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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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ダークエルフの群れ

更新が間に合わず…!

ぐふ…っ!





昼過ぎになり、深淵の森の入り口で魔物を狩っていた十人と少しの冒険者達は深淵の森の外に出た。


周囲を確認しながら、冒険者達は森から20メートルほど離れた地点で休憩の準備をする。


「怪我人はいねぇだろうな」


荷物を広げながら、髭面の中年の男がそんなことを言って辺りを見回した。


冒険者のウォルフである。


ウォルフがそう言うと、周囲で準備をしている冒険者が返事を返す。


「大丈夫っすよ、ウォルフさん」


「そうそう、ちゃんと一体ずつ誘き寄せて倒しましたからね!」


「それにAランクに上がったウォルフさんもいるんだし!」


そんな返事を聞きながらウォルフは苦笑し、森を見た。


森は鬱蒼としており、外からでは奥まで見通せそうに無い程だ。


森の奥の方からは獣のような叫び声や何かが倒れるような音も響くが、魔物の姿などは一切無い。


捩れたような幹の樹木、暗い赤や青が斑らに混ざった毒々しい色合いの草。


昼間でも陽の光が満足に降り注ぐことの無い深い深い死の森。


空気は湿り、薄っすらと錆びた鉄に似た匂いが混じる。


そこは何者の侵入も赦さぬ天然の城塞であり、侵入した者を生かして返さぬ、牢獄でもある。


それが、つい先日まで深淵の森に抱かれていた人々の認識であり事実だった。


しかし、その認識は覆される。


神の代行者の再臨と、Sランク冒険者パーティー、白銀の風によって。


既に、神の代行者の興した新しき国、エインヘリアルとレンブラント王国、メーアスの三つの大国ではこの話は新たなる伝説、英雄譚として広がっていた。


神話に伝わる神の代行者の城。


その城に至る真の強者を神の代行者が求めている。


そしてその城は、あの、深淵の森の奥に存在する。


武に生きる者、神話に出るような英雄になりたい者、魔術の闇の全てを明るみに出したい者…。


様々な道に生きる者が、それも気難しいまでの探求者達が強くその地を目指すことになる。


だが、向かう先は前人未到の深淵の森である。


誰にそんな場所を目指すことが出来るというのか。


誰もがそう思うだろう。宮廷魔術師の集団か。大国の全兵力の投入か…個人や少数の者達での突破など想像の埒外に違いない。


しかし、その深淵の森の攻略に、あのSランク冒険者パーティー、白銀の風が挑んだ。


僅か五人。


その五人が、二週間もの間深淵の森から出て来なかった。


全滅したのでは無く、深淵の森の中を計画通りに進み、余裕を持って撤退したのだ。


誰も死なず、誰もが心身共に無事でである。


更には2日後。冒険者パーティー、白銀の風は今度は三週間の深淵の森攻略に打って出た。


そして、既存の戦力を喪うのでは無く、複数のマジックアイテムを手に入れ、更なる力を得て戻ってきたのだ。


神の代行者の城を目指す者で、これが何を意味するか分からない者はいない。


深淵の森は、突破が可能なのだ。


その事実は瞬く間に冒険者から商人、軍人や魔術士、更には一般の人々の心すら大きく揺さぶった。


そんな中、既にエインヘリアルに拠点を移していた冒険者達はウォルフを中心にして深淵の森に踏み込んでいた。


ウォルフ達冒険者はバランス良く複数のパーティーを作り、深淵の森の中に潜む魔物を一体ずつ誘き出して討伐を果たした。


ウォルフは複数の魔物を同時に相手に出来ると判断したら少しずつ森の奥に進む計画を立てた。


結果、森の攻略は遅々として進まず、一ヶ月以上経っても進めたのは百メートルを僅かに越えた程度。


全くと言っても良いほど結果は出ていない。


しかし、冒険者達は確かな手応えを感じていた。


最初に挑んだ深淵の森の魔物を倒すのは数時間掛かった。


だが、今では同じ魔物を倒すのに一時間掛からないのだ。


確実に一ヶ月で自分が成長している。


そう感じた冒険者達は深淵の森の攻略に更に前向きになっていた。


いずれ、自分も英雄に。


その可能性を見出し、冒険者達は今も笑っていた。


ウォルフが深淵の森から視線を外し、休憩の準備を整えた仲間達を見回していると、不意に黒い影が空を舞った。


その影に気づいたのか、ウォルフは目を剥いて素早く辺りを見回し、警戒するように巨大な斧を両手で持ち上げる。


すると、深淵の森の反対側。


城下町の方向から大量の人影が歩いてくることに気がついた。


滅多に人前に現れることの無い存在の代表格、ダークエルフだ。


百を優に超える大人数で現れたダークエルフに、ウォルフは呆気にとられたような表情を浮かべた。


そのウォルフに、真ん中を歩く美しいダークエルフの女が口を開く。


「そこの者達よ。貴殿らは冒険者か?」


ダークエルフの美女にそう言われ、ウォルフは浅く何度か頷いた。


そのやり取りで、他の冒険者達もようやくダークエルフ達に気がつく。


「だ、ダークエルフ…」


「嘘だろ、初めて見た…」


「う、美しい…」


驚愕する言葉と視線に晒される中、ダークエルフの長であるカナンは口を開いた。


「我々は本日より冒険者となった。レン様より、冒険者としての作法はウォルフ殿から教われと言われている」


カナンがそう告げると、ウォルフは頬を引き攣らせて苦笑いを浮かべた。


「…俺がウォルフだが」


ウォルフがそう言うと、カナンは顔を綻ばせて口の端を上げた。


「そうか。聞いていた通りの見た目だったので分かりやすかった。それでは、冒険者としての心得から教えてくれ。頼むぞ、先輩」


カナンがそう言うと、ウォルフは乾いた笑い声を上げてカナンの奥に立つ大勢のダークエルフ達を見た。


「…あんにゃろう」





まさかの予告詐欺!

本当に申し訳ありません!

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