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第42話 作戦は放置と決まりました (主人公視点)


 あれから武術大会の2日前まで、俺たちは洞窟の入り口に陣取る光螭ひかりみずちに挑み続けたが、ついに倒すことができなかった。


 隙を突いて洞窟に飛び込み、魔法や剣技で切りつけるが、手足は切れても本体と顔には一切のダメージが入らない。

 しかも、手足はすぐに再生する。


 一度など、手足を切り取った部分から剣を突き入れて雷撃をかまそうとしたが、なんと突き入れた剣の両側から二本の腕が再生し、危うくつかまるところだった。

 6日間にわたって挑み続けたが、全く倒せるめどが立たない。


 幸い、風螭かぜみずちを倒したときにレベル4まで上がっていたが、あれ以降は周辺の魔物を倒しただけなので、レベルも上がっていない。


 マルンさんに状況を説明し、光螭ひかりみずちを今の俺たちには倒すすべがないことを謝ると、予想外に上機嫌な声で気にすることはないと言ってくれた。


「あいつが洞窟の入り口に陣取ってくれて、中から来るゴブリンなんかを全部食べてくれるおかげで、周辺の魔物が減っているんだよ。

 光螭ひかりみずちは洞窟から出られないみたいだし、ラディー村としては畑を荒らす魔物が減って万々歳なのさ」と、明るく教えてくれた。


 しかし残念だ。

 一気に魔石集めを終わらせるつもりが、思わぬところでつまずいた。

「今の魔石の量では、クラス全員を日本に帰すには足りないと思うわ。

 他の魔物で魔石を集めるしかないわね」と、カオリも顔をしかめる。


「とりあえず光螭ひかりみずちはしばらく放置だな。

 もっとレベルを上げてから再戦だ」

 俺の提案にカオリもすぐに同意してくれる。


「そうね。

 そろそろエルンストにもどらないといけないし、それしかないわね」


 俺たちはマルンさんに別れを告げると、三度決戦の地、エルンストへと向かった。

 お土産はみずち3体分の素材である。






 エルンストについた俺たちは、早速ゲンガーさんの店へ行き、お土産のみずち3体を見せる。

「ゲンガーさん、これが今回の獲物なんですが、買取お願いできますか?」


 ゲンガーさんは目を見開いて驚いていたが、すぐに正気にもどり同意してくれた。

「こいつはすごいな。あれがもう3体も手に入るとは……

 もちろん購入させてもらう。

 条件は前と一緒でいいか?」


「はい。売れた分の50%で結構ですよ」

 俺が応えるとゲンガーさんはすぐに金を用意してくるといい、店の奥に一旦もどり、大量の金貨を持ってきた。

「前回の分が売れたときの50%分だ。

 スフォルトゲス伯爵とエルンスト伯爵に剣と盾10セットずつ売れたから40億ゼニーの半分で20億ゼニーと、今回の手付け金3体分3000万ゼニーだ。

 受け取ってくれ」


 なんと見たこともない大金が現れた。

 もう、一生働かなくても暮らしていける気がする。

「こんなにもらって大丈夫なんですか?」

「貴族様が即金で払ってくれたから、余裕で大丈夫だ。

 こっちも十分もうけさせてもらったよ。

 それに、あと3体追加で売ってもらったから、まだまだ稼げそうだ」


 おれの質問に上機嫌で答えてくれるゲンガーさんを見ると、俺も嬉しくなってくる。


「あ、それから今回のみずちは前回のと弱点が少し違いますから気をつけてください」

「そうか? 弱点は雷じゃないのか?」

「はい、青っぽいのは同じ雷属性が弱点ですが、赤っぽいのは水属性、緑色がかったのは火属性が弱点のようです」

「なるほど、自分の属性魔法によって弱点が変わる訳か。

 こいつはおもしろいな」


 ゲンガーさんはそう言うと、そそくさと素材置き場のほうへ移動した。

 早速、創作のイマジネーションが湧いてきたのだろう。


「こいつはいい!

 前よりおもしろい物ができそうだ!!」

 奥から聞こえてくるゲンガーさんの声に苦笑しながら、マーサさんは俺たちに失礼を詫びる。

「ごめんなさいね。

 うちの人はおもしろそうな武器や防具ができそうだと周りが見えなくなるのよ」

「いえ、気にしていません。

 今後もよろしくお願いします」


 俺たちはマーサさんにいとまを告げ、武術大会の参加チーム情報をもらうためエルンスト伯爵の邸宅を訪ねた。

 







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