それからのレンレン
帝国の新皇帝問題や国際同盟の現在の加盟国についてと、空輸産業の進捗状況の報告を受けた。
全て大した問題もなく進行しており、空輸産業においてはエインヘリアル、レンブラント王国、メーアス、エルフと獣人の国などで既に試験運用が始まっている。
試験運用の為に選ばれた一流の魔術士であるダークエルフ達が頑張ってくれているお陰で、空輸産業も今の所問題は起きていない。
なお、エインヘリアルは順調に街の整備が進み、人口も増えて国庫も潤っている。ただ、他の国との差が激しくなりつつあり、移民の制限をしなければ他の国が内部から崩壊する恐れが出てきた。
まぁ、他の国からの要請で学校や孤児院の設立と、空輸産業を使っての雇用の促進にも手を貸しているので、徐々に差が縮まるものと思っている。
そして、エインヘリアルにて一大イベントが行われた。
国王の婚姻を祝しての祭りである。
しかも、国王はいきなり九人の花嫁と婚姻すると世界中で噂になっていた。こんなところで空輸産業の弊害が出るとは。
ちなみにエインヘリアルの国王、つまり俺だ。
他国の王女を嫁に貰うということで、リアーナを主体にした結婚式にしなければならないかと思ったが、リアーナが遠慮した為、結婚式という名の祭りは三日間もの間繰り広げられることとなった。
何故かというと、神の代行者の従者を差し置いて結婚は出来ないという理由と、それなら平等に纏めてとの案は人数が多すぎるという理由で却下されたからだ。
結果、一日目がエレノアとソアラ、サニーとの結婚式。
二日目がセディアとミラ、ローザとの結婚式。
三日目にリアーナとシェリー、そしてエルフの国からシェラハミラが送り込まれ、結婚式となった。
シェラハミラも良い迷惑だろうと思ったが、まさかの号泣であった。泣かなかったのはサニーとセディア、シェリーの三人だけである。
まぁ、サニーは良く分かっていないのか終始ドヤ顔で仁王立ちしており、セディアとシェリーは戸惑いと恐縮によりガチガチに緊張していたのが要因な気がする。
そして、最も泣いていたのはエレノアだった。
結婚式という名のパレードになっていたので、俺たちは街を毎日馬車で一周したのだが、エレノアは泣き過ぎて最早前後不覚に陥っていた。
仕方がないので、横抱きに抱えて倒れないようにし、国民に手を振るように言った。この光景は現在、吟遊詩人が歌にして世界に拡散されているらしい。
ツイッターみたいだな、吟遊詩人。
詳細は省略するが、結婚式を行った日はその後エインヘリアルの祝日となる程度には話題になった。
何故祝日にまでなったのかというと、国民からの嘆願により、三日間にわたって街を上げてのお祭りを毎年することになったからだ。
恐ろしい話である。
毎年、棒に俺を模した人形が括り付けられ、九人の花嫁の人形と一緒に街の中を踊り狂いながら練り歩くという、当事者の俺が死にたくなるような祭りが誕生してしまった。
ちなみに、この祭りはエインヘリアル内の全ての主要な街で行われる。
まさに悪夢。
その後、結婚式に心身共に疲弊していた俺の下に、分裂して四つの国に別れた元ガラン皇国の一国が、戦争被害国としての援助を申し出てきた。
疲れていたのでカルタスに丸投げすると、援助を物資だけに留まらず、人も送り込んで内政にも手を加えたとの報告を受けた。
気が付いたら、その一国は国の運営に関わる上層部の首が軒並み替えられており、扱いやすくなったという。多分、最初にエインヘリアルに援助を申し出てきた時の上層部は、こういった展開を期待していたわけでは無い気がする。
まさに鬼である。
他にも問題は多々発生しているが、カナンを代表にしたダークエルフ達やエルフ、獣人達も協力してくれているお陰で、様々な事案が上手く流れ始めた。
それに比例して、俺の判断が必要な事柄は減少していく。
殆どの問題はカルタスの所で精査され、エレノアが解決していく。俺の所まで残った問題など、一国を左右する話以上の物ばかりである。良い流れだ。
暇が出来た俺は、登録したまま放置していた冒険者のランクを上げたりしてみた。
ドラゴンなどを狩って冒険者ギルドに納品していたら、二週間でSランクに到達してしまった。
何というイージーモードか。
あまりにもアッサリ冒険者の最高峰に上り詰めてしまったので、冒険者稼業は終了とした。
さてさて、学校や孤児院の視察も終えたし、各国での式典などは仮病を使って休んだ。
これで、やるべき事は無くなった。
暇である。
そんなことを思いながら魔術の特訓をしているシェリーやシェラハミラを眺めていると、何処か嬉しそうなラグレイトが俺の下へ来た。
「我が主! 龍の国なんてのがあるらしいよ?」
ラグレイトにそう言われ、部下になったアースドラゴンのイシュムガルドの言っていた台詞を思い出した。
「ああ、聖龍王とかいう龍の王がいる国だったか。何処だったかな……」
「へぇ? 聖龍王なんて種類のドラゴンは知らないね。ちょっと行ってみたいな」
ラグレイトはそう行って笑い、俺を見た。
いや、聖龍王は役職か名前だと思うが、まあどんなドラゴンか気になるのは確かだな。
俺はそう思い、ラグレイトに笑みを返す。
「よし、行ってみるか」
俺がそう言うと、何処からともなくサイノスが走ってくる。
「殿! 拙者も行きますよ!」
「お、行くか。サイノス。よし、それなら後はソアラかサニーを連れて行けば回復役も揃うか」
俺がサイノスにそう言うと、サイノスは尻尾を振って喜んだ。
さて、龍の国に龍の王か。どんな奴かな。
番外編もありますが、これにて本編は一応の完結とさせて頂きます。
尚、次回は番外編として龍の国編を始めますので、是非読んで見て下さい!
本編完結ということで、良かったら評価と感想をお願い致します。それを見て、また次回作に活かしたいと思いますので、何卒宜しくお願いします!
井上みつる/乳酸菌




