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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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誤算

撤退した俺達は、一時的にヴァル・ヴァルハラ城まで舞い戻った。


突然戻ってきた俺達に、城に城主代行として玉座の間に残っていたカルタスは目を丸くして話を聞いた。


「な、なんと…! ハスターとなると、もしやそれは…」


カルタスが奥歯を音が鳴るほど噛み締めてそう呟くと、シェリーが不安そうに眉尻を下げて口を開いた。


「…あ、あの、ハスターというのは…?」


シェリーの質問に、俺は腕を組んで玉座に座る。ゲームを知らない存在にどう説明すべきか。


「…ハスターってのは、邪神の一柱でな。あの術式を使われると、ある一定の範囲内にいる特定の者は彫像にして封印されてしまうという代物だ」


俺がそう説明すると、シェリーは深刻な表情で俺を見た。


「…特定の者とは、まさか…」


シェリーの問いかけに、俺は溜め息まじりに頷く。


「神の代行者の従者達だ」


「そ、そんな…!」


俺の説明を聞き、シェリーは両手で自身の口を隠すようにして声を上げた。


まあ、正確に言うと少し違う部分もあるが、概ねそのような感じだろうか。


ゲームでのハスターは、特殊なイベントステージの為のユニークボスという性質だった。


ゲームの最大の特徴の一つである、プレイヤーは少数でありながら自分で作ったNPCによる大人数のギルド作成。


そのシステムを生かしたイベントステージで、ハスターは出現する。


イベントステージに選ばれたマップでは、オープニングにハスター四体が結界のようなものを張り、マップ内の何処かに移動する。


そのイベントに挑戦するプレイヤーはマップに入った瞬間、自分のギルドのNPCキャラクターを彫像にされてしまい、プレイヤーのみでマップの何処かにいる全てのハスターを倒さないと元には戻せない。


全てのハスターを倒すと、イベントボスであるナイアーラトテップか、クトゥグアのどちらかが現れるのだ。


俺はこのイベントに二度しか挑戦しておらず、一度目は攻略失敗し、二度目でギリギリ攻略を果たした。


理由は俺のギルドがプレイヤー一人のぼっちギルドである為、イベントが最恐難易度となってしまったせいだ。


本来はハスターも一体相手に十人以上のプレイヤーで挑むべきレイドボスである。ゲームの性質上俺でも倒すのはギリギリだろう。


ちなみに、プレイヤーは傍観者になり、自身が育てたNPC達が攻略するという真逆のイベントもある為、インターネット上ではプレイヤーにバランスの良いギルドを作って欲しいというゲーム会社の思惑に違いないという結論に達した。


ハスター四体がこの世界にいるのならば、ハスターの役割は理解出来るが、そうなると疑問が湧く。


俺は無事だった三人を見た。


無事だったのはシェリー、ダン、アンリの三人である。


サイノス達がNPCとして認識され、封印の効果を発揮するならば、その血を引く者はどうなるのか。カナンは彫像と化したが、アンリは全く変化が無いようにも見える。


血の濃さだろうか。


ならば、エルフの民は過半数が封印され、獣人は過半数が問題無く動けるのか。


流石に試すのは危険なので出来ないが。


俺が悩んでいると、カルタスが唸り声をあげた。


「うぅむ…レンブラント王国東部でハスターが現れたのは、果たして偶然なのか…あまりにも帝国に都合が良過ぎますぞ」


「ハスタークラスのボス四体を帝国が飼い慣らすと? そんな馬鹿な話があるか。それならアポピスの時のように単独で現れた方がまだ説得力が…」


俺はそこまで呟き、ふとある考えに至った。


これまで、可能性としてメルカルト教の聖人や聖女と呼ばれる者達が俺と同じプレイヤーかと思っていたが、もしかしたらそれは違うのかもしれない。


今回も、帝国の裏にいるのはゲームのボスだとしたらどうだろうか。


それこそゲームのイベント中にハスターと共に出るボスならば、メルカルト教の神として振舞っている可能性もある…かもしれない。


攻略は一度しかしていない為、ナイアーラトテップもクトゥグアもどのようなボスだったか記憶が曖昧なのだ。


確か、ナイアーラトテップは大地の神であり、クトゥグアは火の神だったような気がする。


どちらも最初は人型であり、ボス戦になって異形の姿となる筈だ。


もうちょっとインターネットで攻略ページを読んでおくんだった。


俺がそんな後悔をしていると、アンリが顔色を青くして俺を見上げていた。


「どうした、アンリ」


俺が尋ねると、アンリは怒りや哀しみを合わせたような複雑な表情で口を開く。


「…サイノス様は、どうなりますか」


そう呟いたアンリは何処か儚く見えた。俺は少しでもアンリが安心出来るように、笑みを浮かべてアンリに頷いた。


「安心しろ。こんなことは以前にもあったが、その時も問題無く乗り越えている。サイノスも何事も無かったように帰ってくるぞ」


俺がそう言うと、アンリは静かに頷き視線を下方に落とした。


その様子を横目に見ながら、シェリーが俺を見上げて口を開く。


「レン様、このままでは各国の代表が王国東部で同じ事になるのでは…」


「いや、代表は流石に戦場に来ることは無いだろう。ただ、各国から兵士や物資を運ぶのにダークエルフ達は間違いなく来るからな。このままだと東部で皆彫像になってしまう。とりあえず、王都に集まるようにしてもらうか」


シェリーに俺がそう答えると、横で聞いていたカルタスがすぐに口を開いた。


「では、遣いを出しますぞ」


「ああ、頼んだ」


俺が答えると、カルタスは素早く玉座の間の入り口で待機しているメイド部隊二人に声をかけ、何かしらの指示を出した。


さて、とりあえず帝国の前にハスターだ。


ゲーム内であれば決められたエリアから動くことは無かったが、それもかなり怪しい。


ゲーム内でのルールが適用するならば、プレイヤー以外のキャラクターは全てNPCである。


しかし、東部から離脱する際に見た限りでは、無関係な人々は皆無事だった。


ならば、やはりプレイヤーに創られたキャラクター達と、その血を濃く引く者達が彫像となってしまうのだろう。


遠距離からの防衛ならば何とかなるかもしれないが、こちらから攻める時はギルドメンバーだけでなく、エルフや獣人達も連れていくことは出来ない。


この世界の人間の力を借りなければ、勝利は難しいだろう。


そこまで考えて、俺はふと閃いた。


「…いるじゃないか、面識のあるSランク冒険者達が」


問題は、Sランク冒険者の指名依頼はいくらかかるか忘れたことだ。



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