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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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ガラン皇国軍を放置して学校建設

さあ、やってきました!


ビリアーズ大臣の住む街セレンニア!


今日は朝から校舎が作られており、俺が着く頃にはほぼ完成している状態となりました!


三分クッキングみたいなノリで校舎が出来た…。


俺は外観が既に完成している校舎を眺めながら、そんなことを思った。


今は内装と家具の類を作成中らしく、校舎の周辺には孤児がもう集められている。


ちなみに、風呂も手の空いた魔術士達が入れたので現在順番に孤児達が身体を洗っている。


食事はメイド部隊を半分連れてきたから急ぎで準備中である。


後は寝床さえ用意出来たらとりあえずの孤児対策は十分だろう。教育は後々出来るようになるのだから、焦る必要はない。


まずは元メイドだった人に教師になってもらうことからだ。


学校のシステムは文字の読み書きと四則計算、あとは成りたい職業ごとのサポートで問題ないだろうし。


俺が教育システムについて考えながら校舎を見ていると、リアーナが俺を見上げて口を開いた。


「凄いですね。僅か2日で孤児の問題を解決してしまおうとするなんて…レンブラント王国の王都でも解決に本腰を入れて10年…場合によっては20年はかかる大事業です」


「何を言う。まだまだ一つ目だ。俺が直接治める城下町ならすでに学校はあるが、他の街にはまだ全く出来ていない。10日で全ての街に学校を建てなくてはな」


俺がそう言って肩を竦めると、リアーナは困ったように笑った。


「そんな無理難題…なんて、竜騎士様には通じませんね。本当に10日でどうにかしてしまいそうですから」


リアーナがそう言うと、キーラが深く頷いた。


「まさしく、神の代行者様の御力を目の当たりにした気持ちです。恐れ入りました」


キーラはそう言って顔を上げたが、俺が自分を見ていることに気がついて目を瞬かせた。


「勿論、キーラに協力してもらうぞ? 各街で元メイドを集めてもらう」


俺がそう言うと、キーラは目を丸くして口を開いた。


「わ、私ですか? とても光栄なお話ですが…私は姫様の従者で…」


キーラは珍しく慌てながらそう言ってリアーナを見たが、リアーナは嬉しそうにキーラを見返した。


「まあ、キーラがレン様のお手伝いを! 私も微力ながら助勢します!」


「え、あ、あの…姫様…」


無邪気に喜ぶリアーナと狼狽えるキーラを眺め、俺は苦笑しながら口を開く。


「頼む、キーラ。うちの陣営はこういう街やら城やらは造れるし戦闘なら負け無しなんだがな。メイドへの伝手なんてないからな。勿論、報酬なら出すぞ」


俺がそう言うと、キーラは困惑していたが、やがて頷いた。


それを確認して俺が安心していると、リアーナが校舎を見ながら口を開いた。


「ところで、レン様は学校建設に掛かりきりのご様子ですが…ガラン皇国の動向は…」


リアーナは言いづらそうにそう口にして俺の顔を横目に窺った。


「ん? 戦争の準備のことか?」


俺が聞き返すと、リアーナは苦笑しながら慌てて視線を俺から外した。


「あ、すみません。レン様には余計な心配でしたね。レンブラント王国内でもガラン皇国が異常な数の兵を集結させていると報告があったようですから…」


「ああ、どうやらガラン皇国が我が国に侵攻を開始したようだな」


リアーナの台詞に俺がそう同意すると、リアーナがこちらを見て口を何度か開閉させた。


その様子を見て、キーラが俺に問いかける。


「あ、あの…侵攻を開始した、と聞こえましたが…」


キーラの質問に、俺は軽く頷いて答えた。


「ああ。ランブラスとコランウッドに向けて侵攻中らしいな」


俺がそう返すと、キーラまで固まった。


「あ、あの…防衛戦を? それとももう兵が向かっているのでしょうか?」


「いや、ガラン皇国軍がこちらの領土に足を踏み入れないと手を出し辛いからな。まだ2日はかかりそうだし、明日様子を見に行って、その日か次の日にでも撃退するとしよう」


リアーナの質問に俺がそう返事をして笑うと、二人は唖然とした顔でこちらを見上げていた。


「…なるほど。あの城壁を作り上げた御技で山岳路や崖の部分の道を封鎖して…」


と、いち早く名探偵キーラがハッとした顔でそんな推理を繰り広げ出した。


「いや、前回は平地で正面から殲滅したが…」


俺がそう言ってキーラの推理を否定すると、キーラは絶句してしまった。


いや、嘘では無いからな。


俺が二人に詳しく話すべきか考えていると、サイノスがこちらに歩み寄ってきた。


「殿、斥候から連絡がありました」


サイノスの言葉に振り返ると、ギルドメンバーの偵察班の一人がこちらに頭を下げていた。


「どうやら、明日の昼頃には国境付近にガラン皇国の侵攻軍が到着するようです。その後、山を越え、大軍が目立たずに夜営出来る場所はセレンニアとランブラスの間、街道から外れた草原になるとのことです」


「ああ、分かった。メーアスの動きは?」


さて、奴隷はどうなったか。


俺がそう尋ねると、偵察班の報告書をサイノスが広げた。


「えー…防衛に備える予定だった兵2万と、予備兵力に回す予定だった兵3万、レンブラント王国への牽制の為の兵3万の中から各半数ずつほどいる奴隷を強制的に回収したそうです」


つまり、奴隷約4万か。


戦闘に耐えられる奴隷をかき集めていたらしいから、健康な者ばかりではあるだろう。その中からどれだけ犯罪奴隷以外の者がいるか。


「こちらへ侵攻中の軍は?」


俺が聞くと、サイノスは書類を暫く眺めて顔を上げた。


「おお、中々の数ですぞ。コランウッドには6万の兵が向かい、ランブラスには8万の兵が向かっておるそうです」


合計14万。牽制と予備兵力も合わせて20万の兵が今回用意された兵か。


街の防衛用の兵力は極力出さないだろうし、その内の4万の奴隷を回収出来たなら上出来か。


「日数にもう少し余裕があったなら侵攻中の軍からも奴隷を回収出来たかもしれないが、まあ仕方ないな」


俺はそう言ってリアーナとキーラを見た。


「ということらしい。明日の夜が開戦だな」


俺がそう言うと、リアーナは呆気にとられたように眉を上げて目を丸くした。


「…まるで問題にしておられないのですね。まさにガラン皇国が全力で攻めてくるといった軍勢ですが、レン様は何万の兵で御相手をなさるのですか?」


リアーナにそう聞かれ、俺は腕を組んで唸った。


「とりあえず、50と50に分けて100で相手をしようか。回収出来たら奴隷の回収もしたいし、大規模魔術は抜きでやろう。ハンデだな」


俺がそう言って笑うと、リアーナとキーラが目を剥いた。


「ひゃ、100万もの兵がおられるのですか?」


「バカ言え、100人だ。50人と50人に分けるという話だ」


「100人? 100万では無くて? 100人で相手を…」


俺の返事にキーラが衝撃を受けていたが、リアーナは何かを決意したように唇を噛んで顎を引いた。


「………私も行きます」


掠れた声で呟かれたその言葉に、キーラが慌てた様子で声を荒げた。


「姫様! それはなりません!」


キーラが血相を変えてそう訴えると、リアーナは厳しい視線をキーラに向けた。


「私は竜騎士様に嫁ごうと思ってこちらへ参らせていただいています。神の代行者様を相手に、そんな不遜な思いを抱く愚かな女が、ここで我が身可愛さに共に戦うことすら選択しなかったら、愚かな女以前に恥知らずの謗りを受けましょう」


そう言ってリアーナは口を結び視線を落とすと、ふっと力を抜くように笑ってこちらを見た。


「御恥ずかしい話ですが、私が最初レン様にお近付きになりたいと思った理由は、子供の頃から読んできた竜騎士と英雄の物語に憧れていたという浅はかな理由だけでした」


リアーナはそう言って俯くと、歯を食いしばって表情を引き締める。


随分と幼い顔立ちだと思っていたが、そういう表情をするとやはり王族なのだな、と納得する迫力があった。


俺が感心してリアーナの表情の変化を見ていると、リアーナは眉根を寄せて口を開いた。


「ですが、今は違います。揺るがない強い心と、実力に裏打ちされた確かな自信に溢れ、そして誰よりも優しい…そんなレン様を心より御慕いしております! 幸いなことに、私も昨年まで魔術学院で魔術を学んでおりました! 僅かながら、御力になれることもあるかもしれません!」


と、リアーナは言って自分の胸に手を当てた。


やべぇ、告白された。


そんな感想を抱くと共に、魔術学院に在籍していた過去を知って驚いたりもする。


「…そうか、ありがとう。ところで、リアーナは魔術学院で何位だったんだ?」


「2位です!」


俺が質問すると、リアーナははっきりとそう言った。


え、凄くない?


あれ、グラード村出身のシェリーも中位くらいの魔術を使えた筈だが、それでも50位くらいだったような…。


じゃあ、リアーナは上位に匹敵する魔術が使えるのか?


意外と本当に戦力になりそうだな。


やはり、王族だから魔術を学べる環境が整っているのか。


「ふむ、中々出来るようで素晴らしいが、戦闘経験はあるのか?」


興味を持った俺がそう尋ねると、リアーナは眉をハの字にして俯いた。


「いえ…ただ、攻撃魔術に特化しておりますので何とかお役に立てたら、と…」


リアーナがそう言うと、キーラが険しい顔でリアーナを見た。


「姫様は攻撃用の魔術しか使えないではないですか。危険です。素人が急に戦場に出ればただの足手纏い。ただの動く的。ただのお荷物…」


「もう! そこまで言わなくても良いじゃないですか!」


心配し過ぎて暴言のようなセリフでリアーナを止めるキーラに、流石のリアーナもぷりぷり怒り出した。


俺はそんな二人を眺めて息を洩らすように笑う。


「どちらにせよ、今は学校作りだ。ま、明日までゆっくり考えてみろ」


俺がそう言うと、二人はこちらを見たまま時が止まったように動かなくなった。


いや、間に合うからね?



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