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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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結婚式の裏話①

【エレノアの証言】


 私、エレノアは今は役職に妃という単語が付きました。


 そう!


 ご主人様との結婚です!


 ああ、なんということでしょう。こんなことが現実に起きるとは……!


 あれは、まさに結婚式の三日前。


 私がいそいそと報告書をまとめ、仕事の手伝いにきていたミラと今後の国の事業について話をしていた時のこと。


 そう。今思えば、あの日は何処か違いました。


 まるで、未来に起こる三千世界で他に類を見ない幸運が舞い降りる前兆と言うべき仕事量でした。


 さらに、昼間から立て続けに問題が起き、ご主人様にお願いして何人かに手を借りて問題の解決を行う程忙しかったのです。




 ご主人様の国。つまりはご主人様と我らの御子ともいえるエインヘリアルでのお仕事。


 ならば、この仕事量はむしろ嬉しい。


 回り回ってご主人様に尽くしているという実感が湧きます。


 そう思って一日の仕事を終え、眠り被りながら書類を手にするミラと一緒に椅子に座っていると、ご主人様が不意に私の下へ訪れられました。


 そして、その麗しき唇の形を私の為に変え、神託を口にされたのです。


「今度、結婚式をする。準備を頼む。相手はお前と……」


 私の頭の中は真っ白になってしまいました。


 結婚式?


 お前!?


 私のことですか!?


「ご、ごしゅじっ!?」


 ああ、何と情けないことでしょう。


 私は慌て過ぎて椅子ごと転倒し、隣に立っていたご主人様に顔から飛び込んでしまいました。


「おっと……! 大丈夫か? とりあえず、忙しそうだから、後で詳細を……」


「い、いえいえいえいえ! わ、私は年中無休で働けます! さぁ、さぁ結婚式についてお聞かせください!」


「結婚式!?」


 私が叫ぶと、ミラが目を見開いて顔を上げ、私とご主人様を交互に見る。


「ああ、そうだ。ミラもだぞ」


「ひょっ!?」


 ミラから聞いた事も無い声が聞こえました。


 流石はご主人様です。不意を打つというサプライズプレゼントの極意を会得しておられます。


 しかし、それにしても何というロマンチックなプロポーズでしょうか。


 顔が熱くて茹で上がってしまいそうです。見れば、ミラの顔も目と口が真ん丸になり、間抜けな表情のまま耳まで真っ赤に染めています。


 駄目です。


 これは、結婚式の準備以外の仕事が手につきません。


 よし、カルタスとローレルに仕事を丸投げしましょう。


 ああ、今夜は一段と月が綺麗です。





【セディアの証言】


 ビックリしたね。


 この世の終わりが来てもこんなに吃驚しないだろうってくらいに。


 一緒にいたサニーは堂々としてたけど、私はもう何が何だか……。


 それにしても、大将ももう少し言葉ってものをさ……。


 何が嫌って、それで泣いてしまった自分が一番嫌だよ。




 街のパトロールとちょっとした買い物をして城に戻ると、正門をくぐってすぐの場所でサニーが何かしていた。


 近付いて見ると、サニーは珍しく普段のローブでは無くご主人様特製の薄い緑色のドレスを着ているし、頭には普段は面倒臭がって付けない魔力向上のティアラを付けている。


 そして、今は指輪や腕輪、ネックレスを出してどれを付けるか悩んでいるようだった。


 眉間に小さなシワを作ったサニーが、唸りながら指輪の穴を覗き込んでいる。


「……マジックアイテム装備して戦うような相手かい?」


 私がそう聞くと、サニーはムフーっと音が鳴るほどの大量の息を鼻から吐き、立ち上がった。


 そして、私の格好を確認するように上から下まで眺めて、不敵な笑みを浮かべる。


「……勝った」


「何が?」


 サニーの謎の台詞に私が頭を捻っていると、正門の方から大将がサイノスを連れて歩いて来た。


 そして、私とサニーを見てサイノスに顔を向ける。


「城にいるじゃないか」


「な、なんと! いや、確かにさっきまで城にはいなかった筈ですが……むむむ?」


 二人はそんな会話をしながら歩いてくると、私たちの前で立ち止まった。


 隣では、さっきのマジックアイテムを全て装着したサニーが胸を張って大将を見上げている。


「何か用ですか、大将?」


 私がそう聞くと、大将はサニーの謎のドヤ顔に目を瞬かせつつ、口を開いた。


「ああ、今度結婚式をするから、準備を頼む」


「へ? 大将とリアーナ王女の? 何ヶ月後です?」


 私が驚いてそう聞くと、大将は私の目を見て首を左右に振る。


「いや、三日後だな。お前とサニーも良ければどうだ?」


 大将のその言葉に、私は頭が真っ白になった。


 そして、流石に大将といえども、食事に誘うように結婚式に誘うのはどうかと思い、コンニャロウと思った。


 だが、気が付いたら私は自分でも制御出来ない涙を垂れ流しており、怒りの矛先は自分に向いた。


 いやいやいやいや、今の言葉で泣くのはおかしい。


 だが、大将と結婚するなんぞ、想像もしていなかったのは確かだ。


 私でこれなら、サニーはもっと泣いているだろう。


 そう思って隣を見ると、サニーはドレスの裾を指で挟み、優雅に大将に向かって頭を下げていた。


「喜んで……マスターに永遠の愛を誓います」


 サニィイイイッ!?


 何百回と練習した歌劇の台詞のように抑揚のある言葉がスラスラとサニーの口から出たのを聞き、私は気が付いた。


 サニーは、どこかで大将の結婚式について知っていたのだ。


 だから、いつ結婚式の話を振られても良いように準備をしていたのだろう。


 私が涙を流しながらサニーを見ていると、サニーは勝ち誇った笑みを浮かべて私を見た。


 こいつは……。





【ローザの場合】


「ローザ、結婚式するぞ」


「誰のだい?」


「俺とエレノア、ミラと、サニー、セディア、ソアラ……」


「あっはっはっは! やっぱボスは豪快だね!」


「ああ、お前もどうだ? 俺と」


「アタシもかい? そりゃ良いね! あっはっはっは!」


「そうだろ? どうせなら一回にまとめた方が楽だよな?」


「あっはっはっは! ボスらしいね、それ!」


 完。



次回はソアラ、リアーナ、シェリー編です!


本編完結済みです。良かったら評価をしてくれると嬉しいです!

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