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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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エクストラステージ(本編には関係ありません)

剣を一度振り、刃を肩に乗せて俺は舞台を見た。


やる気に溢れたバトルジャンキー、ラグレイトと、やる気が皆無のダラけ聖騎士、ローレル。


そして、青い顔で怯えたように身を小さくする回復魔術士、ソアラの三人が俺と相対するように立っている。


装備は魔術刻印の無い二流品である。


最強装備で挑むと、攻撃力過多になって誰かが死ぬかもしれないからだ。


俺は剣を片手に欠伸混じりに首を回した。


不平等条約を締結させたから成果十分なのに、どうしてこんなことに。


俺がそんなことを思っていると、ラグレイトが口の端を上げてその場で軽く跳ねた。


「さあ、やろうよ! 我が主!」


お子様は楽しそうで良いですね。


俺はそんなら冷めた気持ちでラグレイトを眺め、口を開いた。


「はいはい…フウテン。合図を頼む」


俺が顔を横に向けてそう言うと、緊張感をその表情に滲ませたフウテンが静かに頷いた。


そして、息を吸い、顔を上げる。


「始め!」


フウテンの合図が発せられた瞬間、ラグレイトとローレルが真っ直ぐに俺に向かって来た。


ラグレイトの速度が飛び抜けている為、気が付けば目の前には拳を振り被ったラグレイトがいるという状態である。


「ふっ!」


ラグレイトの鋭く息を吐く声と、目にも止まらない速度で突き出される拳。


まあ、目線で何となく何処に来るか分かるから、普通に剣を横にして防御したが。


ラグレイトの拳と俺の持つ剣の衝突により、大気を揺るがす衝撃と破壊音が辺りに轟いた。


ラグレイトは嬉しそうに口を歪めると、横に飛んで俺の視界から消えた。


すると、正面には剣を構えて俺に刃先を突き込むローレルの姿が映る。


「よっ!」


ローレルの気の抜ける掛け声と、それとは真逆の鋭い剣を俺は剣を横に振ることによって防いだ。


そして、剣を弾いた隙を突き、俺は横に振り抜いた剣をそのままローレルの身体目掛けて振り直す。


斬った。剣が当たる寸前に俺はそう思った。


だが、ローレルの鎧に剣が触れる瞬間、ソアラの結界に弾かれる。


「す、すみません! 我が君!」


ソアラは申し訳なさそうにそう叫びながら、ラグレイトとローレルに身体能力向上と体力自動回復まで発動した。


それを見た直後、俺の側面からラグレイトが手刀を叩き込んできた。だがその攻撃も俺の多重結界に防がれる。


驚くべきことに俺の三枚張ってあった多重結界の内2枚を破壊したラグレイトの手刀を、俺は素早く片手で掴んだ。


その行動に、ラグレイトが目を剥く。


「僕と力比べするの? 我が主」


挑戦的なことを言うラグレイトに、俺は笑みを浮かべて首を振る。


「バカ言え。俺は魔法剣士だぞ」


俺はそう口にして、魔術をラグレイトに叩き込む。


と、言っても俺も巻き込まれる形になるのだが。


俺は巨大な炎の竜巻を発生させ、ラグレイトと灼熱地獄の中で我慢大会を敢行した。


結界の性能はソアラの方が良い為、もう暫くすれば俺の結界だけ崩壊するだろう。


それを分かっているラグレイトは俺の手と俺の顔を見比べながら首を捻る。


それを見て、俺は口の端をあげて剣を振りかぶった。


魔術が発動するしている内に更に攻撃を加える、多重攻撃である。


ラグレイトの拳よりも、スキルを使った俺の剣の方が攻撃力が高い為、結界の性能差を埋める事が出来るだろう。


「フレイムタン!」


俺は目を見開いたラグレイトに向けて、剣を振り下ろした。俺の剣がラグレイトを覆う結界を斬り裂くと同時に、炎の竜巻の中で更に紅蓮の火柱が立ち昇る。


轟々と燃える炎の中で、俺とラグレイトの結界が同時に崩壊した。


「ぐ…っ! 」


一人だけ効果が倍以上になっているラグレイトは炎のダメージに呻き、俺は逆に結界を張り直しながら自らを回復する。


「ず、ズルいよ!?」


「バカ。お互いの持てる力を云々というだろうが」


俺は文句を言いながら殴り掛かってきたラグレイトにそう言い返すと、スキルの効果が切れるのを見計らって手を離し、ラグレイトの顔面に回し蹴りを叩き込んだ。


ラグレイトも何とか片手を上げてガードするが、そのまま勢い良く炎の竜巻から弾き飛ばされるように飛んでいった。


それを見届けた俺は、炎の竜巻の中からラグレイトの飛んでいった方向に向けて家ほどもある岩を連続して飛ばした。


そして、炎の竜巻を消すと同時に周囲に向けて風の刃を飛ばした。


「うぉっと!」


すると、背後から迫っていたローレルがそんな声を上げて踏み止まる。


周囲を見ると、ラグレイトに向かって走るソアラの姿もあった。


俺はローレルに向けて炎の竜巻を発動すると、ソアラの方へ一気に迫る。


「ひゃあ!?」


ソアラが真横にまで迫った俺に気が付いて高い声で悲鳴を上げる。何故そんなに怯えるのか。


俺は少し悲しい気持ちになりながらソアラの両手を掴んで、顔を寄せた。


「降参だな?」


俺がそう聞くと、ソアラは頬を赤く染めて俺から視線を逸らした。


「ま、参りました」


「よし」


俺はソアラの敗北宣言を聞いて手を離すと、ローレルとラグレイトの姿を探した。


すると、二人は何故か舞台の中央で並んでこちらを見ていた。


近接戦闘職二人が揃って並んだところで俺からすれば手間が省けるだけなのだが。


「フロストエッジ」


俺がスキル名を口にして剣を振ると、舞台の上に地面から逆さまに氷柱が生えたように氷の塊が次々と突き出した。


俺の位置から放射状に氷柱が突き出していく中、ラグレイトとローレルは俺に向かって前進してきた。


目の前に聳え立つ氷の塊をローレルが剣を横薙ぎに振り、どんどん切り裂いて行く。


そして、切り裂いて出来た巨大な氷の塊をラグレイトが殴って粉砕する。


破片は飛んでくるが、結界を張っている俺には意味が無い。


あいつらは何をしたいのか。


俺がそんなことを思っていると、三つ目の氷の塊をラグレイトが砕いた瞬間、俺は目の前に迫るローレルの姿に目を奪われ、ラグレイトの姿を見失った。


「クルセイドクロス!」


接近を果たしたローレルがスキル名を口にした瞬間、辺りは白い光に包まれた。


その白い光の中で、更にローレルが俺に接近して剣を振りかぶる。


「ふっ!」


俺は短く息を吐き、ラグレイトが何処から攻めて来るのか見極める為にローレルの方向に走った。


間違い無く、これでラグレイトの裏はかけた筈だ。


驚く様子のローレルの剣を剣で弾きながら横を走り抜け、俺はローレルの背後をとって振り返った。


白い光の中、目の前にはローレルの背中と、上から俺が立っていた場所に向かって降ってくるラグレイトの姿があった。


その光景を見た俺は、こちらを振り返ろうとするローレルの鎧に思い切り蹴りを放ち、ローレルを真っ直ぐに吹き飛ばした。


「うわっ!」


「ちょっ!?」


蹴り飛ばされたローレルが着地する前のラグレイトに衝突し、二人は変な声を残して揃って地面を転がっていった。


「フロストエッジ」


もつれ合うように地面に倒れる二人目掛けて、俺はダメ押しの一撃を放ち、俺の勝利は確定した。


舞台の上に極大の氷柱が聳え立つ中、俺は剣をアイテムボックスに片付けてフウテンを見た。


「…しょ、勝負あり! レン様の勝ちです!」


フウテンがそう宣言し、静まり返っていた闘技場に大歓声が響き渡った。


ラグレイトがドラゴンにならなくて良かった。


俺は内心でそんなことを思いながら息を吐いた。



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