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第70話 着ぐるみ達の試合 (主人公トキヒロ視点)

69話の別視点になります。ちょっと時間が戻っています。


 俺たちは残りの二回戦三試合を観戦することにした。

 もちろん、仮面ははずして、一般の観客に紛れてだ。


 第二試合のエルハンスト冒険者ギルド選抜チーム(10人1チーム)と王都騎士団チーム(10人1チーム)の戦いは、接戦の末、大将同士の一騎打ちとなり、王国騎士団チームが勝った。

 冒険者チームは戦争に上位ランク者がかり出され例年よりも低レベルだったと、近くで観戦していた親爺が愚痴っていた。

 地元のチームを応援していたようだが、俺の目から見ても騎士団チームの大将を務めたシュリンガーという人の実力がややぬきんでているようだった。


 ちなみに、王国騎士団チームはシュリンガーが率いた5人はかなりの実力だったが、残りの五人はひどい腕前のように見えた。

 ひどい5人を率いていたのは、俺たちの訓練でも見かけたパリスという中隊長だったようだ。

 パリス達とシュリンガー達との連携がひどいことになっていたため、おそらくシュリンガー達はかなり足を引っ張られただろう。


 次に俺たちが当たるチームではあるが、こいつらには負けたくない。特に、あのパリスという隊長には。


 当初は目的のスフォルトゲスをたたきのめしたら、試合を棄権してもいいと思っていたのだが、次のチームにあのパリス達がいるかと思うと、正直王都での仕返しがしたくなる。


「カオリ、棄権するかどうかだが、あいつらを叩きのめしてからでもいいか」

「奇遇ね、ヒロ。

 私も今そう聞こうと思っていたところよ」


 どうやら思うことは一緒のようだ。

 王都での訓練のとき冷遇された元凶には、しっかりと報復をしておくべきだろう。


 ついでに言うと、あのシュリンガー達が率いる5人にも興味がある。

 実力的には俺たちの方が遙かに上なのだが、この国独特の剣技や連携には参考になるものも多く、是非お手合わせ願いたい。




 そんなことを考えていると、次の試合が始まった。

 名前からふざけたチームだったが、その姿があらわになると、俺とカオリは思わずほうけてしまう。


「なあ、カオリ……。

 あれってやっぱりあれだよな……」

「ええ、間違いないわ。

 あれはやっぱりあれよ……」


 俺たちが見たもの。

 それは間違いなく、この世界のものとは思えない、いや、日本製と断定してもいい、パンダとくまの着ぐるみを着た2人組だった。

 しかもくまの着ぐるみは、明らかに某県のイメージキャラクターに酷似している。


「ヒロ、あれって……、召喚者だよね?」

「もしくは俺のような転生者か、あるいは転移者かといったところだろうな」

「あの着ぐるみは、この世界で作ったにしては精巧すぎるわよ」

「そうだな……」


『第三試合開始!』

 俺たちの驚愕をよそに、ウグイス嬢の声が試合開始を告げる。


 直ぐに王宮魔術師達は魔法の詠唱に入る。

 というか、開始の合図の前に詠唱を始めており、開始合図と同時に着ぐるみに向かって赤い魔方陣から炎が、緑の魔方陣から風が吹き出し、炎の嵐となって迫る。


 対する着ぐるみも、風魔法を発動したのだろうか、炎の嵐に突風がぶつかる。


 しかし、炎の竜巻は威力を弱めながらも徐々に風の中を突っ切り着ぐるみに迫ろうとする。が、武闘台の中央を過ぎたあたりで突然炎が消滅した。


「「「なっなぜだ!」」」

 魔術師チームから驚愕の声がいくつも上がっているようだ。


「ヒロ、何かあの着ぐるみの魔法はおかしいわ」

 カオリが少し早口で俺に告げる。


「どういうことだ?」


「あなた、魔方陣が見えた?」

 カオリの指摘を聞き、俺も背筋に寒いものを感じる。

 そうだ。着ぐるみの放った風は魔方陣なしで発動した。

 剣技スキルの真空刃やかまいたち系の技なら、剣を振るなりのアクションが必要となるが、そのような動きもなかった。


「確かに魔方陣も見えなかったし、スキルを使ったような動作もなかったな……」

「そうよ。全くのノーアクションで風の魔法を発動出来るとしたら、それは私がかつて召喚された世界にも、この世界にも、まして日本にもない魔法と言うことになるわ」

 カオリの分析を聞けば聞くほど、あの着ぐるみの正体が気になる。


「これから当たるかも知れない相手にマナー違反かも知れないが、鑑定して見よう」

 俺の提案にカオリも頷く。


 早速俺は鑑定した。


 結果は……、ダメだった。



 鑑定結果には、


 パンダの着ぐるみ(日本製30万円)

 く○もんの着ぐるみ(日本製30万円)


 としか出てこなかった。


 そう、着ぐるみの中の人物が見えていないために、外側の着ぐるみしか鑑定出来なかったのだ。

「ダメだ。

 着ぐるみの値段しか分からない」


 俺が告げると、カオリも頷く。

「私の鑑定もそうよ。

 中の人が見えていないと、その人のステータスが鑑定出来ないとは知らなかったわ」


「ああ、鑑定の意外な弱点が明かされてビックリしているよ。

 確かに、今まで戦った人や魔物は着ぐるみを着ていることはなかったし、フルアーマーでも目は見えていたからな」


「ええ、着ぐるみにものぞき穴はあるんでしょうけど、かなり小さいみたいね。

 残念ながら、どこにのぞき穴があるのかも、この距離では分からないわね」


 それにしても、あの二人はそこまで考えて着ぐるみを使用したのだろうかと考えていると試合が動いた。


 6人の魔術師が再び詠唱に入ろうとするが、二体の着ぐるみが猛スピードで斬りかかる。


「なっ!

 瞬間移動!?」

 魔術師たちの驚きが手に取るように分かる。

 俺たちがこれだけ離れていても姿を追うのがやっとという超スピードだ。

 間近で見ていた魔術師達にはあのスピードをとらえるような動体視力はあるはずがない。


「強いな、あの着ぐるみたち……」

「ええ、正直底が見えないわね。

 私たちでも勝てるかどうか分からないわ」

「カオリ……、どうしたい……」


 もちろん戦いたいかそうでもないかという意味での問いかけだが、俺の問いにカオリがしばらく考え込む。


「本音を言えば、戦ってみたいわね。

 けどそれは、この大会に参加した目的ではないわ。

 あなたに任せる」


 今度は俺が考え込んだ。


「正直いうと、強い相手と技を比べ合うのには興味がある。

 あれほどの強敵はそうはいないだろうからな。

 けど、あいつらと戦うには決勝まで進まなければいけなくなるが、それでいいのか?」


「ええ、いいわ。

 エルンスト伯爵のチームはみずち系の武器防具で武装しているけど、おそらくあの二人の方が勝つわ。

 私たちも勝ちましょう、ヒロ」


 カオリの意志も確認出来たことだし、俺たちは第四試合を見ることなく、選手控え室に戻った。







遅くなりましたが、やっと一話分書けました。

最初の部分が68話のラストと一部重複していますがご容赦ください。

変換ミス、タイプミスに気づかれた方、感想欄で教えてください。

よろしくお願いします。

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