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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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夜、決戦前夜

ジーアイ城の食堂にて、俺達は豪華なディナーを前に席に座っていた。


今日は俺の希望で豚カツらしきカツ料理がメインである。ゲン担ぎという奴だ。


俺が座るテーブルにはまだ客人扱いのリアーナとキーラ、そして面白そうという理由でシェリーを同席させている。


ちなみに、リアーナとシェリーが会った瞬間、シェリーは驚愕に目を見開き、リアーナは嬉しそうに目を見開いた。


「り、リアーナ様! どうしてこちらへ!.?」


「まあ、シェリーさん! 貴女もこちらへ!.?」


二人は同時にそう叫んで手を取り合って飛び跳ねた。


「私は出来たらレン様に嫁げたらと思ってきたんですよ」


「えっ!.?」


そんなやり取りをして、二人は近況報告に華を咲かせていた。


どうやら、リアーナはシェリーより年下だが、シェリーより後に入って先に卒業した秀才らしい。


キーラによると、学園は変わり者が多く、シェリーやリアーナは人当たりの良さから人気があったようだ。


さて、そろそろ食堂に集まった戦闘職のメンバーに話をするとしよう。


俺がそう思って立ち上がると、食堂内に徐々に静寂が広がっていった。


そして、すぐに食堂内を咳一つない沈黙が支配する。


「さて、皆も知っての通り、明日はガラン皇国との戦いがある。今日はゆっくり休み、明日は昼まで腹ごなしの散歩がてら城の外で狩りをして来るように。今やっている学校建設で寮に住む子供達の食料もいるからな」


俺がそう言うと、食堂で力強い返事が木霊した。


「あ、分かってると思うが、プラウディアの用意した食べれる魔物リストを持って狩るように。食えないやつを持ってくるなよ?」


更に、おれが皆を見回しながらそう付け足すと、食堂の中のそこかしこで小さな笑い声が起こった。


「以上だ。後は各々好きにして良いぞ」


俺は最後にそう挨拶をして席に座る。俺が喋り終わったことを理解した皆は、徐々にまた雑談などの声が響き始めた。


「あ、あの…ガラン皇国との戦いについてもっと言うべきだったのでは?」


俺がスープを飲もうとスプーンを持っていると、シェリーがそう言って顔をこちらに寄せてきた。


まあ、作戦は話してあるし、今回は初めて武力を見せつける戦争になるのだ。


はっきり言って、激励をするまでもなく皆やる気に溢れている。


俺は気楽に笑い、シェリーを見た。


「大丈夫だ。ガラン皇国の軍についてはかなり調べてあるし、作戦も出来上がっている」


俺がそう言うと、シェリーは納得したのか頷いてまた夕食に手をつけ出した。


ふと、その隣に座るリアーナを見て俺は口を開いた。


「そういえば、リアーナは魔術士でもあったな。どれくらいの魔術を使えるんだ?」


俺がそう尋ねると、リアーナはどこか嬉しそうな顔で答えた。


「あ、はい。私は火と風の魔術を上級まで使えます」


ふむ。上級か。確かシェリーが水の上級と言っていた魔術を使った時は、ゲームでいうところの中位レベルくらいの魔術だったはずだ。


しかし、シェリーは当初その魔術一回でダウンしてたが。


「リアーナは自分にとって最大規模の魔術を何回くらい使える?」


「そうですね…4回か、5回でしょうか」


俺が更に詳しく魔術の力量を聞くと、リアーナは唸りながらそう答えた。


その横ではシェリーがそわそわしながらこちらを見ている。


特訓の成果がかなり出ていると報告書にもあったから、俺に言いたくて堪らないのだろう。


俺は苦笑混じりにシェリーに尋ねた。


「シェリーは今はどれくらいいける?」


俺が聞くと、シェリーは笑顔で頷いた。


「はい。私は今は水と土の魔術が使えます。連続で6回いけますよ」


「えっ!.?」


シェリーが僅かに自慢げに答えると、リアーナが吃驚してシェリーを見た。


「凄いですよ、シェリーさん。この短期間に何があったんですか!」


リアーナにそう言われ、シェリーは照れ笑いを浮かべながら片手で頭を掻いた。


「ふ、ふふふ。半分はレン様にお借りしているマジックアイテムのお陰ですが、今はマジックアイテムが無くても何とか3回は連続でいけますよ」


「マジックアイテム?」


シェリーのセリフを聞き、リアーナとキーラが俺の方を向く。


俺は豚カツに似たカツを口に頬張っていたので、少し待ってもらい、口を紙ナプキンで綺麗に拭いてから口を開いた。


「魔術士の腕輪のことか。魔力向上と、魔力回復力向上の効果がある。もし、帽子、服、靴、マント、アクセサリーの全てを俺が持つ魔術士用の装備に替えたら、恐らく威力2倍の回数2倍、あとは魔力の回復力2倍くらいまでは上がるぞ」


俺がそう言うと、キーラが驚嘆してこちらを見た。


「な、なるほど…そのような伝説のアイテムがあるから皆さんもあれだけの御力を…」


いや、中位レベル程度の魔術なら素っ裸でも二百発以上撃てるぞ。


俺は思わずそう言いそうになったが、素っ裸で数十人は吹き飛ばせる水系魔術を乱発する姿を想像して口を閉ざした。


流石にシュール過ぎる。


俺が黙っていると、リアーナが神妙な顔になってこちらを見た。


「…どうでしょうか。私も、お手伝いさせてもらえますか?」


リアーナの言葉に、キーラが先に反応して顔を上げた。


俺はその2人の様子を眺め、背凭れに背中を押しつけ顎を上げた。


「…まぁ、良いだろう。それなら実験がてらシェリーも参加だな」


俺がそう言うと、リアーナは嬉しそうに返事をし、キーラは苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見た。


「はい?」


と、話について来れてないシェリーは疑問符を頭に浮かべて首を傾げる。


「ああ、明日のガラン皇国との戦いにリアーナも参加したいって言ってな。2人の魔術士としての実力を見させてもらおうかと思ったんだが」


俺が説明するとシェリーは驚いてリアーナを見た。


「リアーナ様が戦争に? ど、どうしてそんな…」


シェリーがそう言うと、リアーナは凛と微笑んだ。


「私の我が儘です。レン様に嫁ぐと口にしたからには、意地でもレン様の為に戦わせていただきます」


「え? とつぐ? え? れ、レン様とご結婚されるんですか!.?」


リアーナの爆弾発言にシェリーは困惑して俺とリアーナの顔を見比べた。


リアーナはシェリーのその反応を見て、恥ずかしそうに俯く。


「ま、まだ、私がそう言っているだけなのですが…」


消え入るような声で口にされたリアーナのそんな台詞に、シェリーは愕然とした顔で固まった。


その様子を眺め、俺は咳払いを一つしてリアーナとシェリーを見る。


「俺はまだ結婚は考えていないからな。ただ、個人的にリアーナとキーラは欲しいと考えているが」


俺がそう言うと、リアーナとキーラは一瞬で顔を真っ赤に染めてしまった。


「……っ!」


「…ほ、欲しい…私が欲しい…? そ、そそ、それは…」


俺は2人の反応を見て誤解を与えている可能性に気が付き、口を開いた。


「なにせ、リアーナは他国の文化や法律に詳しい。キーラは人探しも得意みたいだしな。有能な者はどんどん我が陣営に加えたい」


俺がそう言って2人を見ると、2人はそれぞれ別の反応を見せた。


2人ともまだ顔は赤いままだが、リアーナはこちらへ身を乗り出すようにして笑顔を浮かべ、キーラは深く頭を下げて口を結んだ。


「私がレン様のお役に立てるんですね!」


リアーナは笑顔でそう言い、隣に座るシェリーを見た。


しかし、シェリーは反対に思い詰めたような顔つきでテーブルの上を見ていた。


「シェリーさん? どうなさったんですか?」


リアーナはシェリーの様子に気が付き、心配そうな顔でシェリーにそう尋ねた。


シェリーはリアーナを見て、自分に視線が集まっていることに気がつくと、困ったように笑った。


「あ、いえ…私は、レン様のお役には立てないだろうなって…そう思っちゃいました。すみません…私みたいな一般人が大それたことを…」


シェリーはそう言うと、自分の目の前にあるスープの皿にスプーンをつけ、口に運んだ。


俺はそんなシェリーを見て口の端を上げると、鼻で笑って口を開いた。


「何を言う。お前はもう俺のものだ。逃がさんぞ」


俺がそう言うと、シェリーは口に運んだスプーンを口に咥えたまま、スープを噴出した。


「ブフッ!」


「きゃあっ!」


スープが飛散すると、リアーナが思わず悲鳴を上げて仰け反る。


気がつけば、テーブルの上が大惨事になってしまった。


まったく、シェリーにも困ったものである。


後で戦争に備えて厳しい個人レッスンをしてやろうか。



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