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第24話 東へ出発、目指せ国境の町 (主人公視点)


 翌朝、早めに目を覚まし身なりを整えて階下の食堂へおりると、ちょうど朝食の準備が整ったところだった。

 カオリもすぐに階段をおりてくる。


「おはよう、ヒロ。

 夕べはよく眠れた?」

「ああ、おはよう。

 いろいろあったせいか疲れでぐっすり眠れたよ。」


 俺たちは挨拶を交わすとすぐに朝食を取り、宿をチェックアウトする。

 チェックアウトと言っても鍵を返して出発する旨を伝えるだけだ。


 移動手段は、馬車か徒歩だろう。

 もっとも、今の俺たちなら馬車よりも自分で走った方が早いような気がする。

 カオリに徒歩での移動を提案すると了承してくれた。


 東の国境の街、トンパまでは直線距離で500キロほどあるらしい。かなりの距離だ。

 途中に峠や森、迂回するしかない山脈や海岸も有り普通は馬車を乗り継いで8日、徒歩ならその2倍以上の日数がかかるという。

 途中にはいくつかの街や村が有り、食料や宿はだいたいあるらしいが、森と山脈が連続する所も有り、うまく距離を調整しないと野宿せざるを得ないこともあるらしい。

 当面はなだらかな地形が続き宿もあるということで、不寝番の心配は山脈越えのときくらいだろうか。


 俺とカオリは街の東側から出て、街道をひたすら東へと進む。


 最初のうちこそ、馬車や農作業の荷車などが見受けられたが、2時間も歩いて街から離れると、通行する人もまばらとなり、視界の先まで誰も見えなくなってきた。


「よかったら、向こうの丘まで競争してみないか?」

 それまで怪しまれない程度にペースを落として歩いていた俺たちだが、時間短縮のために急げるときは急いおきたいと思い提案する。


「そうね…

 それじゃあ、全力で走ってみましょう。

 昨夜の襲撃であなたの強さはだいたい分かったけど、私とどっちが早いか気になるの…」

「分かった。」


 俺は、そう言うと道ばたに落ちていた小石を拾い上げる。


「この石が地面についたら開始でいいか?」

「了解よ」


 俺は真上に軽く石を投げる。


 石が接地すると同時に全力で走り始める。

 目標は目視距離でおよそ5キロほど離れていそうな丘のてっぺんだ。


 分かってはいたことだが、カオリは俺のペースについてきている。

 100メートルを5秒ほどで走っていると思うのだが、疲れる様子もない。


 二人とも明らかに長距離の走り方ではない。

 とりあえず全力で出し惜しみ無しのスピードを披露するとしよう。

 俺は更に加速し、景気があっという間に後ろへ流れる。

 100メートルを3秒ほどのスピードまで加速したところで、小高い丘の頂上にたどり着き、減速して止まる。

 時速120キロほど出たのではないだろうか。チーターも真っ青なスピードだ。


 カオリはと言うと余裕でついてきていた。

 二人ともほとんど呼吸に乱れがない。


「やっぱり早いわね」


 カオリがあきれたように言うが、それはこちらも同じ気持ちだ。

 召喚前のパーティーでもさっきの俺についてこれるものは半分もいない。


「そういうカオリこそ余裕でついてきたじゃないか」

「けど、あなたはまだまだ加速できそうだったわ。正直倍の距離があったら引き離されたと思う」

「いや、俺もさすがにそこまでは早くない。

 それよりのどが渇かないか」

「そうね」


 さすがに全力で走るときに鼻呼吸では間に合わず口呼吸したためのどが乾燥した。

 手持ちの水筒を開けようとすると、カオリが何か見つけた。

「丘をおりたところに村があるみたいだから、あそこによって休憩しない」


 確かに丘から下り道に沿って畑が増えていき、その向こうの街道沿いに小さな規模の集落が見える。

 茶店のようなものがあれば御の字だ。


「分かった。適当な店があれば入ろう。

 10時のおやつにいい時間だ」


 俺たちは村の住人が見えるまでは小走りで移動し、村が近づいたら普通のスピードで歩きながら並んで村に入る。


 柵のようなもので周囲を囲っている家が多いが、村全体を囲うような壁や堀はない普通の農村のように見える。


 村には行って店を探すが、さすがに日本の喫茶店のような所はなく、どうしようかと思っていると少し先にどうやら冒険者ギルドの支部があるようだ。


 ギルドなら冒険の必需品を扱っているのでお茶ぐらい飲めるだろうと扉をくぐると、一つしか無い受付カウンターから声がかかった。


「いらっしゃい。依頼を受けてくれたエルンの街の冒険者かい?」


「いや、俺たちは冒険者だが、国境へ向かっている旅の途中だ。

 休憩でよっただけだが?」


「はぁー、そうかい…」

 おばちゃんは残念そうにため息をついた。


「何かあったのですか?」

 おばちゃんの様子にカオリが聞く。


「そうだね、もし急ぐ旅じゃないのなら、ちょっと協力してもらえないかね…」


 何かわけありのようだ。

 俺はカオリと顔を見合わせ、頷いた。


「急いでいないと言えば嘘になるが、それほど切迫もしていないので、協力できることがあれば協力は惜しまない。

 俺たち、西の町で登録したばかりのDランク冒険者だ」








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