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第83話 どうやら過小評価されているらしい (主人公トキヒロ視点)


『どうやら分かっていないようだな。

 我々に逆らうとどうなるのか、まずは目障りな武闘台の4人に実演していただこう。

 やれ』

 拡声の魔道具を通じて、アシュタロス大公が指示を出した。

 どうやら標的は俺たちのようだ。


 大公の指示が出るとすぐに、上空からはねつきの魔族たちが魔法を放とうとしているのが窺える。


「致し方ない。

 せっかく準備した魔法剣だ。

 転用させてもらう」


 俺はそう叫ぶと雷をたっぷりと纏って放電している剣を上空に向ける。


「付き合うわ!」

 カオリも俺の動きに合わせて剣を上空に向ける。


 俺たちの最大火力の雷魔法だ。少なくとも上空の魔族の半数は仕留めてみせる。


「ブロードライトニングショット」「ギガサンダースパーク」

 俺たちの剣から雷の範囲攻撃が放たれ、上空の魔族の6割が消し炭となる。


『なっ!何だと。

 何という破壊力だ!』

 拡声の魔道具から反乱首謀者達の驚きが漏れる。


「あれ、喰らってたら危なかったんじゃない、藍音ちゃん」

「だよねー」

 背中からパンダとクマの会話が聞こえる。緊張感のない声だ。

 この二人は現在の状況をあまり危機的と認識していないのだろうか……。



「それじゃあ、私たちも遠慮無くやりましょうか」 

「上空に向けて放つだけなら後先考えなくても大丈夫かな?」

「いや、流石に自然蒸発するくらいにしとかないと公転軌道に影響したらやばいでしょ」

「了解、それじゃあ私の合図で一緒にやりますか、藍音ちゃん」

「分かったわ。香澄ちゃん」

 どうやら背中ではパンダとクマの相談も終わったようだ。


「3、2、1、発射」

 クマのカウントダウンの後、俺たちの上空に真っ黒い球体が現れ、そのまま上空へとゆっくり上昇していく。


 と、同時に、はねつき魔族の魔法が発動してそれぞれの魔方陣から炎や氷弾、岩の塊が俺たちめがけて発射される。

「結界を張る!」「手伝うわ」俺とカオリは即座に結界魔法を発動しようとする。

「たぶん必要ないと思うわよ……」

 背中からのんびりとした口調の緊張感がない声が聞こえてきた。パンダの台詞のようだ。


 俺たちはその言葉に疑問を持ちつつも、上空の魔族からの攻撃を確認したが、そこには俺たちの知る魔法では考えられないような光景が展開されていた。

 パンダとクマから放たれた黒球は少し大きくなりながらゆっくりと上昇し、魔族の放った攻撃をことごとく吸い込んでいる。

 いや、攻撃魔法だけではない。近くにいる奴から順に、はねつき魔族そのものも吸い込まれている。


「な、一体あれは……」

 俺の疑問に着ぐるみ達が答える。

「ただのブラックホールよ」

「ファンタジー風に言うと重力魔法かしら」

 パンダとクマはさも当然というようにさらりと言ってのけた。


 魔法でブラックホールを作り出すなど、一体どれほどの魔力が必要なのか見当もつかない。

 重力制御の魔法は俺のいた世界にも存在するが、自分の体重をキャンセルすることで発動するレビテーションや相手の重力を数倍にして動きを阻害するグラビリティーコントロールは、制御する重力の大きさに対して使用魔力が級数的に大きくなる。

 その基準と同一で考えると、重力無限倍とも言えるブラックホールの生成には俺の全魔力を使用しても可能かどうか疑わしい。


「カオリ、魔方陣は見えたか?」

「いえ。見えなかったわ……。魔方陣そのものを隠蔽した痕跡すらない……。

 あれだけ大規模な結果を残したというのにね。

 出来れば、詳しくやり方を教えて欲しいわね」

 カオリも同じことを考えていたのか、俺が発しようと思っていた言葉を先にパンダたちへ投げかける。


「いいけど、まずはこの場を何とかしましょう。

 取りあえず出来る範囲で共闘すると言うことでいいかしら」

「ああ、もちろんだ。

 お互いの出来ることと出来ないことが分からないから、基本はそれぞれのチームで当たり、出来る範囲で相互に補助すると言う方向で頼む」

 パンダの言葉に俺が返答すると、一同が頷く。


 そんなことをしている間にも、着ぐるみ達が作った二つのブラックホールは上空の魔物の大半を飲み込みながら、遙か彼方へと消えて行く。

「あれは放っておいていいのか」

「あの程度の大きさのブラックホールなら、私たちが干渉するのを止めたら自然と蒸発するから問題ないわ」

 パンダの言葉にクマも頷いている。


 放たれた魔法に干渉する?

 これも俺の概念にはあまりない。

 俺が出来る魔法発動後の干渉は、せいぜい火炎球のコースを少し変えるくらいだ。


 一方、アシュタロス魔族大公とスフォルトゲス伯爵は、自分たちが絶対の自信を持って送り込んだ航空戦力が3分も持たずに壊滅的な被害を被ったことが理解出来ないようで呆然としている。

『ば、バカな……』

『500を越えるアークデーモンが、全滅……。

 3分も持たずにか……』

 まだ、拡声の魔道具を握りしめていたらしく、会場中に奴らのつぶやきが聞こえた。







評価、ブックマークいただいたかた、ありがとうございます。

次回更新は金曜日の朝の予定です。

1000字程度と短くなります。すいません。

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