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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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建国に向けての宴

食堂をフルに使い、騎士団も何とか宴に参加させることができた。


立食パーティーという形式で。


仕方ないじゃないか、こんなに兵士を連れてくるとは思わなかったのだから。


「むう、何という美味い料理の数々だ」


「気に入ったなら良かった」


かろうじて、俺と伯爵だけは席を設けたが、残りは所狭しと食堂内で立食している。ちなみにハイヒューマンのエレノア、魔族のカルタスは俺の護衛として俺の隣に立っている。


俺は食堂を見回し、この食堂は約2000人も入るのかと、自分で作っておいてそんな驚きを覚えていた。


「こ、この酒も驚くほど美味い…ワインともエールとも違う強い酒精だ」


「蒸留酒だ。ここにしか無い酒だろうな」


俺の心配を余所に、伯爵や騎士団の面々は大いに楽しんでいるようだ。


何故か泣いている騎士までいる始末。


そんな騎士団の中を縫うようにしてメイド部隊が料理と酒の追加をして回っているが、人手が足りない状況だ。


「うぅむ…この城にしても仕える家臣にしてもそうだが、まさか料理までこのように最上級の代物とは…いや、ボワレイ男爵がいなくなっても余りある作戦の前進となろう。あ、いや、勿論そちらの建国にも私達が大いに力を貸せるであろうな」


伯爵がそう言って笑ったその時、食堂の一角からどよめきが起きた。


そのどよめきは徐々に周囲に広がり、こちらに届く頃には逆に静まり返って行った。


そして、人影が左右に別れて現れたのは良く見知った人物だった。


「ぼ、ボワレイ男爵…」


誰かがそう呟く声がする。まるで幽霊でも出たかのような声だったが、当のボワレイ男爵にそんな気配は無かった。


ボワレイ男爵は悠々と人の視線など意に介さずにこちらへと歩を進めている。


「いやあ、遅れましたな! はっはっは! レン様、私の方が先に伯爵様のお話に賛同しておったのですぞ! 私抜きで話を進められては困りますな!」


ボワレイは何故か上機嫌にそう言うと豪快に笑った。


「ぼ、ボワレイ男爵? いったい何があったのだ…?」


伯爵はボワレイ男爵のあまりの変わり振りに目を白黒させてそう言った。


「いやぁ! まるで夢から覚めたような心地ですな! さあ、我が騎士団は2000程度! だが周辺の冒険者や傭兵をかき集めれば一万にも届きましょう! 他の領主はまあ5000ずつでも出せれば良いでしょうな。それでも全て集めれば10万にもなる大軍勢です! ガラン皇国の旗の力を借りずとも押し切れるくらいですな! はっはっは!」


ボワレイはそう言って辺りを見回し、壁の方にある椅子を見つけて自分で持ってきた。


本当に何があったんだ、この男に。


俺がボワレイに疑惑の目を向けていると、先ほどボワレイが出てきた方向に狐獣人のソアラの姿を見つけた。


ソアラは妖艶な微笑みを残し、すっと音もなく姿を消した。


何をやったんだ、あいつ。


「う、うむ。しかし、十万では王都から鎮圧軍が出てくるだろう。ガラン皇国が協力しているという決定打が必要なのだ」


「そうですな。ガラン皇国の軍がいて鎮圧軍を出せば、ガラン皇国がこれ幸いと出てくる機会を与えます。そうなれば北西と東からの挟み討ち。挙句にガラン皇国を抑えるはずの辺境領は一緒に攻めてくる。こんな事態は呑めますまい」


「わ、分かっておるではないか…本当に何があったのだ」


混乱の真っ只中にいる伯爵と別人のような男爵。


そんな二人の会話を聞きながら、俺は俺で独立派の貴族達の利用方法を考えていた。






宴が終わり、昼間にジーアイ城に連れて来た一団を夜にはランブラスにまた送り届け、俺はやっと一息吐いていた。


今は本来の玉座の間に戻り、エレノア、カルタスに今日の話を聞いている。


「しかし、ボワレイ男爵は何があったんだ? 知っているか、エレノア」


「私は後で報告を受けて知ったのですが、ソアラがいくつかの魔術を使い洗脳したそうです。このまま死ぬまで仕事漬けにしてやりましょう。いえ、死んでも生き返らせて働かせます」


エレノアの説明を聞いて俺は絶句した。


「やり過ぎじゃないか」


俺がそう言うと、エレノアは怒ったように首を振り、長い金髪を揺らした。


「いいえ、ご主人様。まだ足りません。奴にはご主人様を神以上の存在と認識させねば」


「ははは! まあ、間違いを正せたんだ。ワシは良いことだと思いますぞ! あのままならどうせワシらの誰かに殺されて終わりでしたからな!」


「まあ、いいか。ボワレイ男爵だし」


俺は二人の会話を聞き、途中で諦めた。


この世界の文化基準ならむしろ優しい刑罰となるだろう。普通ならギロチン一直線だ。


俺たちがそんな会話をしていると、玉座の間に重いノックの音が響いた。


門の外には城内警備組の内の二人が立っているはずだから、わざわざしなくて良いノックという行為をしてきたのだ。


いったい誰が。俺とエレノア、カルタスは自然と扉を注視して何者かの入室を待った。


扉を開けて入ってきたのは、ソアラとボワレイ男爵だった。


二人は呆気にとられる俺達を真っ直ぐに見つめながら歩いてくる。


「我が君、ご機嫌はいかがでしょう」


ソアラはそう言って頭を下げた。少し後ろではボワレイがソワソワしながら待っている。


「ああ、問題無いが…どうした。それにボワレイ男爵も」


俺がそう聞くと、ボワレイは勢い良く地面に平伏し頭を床に押し付けた。


「申し訳ありませんでした、閣下!」


「…閣下?」


ボワレイの土下座とともに口から飛び出た台詞に、俺は目を瞬かせて首を傾げた。


ボワレイは俺の声を聞き、頭を床から離さずに身を震わせながら口を開く。


「閣下ほどの大人物を己の物差しでしか計れず、その上無礼な発言を延々繰り返す始末…! このボワレイ、どんな罰でも受けましょう!」


「そ、そうか。まあ、頭を上げて良い」


「いえ! このままで! 是非私の頭を踏み躙りください!」


いや、そんな趣味はございません。


なにが悲しくて脂ぎったおっさんの後頭部を踏まねばならんのだ。


俺が困惑の視線をソアラに向けると、ソアラは笑顔で頷いた。


「お任せください」


弾むような声を出したソアラは、土下座したボワレイの頭を片足で踏み付ける。


「あ、ありがとうございます!」


え、何このプレイ。


公開SMプレイ in 玉座の間?


「さあ、地面に頬擦りをしてお尻を高くあげなさい。良い態度なら我が君が罰を与えてくださります」


「ああ! ありがとうございます!」


「いや、やらねぇよ」


俺は目の前で繰り広げられる地獄絵図に眩暈を起こしそうになった。


ソアラは嬉しそうにボワレイの頭に乗せた足を捻りながら、俺を見上げる。


「我が君、どうでしょう。素晴らしい成果を上げた私と今夜は…」


無理。怖い。


「よし、エレノア。そろそろ寝ようか」


俺がエレノアにそう話を振ると、エレノアは輝かんばかりの笑みを浮かべて頷いた。


「っ! は、はい! 喜んでお供します!」


「いや、添い寝までな、添い寝」


「え!? いや、でもなし崩し的に…」


「なし崩さねぇよ」


俺はエレノアとそんなことを言い合いながら、呆然とするソアラとまだ踏まれているボワレイの横をすり抜けて扉へ逃げた。


「いや、仕方なかろう。ワシとてドン引きじゃわい」


玉座の間を出る時、背後でカルタスのそんな言葉が聞こえた。


いや、カルタス。ドン引きとかいう単語を良く知ってるな!



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