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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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異世界三日目

朝がきた。


そう、やっと朝がきた。


大人だけに存在するステータス、夜の体力。


HENTAI_point

略してHP。


このHPは回復魔術で元気ビンビンになる。


馬鹿か、俺は。


「おはようございます」


朝から思考のまとまらない頭を使って至極くだらないことを思い浮かべていると、既にメイド服を着込んだ地獄のメイド達が一列に並んで頭を下げた。


全員、顔が艶々して見えるが、朝陽の光を浴びて元気になったのだろうか。植物か、貴様ら。


朝からダークサイドに堕ちていると、プラウディアが俺を冷たく見下ろして口を開いた。


「戦闘力に問題はありません。回復力も良いと思われます」


「…なんの話だ」


俺が半眼でそう言うと、プラウディアは鼻を鳴らして綺麗な顔を笑みの形にした。


「ご主人様としては上出来でしょう。それでは、早速城内の朝のお勤めに参ります」


そう言うと、プラウディアは部屋から退出した。


俺がプラウディアの一切遠慮の無い酷評に愕然としていると、何故かメイド部隊が俺の前に縦一列で並ぶ。


「ご主人様、デカいだけでは…」


「…ん?」


先頭のメイドは急にそんなことを言うと、頬を染めて部屋から出て行った。


そして、次のメイドが俺の前に来る。


「ご主人様、耐久力が」


「ご主人様、動きに無駄が」


「ご主人様、はやい」


「ご主人様、ストロークに強弱を」


「ご主人様、縛ってみては」


「ご主人様、マグロはちょっと」


「ご主人様、3人なら同時に」


「ご主人様、もっと士気を高めて」


「ご主人様…アレでした…」


10人が次々と意味の分からないことを俺に告げて部屋から出て行く。


「おい、最後のどういう意味だ!」


忘我の中にいた俺はやっとの思いで正気を取り戻して文句を言ったが、その頃には恐ろしきメイド部隊は全員部屋から退出してしまっていた。


「あいつら…好き放題言いやがって…ん?」


俺がぶつぶつと文句を口にしながらベッドから抜け出そうと動くと、隣に誰か寝ていることに気がついた。


妙に嬉しそうな寝顔のエレノアだった。エレノアの白いしっとりとした肌と柔らかく形を変えた胸が見え、俺は真顔で朝陽に視線を移した。


知らぬ内に回復魔術を受けたらしい。


馬鹿か、俺は。





俺はサイノスとセディア、サニーを連れてランブラスの冒険者ギルドに来ていた。


資料や一部の機密情報を見るならばギルドの二階で見て欲しいと受付でケインズに言われ、俺たちは二階の会議室横にあった小部屋に篭っている。


羊皮紙が積み上げられた、とても整理整頓なんて言葉が出せない汚部屋の中で、俺たちは無言で羊皮紙を見比べている。


「レンさん、これなんてどうですか?」


そう言って、何故か一緒に付いてきた受付嬢のミリアが俺に羊皮紙を差し出してくる。


「ふむ」


ミリアが選んだのは、他の国にある冒険者ギルドからの近況情報だった。しっかり最新のものらしいそれを受け取り、俺はキラキラした目を向けてくるミリアを見る。


懐いた犬みたいだ。


「良いのか? これは結構な機密だろう?」


俺がミリアに確認するようにそう言うと、ミリアは胸の前で両手を握って俺を見上げた。


「大丈夫です! なんでかエルランドさんが全面的に協力してこいって言ってくれたんです! エルランドさんは凄いんですよ? ただのおっさんエルフじゃないんです。この国の冒険者ギルド発足から100年以上、ずっとギルドの幹部なんですから」


エルランド、あのエルフか。サニーを王族と勘繰っているからだろうな。


俺は内心でそんなことを思いながらミリアを見つめ、頷いた。


「ありがとう。助かるよ」


俺がそう言うとミリアが顔を真っ赤にして急に羊皮紙を掻き集め出した。


「は、はい! 任せて下さい! 各国の全て集めておきますね!」


「あ、ああ。頼んだ」


猛烈な勢いで情報を精査していくミリアを見て、俺はギルド職員の勤勉さに感心する。


「殿。次はやはり王都に直接向かうのが良策かと愚考します」


ミリアを見ていると、サイノスがそんなことを言って俺に頭を下げていた。


だが、そこにセディアが口を挟む。


「自分はガラン皇国がいいと思うけど。そしたらエルフの国がすぐ近くになるし」


「エルフの国に行ってみたい」


サイノスに対するセディアの反対意見にサニーが同意した。まあ、単純に願望を述べただけだが。


「エルフの国で魔術的な文化レベルや個々人の実力は見てみたい。だが、一つの国を調査し終えたとは決して言えない状況だ。エルフの国の魔術は是非とも調べたいが、急いで足を伸ばすのも短絡的に思える。まずはサイノスの言うように王都か、近場のセレンニアだな」


俺がそう言うと、サイノスが顔を上げて輝かんばかりの笑顔を浮かべた。尻尾も高速で左右に振れている。


「サイノス、埃」


「おお、申し訳ない」


サイノスの尻尾で巻き上がる埃にサニーが顔を顰めて文句を言ったが、サイノスは笑顔で謝りつつも尻尾の横振りを収められない様子だった。


「間をとって自分が敷いとくよ」


と、何の間をとったのかセディアがサイノスの尻尾を座布団のようにお尻の下に敷いた。


「おお、助かりますセディア殿」


尻尾を尻に敷かれているのにニコニコと感謝するサイノスに対して、セディアはお尻の下でいまだに横に振れようとする尻尾に微妙に顔を顰めていた。


「あ、あの」


不意に声を掛けられて横に目を向けると、ミリアが恐る恐るといった様子でこちらを見ていた。


「…セディアさんとサニーさんはエルフ、ですよね? ご家族の方とか、他にも旅をしているエルフの知り合いとかはいないんですか?」


ミリアが少し踏み込んだ質問をしてきて、セディアとサニーは顔を見合わせて黙り込む。


仕方なく、俺は何となく決めていた設定で誤魔化すことにした。


「あ〜…実はな、俺たちがいた傭兵団は俺が最後の団長だったんだが、団員の多くは戦争孤児でな。家族の顔を知らない者も多いんだ」


俺がそう説明すると、ミリアの顔が見る見る間に青くなってしまった。


「す、すみません。良く知りもしないで勝手なことを…」


「気にしないでいいよ」


ミリアが謝罪すると、セディアが代表して気楽な調子でそう返した。


今さら嘘ですとは言えない空気だ。


俺が泣きそうな顔になってしまっているミリアを見てそんなことを思っていると、俺たちのいる部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「失礼します。レンさん、ギルド長がお呼びです」


ドアを開けて現れたのはケインズだった。ケインズは室内の雰囲気に何か感じた様子だったが、俺が了解を伝えると何も言わずに出て行った。


「お前らはまだここで調査しててくれ。俺は1人でギルド長のところに行ってくる」


俺がそう言って立ち上がると、セディアとサイノスが立ち上がった。


「1人くらいは護衛を連れていった方が良いよね」


「室内などの接近戦しかない場所なら拙者ですな!」


2人はそう言うと睨み合った。いつの間にライバル関係になったんだ。ダークエルフと狼獣人は相性が悪いとかないよな?


「じゃあ、セディア、付いて来い。暗殺に警戒しといてくれ」


俺がそう言うと、セディアは笑顔に、サイノスは尻尾が垂れ下がった。


いや、さっきはサイノスの案を採用したからここはね?


ふと見ると、心持ち寂しそうに座り直したサイノスの尻尾をいそいそとサニーがお尻の下に敷いている。


サイノスの尻尾が気になってたんだな。


「行ってくる」


俺は部屋に残る3人にそう言うとセディアを連れてギルド長であるバートのいる部屋へ向かった。


ギルドの二階は会議室、資料室の他に、ギルド長室と職員の更衣室がある。


うっかり更衣室に入るという胸躍るイベントは廊下の奥で待つケインズに封殺された。


俺がケインズの横を通り過ぎてギルド長の部屋へ続くドアをノックして開く。


「良く来てくれた。少し面倒なことが起きてね」


ドアを開けた瞬間、部屋の奥に座っていたバートがそんなことを言った。


俺は無言で部屋のドアを閉めてバートを視界から消した。


「ちょっと!?」


「面倒な話は嫌いだ」


驚愕に目を見開くケインズに、俺は一言そう口にした。



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