第52話 カスミ先生のレベリング2日目 (カスミ視点)
朝食後はお弁当を持って一日中レベリングということになった。
今日の護衛兼監視役もシュリンガーさん達、近衛騎士団の5人だ。
「他の連中は行方不明の生徒達の捜索にかり出されてるのさ」
狩り場へ行く途中でシュリンガーさんが教えてくれる。
「他の生徒達の扱いはどうなっているんですか」
「俺も詳しいことは聞いていないが、勇者が残っているから、このまま見つからなくても特に問題ないという判断のようだ。
そうはいっても、かなりの数の優秀なスキル持ちが消えているから、明日くらいまでは軍が総出で探すことになるみたいだな。
そんなわけで、軍が手薄な期間は俺たち近衛騎士団があんた達の面倒を見ることになったわけさ」
なるほど、ほとんどの生徒が日本に帰ったため、あの変態山賊中隊長はこちらに来なくなったわけだ。
出来れば永遠に来ないで欲しい。
そんなことを考えていると、早速獲物第一号を発見する。スライム2匹だ。
生徒4人は迷わずスライム目がけて駆け出す。
大塚、龍造寺2名が剣で攻撃、新宮園、鳳凰堂2名が魔法で援護という布陣でスライムに当たる。
大型のアメーバのようなスライムは間違って覆い被さられると危ないが、動きもそこまで速くないので回避しながら切りつければ簡単に倒せる。
レベルが9に上がったせいで、5回ほど勇者と剣士が切りつけ、魔法が当たったところでスライムは臨終する。
それにしてもこの程度の相手を一撃で倒せないと言うことは、レベル9もそれほど攻撃力が高いわけではなさそうだ。
「どうだ、先生。
俺たちだけで十分だろ」
自慢げに言う勇者マサヨシは、どこか驕りのある表情である。
「もう、私たちの邪魔しないでよね」
勇者マサヨシとビッチリーダー龍造寺がどや顔で私を見下している。
「慣れてきた頃が危ないのよ。
気を抜かないことね」
私はため息をつきながらアドバイスしたが、4人は我関せずと言う様で次の獲物を探して駆けだした。
「それじゃあ俺たちはこの辺の魔物を根絶やしにしてくるから、護衛の皆さんは適当に休憩でもしておいてくれ」
4人が草原を走りまわっている様子をしばらく見ていたが、一応シュリンガーさんに確認しておく。
「シュリンガーさん、生徒達は好き勝手に走りまわっているみたいですが、この辺りに危険な敵は出ないんですか」
「ああ、レベル9で倒せない魔物はほとんど出ない。
その代わり、これから先はレベルも上がりにくくなってくる。
この辺りの魔物では、今日一日刈り続けてもレベル10になるかどうかだな」
「魔物以外に危ないものはいないのですか」
「まあ、いるとしたら悪質な冒険者か盗賊と言ったところだが、この辺りは金の少ない新人冒険者しかいないから、どちらもまず遭遇することはないだろうな。
それより、あんたはどうするんだ?」
私はちょっと考えてから返事をする。
「私も少し魔物を倒してみようと思います。」
「レベルは上がらないと思うがいいのか?」
「はい、出来ればこの世界で自由に使えるお金が欲しいので、素材が売れる魔物や動物が狩れるといいと思っています」
「なるほどな……
それならここから森の方向に1時間ほど行ったところに水牛の群れが生息する湿地があるから、うまく仕留めることが出来ればそこそこ金になるだろう。
もっとも、肉を運ぶには最低でも荷車が必要になるだろうな」
なるほど、確かに素材の運搬が問題だ。
どうしようかと考えていると、シュリンガーさんが腰に付けていた革袋をはずしてよこす。
「この革袋はマジックバックになっていて、見た目よりかなりたくさん荷物が入る優れものだ。
ただし、重さの軽減はないから、たくさん入れれば重くなる。
こいつを貸してやるよ。
うまく水牛が捕れたら解体して売れそうなところをこれに入れて持ってきな」
「ありがとうございます。
ちなみに売れるところって肉だけですか?」
「いや、角とか内蔵とかも売れる。
角は素材に、内蔵は食用になる」
「なるほど、分かりました。それでは夕方までには帰りますね」
「気をつけて行けよ。
俺の剣をさばけるあんたの腕なら大丈夫と思うが、レベル1なんだから無理して怪我しないようにな」
私は袋を受け取るとシュリンガーさんに別れを告げて遠くに見える森の方に歩き始めた。
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