モグラ退治
最強ギルドマスターの一週間建国記2!
6月25日発売です!
書籍版だけのオリジナル書き下ろし番外編付き!
是非、書店にて手に取ってみてください!
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「どわ!?」
剣を振って爪を弾いたのだが、モグラは巨体に似合わない動きで反転し、自分が掘った穴へと戻っていった。
大量の土を目くらまし代わりに撒き散らしながら潜っていったモグラ。
舞い上がった土砂が地面に落ちる頃には影も形もない。
「素早い奴だな」
俺はそう呟き、辺りを見回した。モグラが地面を掘る音はするが、中々出てくる気配が無い。
遠くではエレノア達が順調にモグラにダメージを与えている。
「対抗心というわけでは無いが、こちらもモグラを燻り出す方向で動くとするか」
そう呟いて広範囲に広がるタイプの炎をモグラの掘った穴に向けて放ってみた。
すると、炎を撃ち込んでから一分もしない内に少し離れた地面が盛り上がり、地面からモグラが姿を現した。
予想以上にダメージを与える事が出来たのか、モグラは炎が噴き出す穴から這い出てから地面を転がっている。
「チャンス」
俺は口の端を上げてそう口にすると、剣を構えて斬りかかった。
こういう明らかな隙をボスモンスターが見せると、思わず最強の一撃を放ってしまうのはゲーマーの癖のようなものだろうか。
気分はカップリコンの人気ゲーム、モンスターハンティングである。
大喜びで弱点らしき鼻、首、腹を連続で斬っていくと、モグラは耳を劈くような絶叫を上げてひっくり返った。
そして、モグラは動かなくなった。
「…………ん?」
剣の先で突っついてみるが、動く気配は無い。どうやら倒してしまったらしい。
「マジかよ」
肩を落として脱力感を噛みしめ、エレノア達を振り返る。
ちょうどそのタイミングで、エレノア達も空中に飛び上がったモグラに決定打を与えていた。エレノアが首を、ラグレイトが腹を、サイノスが背中を攻撃したのだ。間違い無く倒しただろう。
と、案の定、モグラは鼓膜に響く絶叫を発して地面に落下した。
「よし! 私がトドメですね!」
エレノアが剣を納めながらそう言うと、ラグレイトが自らの拳を顔の前にあげる。
「いや、どう考えても僕のパンチで内臓破裂でしょ」
「私は首を切ったんですから間違い無いでしょう?」
二人が睨み合っていると、意気揚々とサイノスが近付いていく。
「拙者の背中への一撃が決めてだろう」
「それは無い」
「ですね」
サイノスの得意げな顔に苛立ちを隠そうともせず、ラグレイトとエレノアが否定した。
「そんな馬鹿な! 確かに手応えが……おお、そうだ。殿に判定してもらおう!」
サイノスがそう言うと、エレノアとラグレイトも深く頷いてこちらを振り返る。
「ご主人様! 私の活躍を……」
「我が主、僕が一番……」
「いやいやいや、拙者の妖刀が……」
三人は自己アピールの言葉を言いながらこちらを振り返り、俺の姿を見て固まった。
いや、俺の後ろに倒れるモグラを見て、というのが正しいだろうか。
「ご主人様!?」
エレノアが大声を出してこちらへ走ってくる。
「まさか、我々三人よりも早くもう一体倒されているとは」
感嘆の声を上げるエレノアに、後ろに付いてきたラグレイトとサイノスも同意した。
「凄かったね。僕は二番かな」
「いや、拙者が二番だろう。それにしても殿の手際は流石としか言いようがありませんな」
全力で持ち上げてくる三人に適当に相槌を打ち、俺はモグラを振り返った。
暗い茶色の艶やかな毛並みは硬いが美しい。更に、俺の剣を受けても折れなかった鋭く大きな爪。
「こいつ、良い素材になりそうだな。討伐証明がてら一体は冒険者ギルドに持っていって、後はモグラ装備作ってみるか」
「ほほう、モグラ装備」
「僕は嫌だな」
「ちょっと可愛いですね」
三人は俺のセリフにそんなことを言いながらモグラに目を向ける。三者三様の感想に頷き、モグラをアイテムボックスに収納した。
「よし! 無事、ダンジョン攻略完了だな! 帰りも安全第一で行くとしよう」
そう言って胸の前で両の手のひらを打ち合わせて音を立てると、サイノスが片手を突き上げて口を開いた。
「安全第一!」
【冒険者ギルド】
「な、な、なんですかコレ!?」
巨大なモグラを見たミリアは目玉が飛び出そうな程驚いて声をあげた。
ランを含めた他の職員や冒険者達も同様に、ギルドの解体場に置かれたモグラを見上げてアングリと口を開けている。
「ダンジョンのボスモンスター、土竜だ。二体いたから一体はギルドに提供しよう。報酬はいらん」
「提供!? タダですか!? というか、ドラゴンじゃ無いんですか!?」
興奮してまくし立てるミリアに苦笑を返し、モグラの隣に小型のドラゴンの死体を並べる。
「ドラゴンは沢山いたが、どれも小物だな」
「小物!? これが!?」
「うん、まぁ……」
凄い剣幕で言われて思わず弱気になってしまった。すると、俺が引いていることに気がついたミリアが咳払いをして居住まいを正す。
「こほん……少々取り乱してしまいました。良く考えたらレン様なら当たり前でしたね。それでは、無償で提供して頂けるとのことでしたが、規則ですので一先ず査定をさせていただきます。その後で、レン様には改めてこの魔物をどうされるか判断していただけたらと思います」
説明を口にしたミリアは、真っ直ぐにこちらを見て俺の反応を待った。
俺はテキパキとそう告げるミリアに思わず目を丸くしてしまう。
「おぉ、受付嬢っぽいな」
無意識にそんな失礼なコメントをしてしまったのにミリアはほんのりと頬を赤く染めて俯いた。
「……ただ、こちらは査定が長引きそうなので、一旦ギルドの方で預からせて頂きます。また後日、鑑定が終わったらレン様のお城の方へご連絡をさせて頂きますね」
モグラを見上げながらそう言われ、深く頷く。
「ああ、頼んだ。ランクが上がるように良く言っておいてくれ」
「絶対に上がりますよ。ダンジョンの攻略もありますから……」
そこまで口にして、ミリアが思い出したようにこちらを見た。
「あ、この魔物の衝撃で忘れていました! ダンジョンの大まかなマップなどは作れますか? 出来たら詳細な物の方が評価はあがりますが……」
そんなことを言われて、俺は後ろを振り返る。
「覚えてるか?」
尋ねると、エレノアとサイノスが頭を捻って唸った。だが、ラグレイトだけは自信満々な様子で頷く。
「当たり前だよ。なにせ、ダンジョンの壁は全部階段から階段までぶち抜いたからね。帰り道は一直線に帰ったから、瓦礫が少ない一本道を進んだら奥まで行くよ」
ラグレイトがそう答えると、サイノスが「おお!」と声を発した。
「そうだった! 滝や水路も吹き飛ばしてきたから、最下層に降りるにはロープか何か使えば誰でもいけますな!」
「それでも飛翔魔術が使えないと厳しいのでは?」
「いや、僕ならロープが無くても……」
ダンジョン攻略の内容とは思えないようなとんでもない会話をする三人に、ミリアは頭を抱えて天を仰いだ。
「……評価なんて出来るのかしら……」
小さく呟かれたミリアの台詞に、俺は苦笑を返して答えたのだった。
次回もまた少しずつ更新していきますので、また是非読んで下さいね!




