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第63話 カスミ先生、街へ行く   (カスミ視点)


 基地が出来た日、夕方までかかって藍音ちゃんに地図を作ってもらう。

 近隣の町や村の位置などを、高高度からの視点で遠視してもらって作った地図だ。

「縮尺とか狂ってたらごめんね。

 あんまり絵心ないから……」

「いえ、十分よ」

 藍音ちゃんは謙遜するが、シンプルでわかりやすい地図だ。


 この地図によると、王都の近くにはいくつか町があるが、関谷香織さん達が襲撃された地点から近いのは東の方向の町だ。


 私たちは、早速テレポートして、町の郊外へ移動する。

 夕食がてら、情報収集をする予定だ。

 道行く人に聞いたところ、エルンという街の名前と冒険者ギルドの位置が分かった。


 二人が行くとしたら、おそらく冒険者ギルドだろう。

 無一文の二人が金を稼ぐもっとも手っ取り早い手段は冒険者だ。


 早速冒険者ギルドへと移動すると、ギルド内はその日の報告をする冒険者達で随分混み合っていた。

 女二人のペアが珍しいのか、随分と視線を集めてしまうが、私たちは列の最後尾に並ぶ。


 受付窓口は5つ全て開いており、討伐報告や素材の買取で忙しそうに受付嬢が対応している。

 この状況で人捜しは少し気が引けるが、逆に言うとこれだけ人がいれば二人を見かけた人もいるかも知れない。


 しばらくすると私たちの番が来て受付嬢が話しかけてくる。

「お待たせしました。

 本日のご用件をお伺いします。

 買取でしょうか?報告でしょうか?」


「いえ、どちらでもないわ。

 人捜しなの。

 男女2人のパーティーで最近このギルドに新たに来た人がいないかしら。

 その内の女性の方と知り合いで、すぐに伝えなければいけないことがあって探しているの」

 私は関谷香織さんの容姿と名前を伝えると、隣で受付をしていた女性がこちらを見て、話しかけてきた。

「もしかしたら5日ほど前にイノシシを持ち込んだ二人じゃないかしら。

 このギルドで登録して、いきなりDランクになったペアの女性もカオリさんといったはずよ」

「その話、少し詳しく聞かせていただけないでしょうか」

「いいけど、あと一時間ほど待ってもらえるかしら。

 今混み合っているから、もう少し人が減ってからね」


 私たちはその受付の女性を待つため、ギルドの受付横にある食堂スペースに移動する。

「ついでにこの食堂でご飯でも食べながら待ちましょう」

「いいわね。ちょうどお腹も減ってきたし、わたし、お肉がいいわ」

 藍音ちゃんはお肉をご所望だが、私はさっきから隣のテーブルで美味しそうに食べられている卵料理に引かれている。


 私たちはカウンターでそれぞれのお気に入り料理とナンのような平べったいパンを注文し、空いている席でお互いの料理も試食しながら受付の女性を待つ。


 お約束のように絡まれることもなく、1時間ほどしてカウンター業務も落ち着いた頃に、先ほどの受付嬢さんが私たちのテーブルに来てくれた。

 私たちは最初の料理を食べ終え、野菜炒めと焼き肉を追加注文し、ゆっくりと食事を楽しんでいた。

 お味はやや濃いめだが、普通に美味しい。


「始めまして。

 ギルド職員のサラと申します」

「あ、始めまして。

 王都で冒険者をしていました香澄と言います」

「始めまして。

 同じく藍音と言います」


 簡単に挨拶したあと、情報提供に来てくれた受付嬢さんにも料理とハーブティーのような飲み物を勧め、一緒に食べながら質問する。


「早速ですが、二人はまだこの街にいるんでしょうか」

「たぶんいないと思います。

 というのも、5日前にイノシシを買い取って以来、お二人を見かけておりません。

 5日前には隣のギルド直営の宿に宿泊されていましたが、翌朝にはチェックアウトしてそれから宿泊していません」

 私の質問によどみなく答えてくれるサラさんはとてもいい人のように感じる。


「それでは、二人がここからどちらへ行ったかご存じありませんか?」

 私の質問に少し考えていたサラさんだが、何か思いついたようでぽつりぽつりと話し始めた。


「そういえば……

 宿の食堂でこの国と隣のイースランドの戦争について聞いていたような……

 たしか、そうだったと思います。

 ということは、国境に向かった可能性がありますから、ここから東の方でしょうか……」


 あまり自信はなさそうだが、確かに可能性が高い話である。


 これまでの経緯から、二人はかなりの力を隠しているらしいので、自分たちの力をこの世界でどう生かすのか、或いは隠し通して干渉しないのか判断する必要を感じている可能性は高い。

 そうであれば、紛争地帯で情報を収集する可能性もあるというものだ。


「ありがとうございます。

 明日はここから東の方を探してみます」

 私たちはサラさんに礼を言い、楽しく無駄話しながら残りの食事を楽しんだ。


 ついでにこの世界の魔法やスキルなどについてもサラさんとの会話からかなり情報が入ってきた。

 ESPを使うときは、この世界で普通に使われている魔法に似せて使うのがいいだろう。


 食事が終わると私たちはエルンの街で夜食と足りないものを買い足し、新しく作ったベヒモス沼の拠点へと帰ったのである。







ご愛読ありがとうございます。

不定期更新ですがよろしくお願いします。

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