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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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道路と中継地点の開発

朝が来た。


俺の胸の位置にあるリアーナの長く見事な金髪を片手で梳くように撫でて、俺は上半身を起こした。


「ん…」


すると、俺のちょうど腹のところ辺りから妙な声が聞こえた。視線を落とすと、触り心地の良い灰色の髪の頭が俺の腹の上に乗っているのが見える。キーラだ。


布団の盛り上がり方からすると、横向きになって身体を丸めて寝ているらしい。


意外な人物が寝相が悪いと判明した。


灰色の髪の美女は、頭だけを回して俺を見上げると、僅かに潤んだ瞳を細めた。


「な、何故私まで…」


「君は良い従者だったが、君の主人が悪いのだよ」


「ど、どういう意味でしょう」


俺の一言に、灰色の髪の美女は怪訝な顔で身体を起こし、引き締まった上半身を露わにした。


そのプロポーションの美しさと、小首を傾げる可愛さに、俺は唸った。


「今のはキーラが悪い」


「え?」


端的な俺の台詞に疑問符が上がる中、俺は片手で美女の腰を引き寄せた。


「お仕置きだ。寝たふりをしているリアーナ共々」


「ま、また…!?」


「ば、バレてました…!?」






朝から熾烈な戦いを終えた俺は、玉座の間にてドワーフの鍛治士であるカムリと、ダークドワーフの錬金術士であるミラ、そしてヒューマンの建築士であるディグニティを見下ろした。


昨日は結局、ジーアイ城から出ることも無く、法律や一部これからのエインヘリアルな方向性について議論し、各所に指示を出して終わってしまったからな。


今日は色々見て回りたいものだ。


俺はそんなことを思いながら、三人の顔を見回す。


跪いた状態の三人は玉座に座る俺を見上げると、改めて頭を下げた。


「おはよう。さて、街道と各町の学校についてはどうなった」


俺がそう聞くと、カムリとミラが顔を上げる。


「大きな街を繋ぐ街道と学校はもう全て終了だな。ただ、規模の小さな町や村には学校は無いし、街道もまだ途中のところがあるな」


カムリがそう言うと、ミラが頷いて俺を見上げた。


「マスターが言っていた砦の件ですが、ガラン皇国の崩壊に伴って多発している盗賊、山賊被害に丁度良く役立っています。ただ、その砦と街を繋ぐ街道は保留となっていますが、どうしましょう?」


ミラはそう言って俺を仰ぎ見た。砦とは、ガラン皇国との戦争の際に築いた国境近くの防衛用拠点のことである。


街道を敷くと同時に、外部からの侵入経路になりそうな地点には砦も建ててもらっていたのだ。


ただ、砦一つに千人程度の兵しか入れない小さな拠点だが。


「砦と街を繋ぐ街道は必要か? 必然的に国境近くに砦はあるんだし、敵が攻めてきたら危険なポイントになりそうだが」


ミラの質問に俺がそう聞き返すと、ミラは顔を上げたまま小首を傾げた。


「盗賊や山賊がかなり多く、散発的に小さな村々を襲う為、各砦合わせるとかなりの国境警備軍が割り振られています。その上あまり入れ替わることも無いので兵達の精神的苦痛を和らげる為にも行商人などが行き来しやすい街道が必要かと…」


ミラの意見に、俺は顎を指先で撫でながら頷いた。


「なるほど。行商人と娼婦か」


俺がそう言うと、ミラは頬を膨らませた。


「もっとオブラートに包んでください、マスター」


ミラはそう言って口を尖らせる。


ん? 何かセクハラ上司的な対応を取られたぞ?


俺はなんとも微妙な気持ちになりながらミラを眺め、腕を組んだ。


「まあ、元から国内の街道は一本だけでなく、もっと充実させようと思ってたんだ。別に良いぞ」


俺がミラにそう言うと、ミラは機嫌を直して返事を返した。


そして、俺はディグニティに視線を向ける。


「さて、もう頼んでおいた仕事の大半を仕上げた優秀なる建築士、ディグニティ」


俺が仰々しくそう言ってディグニティの名を呼ぶと、ディグニティは顔を上げて俺に対して嫌そうな顔をした。


長身のオカマゆえに、その仕草がやたらと堂に入っていた。


「大したことはしてないわよ? ボス。そんな呼ばれ方したら次はどんな仕事をやらされるのか不安になるわね?」


ディグニティはそう言って両膝を地面について両手で自らの身体を抱きしめた。


俺は警戒するディグニティに苦笑すると、片方の眉を上げて口を開く。


「いや、大仕事だがやり甲斐はあるぞ? 二箇所。城下町からランブラスの間と、ランブラスからセレンニアの間に中継地点となる都市を作る。場所は直線上よりも少し南側だ。ガラン皇国との国境から離れるようにして作ってくれ」


俺がそう言うと、ディグニティは目を輝かせて顔を上げた。


「え!? 街を一からデザインして良いのかしら!? それなら全部私の好きにしていいわよね?」


ディグニティは興奮した面持ちでそう言うと、俺をワクワクした様子で見上げてきた。


俺は浅く頷くと、ディグニティにオーダーする。


「作るのは運河を生かした水の都だ。大量の物資を楽に運べるように城下町から流れる川から水を引き込み、新たな川を作る。あの川は昔氾濫したこともあるみたいだから、分流を作るのは災害防止にも役立つだろう」


俺がそう告げると、ディグニティは嬉しそうに頷いた。


「水の都…いい! いいわ! 創作意欲が溢れ出して鼻から出そうね!」


ディグニティは恍惚とした顔でそう叫んで身を捩った。多分、鼻から出るのは血液です。


俺はもう街作りに取り掛かろうとしているディグニティを見て、曖昧に笑って口を開いた。


「…ただ、一つ問題がある。獣人の国を守る為の城壁の方を先に作らなければならないのだ」


俺がそう言うと、ディグニティは嫌いな虫が目の前に現れたかのような嫌な顔をした。


俺はそんなディグニティに苦笑を返すと、改めて頼む。


「空輸が始まる前には城壁を作りたい。きちんと獣人の国の住民達に意見を聞いて必要な数だけ城門も設置してほしい」


俺はそうディグニティに告げて、ディグニティをジッと見た。すると、ディグニティは何故か俺から顔を逸らして頬を赤らめた。


「わ、分かったわよ! 別にボスの為にするんじゃないからね!? 私は私の街を作りたいからするのよ!?」


ディグニティは顔を赤くして怒鳴るようにそう言った。


長身のオカマがプリプリと怒っているが、まさかツンデレ枠とか言う気じゃあるまいな。


俺がそんなことを思ってディグニティの横顔を睨んでいると、ディグニティは表情を元に戻してこちらを見た。


「そういえば、城壁は獣人の国をグルッと囲むのかしら? それとも街ごとで?」


「縦に長いからな。どちらにしても大変だろうが…まあ、あちらの都合に合わせる方が良いだろう。聞いてみてくれ」


ディグニティの疑問に俺が曖昧に答えると、ディグニティは頬を膨らませて目を吊り上げた。先程のミラと似たような表情だというのに、破壊力が違う。


「…3日で終わらせるわ。それもビックリするくらい立派なものを作るわよ! 見てなさい!」


「ああ、頼んだぞ」


ディグニティの台詞に俺は思わず笑って頷いたのだが、ディグニティは余計怒ったように顔を赤くしていた。


貴様、まさかツンデレ枠じゃあるまいな。



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