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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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一騎当千 カルタスversion

「ぬははは! いくぞぉ!」


ワシは優しく攻撃のタイミングを教えてから刀を振った。


同時に、スキルを発動する。


「ぬぅん! 黒影万刃剣!」


ワシがそう叫んだ途端、ワシが振り払う刀の刃の部分から次々に黒い刃が現れて敵を切り裂いていく。


放射状に広がって飛んで行く影の刃は、百近くの敵兵を一気に殲滅した。


「む。こりゃいかんな。皆殺しにしてしもうたぞ」


ワシはそう呟き、刀を持ち替えて周りを見渡した。


何故か兵達は強張った顔でワシを見るが、折角の強者との戦いが楽しくないのだろうか。


ワシは首を傾げながらも刀を腰の高さに持って行き、兵達のど真ん中に向けて吶喊した。


「ぬぅえりゃああっ!」


気合いと共に、ワシは刀を振るいながらスキルを発動する。


「禊臨覇図隷剣!」


発動した瞬間、ワシの振る刀の刃がブレて見えなくなり、代わりに黒い波動のような波が放射状に広がっていった。


それに最初に触れた最前列の兵士達は鎧ごとひしゃげて後方へ弾き飛ばされていった。


そして、広がる波の衝撃に合わせて奥の兵士達も次々に吹き飛ばされていく。


「よし! これなら半分くらいは生きとるな!」


ワシはそう言って笑うと、刀を上段に構えた。


頭の上まで持ち上げた刀を一気に地面まで振り下ろし、またスキルを発動する。


「響蹄大阿多離剣!」


ワシがスキル名を叫ぶと同時に刀の刃先が地面へと到達し、ワシの身長よりも高い白い刃が真っ直ぐに奔った。


白い刃は兵達の真ん中を複数列巻き込みながら奥へ奥へ突き進んでいく。


「まだまだいくぞぉ! 必殺! 迦尓之破斬剣!」


ワシは最大の攻撃範囲を持つスキルを発動すると、一気に刀を振った。


横一文字に振るい、次は切り上げからの切り下げ、更に回転してからの横一文字…。


コマのように回りながら、ワシは刀を振るう。


そして、そのたびに飛んで行く人を弾き飛ばす剣の波動。


本来なら相手との距離を取ったり、壁役の前衛が周辺の敵を吹き飛ばす時に使う技だが、雑兵相手だと面白いように吹き飛ぶ。


千や二千は斬り倒した筈だが、やはり大軍。まだまだ全然敵が減ったような感覚は無い。


隣を見ると、殿があのデカイ盾を持った重戦士を吹き飛ばすところだった。


ふぅむ、流石は殿。


武器のランクを落として更に手加減も加えておられる。


ワシはこのお気に入りの刀を仕舞い込むのは嫌だが、もう少し手加減はするべきか。


いや、早めに帰らねば、殿に預けられた城がカムリの爺さんに占拠されてしまう。


やはり、急ぎでこいつらを殲滅せねばならんか。


「と、止まったぞ! あの変な鎧の男に矢を射ろ! 前列は全力で盾を構えて守れ! 遠距離から潰すんだ!」


と、兵達の奥の方からそんな指示が聞こえた。


「…変な鎧、だと?」


ワシは聞き捨てならん言葉を聞き、目を細めて先程の声がした方向を見た。


奥に、赤い鎧を着た男が馬に乗って周りに何か指示を出している。


その奥の方にも赤い鎧の男がいるが、指揮官クラスの兵士は赤い鎧なのか。


なら、殿が拵えたワシの鎧を変な鎧などと言いおった無礼者は生かしておかずとも良い。


指揮官は殺したほうが隊列も乱れて楽になるだろう。


良し、殺そう。すぐに殺そう。


ワシは標的を定めると、地面を蹴って飛び上がった。


「ふぅおおお! 無威雉門!」


ワシはそう叫んで空中で刀を4度振った。


縦に2回、横に2回だ。


そうやって空中で四角を描くと、その空中で描かれた四角の線に沿って黒い焔が奔った。


四角をなぞるように走る黒い焔は、ワシが地面に着地しても空中で燃え続けている。


「ふん!」


ワシがその状態で刀を振ると、まるで空中から刀の衝撃波を飛ばしたように無数の黒い刃が揺らめきながら地面へと降り注いだ。


そして、地面や兵士に接触した黒い刃は激しい轟音をともないながら爆発した。


火柱が立ち昇るような爆発ではなく、空気が瞬時に膨張するような衝撃をともなった爆発である。


見た目の派手さは無いかもしれないが、敵兵は一つの揺らめく黒い刃で二、三十人が吹き飛ばされている。


このスキルは制限時間内の間、ワシが攻撃すると追加攻撃をしてくれる優れものであり、攻撃範囲はワシが顔を向けている方角に広角で撃ち出される。


そのうえ、スキルの重ね掛けが出来るワシのお気に入りスキルである。


「迦尓之破斬剣! うぇい!」


スキル発動と同時に刀を左斜め上から右下に振り、足を入れ替えて右から左に横薙ぎに振り切る。


「ぬぅありゃ!」


気合いとともに刀を振った反動を利用して身体を回転、また勢いをつけて右から左に刀を振った。


最後の一撃は中々良い剣速だった為、一際大きな波動が敵軍に向けて放たれた。


横幅30メートルほどはありそうな刀の波動を受けて、敵軍の前列はほぼ崩壊しただろう。


「さて、何人斬ったかもう分からんが、一度殿の方へ戻るとするか」


1人で突出し過ぎてしもうたか。スキルも解除されたことだ。潮時だろう。


ワシは1人で笑いながら刀を手に踵を返そうとした。


すると、背後から怒鳴り声が響き渡る。


「ま、待て、貴様!」


声のした方向に顔を向けると、そこには随分と横に広い赤い鎧の男がいた。


鎧の形状では無く、単純に太っているのだ。


男はワシを睨みながら右手を上げた。


「魔術士隊! 傭兵団、氷の槍! 砂漠の狼! 竜の牙! 放て!」


男がそう合図を送ると、前方四方向から火の玉、氷の槍、10か20センチの岩、そして斜め上から吹き荒ぶ突風がワシに迫った。


「すべて違う属性か! 中々良いぞ! だが、コントロールを間違えれば打ち消しあう属性の並びはいただけん!」


ワシはそう解説し、刀を振るった。


一閃、二閃、三閃…十五は振ったか。


ワシが刀を鞘に納める頃には、全ての魔術がワシの刀によって掻き消され、斬り落とされ、切り裂かれ、打ち消された。


それを見て、兵達の顔は恐怖と絶望に染まる。


「ば、馬鹿な…ありえん! 剣で魔術を防ぐなぞ…!」


「今、目の前で見ただろうに」


指揮官らしき男の吐き棄てるような声と台詞に、ワシは呆れ半分に返事をした。


それにしても遠距離攻撃をする部隊が組み込まれた隊列のある場所まで斬り込んでしもうたか。


完全に前列は抜けたな。


「折角だ! 魔術士も多少は斬って帰ろうか!」


ワシがそう言って笑うと、魔術士らしき一団が声を上げて後ずさった。


「ほら、さっさと詠唱せんか! あと一秒か二秒でその辺りは血の海だぞ!? うわははははっ!」



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