表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/109

第68話 エルハンスト武術大会始まる。(主人公トキヒロ視点)


『ご来場の皆様にお知らせします。

 本日の武術大会は9チームの出場予定でしたが、勇者マサヨシとビッチな仲間たちチームが集合時間までに現れませんでしたので、仮面冒険者チームの不戦勝となります。

 初戦はこの後、午前9時から開始となりますので、今しばらくお待ちください。

 繰り返しお知らせします。

 ……………』


 会場に音声魔法で拡大されたウグイス嬢のアナウンスが流れる。

 俺はカオリと視線を合わせると、思わずニヤリとした。

 計画通り、召喚勇者達は病院から出てこれていないようだ。

 王都からきた騎士団チームや宮廷魔術師団の一行に動きがないことから、勇者達の所在は王都側に漏れていない可能性が高い。

 正直、俺たちの正体を見破る可能性が一番高い勇者一行を大会前にほふることが出来たのは僥倖ぎょうこうであった。


 大会会場の至る所にチーム一覧と対戦表が張り出されているが、係の職員によって棄権と不戦勝の文字が書き加えられている。


【対戦一覧】

 ①スフォルトゲス伯爵チーム(10人1チーム)

 ②勇者マサヨシとビッチな仲間たちチーム(4人1チーム)棄権

 ③仮面冒険者チーム(2人1チーム)

 ④エルハンスト冒険者ギルド選抜チーム(10人1チーム)

 ⑤王都騎士団チーム(10人1チーム)

 ⑥宮廷魔術師団チーム(10人1チーム)

 ⑦着ぐるみ冒険者チーム(2人1チーム)

 ⑧スフォルト冒険者ギルド選抜チーム(10人1チーム)

 ⑨エルハンスト伯爵チーム(10人1チーム)

 一回戦 ②-③ ③の不戦勝

 二回戦 ①-②③勝者 ④-⑤ ⑥-⑦ ⑧-⑨

 準決勝 ①②③勝者-④⑤勝者 ⑥-⑦勝者-⑧⑨勝者

 決勝  ①~⑤勝者-⑥~⑨勝者


 俺たちのチーム名は伯爵が気を利かせて名前が出ない形に変更されていた。


『一回戦は勇者マサヨシとビッチな仲間たちチームが試合場に現れませんでしたので、仮面冒険者チームの不戦勝となりました。

 それではただ今から本日の第一試合、スフォルトゲス伯爵チームと仮面冒険者チームは武闘台に登壇してください』


 俺たちのチームメイトとスフォルトゲスのチーム名がコールされた。

 ついにこのときが来た。

 この街でまっとうな政治を行っているエルハンスト伯爵を敵視し、俺たちの持ち込んだ土螭つちみずちの装備で名声を手に入れようとする性格の破綻しているらしいスフォルトゲスの野望をくじくときだ。


 俺とカオリはゆっくりと西の入場ゲートからコロシアムの中央の設置された一辺50メートルほどの正方形の武闘台に上がる。

 会場のコロシアムは定員5万人ほどだと聞いていたが、ほぼ満席状態だ。

 最上段にもうけられている貴賓席には、南側にエルハンスト伯爵、東側にスフォルトゲス伯爵の姿が見て取れる。

 北と西の貴賓席は空席となっているようだ。


 スフォルトゲス伯爵の貴賓席の真下に当たる東のゲートから、スフォルトゲスのチームが現れた。

 見たところ全員が剣士のいでたちで、土螭つちみずち製と思われる盾と剣で武装している。

 武器屋のゲンガーさんは気にくわない相手だからといって手抜きの武器防具を売るような人ではない。

 奴らの武器は紛れもなく一級品だ。


「カオリ、気を抜くなよ。

 あの剣はかなり危険だ」

「ええ、分かっているわ。

 最初から雷の魔力を武器に付与していくわよ」

「ああ、俺もそうする」


『第一試合開始!』


 魔法で増幅された声が戦いの開始を告げると同時に、スフォルトゲスの兵達は一斉に俺たちへ向かってくる。

 どうやら2対10という数の力を前面に出して押し切るつもりのようだ。


 俺とカオリは抜剣すると剣に雷の魔力をまとわせ、ぎりぎりまで敵兵を引きつけたところで左右に分かれて側面に回り込む。

 囲んで一気に潰そうとほぼ横一直線の体型で前進してきたスフォルトゲスのチームは俺たちの移動速度に目がついて行かなかったようだ。


 俺が右端の兵に斬りかかるのとほぼ同時に、カオリも左端の兵の縦を切り裂く。

 殺してしまっては反則負けになるかも知れないが、俺たちの狙いはあくまでもこのチームの上位進出阻止であり、俺たちの持ち込んだ素材製の武器防具をふさわしくない人物が所有しないようにすることである。


 右端の兵の剣と盾を、雷の魔力を込めた剣で破壊して無力化する。

 武器を失った兵は、仲間のために俺を止めようとタックルしてくるが、顎先を軽く蹴り上げてやるとその場に崩れた。


 次の兵はようやく事態に気がつき俺へと向き直るが遅い。

 その後ろの兵は前の兵の横に出て俺を囲い込もうと動くが、そのときには二番目の兵の武器を破壊し、こめかみに剣のつかで一撃を入れた後だった。


 カオリも既に二人目を無力化しており、敵は6人に減った。

 俺たちは示し合わせていた通り両側から魔法を放つ。


「サンダーペレット!」

「スプリットサンダー!」


 二人が放った雷の魔法は土螭の盾や剣を破壊しながら兵士も感電させる。

 死なない程度に威力は調整したが、意識を刈り取るには十分だったようだ。


『勝者、仮面冒険者チーム』

 場内アナウンスが俺たちの勝利を告げる。

 会場は割れんばかりの拍手に包まれた。


 ふと東側の貴賓席を見ると、怒り狂ったスフォルトゲス伯爵が周囲の執事やメイドに当たり散らしている姿が確認出来た。

 とりあえず、俺たちの一番の目的は果たした。

 後はエルハンスト伯爵のチームの邪魔にならないように消えるだけだ。


「とりあえず終わったな。

 これからどうする」

 俺はカオリに訪ねる。


「一番の目的は果たしたけど、あのいけ好かない国王軍や宮廷魔術師のチームも出ているのよね」

 カオリが少し考えて返答する。

「ああ、そうだな」

「ついでにつぶせるだけつぶしちゃダメかな?」

「全く問題ない」


 俺たちはとりあえず王国の関係者が勝ち上がった際にはつぶすことで意見が一致した。

「そうと決まれば、観戦だな」

「ええ」


 選手控え室に戻った俺たちは、仮面と装備をはずして観衆に紛れることにした。

 もちろん、偽装のスキルで見た目を変えることも忘れずにおこなった。




 第二試合は接戦の末エルハンスト冒険者ギルド選抜チームに王都騎士団チームが競り勝った。

 騎士団チームと銘打っているが、あのえらそうにしていた王国軍の兵士が約半数の兵士の指揮を執っており、正直いけ好かない。

 エルハンスト伯爵も言っていたが、戦争の影響で高位の冒険者が出払っている現状では、冒険者選抜チームの人選はベストからほど多いもののようだ。




 そして始まった第三試合。

 俺とカオリは完全に固まった。

「なあ、カオリ……。

 あれってやっぱりあれだよな……」

「ええ、間違いないわ。

 あれはやっぱりあれよ……」


 俺たちが見たもの。

 それは間違いなく、この世界のものとは思えない、パンダとくまの着ぐるみを着た2人組だった。

 しかもくまの着ぐるみは、明らかに某県のイメージキャラクターに酷似していた。








ご愛読ありがとうございます。

誤字やタイピングミスにお気づきの方は感想欄でお知らせください。

評価、ブックマークいただいた方、ありがとうございました。

次回は主人公視点にするかカスミ視点にするか悩んでいます。

更新予定は未定ですが来週までにはアップ出来るといいなと思っています。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ