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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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聖女と邪神?

更新が遅れてしまい、大変申し訳ありません。

何やら最近とても忙しいのです。

どちらか一つ忙しいなら分かるのですが、公私ともに忙しいのはいったい何故なのか…?



リアーナ、メルディア、シェリーの、連続して発動する魔術による炎の遠距離攻撃。


炎と爆風が吹き荒れる、まるで戦争映画の爆撃シーンのような光景だ。


その中を数を減らしながらも徐々に前進してくる聖人軍。


魔術を発動するのに時間が掛かる分、相手の前進の方が早いようである。


段々と近付いてくる聖人軍に、前衛のダンやブリュンヒルト達が武器を手に構える。


下がりながら魔術を行使しても良いが、相手に多少の隙を見せた方が対応しやすいと判断した。


と、聖人軍の最前列の兵士達が、俺達のいる場所まで残り二十メートル程の距離に足を踏み込んだその時、聖人軍の列の左右に同時に人影が現れた。


右手側には杖を手にしたティアモエの姿が、そして、左手側には緩々と歩く背の高い細身の男の姿があった。


男はボロボロの黒いコートのようなものを着込み、腰の辺りまで伸びた黒い髪の下には黒い肌と黄色く濁った双眸が覗いていた。


男はこちらを真っ直ぐに見つめたまま、ゆらゆらと揺れながら歩き、向かってくる。


「ナイアーラトテップ……!」


俺は全身黒い出で立ちのその男を見た瞬間そう叫び、ブリュンヒルトに目を向けた。


「ダン、ブリュンヒルト! そっちの女は任せた! マリナは全体を補助してやってくれ! 後の者はリアーナ達を守れ!」


「っ! 分かりました!」


「はい!」


俺の必要最小限の指示に、全員が素早く動き出す。


俺はそれを確認しながら、街道から飛び出すように左方向へ飛んだ。


同時に、詠唱を終えたリアーナ達の魔術が発動する。


「『灼熱の真火!』」


「『ダーク・インフェルノ!』」


「『クリムゾン・エクスプロード!』」


三人が同時に叫び、聖人軍は轟音と共に炎に呑まれた。


一瞬遅れて爆風が辺りにあるものを薙ぎ倒すように吹き荒れる。


そんな中を、俺は地面に着地すると同時に姿勢を低くして走り出し、一気にナイアーラトテップの下まで駆けた。


ナイアーラトテップの黄色く濁った眼が、俺の動きに合わせてぐるりと動く。


「『エアレイド!』」


「『地の裁き』」


俺がナイアーラトテップに向けて剣を振り下ろし、スキルを発動するのと同じタイミングで、ナイアーラトテップも割れたような低い声でスキルを発動した。


スキルにより俺の剣の周囲を風の刃が覆い、攻撃力と範囲を増大させる。


だが、同時に発動したナイアーラトテップのスキルにより、ナイアーラトテップの足元を白い光が走った。


無数に現れた白い光の線に沿って地面はひび割れ、閃光を伴うエネルギー波と割れた地面の破片が空中へと噴き上がる。


そのエネルギーの奔流は俺の剣の勢いを殺し、破片というには大き過ぎる巨大な地面の一部が俺の剣を弾いた。


「『大地の息吹』」


俺が無防備になったと判断したのだろう。


ナイアーラトテップはまたも小さく呟き、スキルを発動する。


剣を弾かれた衝撃で両手が頭の上に上がってしまった俺に、ナイアーラトテップは片手を伸ばして掌を向けた。


直後、割れた大地から赤黒い溶岩が勢い良く噴出し、俺の視界を赤く染め上げた。


レベル五十程度なら一撃死もあり得るナイアーラトテップの必殺技の一つである。


結界が無い場合は、だが。


俺は噴き出した溶岩が大地に落下してくる中、俺はナイアーラトテップの姿を視界に入れながら周り込むように走った。


ふと、視界にティアモエが映り、手に持った杖を見て眉根を寄せる。



死者の杖。



やはり、ティアモエはネクロマンサーであり、ナイアーラトテップは死後、操られている状態というわけか。


単独戦はあまり得意でないネクロマンサーが、一対一でナイアーラトテップに勝てるとは思えない。


つまり、他にも仲間はいると見た方が良いだろう。


ならば、時間のかかるナイアーラトテップよりも、それを操るティアモエを倒した方が勝負は早い。


問題は、ティアモエならばともかく、ナイアーラトテップは俺でなければ相手にならない点だ。


俺はそこまで考えて、溶岩の雨の中を強行突破してナイアーラトテップに肉薄した。


「『五段斬り!』」


俺はスキルを発動し、ナイアーラトテップに反撃させないほどの連撃を打ち込み、同時に魔術を発動する。


「『テンペスト!』」


僅かに位置を調整しながら放つ凝縮された風は、ナイアーラトテップをその場に釘付けにし、数十メートル離れた場所にいるティアモエにすら届いた。


というか、普通ならノックバック効果付きでダメージも与えることが出来る魔術の筈なのに、一瞬の硬直しか効果がなかったナイアーラトテップがおかしい。


一方、ティアモエは結界を張っていないのか、俺の魔術の影響で態勢を崩し、ブリュンヒルト達の接近を許してしまっていた。


これで向こうは上手くいけばティアモエに一撃を与えることが出来るだろう。


さあ、短期決戦だ。こちらは何としても素早く倒し切らないといけない。


ゲームでやり合った時は二十分近く戦った気がするが、十分、いや五分で倒すつもりで……。


「『魔神の冰爪』」


俺が気を引き締めてナイアーラトテップに剣を向けたと同時に、ナイアーラトテップはスキルを発動していた。


俺の周囲を取り囲むように無数の黒い炎が渦巻き、三日月型の白い何かが炎の中から出てくる。


「ちょ……っ!?」


俺はそれを見た瞬間、弾かれるように後方に下がった。


次の瞬間、二十近くにも及ぶ白い物体が様々な軌道を描いて俺に飛来する。


投石の比じゃ無い速度で向かってくるその速さも恐ろしいが、この攻撃を知らない者は十中八九回避出来ないという凶悪性が恐ろしい。


動かずにいた場合、四方八方から白い物体、巨大な爪によって切り刻まれることになるのだ。


俺はゲーム中に一撃受けたことがある為知っていたから後方に下がり、前方からだけ攻撃が来るように動くことが出来たのである。


「それにしても…! 避けづらい!」


俺は高速で迫る殆どの白い爪を回避し、二つを剣で切り裂いて防御した。


全ての攻撃を捌いた俺は、地面を這うような態勢で走り、剣を振る。


ナイアーラトテップに剣が当たる瞬間、俺は素早くスキルを発動する。


「『五段斬り!』」


一撃目が深く決まった瞬間を狙いスキルを発動した為、ナイアーラトテップはほぼ無防備に俺の連続攻撃を受け、大きく態勢を崩した。


「『五段斬り!』」


身体をくの字に曲げたナイアーラトテップの上半身目掛けて、更に追加でスキルを発動する。


肩、背中、腹、腰と斬りつけ、最後に頭を斬り裂く。


斬られた反動で上半身が持ち上がったナイアーラトテップを見て、素早くさらなる追撃にでようとした。


だが、ナイアーラトテップの黄色く濁った目がギョロリと俺に向き、口が動いたのを見て、反射的に俺は横に転がってナイアーラトテップから距離を取った。


「『黒き六芒』」


俺が離れるかどうかというタイミングで、ナイアーラトテップはそう呟いた。


すると、ナイアーラトテップを中心にして地面に黒い光の線が疾る。黒い光の線は、瞬く間に直径二十メートルに達する巨大な六芒星を形作った。


直後、六芒星の形に大地から黒い光が照射される。


ギリギリのところで回避に成功したが、回避がギリギリ過ぎたのか、俺の張っていた結界が二枚消失した。


離れた所では、聖人軍の兵士も数十人纏めて鎧ごと細かく砕けるのが見えた。


恐ろしい攻撃だが、俺はそれを見た瞬間思わず口の端を上げる。


攻防一体の技だが、これには弱点がある。


六芒星が消えた時、一秒から二秒もの間、ナイアーラトテップは動くことが出来ないのだ。


俺は剣を構え直し、徐々に薄くなる六芒星の光を眺め、口を開いた。


「『ラフ・ヴォルテックス』」


俺がそう呟くと、俺の身体を濃密な風の渦が包み込む。


結界を張ることは出来なくなるが、一時的に風を纏い、攻撃力と速さが向上する魔術である。


この状態で更にスキルを使って攻撃すれば、ナイアーラトテップとて致命的なダメージを受けるだろう。


俺は目の高さにまで剣先を上げ、腰を落とした。


六芒星の光が薄くなり、ナイアーラトテップの姿が徐々に現れていく。


そして、地面に描かれていた六芒星は完全に消滅した。


それを確認した俺は、一足飛びにナイアーラトテップへ向かって飛び出す。


「『五段斬り!』」


力を振り絞る気持ちで、俺は剣を振るった。



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