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プロローグ1 全知全能の神様とダンディなおじいちゃん

再投稿開始です

 プロローグ1 全知全能の神様とダンディなおじいちゃん



 私が目を覚ますと、そこは何も存在しない真っ白な空間でした。

 私はまた夢でも見ているのだろうと目を瞑りますが、どうにも違和感を覚えて再び目を開けます。夢にしては感覚が鋭敏過ぎるのです。


 例えば、私の腕から匂ってくるツンと鼻につく消毒用アルコールの匂い。

 例えば、今私が踏み締めている床?地面?の感触。

 例えば、乾いた口内を潤そうと湧いてくる唾液。

 例えば、夢の確認としてはお約束である、頬を抓った後の痛覚。


 などなど、知覚しだすとキリがありません。

 私は思わず、ポツリと独り言を溢します。



「……これは現実的に考えると、どうなるのでしょうか?」



 立っている事から地面が存在しているのだと推測は出来ます。

 しかし、辺りを見渡しても地平線となりうる色の継ぎ目などどこにも無く、寧ろ私自身が立っていると思い込んでいるだけなのでは?という疑念すら湧いてきます。

 仮にここが現実であると仮定しても、私の記憶にはこれ程までに白一色に染め上げられた空間などありませんし、この空間を新しく用意するとなるとどれほどの費用が必要になるかも想像できません。


 ……いえ、そもそものお話、人の目に着く場所にいた私を誰にも気が付かれる事なく、このような空間に連れ去った方法も思い浮かびません。

 一言で言ってしまえば全てが非現実的。

 それほど、真っ白で何も無い空間なのです。



「ですがまぁ……お陰様で踏ん切りと言いますか、諦めはつきましたかね」



 私は一つの達観と共に、この状況を非現実として受け入れました。


 私はようやく死んだ・・・・・・・のか、と。


 そうです。

 ここは現実であって現実では無い……言うなれば死後の世界のような場所では無いでしょうか?私はそう思い至りました。

 と言いますか、そう考える方が一番現実的・・・・・なんですよね。



「しかし……これが死後の世界としても、余りにも何も無さ過ぎではありませんかね?……確か、白は度が過ぎると脅迫めいた虚無感を与えるんでしたっけ?……あぁなるほど、納得出来ますね。ずっとここに居なければならないとなると気が狂いそうです」



 そうして私が気遊びに独り言を溢していると、不意にどこか気の抜けた様なしゃがれた声が聞こえてきました。

 私は孤独から解放されるであろう期待感から安堵の息を漏らして、声のした方へと振り返りました……が、私の期待感は直ぐに霧散してしまいました。

 何故なら……



「いやースマンスマン、待たせたのう」



 振り返った先にはおじいちゃんが居ました。


 いえ、別におじいちゃんがいた事にがっかりした訳ではありません。

 聞こえていた声から大凡の検討はついていましたし、そもそもこの空間で仲間?が出来たのですから文句などあり得ません。

 問題は人ではなく、おじいちゃんが着ている服です。


 その服は白のワイシャツに赤い蝶ネクタイ、そして派手派手しいまで黄色に染められた上下のスーツ……いえ、ハッキリ言いましょう。

 おじいちゃんの服装はかの芸人、ダンディ平野さんそのものだったのです。


 ……自分で言っておいてなんですが意味が分かりませんね。


 驚きに目を見開いている……と言いますか普通に引いている私に構わず、おじいちゃんは何事も無いかのように話を進めます。

 まるで、待ち合わせに数分遅れた友人のような態度です。



「実はお主は勇者召喚に巻き込まれてしまったんじゃ。ほれ、お主の他に教室に四人ほど居たじゃろ?其奴そやつらが今回の勇者に選ばれて召喚されたんじゃが、その場に居合わせたお主まで召喚されてしまってのう。そのまま送り出すのも悪いと思って、こうして少し話をする為に呼び出したわけ——じゃ!」



 目の前のおじいちゃんは最後の『じゃ!』の言葉に合わせて、両手の人差し指と親指以外を折り畳んで小さく前倣えのポージング——所謂『ダッツ!』を決めてきました。

 ……あぁ、ぼんやりと見ているとターンしてまた『ダッツ!』しましたね。

 それもキメ顔で……。



 私は目の前のおじいちゃんのお話の意図が分からず、またおじいちゃんの服装も相まって激しく混乱しました。

 しかし、その中でおじいちゃんのお話の中から単語を部分的に抜き出して、何とか状況とお話に付いていこうと必死に頭を働かせます。


 このおじいちゃんは一体何を言っているのでしょうか?勇者……?召喚……?教室……?巻き込まれた……?意味が分かりません。

 いえ、そもそもお話の前提が噛み合っていないのでは……?


 ——この2年間・・・ずっと病院・・で生活していて、一歩も・・・外に出・・・ていない・・・・——


 私が、教室で行われた勇者の召喚に巻き込まれる?どうやってでしょうか?

 おじいちゃんはボケているんですかね?いえ、ギャグのお話ではなくて年齢的なアレの方で……。

 しかし、私も何の所為でとは言いませんが、麻痺していた頭がようやく回り始めてきたようです。

 ……流石にアレは困惑しましたからね。若干、古いですし。


 私は今の状況を飲み込む……とまでは出来ないものの、頭に浮かんだ疑問を矢継ぎ早に口にする事で自分を落ち着かせつつ、おじいちゃんから情報を得ようとします。



「あの……キメ顔のところ申し訳無いですがここはどこでしょうか?説明が雑すぎて分かりません。それに教室に居た、とはどういう事でしょう?私は確かに高校生ではありますが、学校には一度行ったきりで以来ずっと病院で生活しているのですが……?人違いではないのですか?そもそも貴方は誰でしょうか?あと、そのネタは古いです」


「……え?」



 おじいちゃんは困惑した声を漏らすと、そのまま固まってしまいました。


 …………キメ顔『ダッツ!』のままで。


 どういう事か、このおじいちゃんにとってあの『ダッツ!』は渾身のギャグ?だったようですね。

 何故、そのような思考回路に行き着いたのかは理解できませんが……。


 そうしてフリーズする事、数秒。

 おじいちゃんは目を丸くして、まるで魂が抜け落ちた抜け殻が声を絞り出すようにして口を開きます。



「……えぇ?マジ?」


「まじまじ、です」


「ちょい待ち……」



 それだけ話すと、おじいちゃんは空中に視線を彷徨わせ始めてしまいました。

 どうやら私は蚊帳の外のようです。


 このおじいちゃん、若者言葉も使えるんですね……つい私も釣られて変な言葉になってしまいました。

 ……いえ、そうではありませんか。

 大丈夫なんですかね?このおじいちゃん。

 先ほどの言葉遣いといい、この話の噛み合わない感じといい、だいぶヤバいところまで来ている様な気がするんですが……。

 まぁ、ヤバイところまで来ていたとしても、私には対処のしようは無いんですけどね。


 と言いますか、このおじいちゃんを見ていると私は本当に死んだのか怪しく思えてきましたよ。……いえまぁ、生きていて悪い事はありませんが、本当に大丈夫なのか心配になってきました。

 色々な意味で……。



 しばらくの間、そんな風におじいちゃんを見ていると、彼は不意に手を叩いて納得が出来たと一人で勝手に頷き始めました。



「なんと!そう言う事じゃったか!」


「……はい?」



 私が首を傾げて疑問を口にすると、おじいちゃんが腰を90度に曲げて急に謝り倒してきます。

 私はいきなりの事で意味が分からず、また急に謝罪されて凍った空気を何とか和ませようとして、意味の分からないボケを返してしまいました。



「本当に申し訳ない!」


「あの、急に謝られても困るんですが……。確かにドッキリにしては今更すぎる寒いネタを持ち出されて不快感半分、懐かしさ半分で微妙な気分ですがそこまで謝られる事では……」


「いやいやいや!?ドッキリじゃ無いわ!と言うよりこのネタは古いのかっ!?他の神々は地球で超絶ブームで、ナウなヤングにバカウケじゃと言っておったぞ!?」



 私の渾身のボケに律儀に突っ込んでくれる目の前のおじいちゃん……意外と優しいですが、おじいちゃんは一体いつの話をしてるんでしょうか。

 そのネタが流行ったのは私が小学生低学年の頃の話ですよ?何年前だと思ってるんでしょうか?

 それに超絶かと言われますと、そうでもなかった気が……いえ、私は好きでしたけどね?



「はい、とても古いです。懐かしい気持ちになりました」


「そ、そうなのか」


「そんな事よりも、先ほどの私の質問の答えを聞いてもよろしいでしょうか?」


「そ、そんな事……」



 私がそう言うと、おじいちゃんは少ししょぼんとしながら……しかし、律儀に私の質問に答え始めました。



「……ごほん!では、まずはこの場所の事から話すかの」


「お願いします」


「ここは天界の様な・・場所じゃ。細かくは天界規約に反するので話せぬが……まぁアレじゃよ。勇者が召喚される際にその使命やらを説明する場所、とでも覚えてくれい」


「は、はぁ……?」


「……その顔は意味が分からんという顔じゃな。まぁ最後まで話を聞けい、ぶっちゃけこの場所が何処かなんぞ割とどうでも良い事なんじゃ。どうしても知りたいなら後で教えるのでな」


「分かりました」


「うむ。次に自己紹介じゃが、わしはお主のおった場所で言うところの神の様な存在じゃ。名をゼウスと言う」



 私はここで目覚めて初めて、純粋な意味で驚きました。


 ゼウス、全知全能の神様ですか。

 確かギリシャ神話における主神であり、多神教に於いても唯一神のような扱いを受ける神々の王……でしたかね?

 これはとんでもない方の名前が出てきましたね。



 私はゼウス様の前に跪き、祈りを捧げるような格好をとります。



「……全知全能たる御身を前にした、数々の非礼を深くお詫び申し上げます」


「お主よく知っておるのぉ……と言うかじゃ。なぜ急にへりくだって卑屈になっておるんじゃ?決して女性に言う事ではないが、気持ち悪いぞ?」


「そうですか?中々堂に入っていたと思ったのですが……」


「それを自分で言うのか……それにわしに対してそこまで敬う必要はないわい」


「そうですか、分かりました」



 私がゼウス様を敬うような物言いをしていると、ゼウス様は心底面倒臭そうな表情で手を振って私の態度を改めさせます。


 ゼウス様という方は意外とフレンドリーな神様なのでしょうか?私は神話や宗教には疎い人間でしたが、これは想像も付きませんでしたね。

 ……まぁ、ゼウス様の格好だけは誰の目から見ても、文句なしにフレンドリーですけどね。何せダンディ平野さんスタイルですし。



 ゼウス様は私が態度を改めたと見ると、一つ頷いてから話を続けました。



「うむ。話を戻すがの、先ほども言ったがお主は勇者の召喚に巻き込まれただけなのじゃよ」


「巻き込まれた……。言葉を返すようで悪いですが、それだけでは抽象的すぎてなんとも……。それに、先ほどの話に出ていた教室に私はいませんでしたよ?」



 確か、両親が暇つぶしにと持ってきてくれた小説の中に、勇者が召喚されて〜といった内容の話の物があった様な、無かった様な気がします。

 珍しく毛色の違った小説が一冊だけ混ざっていたので、あやふやに覚えています。何でも最近の流行りなのだとか……?

 特に、男の子の間ではある種の常識のような扱いになっているとか、聞きましたね。


 ですが、あの小説は途中で読むのを止めてしまって、記憶が非常に曖昧なのですよね……。

 私も記憶力には自信がありましたが、流石に十ページも読んでいない本の内容までは覚えてはいられませんよ。

 まさか、興味が薄くて食指が伸びなかった事が、ここに来て仇となるとは思いもしませんでした……。


 そうした私の疑問は最もだと思っていたのですが、ゼウス様はどうやら違ったようです。

 私の言葉に逆に首を傾げました。



「ん?日本人はこう言った展開に詳しいと聞いておったのじゃが、ピンとこんかの?」


「そうですね……男の子はそう言った事に詳しい子が多いそうですが、女の子では珍しいのではありませんかね。……こんなのでも一応、女なものでして」



 そう言って私は自嘲気味に自分の体を見て、乾いた笑みを浮かべます。


 病的なまでに白い肌と細い腕。

 背中の中程まで伸びている長い黒髪に、決して大きいとは言えない二つの膨らみ。

 血色も良いとは言えず不健康めいた顔。


 ……本当に病人なのでどれも当然と言えば当然ですが、何とも言えない気持ちになりますね。

 自惚れている訳ではありまあせんが、顔立ちはそう悪くはなかっと思います。

 決してモテてはいませんでしたが、まだ学校に通っていた頃の中学生の時には告白だってされた事があったのですから…………同じ女子から。

 ちなみに男子からは一切ありません。


 そんな私を見かねたのか、ゼウス様が慌てて説明を続けました。



「ごほん!では一から説明するかの。まず前提としてお主のおった世界……チキュウとは違う別の世界が存在するんじゃが、これは理解出来るかの?」


「えーと……それは地球を惑星ではなくある種の次元として捉える、という事でしょうか?それとも地球のように人が生活する惑星が他にも存在している、という事でしょうか?」


「うぅむ、お主の感覚としては前者が正解じゃな。惑星という概念は捨てたほうが良い」


「……続きをお願いします」


「よかろう、お主の言葉を借りて説明するかの。チキュウという一つの次元が存在するように、他にもアイリッシュという一つの次元が存在するんじゃ。まぁ、お主らのような人間が生存する世界は一つでは無いという事じゃな」


「……なるほど」


「そして今回はそのアイリッシュという世界にある、メレフナホンという王国が勇者を召喚したんじゃ。勇者召喚は異世界から人間を召喚する儀式の様なものじゃと考えてくれい」



 私はゼウス様の説明を脳内で反芻させます。


 つまりこの世界観というのは地球を一つの惑星として考えるのではなく、完結・・し、独立・・した一つの次元……この場合は『世界』と称した方が良いでしょうか?そういった見方をする事が前提であると。

 そして地球のような世界が存在するのであれば、似たような別の世界……この場合は『異世界』とでも称しますか。その異世界も存在するのが道理であるとゼウス様は仰る訳ですか……。

 すると、地球から見た場合はそのアイリッシュは異世界であり、アイリッシュから見た場合も地球は異世界になる、という相互関係・・・・が出来上がる……つまり一方通行という訳ではないという事ですね。


 だとしますと、同一時間軸に多数存在し、世界毎に干渉はしないと言われるif世界——所謂パラレルワールドとは、また違うものになりそうです。

 ゼウス様のお話ではアイリッシュと呼ばれる世界は、地球から派生して生まれ出た世界では無いそうですから……if世界は其々に存在する、という事になるのですかね?


 ……いえ、それは当然でしたか。

 世界が違うという事は太陽などの存在や、その在り方も違う訳ですし、間違いなく時間軸も異なりますね。

 であれば、時間軸に沿って形成されるif世界も、其々の時間軸に合わせて派生しなければ辻褄が合いません。

 幹となる軸が存在しなくなる訳ですからね。


 ふむ……考えれば考える程、非常に興味をそそられるお話ですね。

 もう少し深掘りして確認をしてみたいですが……流石に今聞くべきは別の事ですよねぇ……。

 脱線が過ぎるでしょう。



 私は未知という名の魅惑を振り切って、ゼウス様への質問を続けました。



「……態々わざわざ、違う世界から人間を召喚する目的はなんでしょう?」


「うむ。そのためにはまずアイリッシュという世界について簡単に説明せねばならん。アイリッシュはお主のおったニホンで言う所の『剣と魔法の世界』なのじゃ。……分かるかの?」


「えーっと……それは小説等でいう『ふぁんたじーな世界』という事でしょうか?」


「おお!そうじゃ、そうじゃ。科学の代わりに魔法が発達し、チキュウとは違った文明を遂げておるんじゃよ」


「……あぁ、そういう事ですか。そのアイリッシュという世界について少し飲み込めました」



 微妙にアイリッシュという世界観を掴み切れていなかった私ですが、ゼウス様の『科学の代わりに魔法が発達した文明』という言葉ですんなりと外観を飲み込めました。


 昔に考えた『科学が発展し得なかった世界』の考察に似ている気がしますね。

 おそらく、エネルギーから何から全てが違う方向に発展しているのでしょう。


 ゼウス様は私の反応に満足げに頷いて、説明を続けます。



「で、じゃ。アイリッシュでは魔物や魔王と呼ばれる人類の敵が存在しており、人類はずっと其奴らと戦い続けておる」


「それはずっと戦争をしているという事ですか?」


「うむ、そのニュアンスで間違いはないの。しかし『ずっと』と言っても、数百年前に魔王は当代の勇者に討ち滅ぼされ、世界には平和が訪れておったのじゃ」


「……過去形ですか」


「悲しいことにの。そして魔王が復活した今、アイリッシュは滅亡の一途をたどっておる」


「……?前にその魔王さんを倒したのであれば今回だって倒せ——あぁ、そこで先ほどの勇者召喚というお話に繋がる訳ですか」


「そうじゃ、勇者とは異世界から呼んだ人間の事を指すんじゃよ。召喚の方法は色々あるんじゃが……まぁ、結局他の世界の住人に運命を任せる事に変わりはないの。それも、アイリッシュの世界の住人はそれが当然の事じゃと思うておる。……悲しいことじゃな。自分たちの事を他人に全て任せて、自分たちは傍観を決め込むなど」



 そう言ってゼウス様は大きく溜め息を吐きました。

 その様子は酷く残念そうに見え、ゼウス様が本当に残念に思っているのだろうと想像させます。


 ……気持ちは分からなくも無いんですけどね。

 しかし、それはそれと言いますか、これはこれと言いますか……。

 私がその、アイリッシュのメレフナホン王国でしたか?その場所に召喚される事が避けられない事であれば、少しでも情報が欲しいところです。

 何せ、アイリッシュでは魔王さんたちと戦争中だそうですからね。加えて勇者として召喚されるのであれば、その戦争に強制参加のようですし……。


 …………あれ?



 私は勇者は魔王さんとの戦争に勝つために呼ばれる、と思い返してから疑問を覚えました。



「ですが、それが何故勇者の召喚に繋がるのでしょうか?正直、今の日本と言いますか、地球ではその身一つで戦闘が出来る、という方は非常に稀だと思うのですが……」


「うむ。その疑問は尤もじゃが、それには世界の格が関係しておる」


「世界の格……ですか?」


「世界には天界規定によって其々に格がつけられておる。その格が高ければ高いほど安定し、優秀な世界という事になっておるんじゃが、その格の高い世界の住人が格の低い世界に転移すると、現地人よりも基本的な能力が高くなるんじゃ。まぁ力が強くなったり、頭が良くなったりすると思ってくれたらええ」


「はい」


「そしてチキュウはその格が高く、アイリッシュはチキュウよりも低い。その為、チキュウでは極々普通の一般人でもアイリッシュでは凄い潜在能力を秘めた勇者に早変わりというわけなのじゃよ」


「……なるほど」



 謂わば、天下りのようなもの……という事ですかね。

 しかしそうしますと、地球人が一斉にアイリッシュへ侵略でもしようものなら、アイリッシュという世界は一瞬で破滅してしまうのではありませんかね?


 ……まぁ、そのような異世界の事が周知されていない時点で、我々人間には理解も出来ない何かが働いているのでしょうがね。

 先ほどまでのゼウス様のお話も、普通に生きているだけでは聞けるようなお話ではありませんでしたしね。



 私は今までのゼウス様のお話を思い返し、納得して頷いた上で、ずっと抱いていた疑問をゼウス様にぶつけます。



「勇者が召喚される理由は分かりました。ですが、そうすると私は何故ここに居るのでしょうか……?私がその勇者という事なのですか……?」



 これから転移させられるのであろう世界の事情は大まかにですが、理解出来ました。

 勇者云々の件も理解出来ました。

 長々とした説明のお陰で面白い事を知る事ができました。

 ですが、私がここにいる理由は一切説明されませんでしたからね。肝心な部分のお話がされていない所為で、私の置かれている状況が把握しきれていないのです。


 そうした私の苛立ちにも似た疑問から、ゼウス様は私の気持ちを感じ取ったのでしょう。

 私が首を傾げるのと同時に、ゼウス様は大量の汗を掻きながら挙動不審に目を泳がせ始めました。


 何と言いますか、漫画の一コマのようです。……器用ですね。



「そ、それがのぉ?非常に申し訳ないんじゃが……人違いなんじゃよ」


「はい……?」



 何も無い空間に私の気の抜けた声が響きました。


変更点1※名前やネタの伏せ字から、それらのパロディへと変更しました


変更点2※弟の存在が設定から消えてしまいました。それに伴い文章の変更

再登場の予定は一切無いのに、名前だけ出していた意味が今更になって意味分からん状態になったので……

ごめん、翔太くん


変更点3※異世界の国の名前の変更

これも今更になって、適当すぎんか?と疑問に思ったので……

ユーラシア王国→メレフナホン王国

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[一言] 楽しみにしてます
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