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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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最高位の冒険者パーティー

レンブラント王国の西部地方。


ビリアーズ伯爵が治めるこの領土で第二の街と呼ばれる都市、ランブラス。


その冒険者ギルドはかつてない賑わいを見せていた。


勿論、俺がギルドに顔を出したからでは無い。


冒険者の頂点、Sランクの冒険者がいるからだ。


俺はギルドの隅に集まっている冒険者達を尻目に、ガラガラになっている受付へ向かった。


受付にはいつも通り2人の受付嬢が立っていた。


赤い髪の受付嬢がミリア、緑の髪の受付嬢がランだ。


「あ、レンさん!?」


受付に近づくと、ミリアが俺に気づいて名を呼んだ。


「久しぶりだな」


俺がそう言うと、ミリアは受付のカウンターに両手をついて身を乗り出した。


「お久しぶりです! って、そうじゃなくてですね!? 変な噂が流れていて、レンさんが神の代行者の竜騎士様で、新しい国を作ったとか何とか…」


「おお、もうそんな噂がきているのか」


「そうなんですよ! それで、今ランブラスにSランク擁する最強の冒険者パーティー、白銀の風の皆様が来てるんですけど、リーダーのブリュンヒルト様がレンさんの噂を聞き付けてグラード村の方へ向かったんです!」


「お、おう。とりあえず落ち着け。落ち着いて喋れ」


俺は勢い良く話し出したミリアをなだめて落ち着かせた。


ミリアは俺の言葉を聞いて深呼吸すると、ゆっくりとまた口を開いた。


「お、落ち着きました。それで、その噂を聞いた時に私もレンさんを探してランブラスの宿を回ったんですけど見つからなくて…レンさんはどちらにいたんですか?」


「深淵の森だ」


「え!? 深淵の森は軍ですら開拓出来なかった魔の森ですよ! 大丈夫だったんですか!?」


「俺には心強い仲間がいるからな」


俺がそう言うと、ミリアは胸を撫で下ろすような仕草をして笑顔になった。


「そ、そうですよね。あ、そういえば皆さん、いつもの方とは違う…」


ミリアは笑顔でそう言いながら俺の背後に視線をやり、押し黙った。


そして、急に真顔になったミリアは俺をゆっくり振り返る。


「ぶ、ブリュンヒルト様ですよ。ブリュンヒルト様がいらっしゃいます」


「知ってるよ。俺が連れて来た」


俺がミリアにそう返答すると、ミリアは完全に脳の処理能力を超えてしまったのか、動かなくなった。


「あ、あの…では、やはり噂の竜騎士様というのは…」


「俺だな」


俺がそう答えるとランまで顔を引きつらせてしまった。


「く、国をお作りになったとか…」


「エインヘリアルという名だ。場所はグラード村の奥に城を建てたぞ。今はグラード村を城下町にしている最中だ」


「は、はは…もう何が何だか…」


俺の返答を聞き、ランが困惑しながら乾いた笑い声を上げた。


その時、ギルドの奥のテーブルで集まっていた冒険者の1人が声を上げた。


「お、おい。ぶ、ブリュンヒルト殿だ」


「え? もうグラード村から帰ってきたのか?」


ブリュンヒルトに気が付いた冒険者の声と共に、ギルド内の視線がブリュンヒルトに集まった。


「ブリュンヒルト、戻ってたのね」


そんな女の声がして冒険者の人だかりが左右に別れ、椅子に座った3人の女が現れた。


長い金髪と金色の目をした小柄な女、肩までかかる青い髪の女と短く雑に切られた茶髪の長身の女の3人だ。


金髪金目の女は赤いローブを、青い髪の女は白いローブの上に赤いジャケットを、茶髪の女は焦げ茶色の革の服の上から赤い軽鎧を着込んでいる。皆、中々の美女である。


3人はブリュンヒルトの姿を確認するとこちらへ向かって歩いてきた。


「どう? 噂の竜騎士様はいたの?」


「いるわけないじゃないか」


「あれ? ブリュンヒルト、ちょっと変わった? あ、髪がなんかサラサラしてる?」


3人はブリュンヒルトの返答を待たずに好き勝手に話し始めた。


ブリュンヒルトは苦笑混じりに3人に向き直ると、どこかさっぱりした顔で口を開いた。


「ええ。だって、竜騎士様のお城で凄いお風呂に入らせてもらったのよ。髪を洗う為の乳液のような泡立つ液体があって…」


ブリュンヒルトの言葉を聞いた3人は目を丸くしてブリュンヒルトに迫った。


「竜騎士に会ったの!?」


「竜騎士様の城の風呂に入った!?」


「何その乳液って!?」


3人に詰め寄られながら質問責めにされているブリュンヒルトを尻目に、俺はこちらの様子を窺っている冒険者の人だかりの中から見知った顔を見つけて軽く手を挙げた。


「よぉ、ウォルフ。久しぶりだな」


俺がそう言うと、髭面の大男が仏頂面でこちらへ歩いてきた。


「な、なんでお前がブリュンヒルト殿と連れ立ってギルドまで来てるんだ? まさか、本当にお前が今噂の竜騎士様ってか?」


ウォルフはそんなことを言いながら変な笑みを浮かべて俺を見た。


「その噂を直接聞いてはいないが、国なら作ったぞ」


俺がそう告げると、ウォルフは額に手を当てて天を仰ぎ見た。


「…マジかよ、俺は代行者様になんて失礼な真似を…」


「気にするなよ」


「気にするだろ!? あ、いや、気にしますぜ?」


ウォルフは良く分からない返事を返して俺を見た。


俺は肩を竦めてみせると、ウォルフの肩を軽く叩く。


「今は城下町を作っている。冒険者ギルドも作る予定だから、完成したら来いよ?」


「あ、い、行かせていただきます…って、町作ってんのかよ!? 」


ウォルフはぼんやり返事をしていたが、不意に正気に戻って勢い良く声をあげた。


俺がウォルフに笑って首肯していると、受付の方からガタガタと大きな音がした。


見れば、ミリアが輝くような笑顔で受付のカウンターを飛び越えてこちらに来ていた。


「ギルド職員に立候補します!」


「ん? それは嬉しいが、冒険者ギルドの本部とかが人事は決めるんじゃないのか?」


俺がそう言うと、ミリアは拳を握って笑った。


「ギルドマスターに意地でも認めさせます! 新しい冒険者ギルドが出来る時はギルドマスターの推薦があればまず許可が出ますから!」


「ほう、そうなのか。なら俺からも伝えておこうか」


俺がそう言うと、ミリアは飛び上がって喜んだ。


早速我が城下町の人口が2人増えたようだ。


そんなことを考えて、喜ぶミリアを眺めて自然と笑顔になっていた俺にブリュンヒルト達が近づいて来た。


「あの、レン様。私のパーティーメンバーを紹介しても良いでしょうか?」


ブリュンヒルトが俺にそう言ってくると、近くでその光景を見ていたウォルフとミリアが目を皿のように丸くしていた。


だが、ブリュンヒルトの後方に並ぶ3人は一様に疑惑の目を俺に向けている。


「…竜騎士様。大変失礼ですが、竜騎士様は冒険者であられるとか…」


金髪の女が俺にそう言った。


「ああ、今はBランクだな。名前はレンという。よろしく」


俺がそう言うと、金髪の女の眼差しは更に鋭くなった。


そして、隣に立つ短い茶髪の女が口元を歪めて腕を組んだ。


「本当なら恐れ多い話だが、今まで世界各国で竜騎士を名乗る偽物が現れてきたんだ。何か、証明出来るモノは無いのかい?」


「ちょ、ちょっと! なんて口をきくのよ!?」


茶髪の話し方にブリュンヒルトが血の気の引いた顔で声を荒げた。


俺は殺意を放ち出したサニーとイオを右手を上げて止めると、ブリュンヒルトの後ろの3人に向き直った。


「何故俺がわざわざ証明してみせなければならないんだ? 俺がお前に竜騎士であることを信じろとでも言ったか? というか、こっちは名乗ったんだからそっちも名乗れよ」


俺がそう言うと、茶髪は険しい顔つきで俺を睨んだ。


「アタシの顔を知らないって? Bランクの冒険者ならSランクの冒険者くらい覚えなよ」


「ふむ。それは悪いな。だが、俺も冒険者になって1週間だ。依頼も受けていないしな。他の冒険者の名前を覚える時間が…」


「巫山戯るんじゃないよ! 1週間でBになれるわけないだろ!? 冒険者を馬鹿にするな!」


俺が事情を説明しようとすると、茶髪の女が完全に激怒した。


怒りのゲージが振り切っているのか、こちらに飛び掛かりそうな前傾姿勢になっている。


「はい、ストップ。それ以上は手じゃなくて口を出しても殺すよ?」


と、一触即発の空気になった瞬間、今まで黙っていたラグレイトが俺とブリュンヒルト達の間に割って入った。


ラグレイトのその行動にサニーが人知れず拳を握り、親指だけを下に向けている。


「いや、殺すなよ。とりあえず我慢していろ」


俺は怒りに燃えるラグレイトにそう釘を刺しておいた。


俺の国になる予定の土地で下手に暴れるのはマズイ。


俺がそんなことを考えていると、茶髪の女が前に出た。


「なんだ、このガキ…今のアタシに下手なこと言うと」


「いい加減にしなさい!」


茶髪の女がラグレイトに怒りの矛先を向けようとしたその時、顔が真っ白になっていたブリュンヒルトが今度は顔を赤く染めて怒鳴った。


ブリュンヒルトは茶髪の女の頭を片手で掴んで無理矢理下に向けると、俺に深く腰を曲げて頭を下げた。


「本当に申し訳ありません! わ、悪気は無いんです! ただ口が悪いだけで…!」


必死に頭を下げるブリュンヒルトと、それに抗おうともがく茶髪の女を見て、俺は溜め息混じりに頷いた。


暴走する部下に手を焼く気持ちが凄く分かる。


俺は何処か優しい気持ちになると、静かに口を開いた。


「まあ良いだろう。それで、お前のパーティーメンバーの名前は…」


俺が穏やかにそう口にしていたその時、茶髪の女がブリュンヒルトの手を掻い潜って顔を上げた。


「な、何がお前だぁっ!? もう許さねぇぞ! アタシと勝負しろ!」


茶髪の女は怒りに身を震わせながらそう叫んだ。


それを見て、金髪の女も青い髪の女も観察するような目つきで事の成り行きを見守っている。


いや、止めろよ。


あと、結局お前らの名前が分からないままなんだけど。














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