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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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挽回に向けて

俺が東部攻略に向けての準備をし始めた次の日。


ユタに言われたことを考え、俺はエインヘリアルから諸国に連絡する為に新たに使者を出した。


まずは、純粋なエルフや獣人といった存在を封印することが出来る邪神の出現と、その為にダークエルフ達による護送はレンブラント王国の王都までしか出来ないということ。


そして、レンブラント王国の東部が現在かなり不利な戦況であること。


その為、まずはしっかりとした準備をしてもらい、その後レンブラント王国の王都にて集まってもらいたい。


これらを記した書状を使者に持たせて、俺はすぐに王国の東部へ向かった。


レンブラント王国の東部で起きた俺の敗戦という噂が諸国に流れるにはかなりの時間が掛かる。


ならば、その間に戦況をせめて最初の状況に戻さねばならない。


つまりは、王国東部の奪還である。


まずは王都にて、俺はリアーナとキーラに装備を渡した。


緊張感を滲ませながらも、何処か興奮した面持ちのキーラと、間違いなく興奮した様子のリアーナは俺から受け取った装備を着用し、最終確認をしていた。


ちなみに装備は、リアーナは魔術士ではあるが、防御力も判断して体の部分だけオリハルコンのドレスアーマーを選んだ。後は魔術士用のミスリル装備である。


キーラは素早さを活かせるように龍の皮の軽鎧と、身体能力向上に特化した装備、アクセサリー類だ。


俺は二人の格好を確認した後、他のメンバーに顔を向けて口を開いた。


「まずは、東部の状況の確認だ」


俺がそう言うと、ダンやブリュンヒルト達が姿勢を正した。


それを眺めて、俺はこれからの話をする。


「東部の状況についてはまだ詳しく分からない。最後まで残ってくれていたダークエルフの一人が、領主の独立と帝国への恭順宣言を聞いてすぐに戻ってきたからな。だから、とりあえず石にされることは無い俺達が直接乗り込んで情報を探る」


俺がそう言うとオグマが頷いてから周りに立つ者達の顔を見た。


「…ふむ。情報収集と気配察知ならアタラッテがいますな。欲を言えばもう一人欲しいところですが」


オグマがそう言うと、リアーナが胸を張って自らの従者を指し示した。


「オグマ様! ここにいるキーラがその任を果たせます!」


リアーナがそう言うと、オグマはキーラを振り返る。


「ふむ。姫の身辺警護をするだけの女騎士かと思っていたが、そんな技術を?」


骸骨戦士オグマに正面から凝視されながらそう尋ねられても、キーラは無表情を崩さずに静かに頭を下げた。


「お任せください。必ず結果を出します」


キーラが淡々とそう返すと、むしろオグマの方が面食らった顔をしてキーラを眺め、声を出して笑った。


「ふ、ふふふ…! 気に入ったぞ、キーラとやら」


頭に被った禍々しい山羊の骨を模った兜を揺らしながら笑うオグマに女性陣が引き気味になる中、俺はメンバーを眺めて頷く。


斥候にアタラッテとキーラ。


前衛にブリュンヒルトとオグマ、ダンとアンリ。


後衛にメルディアとリアーナ、シェリーの魔術士。


回復魔術はマリナ。


後は、一応オールラウンダーの俺か。


意外にもバランスが良いパーティー構成である。


その上、装備は最上級ともいえる物を揃えている。


「よし。行くとするか」


俺は即席ながら最善とも言える布陣が出来たことに満足し、そう言った。


「はい!」


「は、はい!」


皆が無言で頷く中、リアーナとシェリーだけが元気良く返事を返した。





目立たずに街から少し離れた地点に降り立ち、俺たちは王国東部最大の都市へと足を向ける。


が、当たり前なことに門番が街へ入る者を厳しくチェックしているらしく、俺達は離れた場所から街の様子を眺めていた。


この街にまでハスター達がいたら飛翔魔術を使っての侵入は厳しいだろう。


さて、どうしたものか。


何処かで似たようなことがあった気がした俺はなんとも言えない気持ちで眉根を寄せた。


「仕方ない。私が行ってみるとしましょう」


どうしようか悩んでいると、オグマがそう言って立ち上がった。


「大丈夫か?」


「任せてくだされ」


そんな短いやり取りをして、オグマはさっさと門番の方へと歩いて行く。


意外にも顔が効くのか、オグマは一人で門番と会話をすると、僅か十分足らずで戻ってきた。


「白銀の風のメンバーとして入れるそうです」


「おお、ありがとう。じゃあリーダーと先輩達に付いていかないとな。なあ、オグマ先輩」


オグマに俺がそう言って笑い感謝を述べると、オグマは嫌そうに顔を顰めて頷いた。


街に入ってからは、とにかく骸骨戦士オグマに注目が集まり、身動きが取りづらくて仕方無かった。


「あ、あれが白銀の風か…」


「なんと禍々しい…」


「あのような恐ろしい出で立ちは、恐らく魔物を怯ませる為であろう」


「あ、あのおじさん怖いぃ!」


泣き出す子まで現れるオグマの威圧感。


偵察しようと思ったのにオグマのせいで目立って仕方がない。


まあ、装備を選んだのは俺だが。


「アタラッテ、キーラ。それぞれ街の中で情報を集めてきてくれ。俺達は酒場でうわさ話でも集めていよう」


俺がそう言うと二人は頷いた。


「任しといてください!」


「お任せを」


二人は返事をすると、お互いの顔を一瞥してからすぐに踵を返して街中へと消えていった。


「よし、とりあえず酒場に行くか」


「はい。どうぞ、こちらです」


俺がそう告げると、ブリュンヒルトが返事をして慣れた様子で街の中を歩いていった。


そして、大通りから脇道に入り、どんどん細い道を進んで行く。


着いた先は、かなり古い雰囲気の木造りの食堂のような酒場だった。


昼前後だというのに、客の喧騒が外まで聞こえてくる。


「…人気の酒場なのか?」


俺が尋ねると、ブリュンヒルトが自信のありそうな笑みを浮かべて首肯した。


「はい 、ここはこの街の中で一番の酒場だと思います」


そう言うと、ブリュンヒルトは席が空いているか聞きに店内へと入っていった。


流石はSランク冒険者。


酒場には相当詳しそうである。


ただの酒好きでは無いかという気がしないでもないが、そこは指摘しないでおこう。



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