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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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聖竜王の決断

2月25日にオーバーラップ様より発売されます!

皆様のお陰です!ありがとうございます!

 竜の国の王たるアルドガルズが、今現在大きな岩の上に座って無数の竜達を見下ろしている。


「……申し訳ない。どうやら山を怒らせたのは我のようだ。我が国に壊滅的な被害を出してしまった……」


 アルドガルズがそう陳謝すると、竜達はざわざわと騒がしく動揺した。聖竜王が謝罪したことへの驚きからか、山を怒らせたことに対する驚きからかは分からない。


 ただ、言葉を喋れる竜達は皆アルドガルズを見つめたまま何かを口にしている。


 アルドガルズはそんな竜達を見回し、言いづらそうに口を開いた。


「……この地はいつ無くなるか分からないという。故に、我は竜の国を移すことを決めた」


 アルドガルズがそう宣言すると、さらなる動揺が竜達の間に広がる。


「……我と共に行くのも行かないのも自由だ。ただ、新たな地は深い森があり、食べる物には事欠かないという」


 アルドガルズがそこまで言った所で、俺はアルドガルズの前に出た。


 ゲームでも映画でも見たことが無い、無数の竜達の大群を眺め、俺は声を上げる。


「俺が少し説明をさせてもらおう。まず、あの山がああなったのはアルドガルズのせいだが、正直、あの山はいつ噴火してもおかしくなかった。アルドガルズが切っ掛けを与えずとも、いずれ山は噴火していただろう」


 俺がそう言うと、アルドガルズは救いの神を見たかのように顔を下げて俺を見た。


 そして、竜達も俺を見上げ、次にアルドガルズに目を向ける。やはり、王であるアルドガルズを尊敬しているのだろう。全てがアルドガルズのせいでは無いと知って安心しているようにも見える。


 その様子を確認して、俺は笑みを浮かべた。


「アルドガルズと戦った俺にも責任の一端がある。だから、俺が新天地をお前達に用意しよう。場所は此処から遥か西南の地。深淵の森と呼ばれる深い森だ。強い魔物も多いが、お前達には大した相手では無いだろう。そこに城や住居を提供する」


 俺がそう告げると、竜達は感嘆の声らしき鳴き声や唸り声をあげた。あまり否定的な雰囲気では無さそうだから問題はないだろう。


「……城まで用意してくれるのか」


 と、アルドガルズが小さく呟いた。俺は頭上を見上げて、アルドガルズの顎の先を見る。


「ああ。まぁ一ヶ月か二ヶ月くらい掛かるかもしれんが、満足出来るものを用意してやろう」


「……かたじけない」


 アルドガルズのそんな台詞に、俺は笑って頷く。






 そうして、竜の国は場所を移すことが決まった。最初は竜の国の民の何頭かが反対をし、生まれ育った地を離れないと言うものも現れたが、なんとか全員が移ることを決めた。


 それから一ヶ月かけて竜達は深淵の森へと移動し、それを見たメーアスやレンブラント王国、ガラン皇国が潰れて出来た複数の小国などの人々が何が起きたのかと大騒動になった。


 空輸産業を支えているダークエルフ達が簡易的な説明はしたので問題は起きなかったが、また新たな伝説が誕生してしまった。


 竜騎士が竜全体を統率し、国ごと移動させた。


 そんな奇想天外な噂をなんと過半数の人々が信じてしまっているという。別に場所を提供しただけなのだが、こちらとしては悪い噂では無いので放置している状態だ。


 飛べない竜がいたから多少手伝ったが、それは必要な措置だったのだから仕方がない。


 と、そんなある日、サイノスが玉座に座る俺のもとへ走ってきた。


「殿! 指示された深淵の森の一部を切り開きましたぞ!」


「お、早かったな。じゃあ、そこの地面をくり抜いてすり鉢状にして地底城と住居を作るぞ。もう設計図はディグニティが作ってるから、伝えておいてくれ」


「はい! 行って参ります!」


 俺の指示を受け、サイノスは嵐のように慌しく玉座の間を出て行った。隣ではエレノアが目を瞬かせてサイノスの出て行った扉を眺めている。


 その様子に笑いながら、俺は頭の中で地図を思い浮かべる。


 これまでは深淵の森の奥にジーアイ城があるからと後回しにしていたが、ジーアイ城から見て北側には延々と森や険しい山々があるだけなのだ。


 これでは多少防衛の面で弱い気がしないこともない。そこで、ジーアイ城の北側にあらたな竜の国を作ることにしたのだ。


 東側の防衛力を支える城とダンジョンを持つイシュムガルドには少々申し訳ないので、アルドガルズに作る城はイシュムガルドに建てた城より小さくしよう。


 その代わり、竜の国全体を作るのだから無理にでも納得してもらおう。


 何はともあれ、こちらは更にジーアイ城の守りが強固になり、竜の国は以前よりも暮らしやすい場所で繁栄出来る筈だ。


 そんなことを考えていると、隣に立っていたエレノアが口元を緩めてこちらを見ていた。


「楽しそうですね、ご主人様」


 エレノアのそんな言葉に、思わず笑ってしまう。


「確かに、楽しいな」


 そう口にすると、エレノアも釣られるように笑いながら頷いた。


「良ければ、新しい竜の国の構想についてお聞かせください」


「うん。新しい竜の国はな、螺旋階段みたいに地下深く掘り進めようと思ってるんだ。竜の大きさを考えて、一つ一つの階層はかなり大きいが、それを考慮してもかなり深い階層になる」


「広さも随分と広くなりそうですね」


「ああ。それでも入れない竜がいるからな。今ある竜達の家をそのまま使う。深い層にいるのは基本的に空を飛べる竜だな。最下層にアルドガルズの城を作るぞ。出来たら地上からも見えるくらい白いミスリルの城だ。水の問題は既に解決してるが、採光が課題だな。かなりの深さのせいで光を集めるのが一苦労だ」


「ヒカリゴケなどはどうでしょう? 以前報告書にあがっていた気がしますが」


「お、そんなのあったか? ああ、イシュムガルドの地下ダンジョンを作る時にそんな報告書があった気がするな」


「はい。もしくはクリスタルなどどうでしょう? 地上から光を集められて余分な穴を開けずにすみますし」


「どういうやつだ? 天窓みたいにするのか?」


「いえ、地下まで貫きますよ」


「貫く!?」


 祭りの準備をするような気分で、俺はエレノアと新たな竜の国の建設について話し合うのだった。



2月25日ーふふふー

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