ランクアップ
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後日、ミリアに呼び出されたので冒険者ギルドへ赴く。朝一番に来た為、ギルドの中は依頼を物色する冒険者たちで賑わっていた。
がやがやと騒がしかったが、不自然に静まり出す。
「おはよう」
受付までまっすぐ歩き、ミリアを見つけて挨拶を口にした。
しかし、ミリアは唖然とした表情で目を瞬かせる。
「……呼び出されたから来たんだが」
そう口にすると、周りで静かにしていた冒険者達が好奇な目をミリアに向けた。
「すげぇな。国王を呼びつけたのか」
「え、あの人、王様かい?」
「知らないのか。エインヘリアルの王様で……」
ざわざわと声がする中、ミリアはぶるぶると顔を左右に振る。
「ち、違いますよ……! 呼びつけたりしてないですからね!? お伺いするので、いつ行けば良いかと執事の方に手紙を……」
そんなことを言うミリアに、思わず吹き出す。
「ああ、なるほど。渡した相手が悪かったな」
笑いながらそう返事をすると、ミリアは眉根を寄せたまま首を傾げた。
「まぁ良いさ。それで、話はランクアップについてか?」
尋ねると、ミリアは慌てて頷く。
「あ、は、はい! それです! すごいですよ! なんと、本当にSランクに昇進です!」
「おぉ、意外とあっさり……」
「あれ!? 反応が薄くないですか!?」
両手を広げて感動を伝えようとするミリアの勢いに、思わず控えめに驚いてしまった。それが不服なのか、ミリアは驚きの言葉を口にする。
「いや、驚いた驚いた。もしかして、このペースでダンジョンを攻略していったらSランクより上にいけたりするのか?」
「いえ、それは……もうこれ以上はありませんし、作る意味もありません。例え新たなランクを作っても、全ての依頼を受けることが出来ることに変わりありませんし、冒険者ギルドとして出来る全ての権限を与えています。指名依頼料を上げることは出来ますが、依頼料を払える人もいなくなってしまいますし……」
困ったように説明するミリアに、首肯を返す。
「それはそうだな。じゃあ、ひとまず冒険者稼業は休むとするか」
笑いながらそう口にすると、ミリアが目を瞬かせてから固まった。
「次はどうしますかな」
冒険者ギルドを出てすぐに、ワクワクした様子でサイノスがそんなことを言った。
尾が左右に揺れる様子は、まさに人懐こい犬である。
海とか喜びそうだな、なんて思いながらサイノスを眺めていると、珍しく同行を願いでてきたサニーが口を開く。
「ダメ。各国との会談とか、色々、仕事がある」
と、サニーの口から最も出なさそうな仕事の話が出てきた。それには皆が驚く。
そして、エレノアが懐疑的な目を向けた。
「……サニー? 貴方、もしかして、カルタスかローザに買収されました?」
その質問に、サニーは首を左右に振る。
「違う。カルタスに頼まれたディオンにパンをもらった。はにぃとーすと……とてもおいしかった」
「……ご主人様がしたいことを出来るようにするのが私達の役目でしょう?」
サニーの言葉に、エレノアの目が吊り上がる。一触即発の雰囲気になりそうだが、そこに待ったをかける。
「いやいや、まぁ待ってくれ」
そう口にすると、二人はこちらを見た。確かに、色んな場所に行ってみたいとか、自堕落に過ごしたい欲求もある。
とはいえ、流石に遊び過ぎたという自覚もあった。
カルタスがディオンに頼むくらいだから、俺でなければならない仕事があったのだろう。
そろそろカルタスと交代してあげないと可哀想かもしれない。
「さて、少しは国王の仕事もしないとな」
そう呟き、城に戻ることにしたのだが、戻ってそうそうに後悔することになる。
「おぉ、レン国王陛下! お久しぶりです!」
「久しぶり、か? まぁ、よく来たな」
嬉しそうに話すクレイビスと会談というか、雑談をすること約2時間。楽しそうに話している為、なかなか話を切り上げづらい。
しかし、面会したいという相手は何人も控えている。
「……これは、一週間や二週間じゃ終わらないぞ」
聞こえないように小さく呟き、内心で溜め息を吐いたのだった。




