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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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ダークエルフの里?

白い光の光量に目を閉じていた俺は、辺りの空気が変わった気がしてそっと目を開けた。


俺達は開放感のある美しい中庭にいた筈なのだが、一転して薄暗い丸い広間のような場所に先程と同じようにして立っていた。


周囲を見回すと、少しだけ角度があるすり鉢状の円の中心近くに俺達は立っていた。


広間の奥は広く、人一人分ほどの柱が幾つも立っている。


床や柱は石のようでもあるし、白い陶器のようでもあった。


明かりは等間隔に空いた天井にある四角い穴から得ているようだった。


「な、な、何が起きたんだ?」


イツハルリアがそう口にすると、それまで俺と同じように周りを見ていた面々もそれぞれ口を開いた。


「白い光…あれが合図だったのでしょうか?」


「いや、違うみたいですよ。何しろ、こんな場所は我が城にはありませんから」


「転移の魔法陣っぽかったね?」


「そうですね。こちらに来てからは初めてですが」


「お腹減った」


「…サニー様、何かお食べになるものがあれば良いのですが」


皆が好き勝手に発言するものだから動くに動けない。


まあ、ラグレイトとソアラは何となくゲーム時代のことを思い出しているようだが。


広間の中心であり、俺達が囲んでいる真ん中には、またも先程の白い石のようなテーブルがあった。


どういう原理かは知らないが、このテーブル自体が転移装置のようなものなのか。


だが、ゲームの時にはこんな物はなかった。


エルフの城に設置されているならば、作ったのは当時のプレイヤーかその部下になるだろうが、どうやってこんなものを作ったのか。


そして、この場所は何処なのか。


と、俺が思案していると、俺達の喋る声を聞いたのか、薄暗い奥の壁の方から人の足音が聞こえてきた。


「…誰かいるんですか?」


そんな声に振り返ると、そこには黒い肌のエルフの少女の姿があった。


10代に見えるその少女の耳は少し短く、髪は黒い。服装は茶色のローブを着ていた。


だが、間違いなくダークエルフである。耳が短いのはハーフということだろうか。


俺は少女を観察し、返事をしようと顔を上げた。


しかし、俺達の姿を確認したらしいその少女は、ハッとした顔をして踵を返し、走り出してしまった。


「逃げた」


早くもサニーがそう判断したが、確かに少女のその行動は俺達から逃げたようにも見えた。


「ダークエルフ、でした?」


誰にともなくシェラハミラが少し自信なさげにそう聞くと、アリスキテラが頷いて答えた。


「ええ、そのようね。ただ、私が知るダークエルフよりも耳が短く、肌の色も少し明るい気がしたけれど…」


「ハーフ、なのでしょうね。ならば、ここがダークエルフの神殿でしょうか?」


アリスキテラの台詞にサハロセテリがそう呟くと、イツハルリアが焦れたように少女の走り去った方向を指差した。


「あ、あの…先程の少女に話を聞けば良いと思うのですが…」


早くしないと追いつけなくなる。イツハルリアの言外にはそういったニュアンスが感じられた。


「仕方ないな。まあ、現地の人に話を聞くのは基本だ。ラグレイト、追いかけてきてくれ」


俺がそう言うと、ラグレイトは体を伸ばしながら俺を見た。


「捕まえる? 尾行する?」


「とりあえず尾行だ。あまりにも遠くに行きそうなら捕まえてきてくれ」


「了解!」


俺の簡単な指示にラグレイトは即答すると、地面を蹴って走り出した。


加速の段階で姿が見えなくなるほどの凄まじい速度で消えたラグレイトに、サハロセテリやイツハルリア、シェラハミラだけではなく、アリスキテラですら呆然としていた。


「やっとお仕事をもらえて張り切っていますね。私も何かお役に立てると良いのですが…」


ラグレイトの背を見送ったソアラがそんなことを口にして苦笑すると、イツハルリアが目を見開いてこちらに顔を向けてきた。


「い、いや、張り切ったとかそんな話ではないだろう。なんだあの尋常ではない速度は…」


イツハルリアは驚きのあまり普段の口調でソアラにそう言った。


だが、ソアラは首を傾げながら何でもない事のような顔で答える。


「技も何も無く普通に走っただけでしたが…斥候の出来る仲間はラグレイトの倍は早いですよ?」


ソアラがそう言うと、イツハルリアは諦観したような顔で項垂れた。


「…ダメだ。これ以上聞くと私の常識が崩れてしまう…」


イツハルリアのなんとも言えない声を聞きつつ、俺はアリスキテラとサハロセテリに顔を向ける。


「とりあえず、俺達もここから出てみるか」


俺がそう言うと、皆が頷いて同意した。






横幅2メートル程の薄暗い廊下を進み、僅か数十秒。すぐに廊下の奥に外の光が漏れだしてきた。


思ったよりもこの建物は大きくないようだ。


俺がそんなことを思いながら廊下を進み外に出ると、薄暗い屋内から急に陽の光が強い外に出た為、一瞬視界を光に奪われてしまった。


目を細めて眩暈にも似た感覚に耐えていると、やがて外の明るさに目が慣れてくる。


目に入るのは見上げるほど巨大な木々と木を組んで作られた住居の建ち並ぶ姿である。


そして、俺達がいるのは少し高い位置に入り口があるピラミッド型の建造物のようだった。


視線をもう少し下げると、そこには俺達が立っているピラミッド型の建物の入り口へと向かう階段と、その途中に地面を見下ろすラグレイトと少女の姿がある。


その向こう側、ピラミッドの下には数十人にものぼるダークエルフの集団が一様にこちらを見上げていた。


これはもしや、神の神殿を荒らした不審者という扱いを受けるんじゃなかろうな。


そう警戒した俺に対して、ラグレイトがこちらを振り向きながら一言発した。


「ほら、嘘じゃなかっただろ? あの真ん中の背の高い人が神の代行者様さ」


ラグレイトがそう口にすると、ダークエルフ達はお互いの顔を見合わせ、誰にともなく俺達を見上げたままその場で跪いていった。


ダークエルフの服装は皆同じ茶色のローブだった為、俺はカルト宗教の教祖になった気分で顔を顰めた。



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