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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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戦争準備

ジーアイ城に帰った俺達は各隊のリーダーのみを集めて会議室に篭っていた。


「城の維持と警戒にいくつ隊がいる?」


「メイド部隊のみで問題ありません」


「ガラン皇国方面への警戒、索敵、情報収集には?」


「上空から敵軍の動きを探るのに一隊必要かと。情報収集にも数人は隠密移動が可能な人がいりますな」


「アタシが行くよ。個人での戦闘能力が高いほうが良いだろ?」


「敵の進軍を食い止めるには…召喚士と魔物使い」


「はい! 壁としてなら巨人タイプ、攻撃するなら野獣タイプで1人10体。全員で100体です」


「すみません…魔物使い5名の内、現状使えるのは2人がテイムした魔物30体です。全てこのジーアイ城近隣の魔物となります」


「ならば、精霊魔術師は精霊召喚でいけるか?」


「そうですね〜。炎タイプが範囲持ちですから一人五体召喚の25体で〜3時間くらいですかね〜?」


「155体か。それくらいいるなら相手が横隊で向かってきても一時的な壁になるだろう。例え二つか三つに別れても対応は出来る」


「殿! 拙者は!?」


「序盤は待機」


「なんと!?」


「仕方ないだろう。とりあえず、数が多いから油断なんて全く出来ないんだ。1万人を超えるような戦場の経験はないだろ? だから、万全を期して壁を設置して敵兵の足止めと龍人部隊による威嚇。これでまだ攻めてきたら、魔術士と弓使い、魔法剣士などの遠距離攻撃が可能な部隊が攻撃する。次に間髪入れずに敵の司令官がいる辺りに向けて龍人部隊のブレス攻撃を…」


俺は皆に戦争時の役割を聞かせながら、全員の顔を見た。


今回、今までの部隊編成を一新し、戦争用の特殊な部隊編成に組み直した。


斥候、近接戦闘、遠距離戦闘、龍人、召喚、特殊の6種類の部隊がある。


分かりやすく役割が同じ職種を纏めただけだ。回復魔術士だけは各隊に組み込まれている。


「お館様」


俺が作戦説明中に1人の女が口を開いた。


肩にかかる程の長さの暗い茶色の髪を揺らす、垂れ目の和服美女だ。20代後半ほどに見える落ち着いた雰囲気の彼女は、俺が最後に作ったハイヒューマン、ミレーニアである。


「なんだ?」


俺がそう聞くと、ミレーニアは難しい顔で俺を見た。


「作戦がお優し過ぎます」


ミレーニアはそう言ってその場で立ち上がった。


「これはギルド対抗戦ではなく戦争であるならば、半端な優しさは自らの首を締めます。余計に戦火を拡げる原因となるでしょう」


ミレーニアはそう言うと辺りに座る仲間達を見た。


「逃げたい敵は逃げられるという戦術をとる優しさは、間違いなく後で良くない事態を起こすでしょう。敵兵1000人と味方の将1人がお屋形様にとって同じ価値ならばそれでも良いですが、味方を死なせたくないのであれば、逆らいたくなくなる力と結果を見せねばなりません」


そういえば、キャラクターを作る時にミレーニアは軍師としても非常に優秀な作戦参謀的な設定をつけていた。


俺が無言でミレーニアに対して頷くと、ミレーニアは僅かに微笑を浮かべて口を開く。


「私としましては、包囲殲滅戦を提案致します。相手の魔術や兵器のレベルに寄りますが、龍人部隊のブレスはあまり離れすぎると効果が薄いので、ドラゴン形態の龍人部隊に魔術士が乗り、上空から氷塊の雨を降らせましょう。これで一方的に高高度からの攻撃が可能です」


「地形が変わりそうだな」


俺がミレーニアの攻撃を想像して顔を顰めると、ミレーニアは大きく頷いた。


「地形は変えますとも。大軍が行軍する際、的を増やすように隊を細長くしたりはしません。総司令官が狙われる隙が出来ますし、分断されたり奇襲されたりと良いことがありません。ですので、目的地まで素早く行くならば複数に別れても現地合流か、大軍のまま船などを使って移動。もしくは大軍である利点を生かして平地を行軍するでしょう」


「ふむ? つまり、大軍の利点を潰すために?」


俺がそう聞くと、ミレーニアはまた笑みを浮かべる。


「そうです。大軍を囲むのは我がギルドであれば案外簡単です。大軍は無闇にバラバラにならないように陣形維持の徹底をしているでしょう。なので、巨人タイプのモンスターを等間隔に召喚して動きを止めつつ、地系魔術で四方に壁を設置。魔術レベルが分かりませんが、厚さは1メートル程度の薄いもので大丈夫です。高さも2メートルくらいでしょうか。それを越えて出てくる者は優先的に潰しましょう」


完全に逃げ場を無くして反撃されない上空から攻撃か、鬼だな。


俺はミレーニアの語る蹂躙劇に敵兵への同情の念が湧くくらいだが、ギルドメンバーには好評らしい。ギルドメンバーは皆喜んで聞いている。


まあ、ゲームとして5年ばかり遊びながら戦っていた俺と違い、ギルドメンバーは命を落としながら血で血を洗う争乱を繰り返してきたのだ。


ゲームのキャラクターの目線になって考えれば、死ぬのが前提で殺し合いを毎週やっていたわけだ。それも戦う敵は常に同等以上の強者ばかり。敵に同情するなど頭に浮かびもしないのではないか。


「いや、違うか」


俺の感覚がまだ日本のそれなだけで、それは多分異世界でも共通認識かもしれない。時代的には中世ヨーロッパや戦国時代初期と似たような文化レベルだろう。


俺が戦争に対する意識の違いを感じていると、会議は少し横道にそれて過去のギルド対抗戦の話になっているようだった。


彼らの目から見たギルド対抗戦がどんなものか気になった俺は、何となく無言で皆の会話を聞いていた。


「いやあ、あの時は大変だったな! 第32回ギルド対抗戦だったか。ギルドも中規模は少なかったが、わしらも40ちょいしかおらんかったな。だが、相手は300はおったか?」


「ああ、幻馬の群れとかいうギルドだな。元はクレイジーホースと幻影騎士団、沙無堕蟲の合同ギルドだから人数では勝てないさ。まあ、数は150くらいだったが、我がギルド初めての敗北だった」


ふむ、他のギルドまで良く認識しているようだ。俺は不思議な感覚で自らが作ったキャラクター達の会話を聞く。


「あれがやっぱり一番だと思うね。ほら、ボスがうちの拠点の大半を占領された中、一人で敵の大将を打ち倒したやつ」


「あれは凄かったね」


「さすがだよね。あの時は陽動のエレノアですら先にやられたから完全に負けたと思ったもん」


「…あの時はご主人様の期待に応えられませんでしたが、次は必ず…」


「あ、俺はあの時だな。敵にはジーアイ城内にいるように思わせて三つある別働隊の一つに旦那がいて、敵が城内を荒らしてる内に旦那が自ら敵のギルドを強襲する…」


なんか、とんでも無い話になっている気がする。


俺はゲーム中だから無茶を出来た訳で…やばい、部下から過剰に期待されている気がする。


いや、気持ちを切り替えるんだ。


ここは日本じゃないんだ。


殺すのを躊躇えば殺されるかもしれない。


まだ何処か現実感が持てない部分があったが、そろそろ甘えは捨てなければな。


俺はそんなことを考えて背凭れに背中を押しつけた。



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