番外編 サイノスとダン、ついでにローレル 1
番外編です!
久しぶりの前書きです!
番外編には前書きを書いてみたりします!
ギルドメンバーの素顔に密着する番外編!
ストーリーには関係ありません!
ダンがレンの言い付けで自らを鍛え出して1週間を過ぎたとある日。
深淵の森のジーアイ城周辺に、巨体を揺らし、大木の様な腕を振るう巨人がいた。
トロールである。筋肉質な身体を持つ3メートルはある大きさだ。
歩いているだけなのに、トロールのその大きな身体のせいで恐ろしいまでの迫力がある行動となっている。
ふと、トロールは動きを止めて視線を下方に向けた。
そのトロールの前には、白銀に輝くフルプレートメイルと剣を装備した一人の剣士がいた。
グラード村出身であり、レンの第一の部下になったダンである。
そして、そのすぐ後ろには軽鎧を身につけた浅黒い肌の男が立っていた。狼獣人のサイノスである。
サイノスは犬のような耳を揺らし、ダンに近づいた。
「このトロールは小さい。お主ならば一人で何とかなるだろう。無理ならば拙者がいる。思い切りやってこい」
サイノスがそう告げると、ダンは浅く頷いてから剣を構え、走り出した。
ダンは重いフルプレートメイルを着込んでいるとは思えない素早い動きで、大きな体躯のトロール相手に正面から斬りかかる。
ダンも大柄な方かもしれないが、トロールと比べれば遥かに小さい。
ダンの頭がトロールの脚の付け根から下腹ほどなのだからその大きさが分かるだろう。
そのトロールが、左右の腕を勢い良く振り回す中、ダンは転がるように前方に滑り込み、トロールの足もとを潜り抜けて背面へ回り込んだ。
「ふっ!」
トロールが対象を見失って動きを止めると、ダンは鋭く息を吐いて剣を横一文字に一閃した。
白銀の刃が軌跡を残して振られると、トロールの左右の膝の裏に深い切り傷が出来ていた。
遅れて、多量の血が辺りに飛び散る。
トロールは膝から崩れ落ちるように前向きに倒れ込み、苦悶の声を洩らした。
ダンは油断なくトロールに近付くと、腕を地面について立ち上がろうとするトロールの延髄を右から左へ一直線に斬り裂いた。
その僅か2回の斬撃で、ダンはトロールを討伐してみせた。
だが、深呼吸をして気を静めるダンを眺め、サイノスは不満そうに腕を組んだ。
ダンがそんなサイノスに近づいて口を開いた。
「どうだっただろうか?」
ダンの質問に、サイノスは鼻で息を吐き、頷く。
「う〜ん、50点だな。ああいうデカい敵にも、かなり速い動きをする奴がいる。だから、脚の下を潜るようなやり方だと蹴られたり踏まれたりも有り得る。ただ、後ろに回り込む速度と膝の裏を斬ったのは及第点だな」
サイノスがそう言うと、ダンは何度か頷いてから顔を上げた。
「一番良い対処法は?」
ダンがそう尋ねると、サイノスは組んでいた腕を解いて自らの刀を抜いた。
「拙者の場合は力でも対抗出来るが、この刀という武器はそういう武器ではない。なので、間合いを詰めて相手に攻撃をさせる。そして、その攻撃をした際に伸びきった腕や足を斬りつけ、相手が怯んだ隙に背後をとる」
サイノスの話を聞き、ダンはまた頷いた。
「なるほど。なら、この剣を使うとしたら?」
ダンはそうサイノスに聞いて、自分が持つ刀身の幅が厚めに造られたロングソードをサイノスに見せた。
すると、サイノスは笑顔で刀を鞘に収めた。
「拙者はそういった剣は使わんが…折角頑丈に造られた剣だ。トロールの振り下ろしてくる拳に向けて真っ向から斬り捨てたいな」
サイノスはそう言うと、笑いながらジーアイ城へ向けて歩き出した。
ダンはその後ろ姿を見て溜め息を吐き、肩を竦めた。
ジーアイ城の一階の奥には、25メートルプールのような広さの大浴場がある。
その大浴場は三種類あり、岩風呂と檜風呂、そして泡風呂である。
岩風呂には人1人分程の幅の滝が流れており、檜風呂には浅い寝湯と言われる、横になって入れるスペースもある。
そして、サイノスとダンは岩風呂に浸かっていた。
「こ、こ、これに、い、意味が、あ、あるの、か!」
滝に打たれながらそう口にしているのはダンである。
サイノスは犬のような耳をパタパタ揺らして頷く。
「勿論だ。精神を統一し、集中力を高める効果がある」
サイノスがそう言うと、ダンは何も言わなくなった。
だが、僅かに懐疑的な目でサイノスを見ていた。
「また変なことしてんなぁ」
そこへ、長めの茶色の髪を揺らした筋肉質の男が現れた。
短い尻尾と、垂れた小さな耳が特徴の犬獣人、ローレルである。
ローレルはダンを眺めながら、サイノスに話しかける
「それで、今日はどうだった?」
「今日はオーク三体、トロール一体だな」
「少ないな」
「まだ深淵の森の奥にいける実力はないからな。この近辺は常に皆で狩りをしてるからモンスターも少ない」
サイノスがそう言うと、ローレルは頷いてからダンを見た。
ダンは2人の会話が聞こえてないのか、滝に打たれながら無言で2人を見ている。
ちなみに、3人とも裸なので、滝に打たれているダンのダンがビダンビダンと揺れている。
「ローレルはどうだったんだ?」
サイノスが尋ねると、ローレルは曖昧な笑い方で笑い、肩を竦めた。
「山の方は深いからなぁ。旦那にも報告はしたんだが、崖の方を調べてるぞ」
「海の側の崖か? 結構高い崖とか言ってたな」
ローレルの言葉にサイノスが上を向きながらそう返事をした。
すると、ローレルが溜め息混じりに頷いて口を開く。
「ああ。崖の向こうにはせっかく海があるんだし、船を作りたいんだ。少し沖に出れば大きな魚も獲れるだろうしな。ただ…」
ローレルがサイノスにそんな話をしていると、滝に打たれていたダンが滝から出てきた。
「はっ、はっ、は…い、息が出来ん」
ダンが何とか荒々しく呼吸をして酸素を確保していると、ローレルが苦笑してダンに手を伸ばした。
「回復してやるよ」
ローレルがそう言うと、急にダンの身体がぼんやりと発光し、ダンは驚いたように顔を上げた。
「か、回復魔術か? 剣士かと思っていたが」
ダンがそう言うと、ローレルは頷いた。
「聖騎士だよ。回復と補助の魔術やら技も使える。今のはただの手当てって技だ。まあ、お前くらいの体力なら1発で全快するだろ」
ローレルはことも無げにそう言って笑ったが、ダンは唖然とした顔をしていた。
「全く…この城に住む者に普通の奴がいない…」
ダンがそう呟くと、ローレルは得意げに笑った。
「当たり前だろ。俺達は不死身の戦士だったんだ。死んでも死んでも戦い続けた。首を切り落とし、切り落とされ、燃やし、凍らされ…ありとあらゆる死を体験してきた者達の集まりだ。普通な奴なんかいないだろうよ」
ローレルがそう言って快活に笑うと、ダンは顔を引き攣らせてローレルとサイノスを見やる。
「…不死身? 城の中に住む英雄達で殺し合いをし続けたということか?」
ダンは神の代行者である竜騎士の英雄伝説を思い出しながらそう尋ねた。
英雄伝説には様々な物語があるが、英雄同士で殺し合うような話は無かった。
「いや、味方同士で殺し合いなんてしないぞ。そうだな…ダンに分かりやすく言うなら、旦那みたいな存在が沢山いるのさ」
「れ、レン様が、沢山?」
ローレルの台詞に、ダンは驚愕と共にそう口にした。
サイノスは少し不機嫌そうにローレルを見る。
「殿のような者はいない」
サイノスがそう言うと、ローレルはまた笑った。
「まあ、旦那みたいな存在ってだけだ。実際に旦那が沢山いるわけじゃないさ。旦那がやっぱり最強だったしな」
ローレルがそう補足すると、サイノスが頷いてからダンを見た。
「その通り。殿ほどの強者はおらん。だが、拙者やローレルくらいの者は無数にいたものだ」
「そ、そんな者達が…」
サイノスの言葉に、ダンは顔を青くしてそう言った。
「ああ。そんな奴らと毎日殺し合いしてたからな。ただ、この地に来てからは誰も死んでないし、旦那が絶対に死なないようにしろと言っていたから、もしかしたら俺達も不死身では無くなったのかもしれないな」
ローレルはそう言うと、手桶を持って岩風呂から湯をすくい、身体にかけた。
ダンはローレルの話を聞いても、唖然として固まったままだった。
続くのかよ!
そんな言葉が聞こえてきます!
自分の口から!
続くのかよ!




