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第85話 いよいよ本気を出すらしい (主人公トキヒロ視点)


『ええい、こうなったらこの俺自らがゴミ掃除をしてくれるわ!

 三魔将軍よ、武闘台の雑魚どもを蹴散らせ』

 アシュタロス大公らしき声が会場に響き、同時にものすごいジャンプ力で客席を飛び立ったアシュタロス大公が俺たちの目の前に降り立つ。


 虚を突かれた。接近を許してしまう。

 その一瞬に、左右の入場ゲートの魔族をかき分けるように、一際強い魔力を持った三体の魔物が突進してくる。

 あれが三魔将軍と言うことか。


 どうやら、最初に俺の索敵魔法で感じられた4体の強い反応の持ち主が、全てこの場に集まったようだ。


「ふはははは!

 貴様ら、人間風情にしては良くやった。

 しかしそれもここまでだ。

 我が魔大公軍最強の俺たちが、直々に殲滅してくれる。

 特に、お前はこのアシュタロス様が直々に引導を渡してくれる。ありがたくあの世へ逝け」


 アシュタロス大公が宣言すると同時に他も三魔将軍も斬りかかってくる。

 こちらも4人。

 ちょうどいい。

「一人一体でいいな」

「「「了解」」」


 俺の言葉にすかさず返答があり、もっとも手近な相手と剣で切り結ぶ。

 俺の相手はアシュタロス大公その人だ。


 敵は禍々しい瘴気を放つ黒剣に闇の魔力を纏わせて斬りかかってくる。

「ふははっはっっっっっ!

 この魔剣に触れればたちどころに呪いで腐り落ちるのだ。

 死ねえぇ」


 わざわざ説明ご苦労である。

 俺は光魔法の浄化の魔力を最高に高め、この世界の召喚時に体得した魔法剣のスキルで前の世界から持ち込んだ伝説の剣に纏わせる。


 ガキンッ


「バカな……」

 俺の剣と切り結んだ瞬間、大公の持つ黒剣は纏ったのろいの魔力を霧散させる。


「一瞬で呪いを浄化だと……

 貴様一体何者だ!」

 大公の疑問に答えてやるほど俺は善人おひとよしではない。

 無言で斬りかかる。


 はっきり言ってアシュタロスよりも着ぐるみ達の方が数十倍は強い。

 この程度であの自信は一体どこから来ているのだろうか。


 パワーでもスピードでも、身体強化すらしていない状態でこちらが上回る。


 どうやら他の三体は更に弱いらしく、こちらは誰一人として危うい戦いはしていない。

 他を気遣う余裕すらある。


「正直、みずち以下ね」

 俺の隣で切り結んでいたカオリがぼそりと感想を漏らす。


「藍音ちゃん、ベヒモスとどっちが強いかな?」

「あのカバさん?

 それはやっぱりこっちじゃないかな?

 まあ、50歩100歩だけど……」


 どうやら着ぐるみ達も手応えを感じていないようだ。緊張感のかけらもない会話が聞こえてくる。


「おのれ!

 しかし、お前達に、我々を殺すことは出来ない」


 こいつは、正常な形勢判断が出来ないのだろうか……。

 これだけ押されているにもかかわらず、アシュタロス大公からは意味不明の自信たっぷりなセリフが出てきた。







短くなってしまいすいません。

次話は明日の投稿予定です。

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