7日目、街作り!
朝が来た。
陽の光と少し肌寒い空気だ。
少しずつ冬になってるのか?
俺が異世界の季節に寝起きの頭を働かせていると、隣に寝ていたエレノアが上半身を起こした。
「おはよう」
俺が声をかけると、エレノアは少し眠そうな顔で柔らかく微笑んだ。
「おはようございます、ご主人様。今朝は昨日よりもお加減が良いようですね」
そう言うと、エレノアは嬉しそうに笑った。
ちなみに、裸である。
いかんいかん。
「今日はどうされる予定ですか?」
玉座の間に入り、椅子に腰掛けた俺にエレノアがそう聞いてきた。
「ふむ…隣国となる国には新しい国の話が伝わったはずだ。ならば、せっかくの領土だ。豊かにしようか」
「それは良いお考えですね」
俺が方針を決めると、エレノアはニコニコ笑って頷いた。
何故か今日はエレノアの機嫌が良い。
はて、俺が愚痴ったのがそんなに嬉しかったのか。
「…まあいいか。とりあえず、深淵の森の奥地に城がある以上、せめて城に続く道くらいは必要だな」
「森を切り開くのですか?」
「そうだな…森を伐採するか、森の上を通る巨大な橋を作るか、地下を通る地下道を作るか…」
俺がそんな案を出すと、エレノアは両手の掌を胸の前で合わせた。
「流石はご主人様です! そんな素晴らしいアイディアがどんどん浮かぶなんて。エレノアは橋を作るのが良いと思いますが」
エレノアが俺にそんなことを言っていると、玉座の間に誰かが入ってきた。
「おはようございます、お屋形様」
そう挨拶をしながら玉座の間に入ってきたのは、俺が最後に創ったギルドメンバー、ミレーニアだ。
「丁度良いところに来たな。建国宣言は終えたし、国らしくしようと思ってな。やはり城は敵に攻められないように山の上か?」
俺がそう言うと、ミレーニアは思案するように視線を下に向けた。
「そうですね…ギルドの拠点でもあるこの城に続く道はいらないかもしれません。ご主人様が危惧されていた我々よりも強い存在がいた場合、身を隠し防衛するならば、この城ほど適した場所は無いでしょう」
「ああ、そうか。そうだな…その場合、どうするかな」
ミレーニアの指摘に俺は唸りながらも賛同し、思案した。
すると、ミレーニアが俺を見た。
「新たに城を築きましょう」
「は? いやいや、相当時間が掛からないか? 個人的にはシムシティばりにテキパキ中世ヨーロッパ風の街を作りたいんだが」
俺がミレーニアの案に口を挟むと、ミレーニアは小首を傾げながら口を開いた。
「シムシティなるものが何か分かりませんが、ご主人様は何も無い状態からこの城を造られたのでは?」
「あれは課金…いや、なんでも無い。この世界では多分出来ないだろうな」
俺はミレーニアにそう言うと、ミレーニアはさして残念そうにもせずに頷いた。
「そうなのですね。ならば、ギルドメンバーの中にいる錬金術士と建築士、鍛治士などの生産職の者たちに造ってもらいましょう」
「いくら生産職とはいえ…ああ、スキルなら直ぐにいけるか? 試してみる価値はあるな」
俺はミレーニアの言葉に考えを改めて顔を上げた。
「エレノア、ミレーニア。生産職の者たちを全て集めてくれ。ユニーク職の楽士も一応な」
楽士のスキルの中に応援、士気向上があった気がする。
俺は頭の中で様々なスキルを思い浮かべながら二人に指示を出した。
俄然、面白くなってきた。
戦争の時は、身体の変化に合わせて自分の性格が変わっていくような不安感があったが、街作りを考えるのは平穏な気持ちでいられる気がする。
俺はこれからを考えて無意識に笑みを浮かべた。
さあ、どんな街を作るか。
「ご主人様、全員揃いました」
「生産職は合わせて38人ですね」
エレノアとミレーニアが俺の前の階段の下に立ち、そう報告した。
38人。
色々出来そうだが、普通の人間ならば家を頑張って一軒くらいしか建てられないのではないか?
俺は若干不安になりながら、集まったギルドメンバーを見回した。
その中の一人に視線を止める。可愛らしいダークドワーフの少女だ。
「ミラ、錬金術を用いて建材を作れるか?」
「はい。ジーアイ城の地下にある偽玉座の間と同じく、薄い板状で良ければミスリルで、一部ならばオリハルコンでも大丈夫です。材料はジーアイ城の近辺にも多くありましたから」
「ふむ、他国の使者が来た際に度肝を抜きたいからな。高さ100メートルくらいの西洋城を作るとしたら、表面はミスリルで覆えるか?」
俺が無茶な質問を駄目元でしてみたが、ミラは意外にも熟考して口を開いた。
「…何とか大丈夫です、多分。ミスリル鋼とかの採掘次第ですが」
「まあ、窓を多く作ってその部分は格子状にしたり、あとは屋根部分は別の物を使うとかしてみよう」
俺はそう言うと、隣に立つ髭面のドワーフに目を向けた。
「鍛治士としてのスキルなどで良いものは無いか?」
俺がそう聞くと、ドワーフの鍛治士、カムリが口を開いた。
「そうだな。ワシらのスキルならば魔術刻印を刻んだりするくらいか? まあ、城を建てるくらいならワシらが集まればすぐ出来るじゃろ」
「ふむ。魔術刻印で魔術威力減か魔術封印の刻印が良いか。よし、考えておこう」
俺はカムリに頷いてそう言うと、次の者に目を向けた。
色白のヒョロリと背の高いヒト族、ディグニティだ。我がギルドメンバー唯一の建築士である。黒い長い髪が目に付く。
「城の建築だ。出来るか?」
俺が聞くと、ディグニティはその場で立ち上がり、こけた頬に片手を添えて身をよじらせた。
「ふふ、出来るわよ? 豪華絢爛、荘厳華美な城をつくりましょう? ただ、その場合は是非とも幅は200メートルは必要かしら? 私の建築スキルで調整や補修、建物の強化まで出来るから安心してね、ボス?」
何故かずっと身体をくねらせるディグニティを、俺は生暖かい目で見つめる。
ちなみにディグニティは男である。面白いかと思ってオカマにしたのだ。
「そうか、頼むぞ。ディグニティ」
俺がそう言うとディグニティは長い髪を振り乱して背を仰け反らせた。
「ああ! 私はディーと呼んで? それとボス? 急ぎで建てるなら土系魔術で壁を建てて、その壁に錬金術とか出来ないのかしら?」
「ん?」
「え?」
ディグニティの質問に、俺とミラが同時に疑問符を上げた。
俺がミラを見ると、ミラも俺を見ていた。
「出来るか?」
「…や、やってみます」
俺の言葉にミラがそう返事を返した。
ゲーム中にそんな使い方は出来なかったからな。中々良いことが聞けた。
俺は一人で満足し頷くと、他の面々を見た。
「さて、一応生産職、ユニーク職の全員に声を掛けたが、他にも何か街を作るのに良い技能、スキルを持つ者はいるか?」
俺がそう声を掛けると、何人からか声が上がった。
ユニーク職の木こりが木材調達と加工を、芸術家が窓や装飾を、炭坑夫が道を整え水路を掘る。
ちなみに、木こりは斧、炭坑夫はスコップで戦う。芸術家は何故か弓だったり、回復補助魔術だったりする。
どこかのギルドはユニーク職だけで構成されていた為、ギルド対抗戦で混沌とした戦場が出来上がっていた。
「あ、ネストはヴェロッサと一緒に肉体労働をしているギルドメンバーの応援だ。速度上昇と体力回復スキルを頼むぞ」
俺がそう言うと、楽士のネストと踊り子のヴェロッサが頭を下げた。
大体の役割が決まったところで俺が一息吐いていると、ディグニティが身をくねらせた。
「ところで、ボス? 建設予定地は?」
「そうだな。ジーアイ城から一番近い集落、グラード村の近くで良いだろう。グラード村は城下町にしようか」
俺がそう言うと、ディグニティが首肯した。
ここに首都の場所が決定した。
こんな軽いノリで決めて良いのだろうか。




