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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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異世界の民、初めてのジーアイ城

次々と天から舞い降りる多種多様な人種。


ヒューマン、獣人、エルフ、ドワーフと、世界中の種族を集めたような雑多な人の群れが空から降ってくる。


およそ現実とは思えないその光景に、私だけでは無く騎士団長も一般騎士も、離れた場所から我々を見ていた門番も、誰も何一つ発することはできなかった。


そんな中、ボワレイが顔の表情が確認出来るほどの場所に降り立っていく人々に向かって怒鳴った。


「貴様ら、何の真似だ! こちらにはビリアーズ伯爵様がおられるのだぞ! 無礼者共がぁ!」


お前が馬鹿だ!


全員が飛翔魔術を行使出来る魔術士集団なぞ、エルフの国の宮廷魔術士を集めた一団くらいであろう。


それでも20人以上もいれば脅威といえる。


我が王国には何人もいないからな。


その卓越した魔術士の集団相手に馬鹿が吠えたものだから、ザクソンですら射殺すような眼光をボワレイの横顔に向けている。


「ボワレイ男爵! 少し静かにしておれ!」


私がボワレイを叱り付けると、ボワレイは驚きつつも愛想笑いを浮かべて何度も頭を下げた。


貴族のやる事ではない。が、今はそこに頓着している場合ではないのだ。


こんな魔術士集団を持つのは何処の国か。3国か4国合同で演習なんぞするわけが無い。


ならば、五大国の内、レンブラント王国を除いた4国による同盟軍か。


それならば最悪である。飛翔魔術を使う脅威的な魔術士集団が西から陽動を仕掛け、北と南、そして東から同時に大軍が攻め込んできている筈だ。


私がレンブラント王国滅亡の筋道を頭に思い浮かべて冷や汗を流していると、空から舞い降りてくる一団の最後の一人が降りてきた。


その顔を見て、私はまたも呆気にとられた。


「なんだ、まだ街から出てなかったのか」


伯爵である私相手にも冒険者らしい無礼な態度をとる、ギルド長が言うには異例の新人、レンという冒険者だ。


レンは背後に魔術士の集団を従えると、陣形を一瞬で作り上げてこちらに向かって歩を進めた。


驚く程の練度の魔術士達に私が絶句していると、レンは私の正面に立って真っ直ぐにこちらを見た。


「すまないな。グラード村にきた傭兵団は全て捕縛してしまった」


「…ほう。それは重畳。こちらも無駄に行軍して余計な出費を出さずに済んだといったところか。まあ、動かしたのは私兵ばかりで私なぞは常駐軍であるからな」


私は出来るだけ自然体に、余裕を見せるようにしてレンとの会話を続ける。


レンの背後に並ぶ集団の態度を見れば、この者がこんな異常な魔術士達を纏めていることは想像に難くない。


問題は、レンが何処ぞの国の将軍や王族だった場合だ。


これでレンと後ろの者達がただの傭兵団ならば、それは私にとっての天啓ともいえる出会いかもしれん。


私が頭の中で様々な事態を想定して考えを展開していると

、またも馬鹿な男爵が口を開いた。


「っ! この馬鹿者め! 伯爵様程の大貴族が動く事態を勝手に終わらせてしまいおって! 伯爵様がお優しいから貴様の首が繋がっておるのだぞ! 貴族の面子を…」


「黙っておれ!ボワレイ!」


この殺気が感じられないのか、この馬鹿者は!


レンの背後から目に見えそうな程の怒気、殺気が膨れ上がっているのだ。


戦の経験もあるランブラス常駐騎士団なぞは最早ボワレイを背後から斬り捨てそうな程の怒りを目に宿している。


貴族の面子なんて話を持ち出すと落とし所が必要になることくらい理解せんか!


「そうか、それは申し訳ないな。ならば、せめてこちらの拠点で歓待させてもらおうか。ああ、騎士団も一緒で良いぞ」


「…拠点? 何処かの街に作ったのかね? 私はそんな話しは聞いていないが」


レンの用意した何とも貧乏臭い提案と台詞の内容に私は思わず聞き返した。


ボワレイは既に不満であると顔の全面に出している。


こんな魔術士の集団が一箇所に集まっていて私の耳に入らないという事態にも頭が痛む思いだ。


私が自らの陣営や領地について悩んでいると、レンは私が聞き返した内容を軽く否定して笑みを浮かべた。


「いや? 拠点はグラード村の奥だ。どの国の領土でも無いと聞いたがな」


「なんと、深淵の森か? あそこを開拓して拠点にしているということか? しかし、そこまでは流石に遠いので遠慮させてもらおうか」


私はレンの言葉に驚きを隠せなかった。なにせ、あの深淵の森だ。


何度もレンブラント王国やガラン皇国が領土を拡げようと開拓団を送り込んだが、無駄に人死にを出しただけだった。


若い頃、自ら精鋭を率いて森に入ったこともある。


しかし、潜り込むだけでも厳しい森だった。夜まで待てずに撤退を余儀無くされた時には、私も含め全員が決死の覚悟で逃げ出した程の恐ろしい森である。


浅い部分だけであろうが、そこを切り拓いて拠点を作り上げたというならば、なるほど。レンの自信も納得がいくというものだ。


だが、それならば。


それが本当ならば、昔はどうか分からないが今は、レンは他国の王族という線は消える。


他国の王族がレンブラント王国を狙ってきたのならば、わざわざ深淵の森に拠点を構える必要など無いからだ。


私は知らず知らずの内に、目の前に文字通り降って湧いた黄金の山にほくそ笑んだ。


「しかし、深淵の森に築いた拠点とは是非見てみたい。また明日にでも、もう少し小規模で準備してそちらへ向かわせてもらおう。なに、こちらは領内の移動だからな。然程待たせることもあるまい」


私がそう言うと、レンは片手を上げて私に手のひらを向けた。


「気にしなくて良い。行軍に必要な金も時間も俺が全て解決しよう。さあ、全員大人しくしておけ!」


レンは私に意味の分からないことを言い、この場に並ぶ2400近い騎士や兵士達に大声でそう指示をした。


金は理解出来るが、時間とは何のことだ?


私がそう思ったその時、レンが何かを取り出した。


派手すぎず、かつ他の素材では決して出せない僅かな赤みがかった金色の杖。


「まさか…いや、そんな…」


私は頭の中に浮かんだ単語を自ら振り払った。だが、私の目は意識に反してそこから視線を動かせなかった。


「プルーラルフライ」


レンが小さな声で何かつぶやき、私の体は全身に無数の糸でも括り付けられたかのように空へ引っ張り上げられた。






まさに驚天動地の事件だった。


見れば、騎士団まで同様に空を舞っている。


なんという異常な光景だ。中には恐怖で失神している騎士も多数見受けられる。


期待通りと言うか、貴族にあるまじきというか、予想通りボワレイは失神してしまっていた。


空へ浮かぶという状態は僅かな時間だったように思う。


それとも興奮と緊張感で時間が短く感じただけだったのか。


気がついたら遥か下方にはグラード村らしき集落を通り過ぎ、深淵の森の上空を飛んでいた。


これが飛翔魔術か。


こんな大人数を常に、いや、1日に一回でも運べるならば、この世界は私のものに出来るだろう。


「着いたぞ」


ふと、前方を飛んでいたレンからそう声を掛けられた。


見れば、こちらを顔だけ振り向いているレンの向こう側には、幻想的ともいえる美しい城がそびえ立っていた。


馬鹿な。


広さばかりか、高さにおいても、私はこのような雄大な城を見たことが無かった。



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