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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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久しぶりに見るブリュンヒルト達

「ブリュンヒルト達は今はどこにいる?」


俺がそう尋ねると、戻ってきたカルタスは悔しそうに眉間に皺を寄せた。


「ちょうど街に戻っている筈ですが…奴らに助力を? いや、仕方無いのは分かっておりますが」


「ああ、仕方無い。何せ、お前達も、エルフや獣人達も戦えるか不明だからな。血が薄いのか、偶然にもアンリは大丈夫なようだから連れていくが」


俺がそう言ってアンリを見ると、アンリは無言で頷いた。瞳の中に炎が見える気がする。


「後、普通の人間の中で戦えるのは…」


俺がそう呟くと、シェリーがハッとした顔で口を開いた。


「リアーナ様とキーラさんがいます!」


シェリーはそう言って俺を見上げた。


そうか。シェリーは確か同じ学校でリアーナと魔術を学んだんだったな。


「なら、これで俺とダン、シェリー、アンリにリアーナとキーラ…そして白銀の風の五人か。十一人…何とかなるか? ハスターを倒すことに集中出来たら俺が一体ずつ…」


俺が頭の中でハスターとの戦いを想定していると、ダンが険しい表情で拳を握った。


「…邪神との戦い…自分がそんな戦いに参加するようになるとは、夢にも思っていませんでした。足を引っ張ってしまわないよう、持てる力の全てを持って…」


ダンは血走った目で決意表明のような台詞を口にし始めたが、俺はそれを眺めながら片手を左右に振った。


「大丈夫だから気楽にやってくれ。頑張るなら死なない為に頑張ってくれたら良いさ」


俺がそう言って笑うと、ダンは拍子抜けしたように目を瞬かせた。


力の抜けたダンを横目に、俺はカルタスの方へ向き直る。


「方針が決まったぞ。まずは、ギルドメンバーとエインヘリアルに住む予定のエルフや獣人達を集めよう。以前と同じく特定の範囲からハスター達が動かないとは限らないからな。とりあえずレンブラント王国とインメンスタット帝国からは撤退だ。後は、白銀の風の五人を招集する。この二つは明日までにやってしまうぞ」


俺がそう言うと、カルタスは不承不承返事をしたのだった。





ブリュンヒルト達の家を訪ねると、そこにはやたらと生き生きとした白銀の風の面々がテーブルを囲んで会議中だった。


「レン殿が来られたぞ」


玄関で俺達を迎えてくれたオグマがリビングにいる四人にそう告げたが、会議に熱中している四人は気付かずに話し続けている。


「ほら、だから魔力が無くなるんだよ」


「マジックポーションで良いじゃない」


「毎回飲んでたら高過ぎるだろ? それに口の中がスースーして嫌とか言ってなかったか?」


「うん、ドロッとしてるのにスースーするけど…でも仕方ないじゃない?」


「出来るだけアタラッテが遠距離から投石で倒すというのは如何でしょうか。魔力の節約になりますし」


「出来るかよ。倒せてもオークくらいだよ。アタシを何だと思ってるんだ」

「石が投げれないアタラッテなんて…口が悪いだけの女…」


「ふざけんなよ、マリナにメルディア。アタシは罠発見したり、鍵開けたり、離れたところにいるモンスター見つけたりと大活躍だよ」


「深淵の森と竜王のダンジョンに罠も鍵も無かったけど」


「ぐ…っ」


「私が必殺剣を使えば魔術も石もいらないんじゃ…」


「貴女の必殺技が一番使える回数少ないでしょう?」


「しかも相手は一人か二人相手までだし」


「オグマさんの方が鉄板みたいな剣を振り回しながら走れるだけマシかと思われますわ」


「き、貴様ら…そこまで言わなくても…」


そんな四人の会話を聞きながら、オグマは眉間に深い皺を作って口を開いた。


「話を聞けぃっ!」


「うひゃあっ!」


オグマが窓が揺れる程の大音量で怒鳴ると、アタラッテが可愛い声を上げて飛び上がった。


他の三人は目を丸くしてオグマの方を振り返っている。


「レン殿が来られた」


オグマが改めてそう言うと、気合いの入った狛犬みたいな顔をしたオグマに怯えつつ、四人は俺の存在に気が付いて立ち上がった。


「こ、これは申し訳ありません。少し白熱してしまって…」


「いや、別に気にするな。ただ、オグマの戦法に少し興味が湧いたが」


俺がそう言ってオグマを横目に見ると、オグマはまったく笑っていない目で俺を見て笑い声をあげた。


「はっはっは、お戯れを」


その顔に俺ではなく白銀の風のメンバーの方が小さく悲鳴をあげた。


どうやら、怒る前の顔のようだ。俺も若干怖い。


「…よし、戯れはここまでにして、本題に入るぞ」


オグマの迫力に押し負けた俺はそう言ってから詳しい話をブリュンヒルト達に話した。


サイノス達が彫像になったと聞き、オグマでさえ目を剥いて驚愕する。


「さ、サイノス殿やサニー殿すら…」


「邪神群…そんな相手に勝てるのでしょうか…」


「…アタシはやるぜ。まさに、神の代行者の英雄物語にある邪神との戦いじゃないか」


と、皆が不安感を口にする中、アタラッテが闘志を燃やしてそう言った。


そのセリフに、マリナがゆっくりと頷く。


「ああ、神々の終の闘争ですね。神の代行者様と従者である英雄達が邪神群との最後の戦いに挑んだ…伝えられている物語では、熾烈を極めた神々の戦いは大地が割れ、空が地上へ落ちたと…その時の戦いの余波で全世界の人口が半数になってしまったと聞きます」


随分と大袈裟だな。


俺はマリナのセリフにそんなことを思ったが、良く考えたら神話なんてのはそんなものなのかもしれない。


ギリシャ神話や旧約聖書なども中々の規模で天変地異のような戦いがあったりするからな。


「…その戦いに我々が出るとして、依頼料は如何程ですかな?」


と、オグマが神妙な顔でそう尋ねてきた。それを聞き、ブリュンヒルトが眉根を寄せる。


「オグマ、世界の危機なんだから…」


ブリュンヒルトがそう口にすると、オグマは憮然とした顔で首を左右に振った。


「危機は危機。依頼料は依頼料…町や国の存亡の危機だからと冒険者が無料で命を賭けてしまっては、死んだ冒険者の仲間や家族はその後大変な生活を送ることとなる。冒険者ギルドにも進言しているが、緊急依頼に関しては準備金を用意するくらいで丁度良い。装備を整えてから依頼に挑む方が成功率は高くなり、反対に死亡率は下がるのだ」


オグマはブリュンヒルトにそう言ってから、俺に顔を向けた。


「レン殿…いや、レン国王陛下。どうぞ、国の為に命を賭けてくれる冒険者が現れたなら、厚遇してやってくだされ。将来、多くの人々を救う素質と志を持つ若者が毎年命を落としております」


オグマはそう言って、僅かに顎を引いて視線を落とした。


その姿を見て、俺も浅く頷く。


「ああ、約束しよう。それで、お前達に緊急依頼を頼むには幾ら必要なんだ?」


「今回の規模ならば白金貨五枚くらいかと」


白金貨五枚。五百万ディナール。


日本円にするとおよそ五億ほどか。


「高ぇ」



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