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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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レンレン劇団2(カレディア視点)

身体が竦むほどの振動。


耳が張り裂けそうなほどの轟音。


そして、眩いばかりの白い光。


60を数えた人生の中で、これだけの衝撃を受けたことがあっただろうか。


今もまだ視界は定まらず、耳も滝の中に顔を入れてしまったかのように音が響いてまともに聴こえない。


暫くして、視界が元に戻っていき、やっと目の前の惨状に気が付いた。


底が丸い皿のように、地面が抉れていたのだ。


その範囲は家でもすっぽり入りそうなほどである。


そんな驚愕すべき光景を見て、竜騎士を名乗るレンという若者は小首を傾げて抉れた地面を見た。


「ふむ…このままやると地面が穴だらけになるな。空中でやらせるか」


彼はそんな風に気楽な調子で言い、小さく何か呟いた。


すると、大樹を捻り切るような恐ろしい音を響かせ、抉れた地面の周辺が形を変えながらせり上がった。


気が付けば、周囲の土や石で出来たのであろう舞台が目の前にあった。


これも魔術なのか。


私は唖然としながら舞台を見た。


ちょうど、私の視線の高さほどの土で出来た舞台の上で、先ほどの大爆発に巻き込まれた筈の獣人の男性が立ち上がった。


まさか、あの状態からあの恐ろしい爆発を回避したのだろうか。


私が信じられない気持ちで獣人の男性を見ると、男性の手には見たこともない金属が握られていた。


先ほどの刀だろう。


いつの間にか鞘から抜かれた刀は、何処か緋の混じる金色の輝きを放っていた。


「サニー! 結構痛いぞ!」


と、獣人の男性は空に浮かぶエルフの少女を見上げてそんな事を口にした。


そんな、信じられない。


あの地面を抉るような爆発をその身に受けたというのか。


いや、避け損なって爆発の余波を受けたということかもしれない。


どちらにしても信じられないことだけど。


私がそう思いながら空に浮かぶサニーと呼ばれた少女を見た。


まだあの恐ろしい光の球を三つも周囲に浮かべたままのサニーは、口を尖らせて獣人の男性を見下ろしている。


「嘘。サイノスの体力なら後3発直撃しても死なない。それに今のはレジストしてた」


サニーはそんなことを言うと、サイノスと呼んだ獣人の男性を睨んだ。


あれが直撃して死なない?


鎧を着込んだ軍隊であろうと、使い所によってはあの一撃で100人以上を殺すことが出来る筈だ。


騒めく我々を他所に、サニーに文句を言い返されたサイノスは刀の先をサニーに向けて怒鳴った。


「自動レジストは魔術ダメージの低減だ! 痛いのは痛いんだぞ!」


サイノスが怒鳴ると、サニーは可愛らしく頬を膨らませて片手をサイノスに向けた。


「後で治す。じゃ、そろそろ連続で行く」


話は終わりだと言わんばかりにサニーは会話を打ち切った。


途端、サニーに周囲に浮かぶ光の球が一気にサイノスへと向かって行く。


最初の1発は手加減していたのか、三つの光の球は矢のような速度でサイノスに飛来していった。


「むむ、仕方ない」


サイノスのそんな声が聞こえたと思った次の瞬間、光の球へ突っ込むようにサイノスが飛び上がった。


そして、光の球を目にも止まらぬ速さで切り裂いていく。


切り裂いていくと言っても、サイノスの剣は全く見えない。


サイノスの剣の動きなど全く見えないが、切られたであろう光の球が左右に切れて空中で次々に爆発していくから、切ったのだろうと判断しただけである。


サイノスに切られた為か、空中で爆散する光の球の光と音は先程よりも僅かに軽減されていた。


それでも一瞬で起きた6連続の爆発音に目が眩みそうになり、音が耳に突き刺さる。


「む、次。ブレイジングショット」


サニーがムッとした声でそう言うと、殆ど同じ高さほどまで飛び上がっていたサイノスに向かって次々と赤々と光る炎の塊が飛んで行った。


人の背丈ほどはありそうな炎の塊が10といわずサイノスに向かっていき、サイノスは刀を振るう。


「熱い! 直撃しなくても周囲の温度が馬鹿みたいに…」


サイノスは文句を言いながら炎の塊を切り裂き、信じられないことに、その切った際に生じる衝撃を利用して空中に留まって見せた。


そんなサイノスの切り裂いた炎の塊の破片がサイノスの立っていた舞台の上に落下する。


直後、人を数人は飲み込む業火が舞台の上に次々と生まれ、舞台を火の海へと変えた。


燃えるものが無い土の上だというのに人の背丈を越える高さで燃え盛る炎を見て、あれが街の上で使われたら、と思い背中に冷たい汗が流れた。


最早、その超常的とも言うべき戦いに、これだけの大観衆が声一つあげられないでいた。


「さて、こちらからも行くぞ!」


と、今度はサイノスがそう言った。


空中で剣を振るっている状態でどう攻勢に出るというのか。


そんなことを思ってサイノスを見ると、サイノスは最後の炎の塊を切り裂き、そのまま燃え盛る舞台の上に落ちた。


死んだ。


私は確信を持ってそう思った。何かの手違いで死んでしまったのでは無いか。


私がそう思ったその時。


金属を打ち合わせる澄んだ音が響き渡り、遅れて体を震わせるほどの衝撃と爆風が私の体を後方に押しやった。


私は思わずその場で尻餅をついて舞台を見上げた。


すると、舞台の上では刀を地面と平行に構えたサイノスの姿があった。


まさか、刀を振った剣風で炎を消し飛ばした?


そんな奇想天外な考えが頭を過ぎった。


思わず、私は神話の住人であるはずの竜騎士の姿を振り返る。


レンは、退屈そうに腕を組んで二人の攻防を見ていた。


その態度に、私は何かを思う間もなく、サイノスの声に視線を引き戻される。


「せい!」


サイノスが気合いを声にした瞬間、サイノスの刀を持った腕が一瞬消えたように見えた。


そして、空中に浮かぶサニーの辺りからあの、金属を打ち合わせるような澄んだ音が響く。


見れば、サニーの周囲を覆うように半透明の白い板のような物が複数浮かんでいた。


あれは何なのか。


そして、サイノスは何をしたのか。


もはや、理解の範疇はとっくに超えている。


唖然呆然とした視線を集める二人が僅かに動きを緩めた時、こちら側に立っていたレンが手を一度叩いた。


「終わりだ」


レンがそう言うと、二人は顔を見合わせてから動きを止めた。


レンはその二人を見て、溜め息混じりに肩を竦めてみせる。


「どうせだから派手にやれと言っただろう? 地味だ」


地味!


まさかの感想に、我々は愕然とする。


そんな中、レンは片手を空に向けて何か呟いた。


「これくらいはやれよ」


そして、レンはそんなことを口にして、その上に向けていた手を振り下ろす。


直後、サイノスの立つ舞台の奥数100メートルほどの場所に巨大な炎の竜巻が巻きあがった。


見上げるような、炎の竜巻である。


幅も家を何軒も飲み込むほどの太さがある。


「…な、何あれ」


「これが、竜騎士、さま…」


誰かの声が後ろから聞こえてきた。


私は炎の竜巻を見上げながら、自分の意識が変わったことに気がつく。


絶対に、竜騎士の国と敵対してはいけない。


私は無意識にそう思うようになっていた。



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