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第81話 エルハンスト武術大会決勝! 学校の師弟対決 (カスミ視点)


 香澄ちゃんの避雷針計画は上手く行った。

 仮面冒険者チームの遠距離からの雷魔法による雷撃は金属製の竹竿と金属ネットによって弱体化出来た。

 鎖帷子によるシールド効果も相まって、金属ネットを通じて流れてくる電流も私たちにダメージを与えるには至っていない。


 これで魔法による攻撃は意味が無いことがわかっただろう。

 後は物理攻撃による力比べだ。


 お互い示し合わせていたかのように、藍音ちゃんと男性の剣士、私と香織さんと思われる剣士に分かれての一対一対決が始まる。


 高速で互いに接近し、足を止めてのうち会いから始まる。

 まずは剣技比べだとでも言うかのように互いに必殺の間合いにいながら互いの攻撃を躱し、いなし、受け止める。

 着ぐるみでやや視界が制限されるが、一瞬の遅れはスピードでカバーだ。

 未来世界に召喚転生させられたときも、スピードだけは藍音ちゃんにすら負けたことはない。


 互いに右上段からの袈裟懸けで切り下ろした剣が二人の間で火花を散らす。

 カスミさんの回転切りを下段からの切り上げで軌道を変えていなす。

 私の横なぎを一瞬で間合いの外に移動して香織さんが躱す。


 おもしろい。


 お互いの突きをお互いがかわした瞬間、右肩と右肩が接触しての力比べとなる。

 押し合いだ。押し込まれた方が後手に回る。


 正直、藍音ちゃん以外でここまで打ち合える相手がいたことに驚くと同時に、とても興奮している自分がいることに気がついた。


「カスミ先生」

 そのとき、お互い接近して押し合っている相手から声がかかる。

「カスミ先生なんでしょ」

「やっぱり香織さんだったのね」

「分かっていたんですか……」

「何となくね……」

「先生はどうして大会に出たんですか。

 やっぱり私を探して?」

「ええ、そうよ。

 日本に帰る方法が見つかったんで全員連れ帰ろうと思って探していたのよ。

 あなたと厨二病勇者一行以外は既に帰還させたわ」

「そうだったんですか……

 けど私は……、今すぐに返答出来ないんです」

「あなたにはあなたの事情があるようね」

「ええ」

「この試合が終わったら時間をもらえるかしら」

「私の方こそお願いしたいです」

 そう言いながらも、香織さんは押す力を全く緩めない。


「それじゃあ、それまでは取りあえずこの試合を楽しませてもらっていいかしら」

 私の問いかけに香織さんの口角が上がる。

「望むところです」


 ベキッ


 そういったときにお互いの足下で石版が砕ける。

 私たちの押し合う力に石版の強度がついてこられなかったようだ。


 瞬間で二人とも後ろに下がり距離を取る。


 ここからはスピード勝負だ。


 足を止めての打ち合い以上に、動きながらの剣戟は多様な攻撃を生み出す。

 瞬間、止まって打ち合い、次の瞬間別の場所でまた剣を交わす。

 残像だけが武闘台に残り、その像を見たときには既にそこにはいない。


 上段からの切り下ろしを避けた次の一瞬に横なぎを放ち、その攻撃が空を切った瞬間に斜め後方からの切り上げを躱している。


 目の前に別の影が通り過ぎる。

 藍音ちゃんと剣士君もこちらに負けないスピードで戦いを繰り広げている。


 これはもう少しギアを上げる必要があるだろうか。

 そう考えていると突然香織さんが足を止め、彼女を中心に大きな魔方陣が1つとその周囲に小さな魔方陣が8つ展開し始める。

 黄色い複雑な魔方陣はまるで大きなひまわりの花のようだ。


「最大火力の攻撃を撃ちます。

 先生、死なないでくださいね!」


 私に向かって警告するようにそういった香織さんの展開する魔方陣から、何本もの雷撃が発生し、その全てが香織さんの持っている剣に吸収される。


 私は背中に一本だけ残っていた金属製の竹竿を構えると、香織さんの攻撃に備えていつでも回避出来る体勢を整えた。

 もちろん、万一に備えてサイコキネシスの発動も準備しておく。

 最悪、香織さんの剣の軌道をサイコキネシスで無理やり変更することも考慮し、香織さんの放つ最大の攻撃を待った。







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