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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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会議が終わり、フラグを立てる

初盆で忙しいので、数日間更新を停止致します…!

本当に申し訳ありません…!



「…歩く死体の軍、か。中々面白い話を聞いた」


トゴウの呟きに、皆が動きを止めて視線をトゴウに向けた。


「面白い…?」


誰かがトゴウの言葉の一部を反芻すると、トゴウはテーブルに片肘を置き、手のひらをテーブルにつけて口の端を上げた。


「…此度の戦いでは、我が国は兵を出そう。それを以て同盟への援助とさせて頂く」


トゴウがそう言うと、ヨシフが椅子の背もたれに体重を預けて顔を上げた。


「それでは、私の国もそうしようか」


「あ、では私の方は御二方の援護に魔術士隊を…」


ヨシフの言葉に続けるようにカイシェックもそんなことを言い出した。


各国が出来る範囲の援助をするのは国際同盟の加盟国としてやるべき事ではある。


だが、まさか小国の三国が兵力を出すとは思わなかった。


俺が内心驚いていると、フィンクルがカレディアとジロモーラを見て口を開く。


「我々メーアスも物資とそれを運ぶ馬車、それと兵を出した方が…」


フィンクルがそう言うと、ジロモーラが呆れたような表情を浮かべた。


「対抗してどうする? 俺達は俺達の得意なもので手助けすると決めていただろうが。元々傭兵団や冒険者頼みのメーアスが兵なんか出せるか」


ジロモーラがそう言うと、苦笑しながらカレディアが頷き、俺を横目に見つつ口を開いた。


「その通り。それに、どうせ人を割くならば様々な国の要人と顔を合わせることが出来るように、補給部隊を一手に引き受ける等をした方が後々に良い利益を生むでしょう」


カレディアはそう言って笑みを浮かべた。


なるほど。確かにその方が販路を拡大出来るな。


だが、それよりもわざわざこのタイミングで皆に聞こえるように言ったのは、その後々に至った時に大手を振って利益を得る為か。


最初からそういう目論見も有りきで協力すると告げる辺り、カレディアのあざとい程の世渡りの上手さが垣間見えた気がしたな。


「それでは、獣人の国ヒノモトは予定通り兵士一万を派遣致します」


と、メーアス側が自国内の話し合いに入ったと思ったのか、フウテンが良く通る声でそう言った。


そして、それを聞いてサハロセテリも顔を上げる。


「エルフの国は、魔術士隊と戦士の混合部隊、千人を派遣しましょう」


サハロセテリの宣言を最後に各国の援助の内容が大方決まり、リアーナがその場で立ち上がって深く頭を下げた。


「皆様、ありがとうございます。皆様のお力をお借り出来るならば、帝国との諍いも必ず解決出来るでしょう」


リアーナはそう言って顔を上げた。


だが、リアーナのその台詞にメーアスの代表三人は困ったように笑い、顔を見合わせていた。


リアーナの純粋さに対する反応だろう。


まあ、仕方ないか。


他所の国の戦争の為に援助をするのだ。本来なら事態が解決した際に協力してくれた国に何かしらの利益が生まれる様なことを口にする。


この場合、王国の言い分からすれば帝国が侵略してきたことになる。


ならば、大義名分を掲げて同盟国が一致団結し、傲慢なる帝国を叩き潰す、とでも啖呵を切るのが普通だろう。


そう宣言すれば、戦争に負けて領土を著しく減らした帝国から領土を切り分けるような話も出来るし、戦争捕虜や賠償金も期待出来る。


リアーナは聖人軍とメルカルト教の教祖を倒せば解決と思っているかもしれないな。


俺がそんなことを思っていると、トゴウが目を細めてリアーナを眺め、次に俺を見た。


「…これにて会議は終了、か…。中々、有意義な時間だった。では、私はこれより一度国に戻らせて頂く。兵はそちらの飛翔魔術を使わせて頂けるなら二日で出陣出来るように手配しよう」


「…ああ、ダークエルフ達に頼んでおこう。一人護衛として俺の部下もつける」


俺はトゴウにそう答えつつ、トゴウがリアーナのセリフに言及しなかったことに驚いていた。


まさに、トゴウの国であるタキなどの小国が、最もこの機会に領土を広げたり金銭を得たいと思っている筈だ。


いや、単純に国を大きくしようとしていないのかもしれない。


利益の奪い合いにならないのならばそれが一番良いが。


「…よし。それでは緊急国際同盟会議はこれで終わりだな。各国とも準備があるだろうから急ぐ者はすぐにでも送迎しよう」


俺がそう告げると、カイシェックが眉根を寄せて俺を見た。


「おや…? 肝心のエインヘリアルからの援助をお聞きしていませんが…」


カイシェックがそう呟くと、皆の視線が俺に集まった。


俺は腕を組み、口を開く。


「エインヘリアルからは俺が出る。後は部下を十人ほど連れていこうか」


俺がそう言うと、ヨシフが片方の眉を上げて俺を見た。


「…総勢、十一人。中々の大軍かと思いますが、書記官として参加するつもりで?」


ヨシフは何処か冷めた様子でそう口にした。


その言葉に、カイシェックは吹き出しそうになるのを我慢し過ぎて咽せている。


トゴウは何処吹く風といった態度で視線すら動かさなかった。


俺は失笑するメーアスの代表三人を横目に見て笑い、ヨシフに対して頷いた。


「ドラゴンに乗って戦場のど真ん中に降りるぞ。書記官を舐めるなよ」


俺がそう言って口の端を上げると、ヨシフの眉間に深い皺が刻まれた。





挨拶を交わし、皆が各国へ送迎されるのを見送り、俺はジーアイ城に戻ってエレノアと顔を合わせていた。


「それでは、ご主人様のご不在の間はお任せください」


「ああ、頼んだぞ」


俺はそう言ってエレノアに背を向け、立ち止まった。


そして、エレノアを振り返らずに口を開く。


「…この戦争が終われば、国際同盟の存在感は十分に示すことが出来るだろう」


「…? はい、そうですね」


俺がそう言うと、背後でエレノアが首を傾げるような気配を感じた。返事も声に戸惑いの色が混じっている。


俺は短く息を吐くと、顔を上げて扉を見た。


「これが片付いたら、結婚するぞ」


「え?」


俺が口にした言葉に、エレノアは生返事を返してきた。


俺は気恥ずかしさで口籠もりそうになりながらも、何とか言葉を続ける。


「まあ、都合上リアーナも嫁に迎えることになるがな」


俺がそう口にすると、エレノアの驚く声が聞こえた。


「わ、私の話ですか!?」


「お前しかいないだろうが…この戦争が終わったら、結婚する。良いな?」


俺がそう言うと、後ろで苦笑する気配があった。


「…ご主人様、そのプロポーズはフラグというものでは…」


エレノアのそんな台詞に、俺は顔をしかめて背後を振り返った。


「からかうなよ。これでも相当恥ずかしかったんだ…」


エレノアを振り返ると、エレノアは滂沱の涙を流しながら微笑んでいた。


洪水のような涙を見て、俺は呆れながら口を開く。


「…絵にならない奴だな」


「…ご主人様のプロポーズのタイミングが悪いんです」


俺とエレノアはそう言ってお互いに文句を言うと、どちらとも無く笑い出した。


「これからも、よろしく頼む」


「こちらこそ、よろしくお願い致します」


エレノアはそう返事をして、声を上げて泣いた。



なんというタイミングでのプロポーズ…!

これがエレノアでなかったらやり直しを要求されるレベル…!

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