090 千の理香は売りはしない
ルナ
「はーい、みんな元気かな? ルナだよ!
今、ボクたちは旧カニング公爵領に入ったよ。
戦後のどさくさで悪さをする人がいたら、懲らしめる旅に来ているよ。」
紅丸
「ルナ様、誰に向かって話されているのですか?」
ルナ
「ボクたちのファンのひとたちに向かってだよ。」
紅丸
「ルナ様、誰もいませんよ。」
ルナ
「ボクたちからは見えないけれど、向こうからは見えている・・・と思う。」
黄庵
「ルナさん、もういいですか? 先を急ぎませんか?
走れとは言いませんけれど、寄り道する余裕はないですよね。」
ルナ
「わ、わかったよ。」
青兵衛
「あーあ、囲まれちゃった。」
ボクが周りを見ると、盗賊の集団に囲まれていた。
盗賊の頭領
「悪いな。 おれたちも困っていてな。
他人の幸せを分けてもらうしか、生きる目が残っていなくてな。」
紅丸
「どういう意味だ?」
盗賊の頭領
「スリに会ったと思って、持ち金を半分だけ落として行ってくれ。」
黄庵
「断ると言ったら?」
盗賊の頭領
「できる限り手加減するが、少しくらいケガさせても恨まないでくれよ。」
青兵衛
「おや、今どき珍しい義賊ですね。」
盗賊の頭領
「千の理岩さまが生きておられたら、町の警備隊として雇ってくれたかもしれないが。
残念ながら、ただの無職の集団だ。」
黄庵
「大将軍 千の理岩さんを知っているのなら、その娘の理香さんの行方について、知りませんか?」
盗賊の頭領
「俺は知らない。 だれか知っている者はいるか?」
全員が首を横に振っていた。
黄庵
「そうですか、残念です。 わたしたちは理香さんを探して会いたいです。」
ルナ
「処刑のときに大将軍に頼まれたからね。」
盗賊の頭領
「そうですか? なにかあったら知らせようと言いたいところだが、連絡手段がないからな。」
青兵衛
「それなら、町の店に伝言してくれたら助かります。」
盗賊の頭領
「ああ、それはさておき、言いにくいが金を半分落として行ってほしい。」
ルナ
「そんなに渡したら、ボクたちの目的を、つまり、理香さんを探す旅が続けられなくなります。」
青兵衛
「落としどころとしては、お金ではなく、町で食料を買って渡しします。
それと、こちらが連絡したいときに会えるように、待ち合わせ場所を決めましょう。」
盗賊の頭領
「なるほど、時刻は14時としよう。
お互いがなにか伝えたいことがあれば、そこでしよう。
そちらは旅を続けるのだから、こちらが見張りを立てるようにする。」
青兵衛
「では、お願いします。
そちらの人数は18人ですね。」
盗賊の頭領
「ああ、そうだ。」
盗賊の頭領 こころの声
『本当は36人いるが、少ない目に言っておく方が良さそうだな。』
盗賊の中から4人、荷物持ちに来てもらって、町で買った食料をお渡しした。
三日分の食料を買う代金は、持ち金の10%くらいだった。
◇
ボクたちは、8つある町の1つ目の町に行って、モンテマニー公爵が派遣した5組のカップルに会うことにした。
責任者
「失礼ですが、あなたたち4人がモンテマニー公爵から任命された【監察官ルナ】様の一行だと分かる証拠を見せてくださいませんか?」
ルナ
「輝け、【モンテマニーの紋章】。」
【モンテマニーの紋章】を見せたら、納得してくれた。
責任者
「ありがとうございました。
偽物が現れたり、【監察官ルナ】様の一行が近づくときだけ態度を変えるおそれがあるからと、皆様のお姿は知らされていなかったのです。」
黄庵
「正しい判断ですね。」
青兵衛
「ひとを信じることは、ひとを測る労力を惜しむ怠け者がすることですからね。」
責任者
「おっしゃる通りです。 だから、文句も言えなくて・・・」
青兵衛
「ハハハ、あなたはかなりの人格者ですね。
相談したいことがあるのですが、いいですか?」
責任者
「もちろんです。 わたしたちも相談したいことがありまして。
お先に、おっしゃってください。」
青兵衛
「町の警備隊として、18人の強者を雇いませんか?」
責任者
「雇いたいところですが、人選がむずかしいです。
ひとの心は分かりませんから。」
青兵衛
「じつは、ここに来る前に、良さそうなひとたちを見つけたのです。
こちらで雇ってくれませんか?」
責任者
「ひとを雇うことは、賭け事みたいなものですからね。
【監察官ルナ】様のお仲間の推薦に掛けましょう。」
ルナ
「青兵衛は商売上手だから、正しい判断をしたと思うよ。」
責任者
「そうなることを願っています。」
青兵衛
「それでは、明後日、つまり明日の明日、2日後の16時に来ます。
18人の受け入れ態勢をお願いします。」
責任者
「分かりました。
2日後の16時にお待ちしています。」
◇
ボクたちは、盗賊たちとの待ち合わせ場所に向かった。
朝に打ち合わせたばかりなのに、律儀にも見張りを立てておいてくれた。
青兵衛
「仕事が早いですね。
信用できそうです。」
青兵衛は、見張りのひとに説明をした。
見張り
「本当ですが? それが本当ならどんなに良いか?
いえ、町の責任者に会える機会があるなら、わたしたちを雇いたくなるように、俺たちの強さを見せつけてやります。
では、明日の14時に、ここで待ち合わせお願いします。」
青兵衛
「18人を雇う話だからね。 ひとりふたりなら増えても良いけれど、人数が足りないことはないようにしてくださいね。」
見張り
「はい、お頭に伝えます。
また、明日、お会いしましょう。
失礼します。」
◇
翌日、ボクたちは18人の盗賊の身なりを整えさせて、責任者に引き合わせた。
盗賊の頭領の礼儀正しさと、大将軍 千の理岩の想いを聞いて、町の警備隊として採用された。
これで、彼らは生活費を稼げるだろう。
盗賊の頭領 こころの声
『しまった。 36人と本当の人数を言うべきだった。』
青兵衛に耳打ちされたボクは責任者に提案した。
ルナ
「彼ら18人が町の警備隊を立派に勤め上げたときは、新たな人員を増やすときの面接官に加えてあげてください。 彼らの横のつながりで良いひとを紹介してくれると思います。」
責任者
「そうですね。 そのときは、よろしくお願いします。」
盗賊の頭領 こころの声
『お見通しか。 流石は、【監察官するな※】様だな。』
※ 「ルナ」を聞き取れないので、聞き慣れた「するな」だと間違って覚えています。
◇
こんな感じで、ボクたちは旧カニング公爵領を1周した。
盗賊に会うことが多かったが、信用できそうなグループは町の責任者に推薦して、警備隊にした。
しかし、卑怯な手を使ってくる連中は、紅丸の剣技、黄庵の関節技と青兵衛のそろばんの角で倒した。
もちろん、ボクも戦ったが、ボクの所に回ってくる敵は少なかった。
ルナ こころの声
『まあ、お姫様扱いも嬉しいけどね。』
そして、旧カニング領の町を巡る旅が2周目に入ったとき、黄庵がスリにあった。
しかし、すぐに紅丸が捕まえた。
黄庵
「見事なスリの腕だが、あまいな。
それにしても、私の財布に結んだ紐をほどけるとは器用だな。」
???
「結構な手間だったけれど、できなくはなかったわ。」
ルナ
「あなたのように美しい女性なら、スリをしなくても、どこかの店で雇ってもらえば良いのでは?」
???
「たとえ落ちぶれても、わたしは武家の娘。
売春はしないわ。」
ルナ
「いや、そうじゃなくて、普通に売り子とか。」
???
「はなせ!」
美しい娘は、紅丸の足を踏んで逃げようとした。
紅丸は避けたが、手をはなしてしまった。
美しい娘は、走って逃げていった。
紅丸
「武家の娘というのも本当でしょうね。
よく鍛えられています。」
青兵衛
「売り子を知らないということは、町で買い物をしたことが無いのでしょうね。」
黄庵
「見つけました。
大将軍 千の理岩さんの娘、理香さんで間違いないでしょう。
ルナさん、紅丸さん、青兵衛さん、追いましょう。
まずは、あとをつけて、どこに住んでいるのかを突き止めましょう。」
つづく
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