちなみに、後でお二人に聞かされた内容に私が頭を抱える事になったのは言うまでも無いでしょう。
悪目立ちしないように心がけていたつもりなのに、それが全く結果に反映されていない訳ですからね。
自分の迂闊さとマヌケさに思わず呆れてしまいましたよ……。
年末のお休みでなんか書けたので本当に今年最後の投稿です
前回に色々挨拶したのにまたするもの変だなぁという事で一言だけ
2023年お疲れ様でしたー!
評価pt、ブクマ、そもそもの閲覧、本当にありがとうございます
私のモチベーションの源です
もしまだブクマしてないよ、評価pt入れてないよ、という方がいらっしゃれば下からお願いします
私が小躍りして喜びます
亀より遅い更新ですが、気長にお付き合いいただけると嬉しいです




