サニーの趣味探し
かなり短めの短編です!
陽の光を浴びて、サニーは薄く目を開けた。
窓から射し込むキラキラと輝く陽光に、眉の間に小さな縦ジワを作って口を尖らせる。
「……眩しい」
窓から見える太陽は既に真上近くになっていた。緩慢な動作で毛布から這い出ると、アンダーウェアの上にそのまま白いローブを羽織り、手には杖を持つ。
ずりずりと豪華な装飾の施されたオリハルコン杖を引きずり、サニーは自室から廊下へと出た。
ペタペタという足音を立てながら歩き、サニーは自分の足を見下ろす。
「……靴……まぁ、いいや」
一言そう口にして、また歩き出す。
「あ、サニー。どこ行くの?」
薄いピンク色のツインテールをふわふわと揺らし、一人の小柄な少女が廊下の先からサニーに声をかけた。
軽装の皮鎧を来た小柄なその少女は、腰に丸く纏めた鞭を付けている。耳はサニーと同じく長く尖っていた。
サニーは顔を上げてボンヤリとした表情で口を開く。
「……朝のお風呂。リーザも入る?」
「朝の!? もうお昼だよー!」
リーザが目を丸くしてそう答えると、サニーは口を尖らせる。
「私は今起きた。つまり、朝」
「絶対違うと思うけど!?」
サニーの持論にリーザが突っ込むと、サニーは目を細めて口を開いた。
「……ハイエルフは王様。エルフは下僕」
「それリーザには関係無いよね!? しかも下僕って何さ!」
「風呂行く。下僕のリーザは私の背中を流しても良い」
「いや、良いけどさー……よし、ピッカピカにしてやろうじゃないのー!」
何故かリーザはやる気を燃やしてそう言うと、サニーの背中を押して一路風呂を目指した。
風呂でゆったり浸かるサニーが湯の中で昆布のように漂っていると、それを苦笑しながら眺めるリーザが口を開いた。
「それで、サニーは今から何するの?」
「……さっぱりしたし、ご飯食べて、寝る」
「寝るの!?」
「寝る」
驚愕するリーザを放置し、サニーは揺ら揺らと湯の中で手足を揺らした。
食堂に行くと、そこにはメイド部隊の三人の少女の姿があった。
「あ、サニー様! お食事ですか?」
その中の一人がそう尋ねると、サニーは鷹揚に頷き、近くにあったテーブルについた。
「……シェフの気まぐれパスタを」
「気まぐれ……つ、作ってみます!」
メイドが慌ててそう答えると、奥からメイド長のプラウディアが現れた。料理を乗せた配膳台を運んで来たプラウディアは、サニーを見て優雅に腰を折り頭を下げる
「おはようございます、サニー様。レニ、サニー様のお食事は私がお作り致します。そちらで休んでなさい」
プラウディアはそう言って、配膳台の上に置いた料理を自らの部下であるはずのメイド達に配る。
サニーは不思議そうにその様子を眺めた。
「……プラウディアが一人で? メイド部隊でやれば良い」
そんなサニーのセリフに、プラウディアは軽く口の端を上げて首を左右に振る。
「メイドとしての仕事は出来る限り私が致します。誰にも譲ってはあげませんよ」
「……好きでしてるなら良い」
サニーが呆れ気味にそう答えると、プラウディアは不敵に笑ってまた奥へと消えた。
そして、僅か十分ほどでプラウディアは帰ってくる。用意されたパスタは何故か真っ黒だったが、サニーは黙々と食べて満足そうに頷いた。
黒く汚れた口周りをプラウディアに綺麗にしてもらい、どこか軽い足取りで食堂を後にする。
部屋に戻る途中サニーが廊下の先を見ると、二人の人影が廊下の角を曲がるところだった。
それを見た瞬間、サニーの歩く速度は五割増しになる。今までダラダラした雰囲気が嘘のように爛々と目を輝かせ、廊下を進む。
角を曲がると、そこにはエレノアを連れたレンレンの姿があった。
「マスター」
サニーが呼ぶと、二人は振り返る。
「お、サニー? 何してるんだ?」
「暇、構って」
「ご主人様は遊んでいるわけじゃありませんよ?」
サニーの台詞にエレノアは眉根を寄せて注意したが、レンレンは苦笑して口を開いた。
「なんだ、やることないのか」
「マスターのお手伝いをする」
「城下町に行くつもりだったんだが、行くか?」
「行く。ちょっと待ってて。靴を履く」
「なんで裸足なんですか……」
「どうでも良いことかもしれんが、歯磨きして来い。歯が真っ黒だぞ」
「……歯磨きしてくる」
サニーの1日は今日も平和だった。




