第四話:戦闘員と怪人と
岸 守は、《賢人会》によって命を救われ、(無許可で)改造されて、後にクロと呼ばれる《戦闘員》となった。
そのため、検査と称して《賢人会》所縁の病院から突然呼び出されることもしばしば。
その呼び出しの内容とは……?
集合場所には、すでに全員揃っているようだ。
色々な事情のある、俺を含めた11人。それぞれが、元々はただの一般人だったという。
それが今では《オーブ》というよく分からない光る球体を命がけで採取する仕事に従事している。
多次元情報発光球体、通称 《オーブ》。
《賢人会》の誇る様々な技術はその光る玉から得られたものだという。
大きさは、ピンポン玉くらいから、バレーボールくらいまで。
色も様々で、いまだに解明できていないものも多いという。
そんな、未知の情報の塊であり、エネルギー元にもなる発光球体は、《賢人会》だけが発生の予兆を察知して先手を打つことができている。
競争相手は、《変身ライダー》、《戦隊》、《魔法少女》、別の秘密結社。
毎回事前に予兆を察知して現地に到着していれば、戦闘員の居るところに《オーブ》が発生することがバレてしまう。
そのため、基本的に三つ以上の部隊が出撃して、本命以外は撹乱作戦をすることになっている。
その撹乱作戦の内容が破壊工作だったなら、《賢人会》は世界の敵として早々に討伐されたかもしれない。しかしながら、主な内容は《奉仕活動》だったりする。
工事現場で、日雇い労働者に混じって作業したり。
遊園地でヒーローショーのエキストラをやったり。
行列のできる店舗で列を整理したり。
幼稚園のお散歩で園児と手を繋いで一緒に散歩したり。
老人の荷物を持ち歩行を補助したり。
数人ずつ、方々に別れての撹乱……という名の奉仕活動……をする。
ただ今回は、クロの班が採取と、情報が漏れないようにする処理と、各所に秘匿されている拠点への運搬を担当するようだ。
《賢人会》のオペレーターがサポートしてくれるので、本来なら現地集合でも構わないはずだが、わざわざ呼ばれたということは……。
「がっはっはぁ! よく来たな! 兄弟!」
吠えるような笑い声に目を向ければ、2mに及ぶ長身に、全身を盛り上げるバランスの取れた筋肉、鬣のような長い髪とつながった顎髭、威風堂々と腕を組む様は、王者の風格を放つ。
その名も、獅子王 太子。
《賢人会》が誇る、古参にして最長稼働時間の、《最強の怪人》。
……の、世に溶け込むための変身前の姿がそこにあった。
『お疲れさまです』
クロのような戦闘員にしてみれば、怪人は上司にあたる。
そのため、クロは獅子王に対しては未熟ながらも礼儀を欠かしたことはない。
「そのような他人行儀でなくてもよかろう! オレが許可する! 兄貴と呼ぶがいい!」
なんか知らんが、またテレビアニメとかに影響されたのか、めんどくさいことになってるな……。
クロは、心中で毒づくものの、
『時間に余裕をもって行動しましょう』
「水くさいっ! ……と言いたいが、あくまで慇懃な態度も実によい! ……変っ身!!」
組んだ腕を解放し、両手を広げた自然体。
刹那、太陽のように輝く獅子の形のオーラに包まれ、その光を弾き飛ばすような咆哮を天に向けて解き放てば。
『日輪のごとき獅子!! 我が名は《ソル・リオン》!! この姿、その目に焼き付けるがよいっ!!』
両手を肩の位置まで上げ指を開くその姿は、後ろ足で立ち上がった獅子。
すぐに、レスラーのような構えを取ってみせる。
戦意は充実。すぐにでも飛びかかりそうな雰囲気だ。
……しかし、ここはまだ秘密基地の中。
幼稚園児のちびっ子相手なら、きゃっきゃと喜びそうな演出に思うが、これから普段と違う決死の任務に就く戦闘員たちの空気は、ただただ重い。
『オレに任せておけ!! がっはっはぁ!!』
獅子の姿で獅子のように呵呵大笑する怪人は、その経歴含めて頼もしいのだが……。
秘密基地の空気は、ひたすらに寒々しいものだった。
・怪人
:黄オーブや灰オーブなどによって得られた素材から形成されたボディに、《オーブリアクター》のエネルギーを込められた異形の存在。
動物や昆虫を模している姿と能力のものが多いが、主に二足歩行。
戦隊5~6人分、ライダーの8~9割程度の力を持つ。
長く稼働している個体は、戦闘経験を積むことでより強力な個体へと成っていく。
敗北後は、自爆することで機密を保持している。
普段は、人の姿で世に溶け込んでいる者もいる。




