088 後は野となれ山となれ
モンテマニー公爵とメクバール執事は、カニング公爵領の経営を押し付けられていた。
メクバール執事
「【ギルドプレート製造工場】と同じことをやられてしまいましたね。」
モンテマニー公爵
「まったくだ。 いったいなにをしたいんだ。
いや、分かり切ってるな。 自分の有能性を誇示したいのだろう。
【ギルドプレート製造工場】でやられたときは、自分の領地でやってくれたら良いのにと思っていたが、間違いだったようだ。」
メクバール執事
「本当ですね。
「来た時よりも美しく」ではなくて、
「自立する能力を奪っていく趣味」でもあるのでしょうか?」
モンテマニー公爵
「子育ての難しさだな。 まあ、ワシには関係がない悩みだな。」
モンテマニー公爵とメクバール執事は、調査報告書を読んで頭を抱え込んでいた。
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調査報告書 カニング公爵について
第4子の長男として生まれる。
父、母と3人の姉に愛されて育った。
常に自分が1番であり、否定されること無く育った。
自己より優れたものは存在しないと信じ込んでいて、実際にライバルと感じるものに出会うことはなかった。
ひとのこころを理解して支配下に置くことが至上の喜びであり、生きがいであった。
ほとんどの者は楽をさせてやれば味方になり崇拝してくれる。
しかし、良太郎様だけは、自身に魅力を感じることが無く近づいてこなかった。
自分自身に興味関心を示さない人間が存在するとは思わなかったため、取り扱いに困り、自己の自尊心を守るために、排除除去しようとした。 良太郎様を落とし入れるための作り話を流せば、誰も疑うことなく信じ込んでいたのを喜んでいた。
ただし、あくまで自身は潔白であり、信者たちが忖度して自発的に行動したことであり、関与していないし、知る由が無かったという姿勢を貫いていた。
錦野町長、熱血教師、正義の瓦版、中立の騎士は、簡単に操ることが出来たとワイダー公爵に自慢していた。 ワイダー公爵は、「そんなことをすると中立の騎士が怒るぞ。」と忠告していたが、
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モンテマニー公爵
「メクバールよ。 この報告書を作ってくれたものには悪いが、ここまでにして良いか?」
メクバール執事
「あと少しですから、我慢して読んでください。」
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カニング公爵は、「あのぼけ老人になにができる。 日和見を決め込むだけで、なにも言えませんよ。」と豪語していた。
結婚して10年が過ぎると、妻の猫美様から、「良太郎を選んだ方が良かったかもね。」と言われることが多くなり、精神が不安定になっていた。 最近は、「モンテマニー公爵の方が成功しているわね。」と言われて、壁を蹴って3つの穴を開けて走り去った。
自身が信じる評価と現実との乖離に苦しんでいた様子だった。
「わたしが、あのハゲ、デブ、ブサイクの肥満体に負けるなんてありえない。」とつぶやいて、不機嫌をまき散らしていた。
以上
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モンテマニー公爵
「デブと肥満体は同じ意味ではないか。2回も言わなくても良いだろうに。
メクバールよ。 あの完璧なカニング公爵がワシに嫉妬することはないはずだ。
この報告書は、わしへのヨイショやゴマスリが入っていないか?」
メクバール執事
「その場にいたわけでないので断言はできませんが、正常な状態であれば、領地を放り出して失踪することはないでしょう。 うわさは誇張されることが多いので、はなし半分に思っておけば良いのです。」
モンテマニー公爵
「メクバールの言う通りだな。」
メクバール執事 こころの声
『モンテマニー公爵の方がカニング公爵よりも上だ!
と理解できたひとは、良太郎様と私だけですね。』
モンテマニー公爵 こころの声
『わしもメクバールに頼りすぎているからな。 気を引き締めなければいけないな。」
◇
モンテマニー公爵
「メクバールよ。 カニング公爵のことを調べても現状が好転しないことが分かった。」
メクバール執事
「その通りでございますね。」
モンテマニー公爵
「現地の者のチカラを借りて、領地経営を手伝ってもらおうと思っていたのだがな。」
メクバール執事
「目ぼしい者たちは、秘密裏に処刑されていたり、失意で自決したり、酒におぼれて再起不能ですからね。 健康を維持している者たちも空白期間が長すぎて心身がなまっていて役目を果たせそうにないでしょう。」
モンテマニー公爵
「こんなことなら、大将軍 千の理岩を処刑せずに、適当な側近を処刑するべきであった。」
メクバール執事
「すでに逃亡していた者たちを処刑するなんて、無理ですからね。
公爵様、ぐちはそれくらいにして、今後の方針をお決めください。」
モンテマニー公爵
「8人いる町長を入れ替えるしかないな。 現任の町長はカニング公爵に言われた通りにするだけの操り人形だ。 責任役として残したとしても、実務は我が領内の次点を送り込むしかないだろう。
そして、ひとりで行かせても、裸の王様にされるだけだから、男女5人ずつ計10人、つまり、5組の若いカップルを送り出すことにする。 場を変えるには最低でも必要な人数のギリギリだが、そこは許してもらおう。」
メクバール執事
「では、5組×8=40組のカップルを選出します。」
モンテマニー公爵
「頼むぞ、メクバール。 男性だけで行っても女性だけで行っても、足元をすくわれるからな。
ハニートラップが入り込む隙がないことを徹底しなければならない。」
メクバール執事
「それでは、【監察官ルナ】様のことを、40組のカップルに叩き込んでおきます。」
モンテマニー公爵
「そうするべきなのか、【モンテマニーの紋章】のことだけ教えるべきか悩むな。」
メクバール執事
「【監察官ルナ】様の前でだけ、態度を変えられても困りますからね。」
モンテマニー公爵
「とはいえ、【監察官ルナ】殿に協力しない場合の更迭も大変だし・・・」
ふたりは悩みに悩んだ末、【モンテマニーの紋章】のことだけ教えることにした。
モンテマニー公爵
「それにしても、カニング公爵が
「後は野となれ山となれ」
という考え方をする人物だったとはな。
自分で考えて動く者も困るが、自分で考えることを放棄する者も困りものだ。」
メクバール執事
「まあ、苦労して考えた案を提出しても、鼻で笑ってバカにして却下するようでは誰も考えなくなりますね。
ゴマをするだけなら、そのほうが楽と考えるものは少なくないですからね。 つまり、ほぼ全員です。」
モンテマニー公爵
「上司と部下の信頼関係を目に見える形にする仕組みが必要と言うわけだな。」
メクバール執事
「ルナ様、紅丸様、黄庵様、青兵衛様がお互いを信頼している根拠をお聞きすることにしましょうか?」
モンテマニー公爵
「名案だな。 ぜひ、聞いてみよう。
ルナ殿たちに依頼することも出来てしまったからな。」
メクバール執事
「では、40組のカップルが着任して、1週間後ぐらいに来ていただきましょう。」
つづく
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