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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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ガラン皇国の思惑

「このアルダ地方の代官、トゥランです。よろしくお願いします」


トゥランと名乗る青年はそう挨拶して右手をこちらへ出した。


「これは丁寧にありがとう。冒険者をしているレンという。こちらこそ、よろしく」


俺はトゥランの態度に少し嬉しくなり、自然と笑顔でトゥランの手を握り返した。


この異世界で初めての握手という文化であり、初めてここまで丁寧に接してくれる重役の者に会えた。


やはり、本当に人の上に立つ者はこうでないとな。俺はそんなことを考えながら、トゥランに対する形で置かれているソファーに腰掛けた。


俺達がいるのは代官の執務室であり、応接間でもあるというトゥランの個室だ。


部屋の中は壁や天井は板張りだが、床は石を並べて綺麗に削ったような作りになっている。


執務用の大きめの机があり、天井まである本棚や、クローゼットまである。


ソファーはテーブルを挟む形で二つだ。そのソファーにトゥランと、向かい合わせで俺が座っている。


トゥランは短い茶色の髪と、同じ色合いの目をした細身の男である。年齢は30過ぎくらいだろうか。


「…おや、ボワレイ殿? お座りにならないのですか?」


ふと、トゥランはソファーに座らないボワレイを見て不思議そうにそう言った。


「いや、私はここに立っていよう。トゥラン殿は是非、レン殿との会談に集中なされよ」


ボワレイがトゥランの質問にそう答えると、トゥランは唖然とした様子でボワレイの顔をまじまじと見た。


ボワレイには人前ではレン殿と呼ぶように言ってある。下手に閣下なんて呼び方をされると探りを入れられるだろうからな。


「そ、そうですか。それでは、レン殿、早速話といかれますか」


トゥランはそう言うと咳払いをして居住まいを正し、俺の顔を見た。


「本来なら初対面のレン殿といきなりこんな話は出来ませんが、ボワレイ殿が伯爵からの手紙を持ってきて頂いたので信用して話します。この話の内容は完全に極秘とし、外部に洩らすことは出来ませんが、いいですね?」


トゥランは確認をとるように俺にそう聞くと、俺の表情を見た。


俺はトゥランの目を見て頷き、口を開く。


「ああ、構わない」


俺が了承すると、トゥランは無表情に頷いた。


「それでは…まず、伯爵様の希望の我が軍の派遣ですが、皇国皇が全面的に協力すると仰せです。ですので、予定していた5000の兵よりもかなり多い兵が派遣されるでしょう」


「ほう! それは素晴らしい! ガラン皇国の本気が伝わればそれだけ良い決定力になるというもの! 素晴らしいお話ですな!」


トゥランがそう言うと、ボワレイは一も二もなく喝采を送った。それにトゥランも眼を細める。


だが、俺は頭が冷えるような感覚を受けた。


「…かなり多いとは、どれほどで?」


俺が聞くと、トゥランは笑顔のままこちらを振り向いた。


「ええ、そうですね…正確な数字は分からないのですが、一万、二万といった立派な一軍になるのではないでしょうか? あのレンブラント王国からの独立ですからね。それだけ皇国皇も本気で支援なさるのでしょう」


「ほう、それは凄い。それで、その兵達はいつ頃レンブラント王国へ?」


俺が更に質問を重ねると、トゥランは一瞬、ほんの僅かな時間だが、体を硬直させた。


だが、すぐに破顔すると俺に向かって一言口にした。


「明日か明後日と聞いております」


「なっ、なんですと!? そんな、早過ぎる!」


トゥランの言葉に、ボワレイは目を見開いて悲鳴を上げた。


「ま、まだこちらの準備が出来ておらん! ビリアーズ伯爵のお膝元である辺境領とはいえ、何日もガラン皇国の大軍が滞在していれば2日も経たずに王都に知られてしまうではないか!」


ボワレイがそう叫ぶと、トゥランは困ったように笑った。


「おや。こちらが日程を勘違いしておりましたか…いや、失礼。しかし安心してください。軍にはかなりの数の兵糧を積んでいる筈です。1ヶ月や2ヶ月は持つ程に。なので、人目につく街では無く郊外に野営させましょう。さすれば、数日は誰にもバレませんよ」


トゥランはそう説明すると朗らかに笑い、ボワレイは難しい顔で唸った。


「ぬ、ぬぅ…何とか見つからずにいけるか? しかし、それでも数日か…各領主に連絡して集めて…10日は掛かるか? いや、間に合わせなければならん。こうしてはおれん、急ぎ準備をせねば!」


ボワレイは頭の中で日数を照らし合わせて顔を曇らせると、急いで立ち上がった。


「すまんが、私達はこれで失礼する! 速やかに兵を集める為出来るようならここで兵を少しでも留めて置いてくだされ!」


ボワレイはそう言って部屋を後にしようとしたが、俺が動かないのを見て立ち止まった。


俺は不思議そうに俺を見るトゥランを見返して、口を開く。


「一つ聞くが、ガラン皇国から派遣される兵達は何処へまず派遣されるんだ?」


俺が聞くと、トゥランは笑顔で答えた。


「ビリアーズ様の辺境領に決まっているじゃありませんか。そこで合流してから行動に移すのでしょう? ああ、なので国境警備の兵達への連絡はきちんとお願いしますね。攻撃されたら大変ですから」


トゥランは苦笑混じりにそう言って笑った。


「そうか。ちゃんと伝えておこう」


俺はそう言うと、トゥランと別れの挨拶を交わして部屋を後にした。






「ぬぅ。閣下の飛翔魔術があればギリギリ間に合うかもしれませんな。ですが、本当にギリギリとなりましょう! さあさ、早く行かねば!」


ボワレイは街の外に出るなり俺にそう言ってきたが、俺はボワレイに首を横に振って答えた。


「無理だ、間に合わん」


「な、なんですと!?」


ボワレイは俺の返事に驚愕して立ち止まった。


「な、何故です?」


狼狽して俺に理由を尋ねるボワレイに、俺は簡単に説明をする。


「奴らは最初から伯爵の独立を利用して領土を広げようとしていたのだろう。だが、奴らの動きは想像以上に早かった。伯爵の独立を支持し新たな国が出来たところを丸ごと掻っさらうのかと思っていたが、独立しようと兵を集めているところを狙ってそのまま占領するつもりだ」


「なんと…しかし、あまりに強硬な領土拡大は他の国も黙っていませんぞ。レンブラント王国がそれで敵を作ったといえど、ガラン皇国は被害を受けておりませんからな。言い分がないでしょう?」


ボワレイは眉間に皺を寄せてそんなことを言った。


「馬鹿言え。レンブラント王国は強硬的な戦争を繰り返して領土を広げたんだろう? ならば、レンブラント王国はガラン皇国に面した辺境領に兵士を集結させ、ガラン皇国に攻め入ろうとした、と大義名分を抱えて攻める。これで他の国も公に文句は言えないだろうさ」


「あ、ああ…なんという…では、どうしたら…」


俺の説明を聞いたボワレイは顔面蒼白で俺を見た。


どちらにせよ、伯爵の軍は間に合わない。


勿論、何も知らないレンブラント王国の軍も間に合わないだろう。


ならば、答えは一つだ。


「ラグレイト、建国の歴史的一戦くらいは派手にいくか」


俺がそう言うと、ラグレイトは楽しそうに笑った。


「僕は全て派手にやりたいんだけどね」


ラグレイトの言葉を聞いて、ミラとローザは顔を見合わせて揃って肩を竦めた。



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